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第37話 月曜日と火曜日
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月曜日の夜。成り行きで後宮住まいになってしまったことを、メレディスは知っていた。
「オスカー殿下が、お前のことを気に入っているようだ」
彼は複雑な表情を見せる。その気に入られた理由が、ベロチューからのレベルアップだとは知らないようだが。
それにしても、メレディスの飢餓を抑えるためにもベロチュー。そしてオッサンたちのレベルを上げるのにもベロチュー。ナイジェルは俺を婿?にするためにベロチューがしたいようだし、殿下は殿下で別の意図というか好奇心を感じる。しかし結局、全部ベロチューだ。俺は一体何のために生まれてきたんだろう。
しかし一口にベロチューと言っても、人それぞれだ。ノースロップ侯爵は、純粋にレベルアップのためにかぶりついてくる。なんていうか、訓練の後に水筒に口を付けるような感覚。対照的に、息子のナイジェルは彼ピのような雰囲気を出してくる。人前で雰囲気出すのはやめろ。
意外だったのは、プレイステッド閣下だ。いかにも番長的な、粗野な脳筋といった風体なのに、めっちゃキスが上手かった。まるで恋人にするような、柔らかくて情熱的なキス。コイツ相当遊んでんな。しかし遊びという点では、王太子殿下には敵わないだろう。アイツはモロに俺で遊んでいる。素っ気ない感じで戸惑わせたかと思えば、唾液をぐっと押し込んでゴックンさせられたり。アイツは真性のSで、なおかつHentai紳士だ。Hentai仲間は歓迎するが、その欲求をこっちに向けられるのはノーサンキュー。厄介な男に目を付けられてしまった。
そして全てを勘案した上で、なおかつ一番エロいベロチューが、父親のメレディスのそれだ。いかん。罪悪感が半端ない。
俺とは親子であるせいか、それとも前妻である母ミュリエルと似ているからか。彼は俺に対して、精気の供給以上の親愛を求めてくる。平たく言えば、甘えてくるっていうか。彼とのキスは、まるで給餌や授乳のようでいて———あのいつもしかめ面をして、冷たい態度で俺を遠ざけていた恐ろしい父上が、すんすんと甘えながら体を擦り寄せてくる。もちろん、俺の唾液には魅了の力と媚薬効果があるので、みんなそれぞれキュアーを掛けながらのキスになる。そしてキス以上の行為には及ばない。だけど、この妙な雰囲気———特にメレディス。ちょっと気を抜いたら妖しい雰囲気に飲み込まれそうなのが、油断ならない。そしていたたまれない。
火曜日。なぜか俺は訓練場に。
「オラァ!俺様が直々に扱いてやってんだ、ヘバってんじゃねェぞ!」
「ひゃい!」
朝からプレイステッド閣下が内偵十二課にやって来て、そのまま訓練場へ連行。サーコートに着替えたかと思ったら、それからずっと地獄の特訓だ。走り込み、腹筋、スクワット。いくら回復スキルがあるとはいえ、めっちゃダルい。そしてちょっとヘタると鉄拳が飛んでくる。
しかし困ったのは、その後。
キン、キン。
この間剣術スキルを取ったばかりの俺だが、土曜日と昨日で無事LvMaxとなった。それが仇となり、閣下と剣が打ち合えてしまっている。
閣下の剣は随分荒削りだ。なまじ身体能力に優れているせいか、力任せで隙が多い。先日剣術をの伝授を受けた師範の正確無比な剣捌きとは比べるべくもない。師範を手本に、持ち前のDEXと魔眼のチートを使って、閣下の剣を往なしていく。時々まともに打ち合うと、ガキンという音がして、手首から肩まで全部持って行かれるほどの衝撃を受ける。当然だが俺、まだまだだな。
「チッ!小癪な!」
彼の剣戟は激しさを増す。おいコイツ、身体強化スキル使ったろ。だが、対応できないほどではない。彼のパターンには、だんだん慣れて来た。Lv1の強撃、Lv2縮地と試したのち、Lv8の剣舞まで対応できると確認した彼は、その先に進む。
