メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗

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第一章

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十四話
 時間はあっという間に過ぎ、一目惚れの対策方法は見つからずに誕生日パーティー前日になった。
 
 皇城は準備に追われ、騒然としている。
 僕も例に漏れず、宮廷魔法使いを象徴するマントを右肩にかけて、朝から皇城内を走り回っていた。
 
「宮廷魔法使い殿、こちらにも結界を設置していただけますか?」
「かしこまりました! すぐに向かいます!」

 ルッツ伯爵様に呼ばれて、駆け足で移動する。
 彼女はパーティーの監督責任者に選ばれた方で、僕の臨時の上司だ。

 赤い長髪を靡かせる伯爵様の後を追う。
 
 魔力枯渇でパーティーに参加出来なくなったらどうしよう・・・・・・。
 一抹の不安を抱きながらも、伯爵様のご命令通り皇城の全ての門に結界を張り巡らせた。

「この辺で休憩としましょう。お疲れ様でした」
「は、はい・・・・・・。お疲れ様でした・・・・・・・」

 ぜえぜえと息を乱しながら、伯爵様と一緒に休憩室へ移動する。
 対面にお座りになった伯爵様が、『マカロンはお好きですか?』僕に尋ねる。
 小さく頷くと、マカロンとサンドイッチを乗せたティースタンドが机に置かれた。

「まだ幼いのに苦労を掛けました。皇城で困ったことなどはありませんか?」
「はい! 皆さん良くしてくださっています!」
「そうですか。何かありましたらすぐに私に仰ってください。即刻処分します」
「か、かしこまりました・・・・・・」

 無表情で僕を見つめる伯爵様に震えながら、ぎこちない所作で紅茶を飲む。
 
 本来皇城の管理は皇后のお役目だが、今の帝国に皇后陛下はおられない。
 
 そこで、適齢女性である内務大臣のルッツ伯爵様が、皇城の管理を代理執行されている。
 皇城の第二の権力者とも呼ばれるお方が言うと、冗談にならないので本当に怖い・・・・・・。

 マカロンを手にして口へ運べば、あまりの美味しさに表情が崩れそうになる。
 殿下とカーマイン様がいらっしゃったら、もっと美味しく食べられたのに・・・・・・。

 おふたりが苦労されている中、僕だけゆっくりお茶をしていることに罪悪感が湧いてくる。

「お口に合いませんか?」
「美味しいです・・・・・・」

 殿下は誕生日をめでたい日だとは思っていない。
 彼が望んでいるのはきっと、普通の家庭で行うような些細なお祝いごとだ。

 殿下が将来のために立場を固められる必要があることは十分理解している。
 一方で、僕は殿下が生まれた日が彼にとって特別な日になることを望んでいる。
 
 サンドイッチを口に運びながら、うーんと唸り声を上げる。
 ルッツ伯爵様がふむ、思案げに顎に手を添えた。

「何か悩みがあるようですね。私でよろしければお聞きしますよ」
「そんなっ・・・伯爵様の貴重なお時間を僕なんかのために使う訳には・・・・・・!」
「精神の安定は魔法の効率化に繋がります。どうぞご遠慮なく吐き出してください」
「ううっ・・・恐れ多いです・・・・・・・」

 ご多忙な伯爵様を独占してしまって、罪に問われたりしないだろうか・・・・・・。
 
 いつもならお断りするところだが、殿下に関するご相談をするなら陛下に次ぐ適任者だ。
 
 内務大臣の伯爵様なら、殿下を喜ばせる方法をご存知かもしれない。
 僕は意を決して口を開いた。

「実は・・・殿下にお誕生日を楽しんでいただくにはどうしたら良いのか悩んでおりまして・・・・・・」
「誕生日ですか・・・・・・・」
「はい。殿下が純粋に楽しむことが出来る特別な日にしたいんです・・・・・・・」

 差し出がましい願望だったかな・・・?
 何日も前から準備のために徹夜をされていて、殿下とはあの日以来ちゃんと話せていない。
 
 それなのに、当日も社交活動をしなければならないなんて、殿下がお可哀想だ。
 伯爵様がふふっと、上品に微笑む。

「殿下は毎年、人形のように笑みを貼り付けて、淡々と貴族の相手をされているんですよ」
「えっ・・・! いつもお優しい殿下がですか・・・?」

 僕の問いに、憂いを帯びた表情で頷かれる。
 
「私は皇城に務めて12年目になりますが、殿下の本当の笑顔を見たことがありません・・・・・・」

 ですが、あなたと居る時だけはよく笑います。
 伯爵様の言葉に、顔が熱くなった。
 
 礼儀作法も忘れて、ゴクゴクと紅茶を飲み干す。

「殿下を喜ばせる方法は、あなたが一番ご存知ではありませんか」
「僕にそんな価値があるとは思えないです・・・・・・」
「その言葉を殿下が聞いたら悲しまれますよ。あなたのために屋敷をひとつ買い占めるほどですから」
「屋敷・・・・・・?」

 思わず首を傾げる。
 殿下が屋敷を買うことと僕に、どのような関係があるのだろうか?

「あら、ご存知ありませんでしたか。例のウェンディ伯爵家の屋敷は、魔法を使用した食料の保存技術を開発するために作られた場所なんですよ」

 あのお菓子の屋敷は、競売に掛けられていたその研究の成功品です。
 衝撃の事実を知って、僕は唖然とした。

 お菓子の賞味期限とか、衛生面とかは大丈夫なのかなぁとは思っていたけれど・・・・・・。
 まさか魔法で保存されていたなんて・・・! ファンタジー世界だから大丈夫な訳じゃないんだ!

 あんなに大きな屋敷に加えて、貴重な魔法の付加価値まである。
 一体お値段はおいくらしたのだろうか。

 ――いや、それよりもっ! 僕のために屋敷を買い占めたってどういうことですか!?
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