ズボラな私の異世界譚〜あれ？何も始まらない？〜

１ 思いだしたー。

「あ、思い出した」

目覚めと共に唐突に頭が冴え、弾けるような感覚が脳内で起こった途端、前世と呼ばれる記憶が蘇った。

前世のネット小説で流行っていた異世界転生、よくあるのは頭をぶつけて記憶が戻ったり、婚約破棄されて記憶が戻ったりだとかはよくあったが、今の私の状態はそのどれでもない。

ちょっと昼寝をしていただけだ。

御歳５才の女の子。名前はまだ無い。

すみません、言ってみたかっただけです。
前世の名前は小町瀬良、今の名前はセラ。まさかのセラ被り。おとうたま、おかあたま、凄い確率をありがとう。
そしてここは魔法のある世界で、私はチート持ちだ。なんせ死んだ時に女神を脅して付けてもらったからね。ドヤァ。

そうそう、女神といえばあれもあった。インベントリ！

「インベントリさーん」

ポコンと音が脳内で鳴り、目の前にゲームのステータス画面のような液晶が現れた。

「お、ちゃんとあるじゃーん」

使い切れないほどの金が！
とりあえず金があれば生活には困らないだろうと思って女神からふんだくってやったかいがある。
日本円にすると兆はあるか？元々金遣いが荒い方では無いので、普通に生きていたら使い切れないはず。
よし、遊んで暮らそう。

前世でいっぱい仕事したし、余生はゆっくりやりたい事やって生きていきたかったんだよねぇ。
いっぱい仕事したというか、趣味に時間がかけられなかったというか。若い頃は徹夜も出来たけど…アラサーになった途端、無理がきかなくなったのは本当に驚いたわ。疲労が抜けないし朝は体が重だるいが常態過ぎて休みの日なんて一日中寝て過ごすしか出来なかったあの日々…。
さっきも言ったけどやりたい事は定年後なんて思った事もあったけど本当は無理。体がついていかないもん。若いうちにやりたい事やっておかなきゃダメなんだなぁってしみじみ思う。ふぅ。


いけないいけない、ピチピチの５歳児が死んだ魚の目をしちゃいけないよ。

無事に平民に転生したから貴族のしがらみも無いし、両親と兄弟には定期的に仕送りでもしておけば好き勝手してもお咎めなさそう。
平民バンザイ。

そうだ、京都に行こう。

京都無いけど。
世界中を見て回るなんてどうかな？野宿する事に忌避感も無いし、宿屋に泊まれるだけの金はある。
金があるって素晴らしい…心に余裕が生まれてくる。使い切れないほどの金があれば人生の悩み８割は解決するなって前世では思ってたし。

先ずは今の状況を整理しよう。

父→サンド、職業   農家
母→ウィルーシャ、職業  主婦兼カフェの店員
長兄→カール、学生
次兄→ルイス、学生

ちょい待て。
カール、ルイスて。

オトンとオカンは名付けの天才か。
まさかの転生者か？
いやいや、日々の生活を見ていても転生者感は無かったからやっぱり天才か。

あれ？そういえば家族の詳しい情報知らない。５歳児ってこんなもんか？

とりあえず平民の中では平均的な生活水準だと思う。兄ちゃん達も平民用の学校に通ってるし。
確か学校は７歳からなはず？
ちょっくらご飯時にでも情報収集しとこうか。

「ああ、ステータス確認しとかなきゃ」

学校に入る時に鑑定とかテンプレされたら困るわー。

ステータスオープン！

名前     セラ
年齢     ５歳
ＬＶ     １
ＨＰ     ８００
ＭＰ      ∞
属性      全属性
スキル  完全言語理解
              インベントリ
              創造魔法
              状態異常耐性
              タイムウォッチ
称号      女神達の友人
              自由人
              溺愛される者


……………ん？私いつの間に女神達と友人になったの？

記憶に無い。

あとタイムウォッチってあのタイムウォッチか？人間タイムウォッチになったの？それいる？

ちょっと記憶の整理しようか。

私が死んで白い空間に行ったでしょ～。