専門職 小説一覧
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1
カンパネラ伯爵令嬢ヴィオラの家は、千年続く「染料調合師」を務める。王家の象徴である「ヴァルテリス紫」の絹を独占的に染める一族。媒染剤の比率、貝紫の漁師との交渉、季節別の温度管理、退色防止——紫の権威は、ヴィオラの祖母から受け継がれた手から生まれる。
婚約者の王太子の側妃となった侯爵令嬢が、夜会で言い放った。
「染料屋の娘の手など、王家にふさわしくありませんわね」
左様でございますか。ヴィオラはそう答えて、王宮の染料蔵から自家の媒染剤瓶と貝紫粉を全て持ち帰り、家業を畳んで南方の港町ポルト・ロサへ移った。
半年後、王太子の戴冠式が近づく。王家の紫の絹が褪色する。新しい絹を染めようとしても、媒染剤の比率がわからない。貝紫の漁師は「カンパネラ家のお嬢様の紹介でなければ売らない」と背を向ける。
「紫は、染める者が誰かを、絹が覚えているのです」
文字数 13,034
最終更新日 2026.05.12
登録日 2026.05.12
2
ヴェントレース伯爵令嬢ノルディアは、千年続く「氷室守《ひょうしつもり》」の家に生まれた。冬に氷河湖から氷を切り出し、王宮の地下に三層の氷室で夏まで保存する。夏の薬を冷やし、葡萄酒を熟成させ、王家の葬儀の御遺骸を腐らせない——王家の死生を守る氷の番人だ。
婚約者の王太子マクシミリアンは、ノルディアの仕事を「冬の労働」と笑った。
「氷など雪が降れば手に入る。誰でもできることに、わざわざ家業を立てる必要がどこにある」
左様でございますか。ノルディアはそう答えて、王宮の氷室の鍵を返し、家業を畳んで南方の塩湖領へ移った。
半年後、夏の盛り。王太后が崩御する。御遺骸を保存する氷がない。薬も腐り、葡萄酒は酸化する。誰も気づかない——氷を切る冬の労働を、誰も知らないからだ。
「氷は、冬の手がなければ、夏まで届きません」
文字数 11,755
最終更新日 2026.05.11
登録日 2026.05.11
3
ヴェストハイム伯爵令嬢シーラの家は、千年続く「塩漬け師《しおづけし》」を務める。海塩・岩塩・湖塩を配合し、王家の肉・魚・野菜・果実・薬草を、季節ごとに違う比率で漬け込む。塩漬けがあるから王宮の冬は飢えない。
しかし婚約者の王太子は、シーラの仕事を理解しなかった。
「塩漬けは料理ではない。料理人が作るものだ」
左様でございますか。それきりでした。
婚約破棄の翌朝、シーラは王宮の塩蔵《しおぐら》から自家の調合塩瓶を全て持ち帰り、家業を畳んで南方の港町ポルト・ロサへ移った。
半年後、王宮の食卓に塩漬けが尽きた。冬の肉は腐り、保存野菜は尽き、薬草は乾き枯れた。誰も気づかない。なぜなら——塩を量る基準が、彼女と共に去ったからだ。
「塩は、命の重さを、知っている人にしか、量れません」
文字数 11,895
最終更新日 2026.05.10
登録日 2026.05.10
4
オーフィス子爵令嬢シェルナの家は、代々「度量衡守《どりょうこうもり》」を務める。王国に流通する全ての分銅・升・物差しは、彼女の家の標準器を写し取って作られる。
婚約者の王太子は、シェルナの仕事を理解しなかった。
「秤の目盛りなど、誰でも読めるだろう」
その通りでございます。読むことは、誰にでもできます。
婚約破棄の夜、シェルナは王宮の収蔵庫から自家の標準分銅を全て持ち帰り、家業を畳んで南方の自由都市へ移った。
半年後、王国の薬は効きすぎて患者を殺し、税の升は重すぎて農民が反乱を起こし、貨幣は微かに軽くなって他国との交易が止まった。
誰も気づかない。なぜなら——基準を測る基準を、彼女が持ち去ったからだ。
