歴史・時代 日常小説一覧
「動かずば、闇に隔つや花と水」 これは新選組一番隊隊長・沖田総司の辞世の句である。
辞世の句とは武士が死の前に読む句のことである。
総司には密かに想う人がいた。
最初の屯所八木邸主人の若妻お雅である。
むろん禁断の恋だ。
実の兄貴と慕う土方にさえ告げたことはない。
病身の身を千駄ヶ谷の植木屋の離れに横たえ、最後の最後に密かに辞世の句にお雅への想いを遺した。
句の中の花とは、壬生八木邸に咲く若妻お雅。
水とは、多摩、江戸、そして大坂・京と流れながら、人を斬ってきた自分のことである。
総司のそばには、お雅の身代わりにもらった愛猫ミケが常にいた。
彼の死の直前にミケは死んだ。その死を看取って、総司は自らの最後を迎えた。
総司とミケの死を知り、お雅はひとり涙を流したと言う。
文字数 69,819
最終更新日 2020.05.29
登録日 2020.05.11
江戸時代末期・新吉原遊廓。
そのほど近くに養生所をかまえる医者・夏樹(なつき)は、ある日の往診帰り、猫を追いかけ、小見世(こみせ)の『いすゞ屋』へと導かれる。
猫を抱き上げ、艶やかに笑うのは、部屋持女郎・春日(かすが)。彼女は夏樹が助けられなかった患者の姉だった。
申し訳なさと心苦しさを抱え、思わず泣いてしまいそうな彼に、春日は「泣きたいなら泣けば良いさ」と声をかける。
客が来ないと嘆く彼女は「わちきを助けると思って」「医者は人助けするもんだろ」と更に言葉を投げかけた。
誰に対しても分け隔てなく優しく、必ず期待に応えようとする性格の夏樹は、春日を《助けよう》と登楼することを決める。
《誰にでも》優しい医者の《特別》は気まぐれに。
ーーー
『桜に酔いし鬼噺』に登場する医者・夏樹の話となりますが、こちらのみでもお楽しみいただけます。
参考文献は、近況ボードに記載しております。
文字数 174,515
最終更新日 2022.01.02
登録日 2020.11.11
江戸時代末期、新吉原遊廓。
穏やかな春のある日。
大店の廻船問屋《中臣屋》の手代・千歳(ちとせ)は、母から「夢夏(ゆめか)が待ってるから裏茶屋へ行っといで」と伝えられる。
夢夏は薬問屋の息子で、千歳より六つ下、弟のように接している子だ。妹の《もも》の恋する相手でもある。
「裏茶屋といえば、密会の場だが?」
不審に思いつつも、千歳は裏茶屋へ向かい――……。
ーー
好きだった。
それは、嘘じゃない。
好きだから、一緒になりたかった。
一緒になって、いつまでも愛し合えると思ってたんだ。
あの季節までは。
――
『桜に酔いし鬼噺』『はるなつ来たり夢語』の後の話になりますが、
こちらの話だけでもお楽しみいただけます。
※この作品には、男性同士の性行為描写が含まれています。
文字数 97,914
最終更新日 2022.03.19
登録日 2022.02.07
文字数 17,850
最終更新日 2022.02.05
登録日 2022.01.01
21世紀になってもなお、力による現状変更という大国の暴挙がまかり通る現実世界にあって、かつて、世界平和の理想実現に邁進し、全世界からその高潔な人品を称賛された日本人がいました。
彼は、幕末激動の明治2年、賊軍の地であった出羽国に誕生し、教育熱心な家族の愛情の中で成長していきます。
彼こそ、後にポーツマス日露講話条約の随行員として堪能なフランス語を駆使して講話締結に尽力し、第一次世界大戦後に成立した国際連盟の日本全権として活躍、その人格的高潔さは世界的にも称賛されて、アジア人として初の国際司法裁判所所長に満場一致で選出された、法学博士安達峰一郎です。
彼は恒久世界平和の理想を信じ、国際法に基づいた争いのない社会の実現を目指しました。彼こそが日本人として最初の、真の世界平和主義者でした。
力による秩序破壊がいまだに続く混沌とした21世紀、世界平和を目指した法律家としての彼の信念を育くんだ少年時代を振り返り、彼の原点に学ぶことが今こそ必要かもしれません。
文字数 372,326
最終更新日 2022.06.29
登録日 2021.01.12
庄屋の息子勝太と、子守奉公にきた隣村の娘はつ。
11歳のふたりが過ごした一年間。
恋と呼ぶにはまだ幼い、少年少女の出逢いと別れ。
甘酸っぱく切ない青春のものがたり。
ライト文芸風な時代小説です。
文字数 19,835
最終更新日 2022.06.08
登録日 2022.05.30
ちょっとゆるい、なんちゃって時代劇。時代考証ナニソレオイシイノ?
