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6巻

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 1話 古代遺跡ナルカトナへ向けて再出発です


 私たち――シャーロット、アッシュ、リリヤの三人は、五歳の女の子『ククミカ』とともに、商人ウルラマさんたちを護衛しながら、次の目的地であるカッシーナへ向かう。ククミカは途中にある彼女の故郷――隠れ里『ヒダタカ』に送り届ける予定だった。その道中、ロッキード山にて魔物ドール族に急襲され、ウルラマさんたちと分断される事態におちいってしまうが、なんとかヒダタカに到着する。そこで知り合ったカゲロウさんやナリトアさんといった里の人たち、それに冒険者『ユアラ』と『ドレイク』とも協力しながら、ドール族急襲の原因ともいえる『魔物大発生』に立ち向かったのだけど……ここで想定外の出来事が起こった。
 それは、ユアラとドレイクの裏切りである。
 特に、ユアラ‼
 あいつこそが魔物大発生を起こした張本人、理由も『シャーロットや里の人たち』と遊びたいという単純なもの。しかも、彼女はエルギス様に『洗脳』スキルを与え、ジストニス王国を大混乱におとしいれた『スキル販売者』でもある。
 私はユアラを捕縛ほばくしようと試みたものの、彼女の方が上手うわてで、結局転移魔法で逃げられてしまった。また、二人の裏切りで里も大混乱となり、特にナリトアさんをリーダーとする班では、わなである『ミスリル大型茶碗』を敵に落とすタイミングを誤ってしまい、周辺で大きな被害が発生してしまう。一応、落とす役割をになっていたリリヤさんの責任となるのかもしれないが、ユアラたちが自分の目の前で裏切ったのだ。動揺しても、仕方がないと思う。
 ユアラとドレイクには逃げられたものの、里への被害を最小限に抑えることに成功したので、私たちの大勝利と言える。事件終息後、霊樹様をなんとか復活させたのはいいのだけど、木精霊から『このまま旅を続けると転移魔法を習得する前に死ぬ』と断言されてしまった。だから、私たちは霊樹様が完全復活するまでの間、自分たちの力を向上させるべく、訓練を積むことに専念する。
 訓練期間が十日と短いこともあり、私たちはカゲロウさんを師匠と仰ぎ、足腰を重点的にきたえていった。それと同時に、私がみんなに新スキル『タップダンス』を教えていく。私たちと里の人たちにとってWIN-WINとも言える関係が続き、つらくもあり楽しい十日間はあっという間に経過し、ついに別れの時が訪れた。


         ○○○


 現在の時刻は朝八時、気温は十三度と肌寒い。
 私、アッシュさん、リリヤさんは里の入口にいる。周囲には、里長さとおさのテッカマルさん、カゲロウさん、ナリトアさん、ククミカといった里の人たち全員や、私の新たな従魔『ドール軍団』が集まっていた。みんなが防寒着を着込み、私たちの出立を見送ろうとしてくれている。
 私とアッシュさんの防具は王都を出発したときと同じだけど、リリヤさんだけはクロイス女王からもらった新たな冒険服に着替えていた。防御力自体は簡易着物の方が圧倒的に上だ。でも、あの服装だと街の中で目立ってしまう。旅を続けていく上で、今の冒険服の方が、私たちの服とも合っていて目立たない。それに、アッシュさんにめられたこともあって、彼女自身も気に入っている。その服を着たまま訓練を実施したことで、既に着慣れているようだ。
 ここで過ごした期間、私たちにとってつらいこともあったけど、また一歩強くなることができた。


 私の場合――スキル『手加減』が6、足技基本スキル『あしさばき』『俊足』『縮地』『韋駄天いだてん』が10、足技応用スキル『空歩』が5、『空走』が2となり、足腰が大幅に強化され、『タップダンス』もレベルが8に上がった。足技のスキルレベルがカゲロウさんよりも上がってしまったことで、指導してくれた男性陣が、陰でガックリと項垂うなだれていたのが記憶に新しい。タップダンスをみんなに教えまくったこと、私の身体が『環境適応』スキルにより大幅強化されていることが功を奏したのだろう。


