21 / 29
【21話】最悪の展開 ※ルシア視点
しおりを挟む
ラグドア王国の王宮にある作業室。
そこでは今、ルシアが回復薬を精製をしていた。
「クソッ……なんで私がこんなことを!」
作業する手を動かしながら、ルシアは舌打ちを鳴らした。
ルブリオにお願いしたことで、ルシアはすべての仕事から解放された。
それなのにどうして回復薬精製の仕事をしているのかというと、これには理由がある。
ラグドア王国では今、魔物襲撃が頻繁に発生している。
そのため、毎日大量の回復薬が消費されていた。
当然回復薬を作るペースも、それに合わせて上げる必要があった。
そのために、ルブリオの命令でルシアも回復薬を精製することになってしまったのだ。
「ルシア様! もっと作業スピードを上げてください! これでは本日のノルマが達成できませんよ!」
同じ作業にあたっている聖女が急かしてきた。
(うっざ! 黙りなさいよ!)
ルシアの作業スピードは遅い訳ではない。
同僚と同じくらいのスピードで作っている。
それなのに文句をつけられて、ルシアは最悪の気分になっていた。
「やってるわよ! これが精いっぱい!」
「ですがオフェリア様は、もっと速くできていましたよ?」
ですから同じスピードでやってもらわないと困ります、と同僚はそう付け加えてきた。
しかし、それは無理な話だ。
オフェリアの精製スピードは異常だった。
ルシアがどんなに頑張ったところで、あれにかなうはずはない。
「というより、ルシア様は大天使の加護よりも強力な、大聖女の加護を持っているのですよね。でしたらオフェリア様よりも、さらに速くできるはずでは?」
そう言うと、
「確かにそうね!」「これでノルマ達成できなかったらルシア様の責任ですからね!」「パパッと作ってくださいよ!」
作業室にいる他の同僚たちからも次々に声が上がった。
どれもこれもルシアを煽っている。
(こいつら、自分の無能を棚に上げて……!)
ブチッ!
ルシアの中で怒りが爆発する。
「できるわけがないでしょ! 大聖女の加護なんてものはありはしないんだから!」
同僚たちは愕然。
一気に静まり返った。
それでもルシアは、まだ止まらない。
「あれはバカな第一王子を騙すための嘘! 生意気なオフェリアを追い出すためにそうしただけ! ルブリオは騙されていたのよ!!」
「……嘘だったのかい」
消え入りそうな声が、すぐ後ろから聞こえてくる。
それはルブリオの声だった。
(え……嘘でしょ)
ゆっくり後ろを振り返ると、そこには涙を流しているルブリオがいた。
ルシアの首筋を、冷たい汗が流れ落ちる。
ガクガクと震えながら、口を開いた。
「あの……どうしてここに?」
「君の作業スピードが遅いと報告を受けてね。それで僕自ら、急かしにきたんだ」
「……そうなんですね」
「ルシア。君はずっと僕を騙していたのかい?」
「いや……それは」
言葉が詰まってしまう。
ごまかさなきゃいけないのに、焦るあまりなにも浮かんでこない。
「おかしいと思っていたんだ。ルシアがいるのに、この国の状況はどんどん悪くなっていく。でも、大聖女の加護が嘘だったとすれば説明がつく」
(最悪だわ!)
ルブリオは真相に気が付いてしまった。
言い逃れしようとしても、もう難しいだろう。
こうなったらもう、できることは一つだけしかない。
ルシアは出口へ向かって走り出した。
とにかく今はもう、ここを逃げるしかない。
あとのことを考えるのはそれからだ。
しかし。
「あっ」
ルシアはすぐにつまずいてしまった。
しかも足を強くひねってしまったせいで、うまく立ち上がれない。
ルブリオが冷たい眼で見下してきた。
「ルシア・リシューム。君には罪人として裁きを受けてもらう。第一王子である僕を騙していた罪は重いぞ。死刑も覚悟するんだね」
「そんな! どうかご慈悲を!」
そんなの絶対にゴメンだ。
黄色の瞳から涙を流し、必死になって声を上げる。
でも、ルブリオは応えてくれなかった。
無視されてしまっている。
ルブリオが隣へ体を向けた。
そこにはルブリオの側近がいた。
「ルシアの身柄を収容所へ引き渡してこい」
そう言って、ルブリオは部屋を背中を向けた。
ドアの方へ向かって足を動かしていく。
「どうかお待ちを! 私たち、あんなに愛し合っていたではないですか!」
遠ざかっていくルブリオの背中に叫ぶ。
しかしルブリオは振り返ることなく、部屋から出ていってしまった。
そこでは今、ルシアが回復薬を精製をしていた。
「クソッ……なんで私がこんなことを!」
作業する手を動かしながら、ルシアは舌打ちを鳴らした。
ルブリオにお願いしたことで、ルシアはすべての仕事から解放された。
それなのにどうして回復薬精製の仕事をしているのかというと、これには理由がある。
ラグドア王国では今、魔物襲撃が頻繁に発生している。
そのため、毎日大量の回復薬が消費されていた。
当然回復薬を作るペースも、それに合わせて上げる必要があった。
そのために、ルブリオの命令でルシアも回復薬を精製することになってしまったのだ。
「ルシア様! もっと作業スピードを上げてください! これでは本日のノルマが達成できませんよ!」
同じ作業にあたっている聖女が急かしてきた。
(うっざ! 黙りなさいよ!)