火付盗賊改方の同心、八坂蒼士を中心とした話。
文字数 20,825
最終更新日 2017.06.07
登録日 2016.06.28
短編小説です。ソーシャルゲームの現状について、面白可笑しく描いて見ました。暖かい目で読んで頂けると幸いです。一話おおよそ1000文字で構成しています。手軽に読めると思います。
明治時代、夏。「私」は自分の通勤路に美術館が建っている事に気付く。一際変わった彫刻館に、「私」は心惹かれて行くが果たして…?
文字数 6,429
最終更新日 2018.12.02
登録日 2018.12.02
かの有名な、平安朝の政治家であり、文人でもあった、菅原道真に関して、短編小説を一作書き綴りました。原稿用紙4枚程度で、まとまりました。絶対的に史料が少なく、書きづらい人物だったのですが、一応、物にしてみました。どうぞよろしくお願いいたします。
文字数 1,454
最終更新日 2022.05.03
登録日 2022.05.03
『破鏡の世に……』の第二部になります。
214年からです。
正史三国志では、西暦214年は、劉備軍にとって荊州周辺を支配して、その後周辺から攻められやすいこの地だけでなく、別の地域に拠点を置きたいと考え始める頃です。
そして、呉や魏も支配力の強化を行なっています。
魏はすでに涼州から馬超を追い、張魯の元に逃げ込んでいました。
では、30代になった孔明と、10歳を超えた子供達の成長を……。
月亮……明るい月、はっきりとした月
文字数 24,928
最終更新日 2019.11.17
登録日 2019.11.10
木下静太郎(きのした せいたろう)は普通の人物。それなのに父親がさっさと隠居してしまい、20歳で家督を継いで国家老にされてしまった。
仕えるのは1万石の弱小大名で財政は厳しい。殿は静太郎の弟に執心で政治に無関心。殿の弟も形式ばったことが苦手で政治には不向き。江戸家老は政治よりも娘が大事。
気苦労の絶えない静太郎の日常。
文字数 12,516
最終更新日 2021.06.04
登録日 2021.05.28
沙醐が仕えることになったのは、「蛍邸」の3人の主人。虫を愛ずるカワ(毛虫)姫。男を破滅させることが生きがいの美女、迦具夜。そして、生霊を狩る少年、一睡。
沙醐は、ひょんなことからアラマサという、乱暴者の貴公子に目をつけられてしまう。そこへ一睡少年が、はかなくも美しい、少女の生霊を捕まえてくる。後宮でのいじめに耐えかねて魂が彷徨い出てしまったという少女に同情した蛍邸の人々は、彼女を救おうと、暴走を始めるが……。
表紙絵 Carol VanHook "fireflies" https://www.flickr.com/photos/librariesrock/46833310424
(cropped by Serimomo)
文字数 105,198
最終更新日 2020.06.30
登録日 2020.05.15
戦国の世。時代とともに駆け抜けたのは、齢十八の若き忍び達であった。
忍び里への大規模な敵襲の後、手に持つ刀や苦無を筆にかえ、彼らは次代の子供達の師となった。
護り、護られ、次代へ紡ぐその忍び技。
まだ本当の闇を知らずにいる雛鳥達は、知らず知らずに彼らの心を救う。
しかし、いくら陽だまりの下にいようとも彼らは忍び。
にこやかに笑い雛と過ごす日常の裏で、敵襲への報復準備は着実に進められていった。
※他サイトにも投稿中です。
※作中では天正七年(1579)間の史実を取り扱っていくことになります。
時系列は沿うようにしておりますが、実際の背景とは異なるものがございます。
あくまで一説であるということで、その点、何卒ご容赦ください。
文字数 369,615
最終更新日 2020.07.07
登録日 2020.04.01
夏のしらべ::
家を飛び出した藩主の庶子にして次男坊の研之介。
三年前に契りを交わした遊女の文でやってきてみれば数人の男たち。
遊女はすでに死んでいてこの中の誰かが残された子供の父親だと言う。
ヤクザもの、大店の若旦那、研之介、小間物屋の主人―――
果たして子供の父親は?