 アッシュさんの場合――足技基本スキル『あしさばき』がレベル8、『俊足』がレベル5、『縮地』がレベル2となり、かなり足腰が強化されたといってもいい。やはり、『タップダンス』の練習を毎日こなし、レベルが3に上がったことが、これだけの強化に繋がったのだろう。


 リリヤさんの場合――足技基本スキル『あしさばき』がレベル7、『俊足』がレベル4と、アッシュさんには劣るものの、元のレベルから考えると飛躍的な進歩と言えるだろう。彼女自身が誰よりも練習を重ねていたこと、そして誰よりもリズム感がいいこともあって、『タップダンス』の上達速度が驚異的で、レベルも一気に5とね上がったことが、大きく進歩した要因にちがいない。


 初めは里の人たちも『タップダンス』には苦労していたが、コツを掴み出してからの上達速度は速く、ほとんどの人たちがレベル5以上になった。今なら、集団で披露ひろうすることも可能だと思う。
 今日、私たちはカッシーナに向けて出発する。ここでの訓練と、冒険者としての心得を学んだことで、強い自信を得られた。この経験を、絶対忘れてはいけない。

「シャーロット姉、アッシュ兄、リリヤ姉、やっぱり……行っちゃうの?」

 ククミカが大粒の涙を流しながら、『行かないで』と訴えているけど、こればかりは聞けない。

「ククミカ、シャーロットには大切な目標がある。それは、アストレカ大陸に帰り、両親と再会すること。君も、お母さんに会えないつらさをわかっているよね?」

 アッシュさんは孤児院の子供の面倒を見ているから、ククミカの気持ちを誰よりも強く理解している。だから、彼女を納得させる説明も上手い。

「うん……わかってる。シャーロット姉、頑張がんばって。でも、たまには里にも来てね!」
「うん、必ず遊びに来る。それにドール軍団がいるから、私たちがどこにいようとも、間接的にお話ができるよ」

 霊樹に住む木精霊様からもお許しをいただいているから、ひな人形でもあるドール軍団は村の守護者として、正式に暮らせる。周辺で何か起きたとしても、彼らが対処し、またそのことを私に教えてくれる手筈てはずになっているので、安心して旅立てる。

「あ、そっか」

 やっと笑顔を見せてくれたね。
 カゲロウさんがククミカの頭を優しくでた後、真剣な顔つきとなって私たちを見る。

「シャーロット、アッシュ、リリヤ、ハーモニック大陸に存在するダンジョンの中でも、ナルカトナ遺跡は最高の難易度を誇る。遺跡へ行く前に、必ず冒険者ギルドで説明を聞いておくんだ。そして、たとえ行ったとしても、絶対に入るな。ここでの訓練で強くなったとはいえ、あの場所は特殊すぎる。雰囲気ふんいきだけを見ておくんだ。いいね?」

 カゲロウさんも、トキワさんと同じことを言っている。経験豊富なこの人たちでさえ、ナルカトナ遺跡を恐れているんだ。一体、どんなダンジョンなのだろう?

「「「はい」」」

 私たちが返事をすると、おさのテッカマルさんが前に出てきて、一振りの刀をアッシュさんに差し出した。目立たないよう地味なデザインとなっており、薄い茶色がさやつかの部分に塗られている。

「アッシュよ、これを持っていけ」
「え……これは、ミスリルの刀⁉」

 アッシュさんが刀を引き抜くと、白銀の刀身が現れる。

「今のお前さんなら、剣術と同レベルの刀術を扱える。身につけた剣技も刀で再現できるはずじゃ」

 刀全体を見ていくうちに、アッシュさんの顔が明るくなっていく。

すごい……あ……ありがとうございます!」

 アッシュさんは足腰の訓練だけでなく、毎日アダマンタイト製の刀で素振りを続けていた。そちらはまだ扱いきれないけど、このミスリル製の刀なら戦闘にも使える。

「うむ、精進しょうじんせい。ナリトア、三人にアレを」

 おさに言われて、ナリトアさんが木製の箱を持ってきた。長方形で、横幅が三十センチほどしかない。何が入っているのかな?