ルシアの作業スピードは遅い訳ではない。
同僚と同じくらいのスピードで作っている。
それなのに文句をつけられて、ルシアは最悪の気分になっていた。
「やってるわよ! これが精いっぱい!」
「ですがオフェリア様は、もっと速くできていましたよ?」
ですから同じスピードでやってもらわないと困ります、と同僚はそう付け加えてきた。
しかし、それは無理な話だ。
オフェリアの精製スピードは異常だった。
ルシアがどんなに頑張ったところで、あれにかなうはずはない。
「というより、ルシア様は大天使の加護よりも強力な、大聖女の加護を持っているのですよね。でしたらオフェリア様よりも、さらに速くできるはずでは?」
そう言うと、
「確かにそうね!」「これでノルマ達成できなかったらルシア様の責任ですからね!」「パパッと作ってくださいよ!」
作業室にいる他の同僚たちからも次々に声が上がった。
どれもこれもルシアを煽っている。
(こいつら、自分の無能を棚に上げて……!)
ブチッ!
ルシアの中で怒りが爆発する。
「できるわけがないでしょ! 大聖女の加護なんてものはありはしないんだから!」
同僚たちは愕然。
一気に静まり返った。
それでもルシアは、まだ止まらない。
「あれはバカな第一王子を騙すための嘘! 生意気なオフェリアを追い出すためにそうしただけ! ルブリオは騙されていたのよ!!」
「……嘘だったのかい」
消え入りそうな声が、すぐ後ろから聞こえてくる。
それはルブリオの声だった。
(え……嘘でしょ)
ゆっくり後ろを振り返ると、そこには涙を流しているルブリオがいた。
ルシアの首筋を、冷たい汗が流れ落ちる。
ガクガクと震えながら、口を開いた。
「あの……どうしてここに?」
「君の作業スピードが遅いと報告を受けてね。それで僕自ら、急かしにきたんだ」
「……そうなんですね」
「ルシア。君はずっと僕を騙していたのかい?」
「いや……それは」
言葉が詰まってしまう。
ごまかさなきゃいけないのに、焦るあまりなにも浮かんでこない。
「おかしいと思っていたんだ。ルシアがいるのに、この国の状況はどんどん悪くなっていく。でも、大聖女の加護が嘘だったとすれば説明がつく」
(最悪だわ!)
ルブリオは真相に気が付いてしまった。
言い逃れしようとしても、もう難しいだろう。
こうなったらもう、できることは一つだけしかない。
ルシアは出口へ向かって走り出した。
とにかく今はもう、ここを逃げるしかない。
あとのことを考えるのはそれからだ。
しかし。
「あっ」
ルシアはすぐにつまずいてしまった。
しかも足を強くひねってしまったせいで、うまく立ち上がれない。
ルブリオが冷たい眼で見下してきた。
「ルシア・リシューム。君には罪人として裁きを受けてもらう。第一王子である僕を騙していた罪は重いぞ。死刑も覚悟するんだね」
「そんな! どうかご慈悲を!」
そんなの絶対にゴメンだ。
黄色の瞳から涙を流し、必死になって声を上げる。
でも、ルブリオは応えてくれなかった。
無視されてしまっている。
ルブリオが隣へ体を向けた。
そこにはルブリオの側近がいた。
「ルシアの身柄を収容所へ引き渡してこい」
そう言って、ルブリオは部屋を背中を向けた。
ドアの方へ向かって足を動かしていく。
「どうかお待ちを! 私たち、あんなに愛し合っていたではないですか!」
遠ざかっていくルブリオの背中に叫ぶ。
しかしルブリオは振り返ることなく、部屋から出ていってしまった。
315
あなたにおすすめの小説
婚約辞退いたします。だってこの国、沈みますもの
鍛高譚
恋愛
「婚約はお断りいたします――この国は近い将来、崩壊しますので」
そう言い放ったのは、社交界でも目立たない子爵令嬢、マリン・アクアリウム。
ある日、とある舞踏会に突如現れた王太子ガイア殿下。
誰もが驚く中、なんと彼はマリンに婚約を申し出る。
周囲は騒然。「子爵令嬢が王太子妃!?」「断る理由などないはず!」
――だが、彼女は断った。「この国は、もうすぐ滅びます」――と。
そんな不吉な言葉を口にしたことで、彼女は“狂言癖のある嘘つき令嬢”と噂され、
家族にさえ見放され、ついには国外追放の身に。
だが、彼女の予言は本物だった――
数年後、王国に未曾有の大災厄が迫る。
国土が崩れ、海に沈む都市。人々が絶望する中、思い出されるのは、
あの舞踏会でただひとり“滅び”を告げた少女の名。
