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第三章 辺境編
果ての森と辺境伯領 その3
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各自、割り当てられた部屋で旅装を解いていると、コココンとノックがあった。
クラビスが応えをすると、アーサーだった。
「悪い。邪魔したか?」
「いえ、大丈夫です」
「素敵な部屋をありがとうございます!」
悪いと思いつつ、話しながら脱いだローブを異空間収納バッグにしまう。
クラビスに用事かな?
「どうしました?」
「ああ、いやその、アルカス殿の件で・・・」
「・・・ああ。詳しい話はしてませんでしたね」
「それと、友人なのだからここでは何時ものように話してくれていい」
「ああ、分かった。アルカス、ちょっと来てくれる?」
呼ばれたのでクラビスの所へ行く。
クラビスも大きいけど、この人も大きいなあ。
見上げちゃう。
「少し前に見つかったフォレスター家の三男のアルカス様「クラビス、様は要らない」・・・アルカスで、この間婚姻して、俺の嫁になった」
「改めて、アルカスです。クラビスの嫁です。それと、異世界育ちでこっちの常識に疎いので、おかしな事をしても許して欲しいです」
先に自己申告しておく。
「異世界・・・に行ってたのか?」
「そうだ。生きてたのが奇跡な状況だった。そのせいで小さくて」
「小っさい言うな!」
「・・・本人が気にするので子供扱いしないでやってくれ」
クラビスが苦笑している。
「それで、今回の調査に彼も?」
「ああ、連れて行く。冒険者に成り立てだが俺とアルカスはエストレラ神に番認定されてて離れたくないんだ」
クラビスの言葉に驚くアーサー。
「番認定?! 人族なのに?!」
「そう。まあ、それ以外にもアルカスは規格外なので。特に魔法に関しては非常識なので、連れて行っても問題ないんだ」
どうせ非常識だよ。
「・・・どこら辺が?」
「ここら辺が」
俺はそう言って転移する。
クラビスの横からアーサーの横へ。そしてまたクラビスの横へ。
「・・・・・・は?」
「気持ちは分かる」
クラビスが遠い目をする。
「・・・転移魔法?」
「どこへでも何度でもどれだけの人数だろうとあら不思議! 簡単でござい」
「アーサーが固まってるから止めなさい」
「・・・すみません」
悪ノリしました。
「とにかく何かあれば逃げられるし、たぶん果ての森くらい軽く消し飛ばせると思うので、アルカスにヘンなちょっかいをかけないように。・・・死にたくなければ」
俺も規格外だけどクラビスもね、俺のことにだけは暴走するから。
「・・・周知徹底しよう。さすがにそんな事態は遠慮したい」
はあ、とアーサーが溜息を吐いた。
ごめんなさい。
「ところでさっきの馬車での、姿が変わったヤツは魔法か?」
「ああアレね? 幻影魔法。その場で思いついてやってみたら出来たんだよね」
「・・・・・・クラビス?」
「だから言ったろう。常識知らずで規格外なんだよ。ここに居る間中こんなだろうから、慣れた方がいい」
唖然とするアーサーにクラビスが苦笑した。
でも他言無用と釘を刺すのは忘れない。
「ねーねー、後でまた馬モフっていい?」
「・・・・・・ホントに好きだよね。でも今日は無し。もう2回も触ってるだろう」
「えー?!」
「・・・あの馬をあんなに撫で回してるヤツは初めて見たが、正気の沙汰とも思えん」
「だよね。慣れたけどもの凄い違和感」
「えー!! むしろ何故?! そこにもふもふがあるのにモフらないなんて人生損してる!」
2人とも呆れている。
諦めている・・・・・・?
「クラビス・・・」
「何度も言わせるな」
「・・・調査は何時から?」
「あー、話を変えたな?!」
あからさま。いいんだけど!