「三人には、この『霊樹のしずく』を進呈する」

 おさの言葉と同時に、ナリトアさんが木箱の蓋を開ける。そこには、綺麗きれいなデザインが施されている小瓶が三つ入っており、中身は無色透明の液体だった。

「シャーロットちゃん、アッシュ、リリヤ、これは木精霊様からの贈り物よ。霊樹様の膨大ぼうだいな魔力を凝縮ぎょうしゅくして液体化したもの。これを飲むと、エリクサーと同じ効果を発揮はっきするわ」

 エリクサー⁉ 名前だけ聞いたことあるけど、今ではダンジョンでしか入手できない治療薬だよ‼ 市場には出回っておらず、大抵オークションとかに出品され、必ず白金貨百枚(一千万円相当)以上はする代物しろものだ。

「シャーロットちゃんの『構造解析』で調査すればわかることだけど、回復の原理はエリクサーとは少し違うわ。『時間の回帰』と言えばいいかしら? ややこしくなるから、説明は省くわね。機能はそれだけじゃない。周囲に振りまけば、一定時間周辺にいる者の魔力を回復させる効果もある。どう扱うかは、あなたたち次第よ」

 それって、エリクサー以上では⁉
 ナリトアさんが、『霊樹のしずく』を私たちに一本ずつ手渡していく。

「こんな高価なものをいただいていいのですか?」
「いいんじゃ。本来であれば、木精霊様自らが出向いて手渡す予定だったのじゃが、何やら急な用事が発生したらしく、今は不在なんじゃよ。持っていきなさい」

 私が質問すると、おさが笑顔で答えてくれた。

「ありがとうございます。私やアッシュさん、リリヤさんが命の危機にひんしたときに使わせてもらいますね」

 続いて、今度はカゲロウさんが木箱を私に差し出した。
 え、まだ何かもらえるの?

「シャーロット、これはネックレス型魔導具『光芒一閃こうぼういっせん』。この魔導具に自分の行きたいところを強くイメージして少量の魔力を流し込めば、光の筋となって正しい順路をを照らしてくれる。ここと同じく、幻惑で閉ざされた場所は数多く存在する。もし、そういった土地に迷い込んだら使用しなさい」

 木箱の中には、同じ型のネックレスが三つ入っており、綺麗きれい紋様もんようが施されている。機能を聞いた限り、ここでしか入手できない代物しろものだよね?

「こんな大切な魔導具をもらっていいのですか?」
「この魔導具は、霊樹様の力を利用できる我々にしか作製できない品物だ。里の大切な宝だが、シャーロットたちならば悪用しないとわかっている。持っていけ」

 言葉が重い。私たちは里のみんなからかなり信用されている。

「ありがとうございます。早速、装備しますね」

 私とリリヤさんはネックレスをすぐ首につけられたけど、アッシュさんはこういったものを初めて装着するのか、かなり手間取っている。それを見ていたリリヤさんが彼の背後に回り、代わりにつけてあげた。彼女は気づいていないだろうけど、アッシュさんの顔が真っ赤になっている。里の人たちはそんな微笑ほほえましい光景を優しく見守っていた。
 さて、そろそろお別れの時間かな? あまり長居すると、ククミカがまた泣いちゃいそうだ。アッシュさんやリリヤさんも私と同じ気持ちだったのか、真剣な面持ちとなる。

「みなさん、私たちをきたえていただき、ありがとうございました。ここで起きた出来事、絶対に忘れません。私は必ず転移魔法を習得して、アストレカ大陸に戻ってみせます!」
「みなさん、シャーロットと同じく、僕もここでの経験を胸に刻み込み、カッシーナへと向かいます」

 アッシュさんにとって、カゲロウさんは師匠のような存在だ。彼の忠告を無下むげにすることはない。

「私も、アッシュやシャーロットと同じ気持ちです。今以上に強くなり、頼られる存在になってみせます‼」

 リリヤさんはミスリル大型茶碗の落下ミスの件を、今でも少し引きずっている。だからこそ、あそこまで訓練にのめり込めたのだと思う。

「「「それじゃあ、行ってきます」」」
「ああ、頑張がんばれよ!」
「シャーロットちゃん、アッシュ、リリヤ、絶対に死なないで‼」

 カゲロウさんやナリトアさん、多くの人から激励の言葉をもらい、私たちは隠れ里『ヒダタカ』を離れ、カッシーナへと歩き出した。



 2話 カッシーナに到着しました


 隠れ里『ヒダタカ』を出発してから三日、私たちは足腰をさらにきたえるべく、ひたすら走りまくった。道中、魔物とほとんど遭遇そうぐうすることなく走れたおかげで、予定よりも早くカッシーナに到着した。

