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第三章 辺境編
果ての森と辺境伯領 その5
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きっかり30分後に皆が揃った。
どうやら思ったよりも集中していたようで、集まってきてたのに全く気付かなかった。
「では、まずクラビス達の戦闘力を軽く見せて貰おうか。それによって大まかに攻守を決めよう」
アーサーの合図で、クラビス達が前に出た。
「俺達で模擬戦をするから見ていてくれ。アルカスは自分に結界を張ってちょっと待ってて」
「らじゃ」
そう言ってクラビス達は全力ではないにしろ、割とガチめに模擬戦を開始した。
実はこれ、事前にアーサーと打ち合わせをしていて、誰がどういう攻撃が得意だとかを見て貰うんだって。
クラビスは完全前衛型で、フェイは魔法寄りの中衛型。
リリーは盾役が主でやや前衛型。
ウィステリアは後衛の魔法特化だった。まあ、レイピアくらいは使えるそうだが。
で、俺は戦闘経験の無さから、後衛での魔法特化。なんか、加護のせいか分からないが、イメージしてたら簡単に属性が増えていつの間にか全属性になっててさあ・・・。
俺TUEEいらんて。
でも、大切なものが増えたから、護るためにならいっかーと開き直った。
それで、模擬戦の時に、皆の攻撃力を見せてから俺を攻撃するって。
いや、結界を張ってる俺よ?
生身じゃ秒で死ぬから。
それでどれだけ結界が硬いか見て貰えれば、こんな俺でも大丈夫ってね。
提案したのが俺だったんで、クラビスが死ぬほど反対したけど。
説得したよ、何とかね。
もし怪我したとしても、自分で治せるし。
そんな回想をしてたら、クラビスに呼ばれた。
「アルカス、本当にいいんだな?」
「大丈夫って言ってる! 皆も手加減無しで来て!」
「ーーー分かった。じゃあ行くよ!」
そう言った瞬間、あらゆる角度から剣と魔法の嵐が来た。
数分間続いて辺りが土煙で見えなくなった。
アーサーや騎士団の皆も心配そうに見つめる。
クラビスが剣を一振りして風圧で土煙を飛ばすと・・・・・・。
ビクともしない結界の中で仁王立ちした俺が見えた。
ふっと結界を解除すると、クラビスが素早く駆けより、俺をぎゅっと抱きしめた。
その温もりに強張った体の力が抜けて、目から涙が溢れた。
「・・・っこ、怖かっ・・・ふえ、くら、び・・・・・・」
「よく頑張ったな。偉いぞ、アルカス」
「おれ、俺が・・・言いだしっぺ、で、頑張んなきゃ、て・・・」
「こんなこと、もうさせないからな」
「ーーークラビスぅ・・・」
安心したら、えぐえぐ涙が止まらなくなった。
周りはボーゼンとしている。
結界も凄かったが、こんなことを提案したのがアルカスだったので、驚いたのだ。
危険を承知で体を張って自身の力を示したのに、その実、めちゃくちゃ虚勢を張っていただけの普通の子供・・・いや大人だが、見た目が下手をすると自身の息子達と同じで。
なんて健気なんだと、団員全員が思った。
辺境伯騎士団がアルカスに落ちた瞬間だった。
「あーあ、無自覚人たらし」
「本当にのう」
「気持ちは分かるが、クラビスの嫉妬が酷くなりそうだな」
「今夜は寝かせて貰えないんじゃない?」
「下世話な話をするでない。我の可愛い孫ぞ」
ウィステリアが思わずという感じでフェイの頭を小突いた。
「え?! ウィステリア殿の孫?!」
リリーが驚いて聞き返した。
「のようなものだ。アルカスも爺様と慕ってくれておる」
「森の賢者を爺様とは・・・豪胆な」
「アルカスだからな」
「・・・・・・ああ、そうだな」
なんて会話を聞きつつ、アーサーがアルカスとクラビスに近寄り、声をかけた。
「クラビス、アルカスを連れて、この先の休憩所で少し休むといい。後は私が引き継ぐ。・・・アルカス、ご苦労だったな。存分にクラビスに甘えるといい」
「助かる、アーサー。よろしく頼む。アルカス、向こうで休もう」
「・・・・・・ぅん」
クラビスがアルカスを横抱きにして去った後。
アーサーは騎士団に先程の模擬戦でのクラビス達の立ち回りを確認し、おおよその連携を取り決め、残ったフェイ達とも軽く?模擬戦をしながら幾つものプランを考えた。
最終的に、先程のアルカスの結界が一番役に立つことを認識したのだった。
「俺等はけっこう何とかなるから、そっちはいつも通りでいいと思うぜ?」
「・・・その様だな。後は臨機応変だ」
「まあ、グリフォンぐらいではやられんよ」
「アルカスがいるから最悪な事にはならないはず。調査は明後日から行うが、いいか? もちろん動きがあれば早く動くが」
アルカスを抱っこしたクラビスが告げる。
泣き疲れたのか、寝てしまったようだ。
こうしてみると本当に20歳かと思ってしまうが。
「明後日、朝食後に向かおう。明日はゆっくり休んでくれ」
「分かった」
「それじゃ、ひとまず部屋に戻ろう。腹減った」
「そうじゃの」
「何か用意させよう」
「やった!」
「・・・・・・凄かった」
「アルカス様可愛かった」
「ああ」
「・・・頑張ろう」
「・・・ああ」
わいわいと去って行くクラビス達を見つめ、俺達も頑張るぞと気合いを入れ直した騎士団員達だった。
どうやら思ったよりも集中していたようで、集まってきてたのに全く気付かなかった。
「では、まずクラビス達の戦闘力を軽く見せて貰おうか。それによって大まかに攻守を決めよう」
アーサーの合図で、クラビス達が前に出た。
「俺達で模擬戦をするから見ていてくれ。アルカスは自分に結界を張ってちょっと待ってて」
「らじゃ」
そう言ってクラビス達は全力ではないにしろ、割とガチめに模擬戦を開始した。
実はこれ、事前にアーサーと打ち合わせをしていて、誰がどういう攻撃が得意だとかを見て貰うんだって。
クラビスは完全前衛型で、フェイは魔法寄りの中衛型。
リリーは盾役が主でやや前衛型。
ウィステリアは後衛の魔法特化だった。まあ、レイピアくらいは使えるそうだが。
で、俺は戦闘経験の無さから、後衛での魔法特化。なんか、加護のせいか分からないが、イメージしてたら簡単に属性が増えていつの間にか全属性になっててさあ・・・。
俺TUEEいらんて。
でも、大切なものが増えたから、護るためにならいっかーと開き直った。
それで、模擬戦の時に、皆の攻撃力を見せてから俺を攻撃するって。
いや、結界を張ってる俺よ?
