オッドアイの伯爵令嬢、姉の代わりに嫁ぐことになる~私の結婚相手は、青血閣下と言われている恐ろしい公爵様。でも実は、とっても優しいお方でした~

夏芽空

文字の大きさ
17 / 18

【17話】温かい気持ち

しおりを挟む

 アリシアの心には温かい気持ちが広がっていた。
 
『彼女は俺とって、世界一大切な女性だ! ずっとここにいてもらう! 貴様たちのような輩には、絶対に渡さん!!』
 ルシルが言ってくれたその言葉が、とてつもなく嬉しかったのだ。
 
「ルシル様の意向は分かりました。お飾りの妻であるアリシアのことをそこまで大切に思っているとは、正直意外でしたけど」

 呆れ顔になったシーラが、肩をすくめた。

「ですが、アリシアはどう思っているでしょうね」

 アリシアへ視線を向けるシーラ。
 口元には、勝ち誇ったような笑みが浮かんでいる。
 
「アリシア。私たちのところへ帰ってきてちょうだい。お願いよ」
「貴様、ふざけたことを――」
「ルシル様」

 助けようとしてくれたルシルを、言葉で制したアリシア。
 大丈夫です、という意味を込めて首を横に振る。
 
「シーラ様が嫁いできてからの七年、私はいつも言うことを聞いてきましたよね」
「そうよ。そして今回も、今ままでと同じ。あんたは私の言うことを聞いてくれる――そうでしょ?」
「……今回ばかりはダメです」

 グッと拳を握ったアリシアは、まっすぐにシーラを見る。
 
「あなたの言うことには従えません。私はここにいたいのです」
「…………は?」

 勝ち誇った笑みが、シーラの顔から消える。
 代わりに浮かんだのは、大きな驚きだった。
 
「ねぇ、よく聞こえなかったんだけど? もう一度言ってくれる?」
「あなたには従えない。そう言ったんです」
「あんたねぇ……!」
 
 ピクリと眉を上げたシーラが、大きく舌打ちをした。
 
「ルシル様は優しくて、とっても素敵なお方。そんなお方の隣に、私はずっといたいのです。あなたたちのところへなど、死んでも戻りたくありません!」
「……なによそれ。なんなのよそれは!!」

 シーラの顔が真っ赤に染まった。
 全身から、大きな怒りが溢れていく。
 
「ふざけんじゃないわよ!!」

 勢いよく立ち上がったシーラ。
 掴みかかろうと、アリシアへ腕を伸ばしてくる。
 
 その腕が、アリシアに届く直前。
 
「動くな!!」

 一喝。
 ルシルの大きな声が、部屋いっぱいに響いた。
 
 大きな声量と迫力を持ったその声に、シーラは愕然。
 動きが止まる。
 
「少しでもアリシアに触れてみろ。貴様ら二人とも、この場で処分してやるからな……!」

 冗談ではない、これは本気だ。
 殺意のこもったルシルの鋭い目つきが、それをありありと物語っていた。
 
 ルシルの怒りを真っ向から受けたシーラとダートンは、すっかり委縮。
 口を半開きにして、ぶるぶると体を震わせている。
 
「話は終わりだ」

 吐き捨てるように言ったルシルは、外で待機していた私兵を部屋の中に呼びつける。
 
「こいつらを外につまみ出せ」

 私兵によって、連行されていく二人。
 彼らは部屋を出ていく最後まで、ルシルの雰囲気に圧倒されていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる

鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳―― それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。 公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。 だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、 王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。 政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。 紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが―― 魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、 まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。 「……私が女王? 冗談じゃないわ」 回避策として動いたはずが、 誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。 しかも彼は、 幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた―― 年を取らぬ姿のままで。 永遠に老いない少女と、 彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。 王妃になどなる気はない。 けれど、逃げ続けることももうできない。 これは、 歴史の影に生きてきた少女が、 はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。 ざまぁも陰謀も押し付けない。 それでも―― この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。