「よかった。魔物大発生が終息してから十日以上も経過しているせいか、街も平穏そうだ」

 アッシュさんと同意見だ。ここは街の入口だけど、警備の人たちもそこまで警戒心を抱いていない。平穏を取り戻した証拠だよね。私たちの前で冒険者数人が警備員から軽く質問されている様子を見ても、みんな笑顔だった。

「アッシュ、ここから見た限りだけど、活気もあっていい街だよね。何か、有名な特産品とかあるのかな?」
「いや、カッシーナはナルカトナ遺跡以外、これといった特色もない平凡な街と聞いているんだけど?」

 入口の向こう側、ここから見える範囲だと、リリヤさんの言う通り活気のある街に見える。街並みに関しては、王都の平民エリアと似ているため、ここなら落ち着いて過ごせそうかな。前の冒険者たちが荷物検査を終え、街へ入っていく。次は、私たちの番だ。五十歳くらいの白髪交じりの男性警備員さんのもとへ歩いていくと、その人は私を見るなり、顔色を変えた。

「ぎ……銀髪……人間族で七歳くらいの女の子……まさか、アストレカ大陸から転移された聖女シャーロット……様ですか?」

 あ、そうか。クーデター直後、クロイス女王は私の正体をみんなに明かしている。ロッキード山で二週間ほど過ごしている間に、私の正確な情報が王国全土に広まったんだ。

「ええと、私に聖女の称号はありませんが、シャーロットで間違いありません」
「聖女様、カッシーナを救っていただきありがとう‼」

 え、いきなり両手で手を握られたんですけど⁉

「あの、どういうことですか?」

 予想よりも大げさなんだけど⁉

「魔物大発生が終息してすぐ、多くの精霊様方が顕現され、『聖女シャーロットが魔物大発生の根源となる瘴気しょうきまりを浄化した』と我々に説明してくれたのです」

 そういえば事件解決後、霊樹に住む木精霊様が『カッシーナの住民たちに、こちらの状況を嘘も交えてしらせた』と私に教えてくれたよね。

「カッシーナにいる冒険者が総出で魔物を駆逐くちくしてくれたことで、街への被害はゼロ。また、大量の魔物を解体したことで、武器や防具、建築などの材料が大量に入荷し、冒険者や商人も喜んでいます」

 私が上空から見た限り、ほとんどが下位のドール族だったけど、Cランクも一部交じっていた。私たちが戦ったマテリアルドールは鉄製だった。でも、他の金属で構成されているドールもいたのかもしれない。

「あなたたちなら、検査の必要はありません。さあ、入ってください。あと、これは精霊様からの伝言です。『冒険者ギルドにいるアイリーンに詳しい話を聞きなさい』。アイリーンは受付嬢で、若いですが、ギルドマスターのサポートもしている優秀な女性ですのでご安心を」

 その言葉を聞き、私もアッシュさんもリリヤさんも少し驚く。

「ありがとうございます。早速、冒険者ギルドへ行ってみますね」

 精霊様方が、事前にここまで根回ししてくれたとは。それだけ、隠れ里『ヒダタカ』に鎮座している霊樹様は大切な存在なんだね。
 私たちは警備員さんからギルドの場所を教えてもらい、お礼を言ってから街に入る。お昼過ぎだからか、通りはかなりにぎやかだ。露店が所々に設けられていることもあって、あちこちから美味おいしそうなにおいが漂ってくる。

「このにおい、『トンペイヤキ』や『ヤキタリネギリ』だよね? アッシュ、あそこ‼ 『剛屑丼ごうせつどん』て書かれている看板もあるよ」

 リリヤさんの指差す方向を見ると、そこそこ大きな看板に『剛屑丼ごうせつどん』の文字と絵、その横には私の顔も小さく描かれている。その露店には七人ほどが並んでいる。服装から見て、冒険者や建築関係の仕事をしている人たちだろう。