生身じゃ秒で死ぬから。
それでどれだけ結界が硬いか見て貰えれば、こんな俺でも大丈夫ってね。
提案したのが俺だったんで、クラビスが死ぬほど反対したけど。
説得したよ、何とかね。
もし怪我したとしても、自分で治せるし。
そんな回想をしてたら、クラビスに呼ばれた。
「アルカス、本当にいいんだな?」
「大丈夫って言ってる! 皆も手加減無しで来て!」
「ーーー分かった。じゃあ行くよ!」
そう言った瞬間、あらゆる角度から剣と魔法の嵐が来た。
数分間続いて辺りが土煙で見えなくなった。
アーサーや騎士団の皆も心配そうに見つめる。
クラビスが剣を一振りして風圧で土煙を飛ばすと・・・・・・。
ビクともしない結界の中で仁王立ちした俺が見えた。
ふっと結界を解除すると、クラビスが素早く駆けより、俺をぎゅっと抱きしめた。
その温もりに強張った体の力が抜けて、目から涙が溢れた。
「・・・っこ、怖かっ・・・ふえ、くら、び・・・・・・」
「よく頑張ったな。偉いぞ、アルカス」
「おれ、俺が・・・言いだしっぺ、で、頑張んなきゃ、て・・・」
「こんなこと、もうさせないからな」
「ーーークラビスぅ・・・」
安心したら、えぐえぐ涙が止まらなくなった。
周りはボーゼンとしている。
結界も凄かったが、こんなことを提案したのがアルカスだったので、驚いたのだ。
危険を承知で体を張って自身の力を示したのに、その実、めちゃくちゃ虚勢を張っていただけの普通の子供・・・いや大人だが、見た目が下手をすると自身の息子達と同じで。
なんて健気なんだと、団員全員が思った。
辺境伯騎士団がアルカスに落ちた瞬間だった。
「あーあ、無自覚人たらし」
「本当にのう」
「気持ちは分かるが、クラビスの嫉妬が酷くなりそうだな」
「今夜は寝かせて貰えないんじゃない?」
「下世話な話をするでない。我の可愛い孫ぞ」
ウィステリアが思わずという感じでフェイの頭を小突いた。
「え?! ウィステリア殿の孫?!」
リリーが驚いて聞き返した。
「のようなものだ。アルカスも爺様と慕ってくれておる」
「森の賢者を爺様とは・・・豪胆な」
「アルカスだからな」
「・・・・・・ああ、そうだな」
なんて会話を聞きつつ、アーサーがアルカスとクラビスに近寄り、声をかけた。
「クラビス、アルカスを連れて、この先の休憩所で少し休むといい。後は私が引き継ぐ。・・・アルカス、ご苦労だったな。存分にクラビスに甘えるといい」
「助かる、アーサー。よろしく頼む。アルカス、向こうで休もう」
「・・・・・・ぅん」
クラビスがアルカスを横抱きにして去った後。
アーサーは騎士団に先程の模擬戦でのクラビス達の立ち回りを確認し、おおよその連携を取り決め、残ったフェイ達とも軽く?模擬戦をしながら幾つものプランを考えた。
最終的に、先程のアルカスの結界が一番役に立つことを認識したのだった。
「俺等はけっこう何とかなるから、そっちはいつも通りでいいと思うぜ?」
「・・・その様だな。後は臨機応変だ」
「まあ、グリフォンぐらいではやられんよ」
「アルカスがいるから最悪な事にはならないはず。調査は明後日から行うが、いいか? もちろん動きがあれば早く動くが」
アルカスを抱っこしたクラビスが告げる。
泣き疲れたのか、寝てしまったようだ。
こうしてみると本当に20歳かと思ってしまうが。
「明後日、朝食後に向かおう。明日はゆっくり休んでくれ」
「分かった」
「それじゃ、ひとまず部屋に戻ろう。腹減った」
「そうじゃの」
「何か用意させよう」
「やった!」
「・・・・・・凄かった」
「アルカス様可愛かった」
「ああ」
「・・・頑張ろう」
「・・・ああ」
わいわいと去って行くクラビス達を見つめ、俺達も頑張るぞと気合いを入れ直した騎士団員達だった。
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