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33.相談2
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彼は唇を噛む。
「……声を荒げて、すみません。でもぼくは姉様を大切に思っていて」
「姉を思うのはいいことだが」
言葉に気持ちがこもらない。どうでもいい。
(この義弟はシスコンだな)
「余り干渉するのもな。君の姉にしかわからないことがあるんじゃないか。見守るのが一番だ」
自分に言えるのはこれくらいだ。
「そうかもしれません」
エディは納得できないようだった。
「けど……ぼくにできることがあれば、姉様の悩み解決の手助けをしたくて」
「君にできることはないだろう」
エディは首を左右に振る。
「いいえ! できることがきっと何かあるはずです! ……ルイス様って冷たいですね。そんなことでは、婚約したら、相手に寂しがられますよ」
関係ないだろう。
結構、エディは思ったことをそのまま口にする。
紅茶を飲み干し、席を立つ。
「私はそろそろ帰る」
このままここで時間を潰していられない。
「待ってください、ルイス様! 相談は途中なんです!」
すがるように言われ、仕方なく椅子に座り直した。
「……続けろ」
「ぼくはルイス様と違い、義姉を心配に思う心を持ち合わせているんです。ぼく、色々考えたんですが」
一言多いエディは続ける。
「今から喋ること、ここだけの話にしてください。ルイス様は口が堅いというか無口なので吹聴しないと信じていますが」
(なぜ私はさっさと帰らなかったんだ)
「……言わん」
「実は……」
エディはぎゅっと拳を握る。
「婚約者のライオネル様とのことで、姉様は悩んでいるんじゃないか、ってぼく思うんです」
「王太子殿下とのことで?」
「そうです」
エディは深く頷いた。
「時折、ライオネル様と結婚することはないから、的なことを姉様は言うので」
「…………」
「それはライオネル様とのことで悩んでいる証左ではないでしょうか」
「そうとはいえないのでは?」
エディは小さく笑む。
「ルイス様には男女の機微はわからないかもしれませんが」
「君にはわかるのか」
「はい」
エディは力強く肯定してみせる。
「ぼくは姉様と一緒に暮らしています。だからよくわかります。ルイス様は婚約者も姉妹もいらっしゃらず、女嫌いですのでわからないでしょうけれど」
「別に私は男が好きというわけではないぞ」
「そんなこと言ってませんし、たとえそうであれルイス様の趣味嗜好には関心ありません。ぼく、姉様がライオネル様との結婚に悩んでいると確信しているんです」
「それは放っておくのが──」
「ですから放っておけません! ぼくは姉様の手助けをしたいんです、どうかルイス様も協力してください!」
ルイスは髪をかきあげる。
「すべて君の杞憂かもしれないぞ」
「結婚に関して、姉様が悩んでいるのは確かなんです」
早く話を切り上げたかったルイスは軽く頷いた。
「わかった。私にできることがあれば協力する。──これでいいか」
「ありがとうございます」
「では私はこれで失礼する」
時間を無駄にした。
※※※※※
エディは義姉を心配している。
ルイスは冷たい人間だ。
しかし名家ガーディナー家の跡取り。
それなりの分別はあるだろう、と思って相談したのだが……。
(何の解決にもならなかったよ。ルイス様に相談したのが間違いだった)
彼は心の機微に疎すぎる。役に立たなかった。
絶対、義姉は悩んでいるはずなのだ。
シャロンと話していると、結婚することはない、というようなことを口にするときがある。
(姉様は、ライオネル様とうまくいっていないの?)
しょっちゅうシャロンに会いにライオネルはこの屋敷へ来るけれど。
義姉もよく王宮に呼ばれている。
ライオネルとシャロンが寄り添って手を繋いで歩く姿は、多くの人間に目撃されている。
エディも幾度も目にした。
仲睦まじいと噂されているのだが、自分にはわかる。
シャロンは結婚について悩んでいる!