「彼女なら、この国を救えるかもしれない……」
皮肉にも“追放令嬢”マリンは、再び王都に呼び戻され、
滅びゆく国で最後の希望として担ぎ上げられる。
信じてもらえなかった過去。
それでも人々の命を守ろうと奔走するマリン。
そして、王子ガイアが差し伸べた、あの日と変わらぬ手。
――たとえ国が滅んでも、あなたとともに歩んでいきたい。
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!
さら
恋愛
王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。
――でも、リリアナは泣き崩れなかった。
「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」
庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。
「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」
絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。
「俺は、君を守るために剣を振るう」
寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。
灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。
これまでは悉く妹に幸せを邪魔されていました。今後は違いますよ?
satomi
恋愛
ディラーノ侯爵家の義姉妹の姉・サマンサとユアノ。二人は同じ侯爵家のアーロン=ジェンキンスとの縁談に臨む。もともとはサマンサに来た縁談話だったのだが、姉のモノを悉く奪う義妹ユアノがお父様に「見合いの席に同席したい」と懇願し、何故かディラーノ家からは二人の娘が見合いの席に。
結果、ユアノがアーロンと婚約することになるのだが…
ワザとダサくしてたら婚約破棄されたので隣国に行きます!
satomi
恋愛
ワザと瓶底メガネで三つ編みで、生活をしていたら、「自分の隣に相応しくない」という理由でこのフッラクション王国の王太子であられます、ダミアン殿下であらせられます、ダミアン殿下に婚約破棄をされました。
私はホウショウ公爵家の次女でコリーナと申します。
私の容姿で婚約破棄をされたことに対して私付きの侍女のルナは大激怒。
お父様は「結婚前に王太子が人を見てくれだけで判断していることが分かって良かった」と。
眼鏡をやめただけで、学園内での手の平返しが酷かったので、私は父の妹、叔母様を頼りに隣国のリーク帝国に留学することとしました!
【完結】恋が終わる、その隙に
七瀬菜々
恋愛
秋。黄褐色に光るススキの花穂が畦道を彩る頃。
伯爵令嬢クロエ・ロレーヌは5年の婚約期間を経て、名門シルヴェスター公爵家に嫁いだ。
愛しい彼の、弟の妻としてーーー。
【完結】転生悪役っぽい令嬢、家族巻き込みざまぁ回避~ヒドインは酷いんです~
鏑木 うりこ
恋愛
転生前あまりにもたくさんのざまぁ小説を読みすぎて、自分がどのざまぁ小説に転生したか分からないエイミアは一人で何とかすることを速攻諦め、母親に泣きついた。
「おかあさまあ~わたし、ざまぁされたくないのですー!」
「ざまぁとはよくわからないけれど、語感が既に良くない感じね」
すぐに味方を見つけ、将来自分をざまぁしてきそうな妹を懐柔し……エイミアは学園へ入学する。
そして敵が現れたのでした。
中編くらいになるかなと思っております!
長い沈黙を破り!忘れていたとは内緒だぞ!?
ヒドインが完結しました!わーわー!
(*´-`)……ホメテ……
【完結】婚約破棄はいいのですが、平凡(?)な私を巻き込まないでください!
白キツネ
恋愛
実力主義であるクリスティア王国で、学園の卒業パーティーに中、突然第一王子である、アレン・クリスティアから婚約破棄を言い渡される。
婚約者ではないのに、です。
それに、いじめた記憶も一切ありません。
私にはちゃんと婚約者がいるんです。巻き込まないでください。
第一王子に何故か振られた女が、本来の婚約者と幸せになるお話。
カクヨムにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる