【完結】水と夢の中の太陽

エウラ

文字の大きさ
54 / 90
第三章 辺境編

久々のギルドは居心地が悪かった

しおりを挟む
結局二度寝をして、起きたのは9時過ぎ。
なんかねえ、二度寝ってさあ、気持ちいいんだよね?
起きるときはめちゃくちゃ怠いんだけど。

甲斐甲斐しくクラビスに世話をされて、遅い朝食。
他の皆は早いうちに起きて、各自仕事をしたり用事を済ませたり。
遅くなってゴメンね?
クラビスのせい!(たぶん)

「食休みしてからギルドに行こうと思ってる」
「例の調査の依頼だね」
「ギルドで確認してから正式に受けるつもりだから、行くときはリリーとフェイ、ウィステリア様も一緒の予定だ」
「皆は分かってるの?」
「連絡済みだ。11時頃集まるだろう。それまでは少しゆっくりしていいぞ」

と言っても、特に何もないなあ。
あっ、馬モフりたい!

「もふもふ!」

それにクラビスが苦笑した。

「本当に好きだなあ。もう馬に嫉妬する気持ちも無いわ」
「クラビスがもふもふしてたら、それはそれで・・・」

猫耳、尻尾、手と足は肉球もふもふの毛・・・。
それはそれでいい!

「いいんだ?」
「はっ! 声に出てた?!」
「しっかりと。まぁ馬は今からはちょっと無理かな? ゴメンね?」

いや、我が儘言わないよ!
大丈夫。
俺はマテを出来る子!



なんて雑談をしているうちに皆ゾロゾロ集まってきた。

「おそようさん!」
「・・・ウン、オソヨウデス」

コレ、絶対朝のアレコレ分かってるよね?!
恥ずかしい!
「新婚ほやほや蜜月なんだぞ。起きてるだけいいほうだ!」
いやそれもどうなの、リリーさんや?
「初々しいの」
そんな爺目線で見ないでウィステリアさん。

生暖かい使用人の目・・・。
・・・うん、もういいや、別に。
気にしたら負けだ!
それよりもギルドに行かねば!

そして久々に歩いてギルドに着いたんだけど。

何で俺、絡まれてんのかね・・・?

「おいおい坊主、ここはお前みたいなボンボンのガキが来る所じゃねえんだよ!」
「ママのおっぱいでも貰っておうちで寝んねしてな!」

・・・うん、すげーテンプレ。
唖然として反応出来なかったわ。

何でこうなったかというと・・・。
ギルドに到着。
受付でギルマスに面会を申し込む。
ギルマスの予定を確認中。
クラビスが買取カウンターに素材を売りに行く。
俺が食堂兼酒場を見たくてフェイに連れてって貰う(フェイってところがミソ)。
酔っ払った冒険者2人に絡まれる。←今ここ。

何でクラビスと離れた途端にこんなのに絡まれるんだ?
こういう時こそ『強運者』仕事して!

フェイ、俺達ローブのフードで顔が見えないからいいけど、笑い堪えてぷるぷる震えているの、絶対に怖がってると思われてるよ。

そんで、リリーとウィステリアは依頼の掲示板を見に行ってて、気付いてコッチを見てるけど笑ってるよね? 酷くない?!

「俺は! 20歳の大人! ガキじゃねえ!」

「ぶはっ・・・!!」

とうとう吹き出したよ、この人。
もう何度目だよ、この件!!
手慣れちまったギルドカードの提示。
ガッツリ見せてフードをとる。

「小っさくて悪かったな! 人は外見じゃねえ!」

ぜえぜえ息を切らして大声で叫んでやった!
絡んだ冒険者は唖然として固まっている。

背後に気を付けな!
クラビスが笑ってない目で見ているぜ?

「お前ら、俺の嫁に何言いがかりつけてんだ」

「・・・ひぃ・・・」

ギギギと振り返る二人。
クラビスと目があった瞬間、死んだ。
目線で殺せるクラビス、格好いい・・・!

「はいはい、ごちそうさま」
「じゃねえよ。お前がついていながら何絡まれてんだよ? ホント、一瞬でも目が離せねえな」
クラビス、むっちゃ口悪い。ギャップが・・・!

「いやあ、止める間もなく? 面白かった」
「フェイってそういうヤツだよな? 知ってた」
ニヤリと笑うフェイの顔が悪役だよ。

やっぱりクラビスといるのが一番。
「クラビスの嫁でよかった!」
「そうだろう。愛してるよ、アルカス!」
「俺も愛してる!」
「おい、ここ冒険者ギルド」

フェイのツッコミで我に返った。
途端にカーッと顔が赤くなった。
リリー達も苦笑している。

「うわーうわーやらかした! クラビス、ギルマスは?! 早く行こう!!」

恥ずかしい!


そんなわたわたしてるアルカスを見ながら、ここを拠点としている馴染みの冒険者はほのぼのとし、最近来たばかりの冒険者や新人はアルカスの事を知らないので??としていた。

絡んだ冒険者はもちろん後者で、酔っ払った勢いもあるが、周りを良く見ていなかったせいで、アルカスについていたのが特級、S、Aクラスの冒険者と気付いていなかった。

気付いていればこんな目には遭わずにすんだのに・・・と、呆れた目を向けられていた。

ここはフォレスター領のお膝元の街イース。

誰も彼もがフォレスター家の内情を知っている。
行方不明だったアルカス様の帰還をどれ程喜んだか。
それこそ目に入れても痛くない程の可愛がりよう。

だから街の者も皆、アルカス様を可愛がり、見守っている。

冒険者ギルドからポイ捨てされた二人がその後どうなったかは想像に難くない。










しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ
BL
 神の家でステンドグラスを作っていた俺は地上に落とされた。俺の出来る事は硝子細工だけなのに。  硝子じゃお腹も膨れない!硝子じゃ魔物は倒せない!どうする、俺?!  設定はふんわりしております。 少し痛々しい。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました

BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」 え?勇者って誰のこと? 突如勇者として召喚された俺。 いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう? 俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる

おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。 知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。

異世界転移して出会っためちゃくちゃ好きな男が全く手を出してこない

春野ひより
BL
前触れもなく異世界転移したトップアイドル、アオイ。 路頭に迷いかけたアオイを拾ったのは娼館のガメツイ女主人で、アオイは半ば強制的に男娼としてデビューすることに。しかし、絶対に抱かれたくないアオイは初めての客である美しい男に交渉する。 「――僕を見てほしいんです」 奇跡的に男に気に入られたアオイ。足繁く通う男。男はアオイに惜しみなく金を注ぎ、アオイは美しい男に恋をするが、男は「私は貴方のファンです」と言うばかりで頑としてアオイを抱かなくて――。 愛されるには理由が必要だと思っているし、理由が無くなれば捨てられて当然だと思っている受けが「それでも愛して欲しい」と手を伸ばせるようになるまでの話です。 金を使うことでしか愛を伝えられない不器用な人外×自分に付けられた値段でしか愛を実感できない不器用な青年

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

処理中です...