クラビスが苦笑してる。
「アルカス、後でね。明日、目撃情報の場所を見て回るつもりだ。アーサーは?」
「ならば、我らも同行しよう。朝食後でいいかな?」
「ではその様に皆にも話を通しておく。アルカスもいいね?」
「らじゃ! ・・・あ、アーサーさん!」
俺は慌てて声をかけた。
「アーサーでいいぞ」
「じゃあ、俺もアルカスで大丈夫。すでにタメ口だったね。ごめんなさい」
「気にしてないぞ。クラビスの嫁ならば私の友人も同じ。それで?」
「うん、これあげるから持ってて」
そう言ってネックレスを渡す。
ペンダントトップに魔石を使ったものだが。
「防御結界の魔法を込めてあるから。規模によるけど、最低でも3回は魔法や物理攻撃を完全無効化するはず。この領くらいは範囲内だから、ヤバいと思ったら遠慮なく使って」
まあ、危険と察知したら自動で発動するようにしてあるけどね、と告げる。
「ーーーえ?」
この辺境においては最強の盾と成り得る物。
それが、ここに・・・・・・?!
「クラビスの大切な友人だし、お隣さんだし。そもそも誰かが傷付くのもイヤだし。今回は俺、自重しないことにしたから」
ふんすっと、胸を張る。
「アルカス、ソレ止めなさい!」
胸を張るなとクラビスに怒られた。
解せん。
唖然としているアーサーにクラビスが言う。
「アルカスなりの方法で皆を護りたいんだよ。黙って受け取ってくれ」
「ソレに、魔石もチェーンもクラビスの死蔵品から貰った物に俺が魔法を付与しただけだし。タダみたいなもんよ?」
軽く言ってるが、そんなわけなかろう!
・・・ああ。
コレが非常識で規格外ってヤツか・・・・・・。
クラビスと同じく遠い目をした。
「では、ありがたく受け取っておこう」
そう言って首から下げて服の中に仕舞う。
「間もなく昼餉だ。着替えたら来るといい。ではな」
そう言って部屋を後にするアーサー。
部屋の中からは微かに2人の声がした。
ありがとう、と言うクラビスに、クラビスの友達は俺の友達だからね、と言うアルカス。
目を瞑り、天を仰いだ。
「神よ。この出会いに感謝を」
クラビスが応えをすると、アーサーだった。
「悪い。邪魔したか?」
「いえ、大丈夫です」
「素敵な部屋をありがとうございます!」
悪いと思いつつ、話しながら脱いだローブを異空間収納バッグにしまう。
クラビスに用事かな?
「どうしました?」
「ああ、いやその、アルカス殿の件で・・・」
「・・・ああ。詳しい話はしてませんでしたね」
「それと、友人なのだからここでは何時ものように話してくれていい」
「ああ、分かった。アルカス、ちょっと来てくれる?」
呼ばれたのでクラビスの所へ行く。
クラビスも大きいけど、この人も大きいなあ。
見上げちゃう。
「少し前に見つかったフォレスター家の三男のアルカス様「クラビス、様は要らない」・・・アルカスで、この間婚姻して、俺の嫁になった」
「改めて、アルカスです。クラビスの嫁です。それと、異世界育ちでこっちの常識に疎いので、おかしな事をしても許して欲しいです」
先に自己申告しておく。
「異世界・・・に行ってたのか?」
「そうだ。生きてたのが奇跡な状況だった。そのせいで小さくて」
「小っさい言うな!」
「・・・本人が気にするので子供扱いしないでやってくれ」
クラビスが苦笑している。
「それで、今回の調査に彼も?」
「ああ、連れて行く。冒険者に成り立てだが俺とアルカスはエストレラ神に番認定されてて離れたくないんだ」
クラビスの言葉に驚くアーサー。
「番認定?! 人族なのに?!」
「そう。まあ、それ以外にもアルカスは規格外なので。特に魔法に関しては非常識なので、連れて行っても問題ないんだ」
どうせ非常識だよ。
「・・・どこら辺が?」
「ここら辺が」
俺はそう言って転移する。
クラビスの横からアーサーの横へ。そしてまたクラビスの横へ。
「・・・・・・は?」