「秤は、嘘をつきません。読み手の不誠実を、ただ告発するだけです」
文字数 12,307
最終更新日 2026.05.09
登録日 2026.05.09
5
ロックハート伯爵家のリディアは、王家の「鍵守《かぎもり》」だ。王宮の千を超える錠前は、彼女と父が二代で管理している。
リディアには稀有な才能があった。鍵穴に耳を当てるだけで、内側のピンの位置が音として聞こえる。世に二人といない「鍵聴《かぎぎき》」の才。
しかし婚約者のオーランド侯爵子息は、彼女を「鍵屋風情の娘」と嘲り、職人の家を恥じて婚約を破棄した。
「鍵など、鍛冶屋に頼めばすぐ作れる」
左様でございますか。リディアは黙って頭を下げ、王宮を辞した。
半年後、リディアの父が老いて引退する。王宮の宝物庫はもう誰にも開けられない。即位式の宝冠も、王家陵墓の扉も、暗号文書庫も——全てが沈黙する。
錠前は、開ける順番を間違えた者を、永遠に拒みます。
文字数 11,660
最終更新日 2026.05.08
登録日 2026.05.08
6
ヴェンディール侯爵令嬢エルナは、千年続く暦法師の家に生まれた。星と潮と作物の周期を観測し、王国の暦・農事暦・祭事暦を毎年王宮に納めるのが家の務めである。
しかし婚約者の王太子は、エルナの仕事を「占いの真似事」と笑い、流行の数秘術師を侍らせて彼女との婚約を破棄した。
「暦など、誰がつけても同じだろう」
承りました。エルナはそう答えて、王宮への暦の納本を、静かに止めた。
翌春、貴族たちは種まきの日を間違えた。徴税官は会計年度の初日を取り違えた。戦勝記念祭は雨期の真ん中で行われた。そして、誰も「夏至の祝祭」がいつなのかを知らない。
——暦は、信じる人にしか、見えないものです。
文字数 12,243
最終更新日 2026.05.07
登録日 2026.05.07
7
侯爵令嬢エレーナは、亡き母から受け継いだ織物の技法で王都の社交界を支えてきた。
だが婚約者ルドルフに「織物など下女の仕事だ」と蔑まれ、追放される。
辺境伯フランツの領地で新たな生活を始めたエレーナは、辺境の羊毛で独自の織物を生み出し、
隣国との交易品として名声を得る。
一方、王都では舞踏会のドレスを仕立てられる者がいなくなり、社交界が崩壊していた。
エレーナの織り機は、もう王都のためには動かない。
文字数 11,395
最終更新日 2026.04.20
登録日 2026.04.20
8
男爵令嬢ローゼマリーは、魔物を忌避する特殊な香を調合できる唯一の調香師だった。
だが婚約者の騎士ヴィルヘルムに「花の匂いしかしない女」と蔑まれ、追放される。
辺境の薬師リヒャルトのもとで新たな調合を始めたローゼマリーは、
辺境の村々を魔物被害から守る「結界香」を完成させる。
一方、王都では魔物除けの香が尽き、三日で城壁の外まで魔物に包囲された。
王家が令嬢に助けを求めたとき、ローゼマリーは辺境の村のために香を調合し続けていた。
王都に送ったのは、たった一瓶の香と短い手紙だけだった。
文字数 12,322
最終更新日 2026.04.18
登録日 2026.04.18
9
邪な気持ちで竜退治! 俺は嫁になる竜娘を探す旅に出る。
女性化したドラゴン、それは神秘的な美しさだった。もういい感じに下品に興奮した俺は、そんなドラゴン娘を嫁にする為に最強ジョブであるドラゴンスレイヤーへと転職することになる。
邪な気持ちのおかげで厳しい修行に耐え抜いた俺は、知らぬうちに信じられない強さに成長していて……
文字数 9,979
最終更新日 2023.08.30
登録日 2023.08.26
9
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