引きこもり主人公小説一覧
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私の名はアルカサール。
アルカサールと言うのは《神殿》という意味がある。
当然、本名ではない。
私には本当の名前などない。
この仕事をしていた先代から譲り受けた名前だ。
住んでいるここは、現実と現実の境目、境界、狭間とも呼ばれる地。
【サンクチュアリ(聖域)】と呼ばれているらしい。
そこで私は、小さな小さな夢を生み出す仕事をしている。
今日もやってきたお客さま。
……何が欲しいんですか?
……死んでしまった彼に会いたい?
それは無理でしょう。
冷たいことを言いますが、あなたの彼はこの世界を壊しかねない異分子。
人であって人でなく、獣であって獣でなく、神であって神でなく、魔であって魔ではない存在ですよ?
いくらここが狭間とは言え、生きていて生きておらず、死んでいて死んでいない存在をどうして呼べましょう。
……ならば、彼が存在していた……その証をお出しなさい。
あなたが呼んでいた、仮の名前ではありませんよ?
そんなものは、あなたの彼にとっては束縛にもならない。
本質であるものをお出しなさい。
それが彼であれば、彼が望むのであれば、あなたの前に彼を連れてきましょう。
文字数 3,499
最終更新日 2021.08.24
登録日 2021.08.18
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