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第四章 エルフの里編
精霊王が転生者だった件
しおりを挟む『うわああん---! 会いたかったよぉ!』
あの後ずっとしがみついてぐずぐず泣いているので、とりあえず座りましょう、とクラビスが何故か持っていたベンチを異空間収納バッグから取り出した。
え? 野営用に購入してた?
用意がいいね!
精霊王は一応実体はあるものの、質量としては空気のようなもので、重さは全然感じなかったから、椅子に座っても関係ないんだけどね、俺が疲れるから!
「・・・・・・で? どうして会いたかったの?」
もうね、タメ口でいいって言うからさ。
後ね、俺、何となく分かっちゃったの。
『・・・・・・私ね、日本人だったの。エストレラ神にこの世界に転生させて貰ったの』
ほらあ---!
湖での落とし物の件で察したよね?!
エストレラ神、何やってんの---!
『日本ではちょっとゲームが好きな普通のオタクなアラサーの独身女性だったの』
「いや、ゲーム好きで普通のオタクってどんな?! てか、アラサー女子だったんだ。それがどうしてこんなことに・・・?」
『・・・VRMMOにログイン中に神様の手違いで死んじゃって、お詫びにこっちの世界に転生させてあげるって言われて、普通にしてたら死んじゃうから、ちょうどそのゲームのアバターで転生させるねって・・・』
あー、そういうこと。
「ソレが精霊で、アバターのステータス引き継いで転生しちゃったんだね。精霊王さんってネナベだったんだ・・・」
『そうなのぉ! いや、元々精霊には性別が無くて、キャラ設定でどっち寄りにも出来たから、理想の男性像を、と』
「ふんふん。で、こっちは長いの?」
『うん。かれこれ100年以上は経つかなあ。不老になってるから、早々簡単には死なないんだけど。エルフも長生きだし、そういう意味では寂しく無いんだけど・・・・・・』
・・・・・・あ-、察し。
おそらくエストレラ神に言われたんだな。
日本からの転移者の事を。
日本からの同郷が来るとなればそういう話も出来るし、何より一人じゃ無いって気持ちが違うよね。
厳密に言うと俺はエストレラ生まれ地球育ちなんだけどな。
時代は分からないけど、それなりに会話が出来るし。
いい安定剤になるって訳か。
「つまりあなたは元々アルカスと同じ国にいて、精霊として転生したと」
それまで黙って聞いていたクラビスが不意に口を挟んだ。
『ええ、そうです。エストレラ神が、アルカスさんが近いうちにここに来るって。待ってたんです!』
「じゃあ、たまに会いに来れば気が済みます?」
『え? あっ、はい、それはもう・・・・・・!』
「じゃあ時々来るね。ああでもウィステリアが居ないと里に入れないよ?」
『ああ、じゃあこれ! このピアスに通行手形の魔法を組み込むから、身に着けて欲しい。二人以外には使えないようにするね』
そういって精霊王の色であるプラチナのピアスを二人の左耳に付けた。
『ついでに精霊王の加護も贈っちゃう。ありがとうね』
その後、お弁当を広げて皆で食べて、またね、と手を振り、湖を後にした。
二人きりじゃ無かったけど、凄くビックリして凄く楽しかった一日だった。
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