「いいだろう。二刀流だ。構えろ!」
剣術スキルLv9は二刀流、そしてLvMaxで左右同等の力を得る二刀の真髄。剣のスタンドからもう一本投げ寄越し、俺が拾うや否や、彼はすぐさま襲いかかって来た。辛うじて二刀を交差させて受ける。凄まじい衝撃に上半身が痺れ、足元がズザ、と音を立てながら、身体全体が剣圧に押される。
「そら。戦場では敵は待ってくれんぞ!」
彼はいきなり、トップスピードで猛攻を始めた。上段、下から、右、左。だが、彼の攻撃はより単調で、むしろ受け流し易くなった。足元のステップも疎かだ。手元に意識が集中して、せっかくの立体的な機動力が活かし切れていない。
「…くっ!ならば!」
とうとう怒りに我を忘れた彼は、一歩引いて剣を構え直した。そして一拍置いて集中すると、素早い踏み込みと共に、剣舞を繰り出して来た。
剣術スキルで最も高難易度、最も高火力なのが、二刀流での剣舞。ここにエンチャントを乗せて畳み掛けるのが、彼の必勝パターンなのだろう。だがしかし彼の剣舞スキルは一刀の時よりも精彩を欠いている。冷静さを失った彼の呼吸は乱れ、俺を圧倒するほどの正確さを持ち合わせていない。全ての剣戟にタイミングを合わせ、最後の二合、一合に圧倒されるフリをして、わざとまともに剣を受け、腕が痺れた風を装って、右手の剣を放り投げる。
俺は肩を押さえながら、跪く。
「参りました」
接待ゴルフはリーマンの嗜み。公爵家の子息に刃向かうわけにはいかない。ここは気持ち良く勝ってもらって、さっさと訓練を終わらせていただこう。
———と思ったんだけど。
「てめェ…今、手ェ抜いたろ…」
ゴゴゴゴゴ、という効果音が聞こえそうな形相で、閣下が睨んでいる。
「ベロチューで成り上がったポッと出がよォ。舐めたマネしやがってェ!」
「ヒッ」
「行くぞ!神狼の遠吠え!」
ノースロップ侯爵の聖なる咆哮と対をなす、人狼族の遠吠え系スキルの最上位版。神狼の加護で、闘気と身体能力をノーコストで爆上げする。
「俺の本気を見せてやる…ファイアエンチャント!!」
ギャー!体が炎を纏ってるゥ!
「俺ァ剣だけじゃねェぜ…喰らえや爆裂脚ゥ!!!」
「喰らうかボケェェ!!!」
俺は転移に次ぐ転移で逃げ回り、巻き添えを食った近衛が犠牲となって、後で二人してコッテリと絞られた。
「んっ…ふぁ…」
ちゅ、ちゅっ、とエロいリップ音を立てながら、大きな腕でガッチリと抱え込まれ、無駄に雰囲気たっぷりのキス。王太子の後宮の一室で、俺はプレイステッド閣下に捕まってひたすらベロチューされていた。
「クソッ…お前だけ、ズリィんだよ…ッ」
「そっ…はんっ…」
そんなこと言われましても。しかし彼が何十年もかけて獲得したレベルを俺があっさりと抜き去り、そしてこうやってベロチューをするたびにレベル差が広がる。大体、俺のレベルが十上がると、相手のレベルは一から二。経験値にして一割二割のキックバックがあると思われる。しかし俺がレベルを重ねることを悔しがる一方で、自分のレベルが上がるという誘惑には逆らえないらしい。
しっかし恋人みたいなキス。時々見つめ合いながら、角度を変えて柔らかい口付けを繰り返す。てか、ムード出す必要なくね?俺も男に興味はないし、閣下もヒョロい俺をお嫌いなようなんだが。
「ちょっ、閣…」
「ァんだ?」
「何でこんなキス…はむっ」
「…フツーだろ、こんなの。あ?」
「や、あの、エロいっていうかッ!」
「ほう。俺のキス、そんなに気に入ったかよ?」
至近距離で、迫力の大男がニヤリと嗤う。
「お前、ノースロップの雑種と懇ろなのかよ?」
「ノ、えっ?」
「俺にしろよ。あんな弱っちいのより、俺のがいいだろ」
「はぁ?!」
え、これ、どういうリクルート?
「あの猫とオッサンより、どう考えたって俺のがイケてんだろ」
「いえいえいえ、俺は男には興味な」
「んだよォ、従兄上はメイナードはオスでもイケるって」
殿下、何を吹き込んじゃってんの!