「気持ちは分かる」
クラビスが遠い目をする。
「・・・転移魔法?」
「どこへでも何度でもどれだけの人数だろうとあら不思議! 簡単でござい」
「アーサーが固まってるから止めなさい」
「・・・すみません」
悪ノリしました。
「とにかく何かあれば逃げられるし、たぶん果ての森くらい軽く消し飛ばせると思うので、アルカスにヘンなちょっかいをかけないように。・・・死にたくなければ」
俺も規格外だけどクラビスもね、俺のことにだけは暴走するから。
「・・・周知徹底しよう。さすがにそんな事態は遠慮したい」
はあ、とアーサーが溜息を吐いた。
ごめんなさい。
「ところでさっきの馬車での、姿が変わったヤツは魔法か?」
「ああアレね? 幻影魔法。その場で思いついてやってみたら出来たんだよね」
「・・・・・・クラビス?」
「だから言ったろう。常識知らずで規格外なんだよ。ここに居る間中こんなだろうから、慣れた方がいい」
唖然とするアーサーにクラビスが苦笑した。
でも他言無用と釘を刺すのは忘れない。
「ねーねー、後でまた馬モフっていい?」
「・・・・・・ホントに好きだよね。でも今日は無し。もう2回も触ってるだろう」
「えー?!」
「・・・あの馬をあんなに撫で回してるヤツは初めて見たが、正気の沙汰とも思えん」
「だよね。慣れたけどもの凄い違和感」
「えー!! むしろ何故?! そこにもふもふがあるのにモフらないなんて人生損してる!」
2人とも呆れている。
諦めている・・・・・・?
「クラビス・・・」
「何度も言わせるな」
「・・・調査は何時から?」
「あー、話を変えたな?!」
あからさま。いいんだけど!
クラビスが苦笑してる。
「アルカス、後でね。明日、目撃情報の場所を見て回るつもりだ。アーサーは?」
「ならば、我らも同行しよう。朝食後でいいかな?」
「ではその様に皆にも話を通しておく。アルカスもいいね?」
「らじゃ! ・・・あ、アーサーさん!」
俺は慌てて声をかけた。
「アーサーでいいぞ」
「じゃあ、俺もアルカスで大丈夫。すでにタメ口だったね。ごめんなさい」
「気にしてないぞ。クラビスの嫁ならば私の友人も同じ。それで?」
「うん、これあげるから持ってて」
そう言ってネックレスを渡す。
ペンダントトップに魔石を使ったものだが。
「防御結界の魔法を込めてあるから。規模によるけど、最低でも3回は魔法や物理攻撃を完全無効化するはず。この領くらいは範囲内だから、ヤバいと思ったら遠慮なく使って」
まあ、危険と察知したら自動で発動するようにしてあるけどね、と告げる。
「ーーーえ?」
この辺境においては最強の盾と成り得る物。
それが、ここに・・・・・・?!
「クラビスの大切な友人だし、お隣さんだし。そもそも誰かが傷付くのもイヤだし。今回は俺、自重しないことにしたから」
ふんすっと、胸を張る。
「アルカス、ソレ止めなさい!」
胸を張るなとクラビスに怒られた。
解せん。
唖然としているアーサーにクラビスが言う。
「アルカスなりの方法で皆を護りたいんだよ。黙って受け取ってくれ」
「ソレに、魔石もチェーンもクラビスの死蔵品から貰った物に俺が魔法を付与しただけだし。タダみたいなもんよ?」
軽く言ってるが、そんなわけなかろう!
・・・ああ。
コレが非常識で規格外ってヤツか・・・・・・。
クラビスと同じく遠い目をした。
「では、ありがたく受け取っておこう」
そう言って首から下げて服の中に仕舞う。
「間もなく昼餉だ。着替えたら来るといい。ではな」
そう言って部屋を後にするアーサー。
部屋の中からは微かに2人の声がした。
ありがとう、と言うクラビスに、クラビスの友達は俺の友達だからね、と言うアルカス。
目を瞑り、天を仰いだ。
「神よ。この出会いに感謝を」
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