てっぺんの花::
研之介がひきとった女の子・夏鈴は元は廓のかむろ。
ありんす言葉を使い、同じ年の男の子をばかにする。
「あの夏椿のてっぺんの花をとっておくんなまし」
挑発された同じ年の太一は……。
鬼灯の月::
子供たちを通わせている寺子屋の師匠が辻斬り?
研之介は真相を探ろうと後をつけるが。
文字数 63,768
最終更新日 2020.05.13
登録日 2020.05.04
人里離れた山奥の峠に、寂れた小さな茶屋がある。
番をするのは若い娘で、器量も良ければ気風も良い。
ただ、とんと縁が無い。
善悪いずれも関わらない。
関わろうとも、不思議と切れる。
切れるのならば仕方が無い。それはそれで、良しとしよう。
そういう風に考えて、娘は今日も番をする。
文字数 11,671
最終更新日 2022.06.03
登録日 2022.05.12
「源氏」以前の長編古典ものがたり「うつほ物語」をベースにした、半ば意訳、半ば創作といったおはなし。
男性キャラの人物造形はそのまま、女性があまりにも扱われていないので、補完しつつ話を進めていきます。
文字数 234,173
最終更新日 2020.05.31
登録日 2020.04.28
安い政治から脱却。独裁者の「高部」が辣腕をふるいます。
この物語には、現実にとっても似ている「とある国」が出てきますが、あくまでもフィクションです笑。
主人公の高部は独裁者ですが、前任の「安い首相」とは全く違うタイプ。明瞭さとフェアさ、そして行動力を活かして数々の難関に挑んでいきます。
※需要が無ければ、更新しない「パイロット版」です。
レビューや応援コメントなどがあれば、書いていくスタイルの「パイロット版」です。
文字数 2,990
最終更新日 2022.06.05
登録日 2022.06.05
【※ギャグ小説です。主人公は実在しない人物です】
フランス革命前夜。フランスの田舎、カナルド県(架空の県)に領土を持つ、ダルゴーニュ伯爵の家に生まれた『私』(ロペール)。世間知らずのぼんぼん貴族の物語。
主人公は男性です。
本編は一人称、主人公視点で物語は進んで行きます。
本編以外は、同じ時系列ですが、他者の視点、三人称で物語が進みます。
※某SNS内の小説サークルで、2012年頃に投稿した作品を大幅に加筆修正したものです。
転載については、当時のサークル主催者様の承諾を得ております。
【表紙画像は、「いらすとや」様の「いらすとや・竜騎兵のイラスト」を「バナー工房」様で加工したものです。
この場をお借りして、「いらすとや」様、「バナー工房」様にお礼を申し上げます。】
文字数 11,829
最終更新日 2019.05.02
登録日 2019.04.29
時は明治・・呉服問屋を営む家に養子に入った清太郎は、本日ものんびりと過ごしておりました。
これは、清太郎とその友人。そして、彼の周りにいる人たちの日常を描いた物語です。
こんばんは。見に来て下さってありがとうございます。
作品を整理していましたら、10年以上前に書いた作品が見つかりました。
一番最初に書いた創作・・だと思います。これも縁かなと思いましたので、投稿することにしました。
※作品の中に、未成年の方にはふさわしくないと思われる表現を使用した作品が入っておりますので、R15とさせて頂きました。
文字数 63,474
最終更新日 2020.07.15
登録日 2020.07.15
古典「うつほ物語」の「国譲」上中下巻にあたる部分にあたります。
東宮に譲位を考える帝、では次の東宮は誰になるのか?