「っち、まァいい。それより俺のことはパーシーで、な」
「うえっ、閣下?!」
「パーシーだ」
「パ…んむぅッ!!」
そのまま俺はベッドに沈められ、経験値を貪られた。
「オスカー殿下が、お前のことを気に入っているようだ」
彼は複雑な表情を見せる。その気に入られた理由が、ベロチューからのレベルアップだとは知らないようだが。
それにしても、メレディスの飢餓を抑えるためにもベロチュー。そしてオッサンたちのレベルを上げるのにもベロチュー。ナイジェルは俺を婿?にするためにベロチューがしたいようだし、殿下は殿下で別の意図というか好奇心を感じる。しかし結局、全部ベロチューだ。俺は一体何のために生まれてきたんだろう。
しかし一口にベロチューと言っても、人それぞれだ。ノースロップ侯爵は、純粋にレベルアップのためにかぶりついてくる。なんていうか、訓練の後に水筒に口を付けるような感覚。対照的に、息子のナイジェルは彼ピのような雰囲気を出してくる。人前で雰囲気出すのはやめろ。
意外だったのは、プレイステッド閣下だ。いかにも番長的な、粗野な脳筋といった風体なのに、めっちゃキスが上手かった。まるで恋人にするような、柔らかくて情熱的なキス。コイツ相当遊んでんな。しかし遊びという点では、王太子殿下には敵わないだろう。アイツはモロに俺で遊んでいる。素っ気ない感じで戸惑わせたかと思えば、唾液をぐっと押し込んでゴックンさせられたり。アイツは真性のSで、なおかつHentai紳士だ。Hentai仲間は歓迎するが、その欲求をこっちに向けられるのはノーサンキュー。厄介な男に目を付けられてしまった。
そして全てを勘案した上で、なおかつ一番エロいベロチューが、父親のメレディスのそれだ。いかん。罪悪感が半端ない。
俺とは親子であるせいか、それとも前妻である母ミュリエルと似ているからか。彼は俺に対して、精気の供給以上の親愛を求めてくる。平たく言えば、甘えてくるっていうか。彼とのキスは、まるで給餌や授乳のようでいて———あのいつもしかめ面をして、冷たい態度で俺を遠ざけていた恐ろしい父上が、すんすんと甘えながら体を擦り寄せてくる。もちろん、俺の唾液には魅了の力と媚薬効果があるので、みんなそれぞれキュアーを掛けながらのキスになる。そしてキス以上の行為には及ばない。だけど、この妙な雰囲気———特にメレディス。ちょっと気を抜いたら妖しい雰囲気に飲み込まれそうなのが、油断ならない。そしていたたまれない。
火曜日。なぜか俺は訓練場に。
「オラァ!俺様が直々に扱いてやってんだ、ヘバってんじゃねェぞ!」
「ひゃい!」
朝からプレイステッド閣下が内偵十二課にやって来て、そのまま訓練場へ連行。サーコートに着替えたかと思ったら、それからずっと地獄の特訓だ。走り込み、腹筋、スクワット。いくら回復スキルがあるとはいえ、めっちゃダルい。そしてちょっとヘタると鉄拳が飛んでくる。
しかし困ったのは、その後。
キン、キン。
この間剣術スキルを取ったばかりの俺だが、土曜日と昨日で無事LvMaxとなった。それが仇となり、閣下と剣が打ち合えてしまっている。
閣下の剣は随分荒削りだ。なまじ身体能力に優れているせいか、力任せで隙が多い。先日剣術をの伝授を受けた師範の正確無比な剣捌きとは比べるべくもない。師範を手本に、持ち前のDEXと魔眼のチートを使って、閣下の剣を往なしていく。時々まともに打ち合うと、ガキンという音がして、手首から肩まで全部持って行かれるほどの衝撃を受ける。当然だが俺、まだまだだな。
「チッ!小癪な!」
彼の剣戟は激しさを増す。おいコイツ、身体強化スキル使ったろ。だが、対応できないほどではない。彼のパターンには、だんだん慣れて来た。Lv1の強撃、Lv2縮地と試したのち、Lv8の剣舞まで対応できると確認した彼は、その先に進む。
「いいだろう。二刀流だ。構えろ!」
剣術スキルLv9は二刀流、そしてLvMaxで左右同等の力を得る二刀の真髄。剣のスタンドからもう一本投げ寄越し、俺が拾うや否や、彼はすぐさま襲いかかって来た。辛うじて二刀を交差させて受ける。凄まじい衝撃に上半身が痺れ、足元がズザ、と音を立てながら、身体全体が剣圧に押される。