「本当だ。あのメニューは開発されたばかりなのに、もう情報がここまで出回っているのか」

 周囲を見渡すと、数店舗の看板に、私の顔が可愛かわいく描かれていた。
『肖像権』というものは、この国に存在しないのだろうか?
 これは……目立つ‼

「シャーロット、ここで『コロッケ』や他の料理もレシピ登録するんだよね?」
「う……そうなんですけど……騒がれますよね?」

 リリヤさんに言われ、つい本音が出てしまう。私はリリヤさんと協力してコロッケを作ったとき、他の揚げ物料理のことも話している。それらをカッシーナのどこかの家で調理し、評価次第ではレシピ登録する予定だったのだけど。

「多分、騒がれるよ。特に、冒険者ギルドで調理して味の評価をお願いなんかしたら、取り合いの戦争になると思う」
「リリヤさん、そこまでいきますか⁉」
「「いく‼」」

 あはは、リリヤさんとアッシュさんが見事にハモりました。来て早々、騒ぎを起こしたくない。今の時点で既に、周囲から視線を感じるもの。う~ん、レシピ登録をする前に、カッシーナの人たちに受け入れられる味かを確認したいんだけどな。
 さて、どうしようか?


         ○○○


 ジストニス王国において、人間や獣人族はこれまで迫害の対象とされていた。でも、人間族の私がクーデターで活躍したことで、差別意識が薄れてきている。その証拠に、私を見るみんなの目が『迫害』ではなく、『羨望せんぼう』の視線となっている。みんなに見られているものの、誰も声をかけてこないこともあって、私たちは十五分ほどで冒険者ギルドに到着できた。

「さて、まずはケアザさんやハルザスさんに会いたいところだね。あの二人は強いから、必ず無事にここへ到着しているはずだ」
「アッシュ、赤い髪のケアザさんと紫髪のハルザスさんなら、髪だけで目立つからすぐに見つかるわよ。中に入ろうよ‼」

 リリヤさん、わかりやすい説明をありがとうございます。彼らが魔物大発生を乗り越えられたのか、私としても気になる。さあ、冒険者ギルドに入りましょう。

「「三人とも待っていたぞ‼」」
「「「え⁉」」」

 扉を開けた瞬間、ケアザさんとハルザスさんが堂々とした出で立ちで待ち構えているんですけど‼ いきなり現れたものだから、私もアッシュさんもリリヤさんも驚きのあまり動けないよ‼

「いいな、その顔‼ その驚いた顔を見たかった‼ 精霊様、ありがとよ‼」

 どういうこと?

「あはは、驚かしてごめんね。俺たちは木精霊様から、君たちがここへ向かっていることを事前に聞いていたんだ。それで、ケアザのやつが入口で君たちを驚かそうと言い出したんだよ」

 木精霊様、私たちの世話を焼きすぎではなかろうか? いや、嬉しいんだけどね。

「あ……お二人ともご無事でなによりです。僕もリリヤもシャーロットも、山中で色々とありましたが、この通りピンピンしていますよ」

 アッシュさんが先に動いてくれた。いきなり再会できたから、話がトントン拍子に進みそうだ。

「(俺とハルザスは『ヒダタカ』のことを精霊様から少し聞いているぜ)お前らも大変だったようだな。特にリリヤ、以前と雰囲気ふんいきが少し違うし、強くなっているな」

 ケアザさんがボソッと小声で言った言葉に驚きだよ‼ 精霊様が自ら教えるということは、二人は根っからの善人で、信頼に値する人物ってことだ。でも、気になるから一応『構造解析』だ。……なるほど、私の強さ、霊樹、ユアラとドレイクの件については知らないのね。

「あ、ありがとうございます‼ あっちでも、強くなるべく頑張がんばりましたから‼」
「もちろん、アッシュとシャーロットも強くなっているよ。アッシュは、武器を剣から刀に変更したのか。うん、いいんじゃないか? 君の体捌たいさばきは、刀向きだよ」
「ハルザスさん、ありがとうございます‼」

 彼らは、アッシュさんやリリヤさんの動きを観察してくれていたのか。知り合ったばかりの人たちが『強くなった』と言ってくれた方が、二人も嬉しいよね。

「あなたたち~~ギルド入口をふさがないでほしいわね~~~営業妨害で訴えるわよ~~~」

 あれ? どこからか、美しいけどドスの利いた女性の声が聞こえてきた。


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