その選択がその後の宮廷内の勢力を左右する……
にも関わらず、何やらそういう騒ぎにはできるだけ巻き込まれたくないよー、という仲忠くん達。
女一宮の間にも二人目の子供が! この時点におけるクライマックスのおはなしです。
新規訳につき、一話あたり短めの連載いたします。
文字数 28,263
最終更新日 2020.06.17
登録日 2020.05.30
化政期の日野宿(東京都日野市)を舞台に、少しばかり風変わりなところのある女性友子が、周りの人々を巻き込みながら、騒動を巻き起こしていくお話。
使う言語は現代語ですが、時代設定は化政期から幕末くらいです。
スマートフォンなどがなく、登場人物たちの心情が描きやすかったために、この時代設定にしてありますが、
まちがったところも多々あるかと思います。
中途半端な終わり方ですが、ご想像に任せます。
よくある、発達障害がキーワードになっていますが、それが悪い方へ向かわないようにしてあります。
ご感想はお気軽にどうぞ。
文字数 129,075
最終更新日 2018.06.01
登録日 2018.05.12
ナチス政権に全てを奪われてスイスへ亡命した作家『リザ・テツナー』が主人公。史実を元にしたフィクションです。なお、作中では本作家の作品『黒い兄弟』のあらすじを引用しておりますこと、御了承下さい。
文字数 9,592
最終更新日 2020.05.08
登録日 2020.05.08
天下太平の世で、剣客の身分を辞して"箸職人"になった1人の男の物語。
究極の箸を作るため、素材を求め箸とひたすら向き合い続ける。
少し長くなりましたが、楽しく書けたのでぜひ読んでみてください。
ジャンルで悩みに悩みましたが、ヒューマンドラマとさせたいただきます。
『小説家になろう』にも掲載しています。
文字数 13,263
最終更新日 2020.06.19
登録日 2020.06.19
瀬戸内に面した須磨の浜近く。夏生が営む煮売り茶屋がある。幼いながら押しかけ婚約者のゆきは、一生懸命に夏生を手伝っている。料理と経営は大人の夏生には余裕でも、少女のゆきには難しい。そんな背伸びをする愛らしい婚約者を見守る夏生と、一途なゆきのきらきらとした海辺の日々のお話です。
文字数 21,022
最終更新日 2021.06.12
登録日 2021.05.30
青江豪四郎は闇の中で人を斬るのを得意としていた。人を斬る依頼を受けても、月のない真夜中で行う。
これは、どんな剣の達人でもなしえないことだった。二十歳にして得意の剣技で、すでに十四人を斬っていた。しかし、斬ってはならない恩人を斬り、江戸を捨て橋へと登った。そこで新選組の副長土方と巡り会い、新選組隊士としてしてでなく、土方の個人的依頼を受けて屯所へ入った。なんとそこで土方か依頼されたのは、屯所の賄い所のお勢を守ることだった。局長近藤や副長土方を守ることならともかく、賄い所の女の敬語とは。豪四郎は戸惑ったが、人を切らずに済むかもしれぬと引き受けた。
文字数 7,765
最終更新日 2021.09.24
登録日 2021.09.23