『桜の護王』10.直面(ひためん)(14)アップ。
村上が掠れた声でつぶやいた。
「……凄絶な……美しさだな……まるで……彼が仕える神がここにいて、そのためにだけ舞っていると言いたげな…」
はっとしたように村上が洋子を見たのを感じた。
そうだ、護王は舞っている、洋子がいることを確認しながら。洋子の視線を意識しながら。まるで、洋子の視線に絡め取られ囚われたいと望むように。
舞いは終わりに近づいているのだろう、舞いながら舞台の奥へと歩く綾香とは別に、護王が衣装の右肩をずり落とした。滑り落ちる金糸まじりの頑な布、下には純白の絹、両手を指先まで揃えて伸ばした護王が額から目許を覆うように手を降ろしていく。同時に伏せていた瞳をゆるやかに上げて観客を見た、瞬間。
「ああ……」
どよめきが起こった。静かに揺れもしないで整った顔、真っ黒な瞳からはらはらと幻のように涙が零れ落ちる。そしてなお、まっすぐ見つめる先には洋子がいて。
その一瞬、おそらくそこに居た全ての人間が理解したに違いない。
この舞が誰に捧げられていたのか。護王が誰に仕えるものなのか。
沈黙が支配する。
場を、時を、人々の意識を。
桜に宿る神が、今ここに降臨したのを迎えるように。
静まり返った闇を、ただ花びらが舞い落ちる。
「……凄絶な……美しさだな……まるで……彼が仕える神がここにいて、そのためにだけ舞っていると言いたげな…」
はっとしたように村上が洋子を見たのを感じた。
そうだ、護王は舞っている、洋子がいることを確認しながら。洋子の視線を意識しながら。まるで、洋子の視線に絡め取られ囚われたいと望むように。
舞いは終わりに近づいているのだろう、舞いながら舞台の奥へと歩く綾香とは別に、護王が衣装の右肩をずり落とした。滑り落ちる金糸まじりの頑な布、下には純白の絹、両手を指先まで揃えて伸ばした護王が額から目許を覆うように手を降ろしていく。同時に伏せていた瞳をゆるやかに上げて観客を見た、瞬間。
「ああ……」
どよめきが起こった。静かに揺れもしないで整った顔、真っ黒な瞳からはらはらと幻のように涙が零れ落ちる。そしてなお、まっすぐ見つめる先には洋子がいて。
その一瞬、おそらくそこに居た全ての人間が理解したに違いない。
この舞が誰に捧げられていたのか。護王が誰に仕えるものなのか。
沈黙が支配する。
場を、時を、人々の意識を。
桜に宿る神が、今ここに降臨したのを迎えるように。
静まり返った闇を、ただ花びらが舞い落ちる。
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登録日 2016.09.16 01:55
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