彼といるとき義姉の頬は染まっているし、好きは好きなのだろうけれど、きっと結婚となれば色々別なのだ。
将来の王妃というのは窮屈な立場。それにライオネルはモテる。
王太子の気持ちが違うひとに向いたら、と義姉は不安なのかもしれない。
ライオネルはシャロンを想っていると見受けられるが、男なんて移り気なものだ。
(ぼくは違う。いつまでも姉様が第一だ)
「……声を荒げて、すみません。でもぼくは姉様を大切に思っていて」
「姉を思うのはいいことだが」
言葉に気持ちがこもらない。どうでもいい。
(この義弟はシスコンだな)
「余り干渉するのもな。君の姉にしかわからないことがあるんじゃないか。見守るのが一番だ」
自分に言えるのはこれくらいだ。
「そうかもしれません」
エディは納得できないようだった。
「けど……ぼくにできることがあれば、姉様の悩み解決の手助けをしたくて」
「君にできることはないだろう」
エディは首を左右に振る。
「いいえ! できることがきっと何かあるはずです! ……ルイス様って冷たいですね。そんなことでは、婚約したら、相手に寂しがられますよ」
関係ないだろう。
結構、エディは思ったことをそのまま口にする。
紅茶を飲み干し、席を立つ。
「私はそろそろ帰る」
このままここで時間を潰していられない。
「待ってください、ルイス様! 相談は途中なんです!」
すがるように言われ、仕方なく椅子に座り直した。
「……続けろ」
「ぼくはルイス様と違い、義姉を心配に思う心を持ち合わせているんです。ぼく、色々考えたんですが」
一言多いエディは続ける。
「今から喋ること、ここだけの話にしてください。ルイス様は口が堅いというか無口なので吹聴しないと信じていますが」
(なぜ私はさっさと帰らなかったんだ)
「……言わん」
「実は……」
エディはぎゅっと拳を握る。
「婚約者のライオネル様とのことで、姉様は悩んでいるんじゃないか、ってぼく思うんです」
「王太子殿下とのことで?」
「そうです」
エディは深く頷いた。
「時折、ライオネル様と結婚することはないから、的なことを姉様は言うので」
「…………」
「それはライオネル様とのことで悩んでいる証左ではないでしょうか」
「そうとはいえないのでは?」
エディは小さく笑む。
「ルイス様には男女の機微はわからないかもしれませんが」
「君にはわかるのか」
「はい」
エディは力強く肯定してみせる。
「ぼくは姉様と一緒に暮らしています。だからよくわかります。ルイス様は婚約者も姉妹もいらっしゃらず、女嫌いですのでわからないでしょうけれど」
「別に私は男が好きというわけではないぞ」
「そんなこと言ってませんし、たとえそうであれルイス様の趣味嗜好には関心ありません。ぼく、姉様がライオネル様との結婚に悩んでいると確信しているんです」
「それは放っておくのが──」
「ですから放っておけません! ぼくは姉様の手助けをしたいんです、どうかルイス様も協力してください!」
ルイスは髪をかきあげる。
「すべて君の杞憂かもしれないぞ」
「結婚に関して、姉様が悩んでいるのは確かなんです」
早く話を切り上げたかったルイスは軽く頷いた。
「わかった。私にできることがあれば協力する。──これでいいか」
「ありがとうございます」
「では私はこれで失礼する」
時間を無駄にした。
※※※※※
エディは義姉を心配している。
ルイスは冷たい人間だ。
しかし名家ガーディナー家の跡取り。
それなりの分別はあるだろう、と思って相談したのだが……。
(何の解決にもならなかったよ。ルイス様に相談したのが間違いだった)
彼は心の機微に疎すぎる。役に立たなかった。
絶対、義姉は悩んでいるはずなのだ。
シャロンと話していると、結婚することはない、というようなことを口にするときがある。
(姉様は、ライオネル様とうまくいっていないの?)
しょっちゅうシャロンに会いにライオネルはこの屋敷へ来るけれど。
義姉もよく王宮に呼ばれている。
ライオネルとシャロンが寄り添って手を繋いで歩く姿は、多くの人間に目撃されている。
エディも幾度も目にした。
仲睦まじいと噂されているのだが、自分にはわかる。
シャロンは結婚について悩んでいる!
彼といるとき義姉の頬は染まっているし、好きは好きなのだろうけれど、きっと結婚となれば色々別なのだ。
将来の王妃というのは窮屈な立場。それにライオネルはモテる。
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