婚約破棄された千年転生令嬢は、名も居場所も縛られずに生きると決めました ――助けを乞うなら条件付きですわあ

ふわふわ
恋愛
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。 ――はいはい、またその流れですわね。 貴族令嬢シェリア・ド・ラファルジュは、ある日突然、王太子から一方的に婚約を破棄され、平民出身の“聖女”リリカを選ばれる。 しかし彼女は嘆かない。なぜならシェリアは、千年分の転生の記憶を持つ存在だったから。 魔法、剣技、治癒術。 過去の人生で極めた力をすべて備えた彼女にとって、追放は「面倒事から解放されただけ」の出来事だった。 隣国ガルディア王国で“名も名乗らぬ旅人”として静かに暮らし始めたシェリア。 誰にも縛られず、期待も背負わず、助けるかどうかは自分で選ぶ―― そんな自由な日々を送っていた彼女のもとへ、やがて崩壊寸前となった祖国から「助けてほしい」という声が届く。 けれど、彼女はもう無償では救わない。 「私はもう、あの国の国民ではありません」 「条件を飲むなら向かいましょう。国民に罪はありませんから」 謝罪、対価、そして国を変える覚悟。 すべてを差し出した時、初めてシェリアは手を差し伸べる。 これは、 聖女でも英雄でもなく、 “選ぶ側”として生きることを決めた令嬢の物語。 婚約破棄ざまぁのその先で、 彼女は今日も、自分の居場所を選び続ける。

[完結]7回も人生やってたら無双になるって

紅月
恋愛
「またですか」 アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。 驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。 だけど今回は違う。 強力な仲間が居る。 アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。

【完結】ポチャッ娘令嬢の恋愛事情

かのん
恋愛
 侯爵家令嬢のアマリー・レイスタンは舞踏会の隅っこで静かに婚約破棄をされた。  誰も見ていないし、誰も興味なさそうではあったが、アマリーはやはりショックで涙を流す。  これは、ポチャッ娘令嬢のアマリーが、ありのままの自分を愛してくれる人を見つけるまでの物語。

愛し子

水姫
ファンタジー
アリスティア王国のアレル公爵家にはリリアという公爵令嬢がいた。 彼女は神様の愛し子であった。 彼女が12歳を迎えたとき物語が動き出す。 初めて書きます。お手柔らかにお願いします。 アドバイスや、感想を貰えると嬉しいです。 沢山の方に読んで頂けて嬉しく思います。 感謝の気持ちを込めまして番外編を検討しています。 皆様のリクエストお待ちしております。

貴方だけが私に優しくしてくれた

バンブー竹田
恋愛
人質として隣国の皇帝に嫁がされた王女フィリアは宮殿の端っこの部屋をあてがわれ、お飾りの側妃として空虚な日々をやり過ごすことになった。 そんなフィリアを気遣い、優しくしてくれたのは年下の少年騎士アベルだけだった。 いつの間にかアベルに想いを寄せるようになっていくフィリア。 しかし、ある時、皇帝とアベルの会話を漏れ聞いたフィリアはアベルの優しさの裏の真実を知ってしまってーーー

【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです

果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。 幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。 ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。 月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。 パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。 これでは、結婚した後は別居かしら。 お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。 だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。

赤い瞳を持つ私は不吉と言われ、姉の代わりに冷酷無情な若当主へ嫁ぐことになりました

桜桃-サクランボ-
恋愛
赤い瞳を持ち生まれた桔梗家次女、桔梗美月。 母と姉に虐げられていた美月は、ひょんなことから冷酷無情と呼ばれ、恐怖の的となっている鬼神家の若当主、鬼神雅に嫁ぐこととなった。 無礼を働けば切り捨てられる。 そう思い、緊張の面持ちで鬼神家へ行く美月。 だが、待ち受けていたのは、思ってもいない溺愛される日々。 口数が少ない雅との、溺愛ストーリー!! ※カクヨム&エブリスタで公開中 ※ ※がタイトルにある話は挿絵あり  ※挿絵は、清見こうじさん

処理中です...