「そら。戦場では敵は待ってくれんぞ!」
彼はいきなり、トップスピードで猛攻を始めた。上段、下から、右、左。だが、彼の攻撃はより単調で、むしろ受け流し易くなった。足元のステップも疎かだ。手元に意識が集中して、せっかくの立体的な機動力が活かし切れていない。
「…くっ!ならば!」
とうとう怒りに我を忘れた彼は、一歩引いて剣を構え直した。そして一拍置いて集中すると、素早い踏み込みと共に、剣舞を繰り出して来た。
剣術スキルで最も高難易度、最も高火力なのが、二刀流での剣舞。ここにエンチャントを乗せて畳み掛けるのが、彼の必勝パターンなのだろう。だがしかし彼の剣舞スキルは一刀の時よりも精彩を欠いている。冷静さを失った彼の呼吸は乱れ、俺を圧倒するほどの正確さを持ち合わせていない。全ての剣戟にタイミングを合わせ、最後の二合、一合に圧倒されるフリをして、わざとまともに剣を受け、腕が痺れた風を装って、右手の剣を放り投げる。
俺は肩を押さえながら、跪く。
「参りました」
接待ゴルフはリーマンの嗜み。公爵家の子息に刃向かうわけにはいかない。ここは気持ち良く勝ってもらって、さっさと訓練を終わらせていただこう。
———と思ったんだけど。
「てめェ…今、手ェ抜いたろ…」
ゴゴゴゴゴ、という効果音が聞こえそうな形相で、閣下が睨んでいる。
「ベロチューで成り上がったポッと出がよォ。舐めたマネしやがってェ!」
「ヒッ」
「行くぞ!神狼の遠吠え!」
ノースロップ侯爵の聖なる咆哮と対をなす、人狼族の遠吠え系スキルの最上位版。神狼の加護で、闘気と身体能力をノーコストで爆上げする。
「俺の本気を見せてやる…ファイアエンチャント!!」
ギャー!体が炎を纏ってるゥ!
「俺ァ剣だけじゃねェぜ…喰らえや爆裂脚ゥ!!!」
「喰らうかボケェェ!!!」
俺は転移に次ぐ転移で逃げ回り、巻き添えを食った近衛が犠牲となって、後で二人してコッテリと絞られた。
「んっ…ふぁ…」
ちゅ、ちゅっ、とエロいリップ音を立てながら、大きな腕でガッチリと抱え込まれ、無駄に雰囲気たっぷりのキス。王太子の後宮の一室で、俺はプレイステッド閣下に捕まってひたすらベロチューされていた。
「クソッ…お前だけ、ズリィんだよ…ッ」
「そっ…はんっ…」
そんなこと言われましても。しかし彼が何十年もかけて獲得したレベルを俺があっさりと抜き去り、そしてこうやってベロチューをするたびにレベル差が広がる。大体、俺のレベルが十上がると、相手のレベルは一から二。経験値にして一割二割のキックバックがあると思われる。しかし俺がレベルを重ねることを悔しがる一方で、自分のレベルが上がるという誘惑には逆らえないらしい。
しっかし恋人みたいなキス。時々見つめ合いながら、角度を変えて柔らかい口付けを繰り返す。てか、ムード出す必要なくね?俺も男に興味はないし、閣下もヒョロい俺をお嫌いなようなんだが。
「ちょっ、閣…」
「ァんだ?」
「何でこんなキス…はむっ」
「…フツーだろ、こんなの。あ?」
「や、あの、エロいっていうかッ!」
「ほう。俺のキス、そんなに気に入ったかよ?」
至近距離で、迫力の大男がニヤリと嗤う。
「お前、ノースロップの雑種と懇ろなのかよ?」
「ノ、えっ?」
「俺にしろよ。あんな弱っちいのより、俺のがいいだろ」
「はぁ?!」
え、これ、どういうリクルート?
「あの猫とオッサンより、どう考えたって俺のがイケてんだろ」
「いえいえいえ、俺は男には興味な」
「んだよォ、従兄上はメイナードはオスでもイケるって」
殿下、何を吹き込んじゃってんの!
「っち、まァいい。それより俺のことはパーシーで、な」
「うえっ、閣下?!」
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「パ…んむぅッ!!」
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