【完結】まずは結婚からで。〜出会って0日、夫夫はじめました〜

小門内田

文字の大きさ
2 / 72
第一章

day.2

しおりを挟む
突然、目の前の男に、嫁にならないかと勧誘された。

「………………はい?」

だが、何を言われたのか全く理解できなかった俺は、再度聞き直す。
すると、ふうっと溜息を吐かれた。

「2度も言わせるな。俺の嫁にならないか、と聞いている。」

まさか言語が通じないわけではないよな?という視線を投げつけられたが、この時ばかりは、できれば通じたくなかった。

「いやいや、俺達今日会ったばっかだぜ?さすがに嫁とか冗談キツい」

「毎月の小遣いとして50万渡すと言っても?」

提示されたその金額に、ピクッと耳が動いた。
バッと諏訪を見る。

「他に条件は?」

「毎月小遣い50万、もし契約中に俺が死ねば、遺産は全部お前のもの。但し、俺の家で一緒に住んでもらうこと、俺が望む時に抱かせること、どれだけの金額を積まれても、他の奴には抱かれないこと、俺の事に干渉しないこと……以上が条件だ。」

…変な条件が2つ程あるが、1つはまぁいいだろう。
だがもう1つは抗議させてもらう。

「今言った条件の内、1つは飲めないね。アンタの望む時に好きなだけっていうのは、無理。俺にも人権があるんでね。最低でも2週間に1回なら付き合ってやる。」

「ならば、最低でも1週間に1回なら?」

コイツ無表情で性欲薄そうな見た目なのに、強過ぎだろ!
言う通りにしてたら、俺の尻が爆破してたところだ。

「2週間に1回。これ以上は譲らねぇ。」

俺が折れないとみた諏訪は、はあっと溜息を吐いた。

「…いいだろう。」

よし、何とか尻を守ることができたと、ほっと胸を撫で下ろす。

あとは、問題の遺産の額だ。

「ちなみに、遺産っていくらぐらいになんの?」

「10億はくだらんな。」

じゅ、10億だと!!??
きっと俺が生涯必死に働いても、手にすることの無い金額だろう。

「提示された条件以外は、何してもいいんだよな?」

「あぁ。それ以外は自由だ。好きにしろ。」

ギュッと強く拳を握る。

「………わかった。俺、アンタの嫁になる。」

真っ直ぐに諏訪を見つめる。
しかし、表情を全く変えない諏訪は、静かに頷いただけだった。

「では、改めて。俺が死んだら、遺産の全てをお前に渡すと誓おう。だから、俺と結婚してもらえないか?」

「喜んで!」

すると諏訪は、鞄から何やら紙を2枚取り出した。
渡されたその紙は、婚姻届と離婚届だった。
離婚届には、既に署名がされている。

「明日お前の家まで迎えに行く。それまでに書いておけ。それと、嫌になったらいつでも契約破棄してくれて構わない。但し、契約破棄した場合は、お前の報酬は0だ。」

つまり、離婚届を勝手に書いて提出してもいいけど、遺産はおろか、財産分与もないってことか。

いつの間にか部屋に届いていたスーツを着て、スタスタと部屋を出ていこうとした諏訪が、ドアの前でピタッと足を止めた。

「…そうだ、もう1つ、重要な条件を言い忘れていた。俺から離婚を切り出したら、お前は離婚に応じること。但し、その際のお前の報酬も0だ。」

「は、はぁ~!!??アンタ、その後出しはズリぃだろ!?」

だが、諏訪は俺の抗議には一切耳を傾けず、それだけ言い残すと、バタンと部屋を出ていってしまった。

「完っっ全に早まっちまったよ、俺……。」

その後ろ姿をぽかんと見送った後、ボフッともう一度ベッドに倒れ込んだ。

勢いで承諾してしまったが、あの無神経な男と仲良くなれる気がしない。
明日から突然の結婚生活が始まるが、不安しか存在しなかった―。




結婚の契約を結んでしまった次の日。
俺は大学を休んで自宅にいるが、気持ちが落ち着かず、自分の家の中なのに、あっちへ行ったりこっちへ行ったりして、そわそわとしていた。

確か、諏訪が今日家まで迎えに来るって言ってたよな。
だけど、アイツに住所は教えてねぇのに、どうやって来るんだろ?
もしかして、あの契約は幻になる!?

なんて期待半分、残念半分で悶々としていたら、ピーンポーンとチャイムが鳴った。
玄関に飛んで向かい、恐る恐るドアスコープを覗くと、なんと住所を知らない筈の諏訪が、目の前に立っているではないか。

ホラーかよ!

もう一度チャイムを鳴らす諏訪に、内心ゾッとしながらも、渋々この重い扉を開けた。

「遅い。出るのにどれだけ時間がかかるんだ。」

開口一番に文句を言ってきたこの男は、今日も今日とて仏頂面だった。
腕を組み、冷たく俺を見下ろしている。

「来て早々うっせぇなぁ。ってか、マジで来たんだ?」

ヒクッと口元を引き攣らせても、諏訪は眉一つ動かさない。
それどころか、当たり前だとでもいうように、平然と答えやがった。

「昨日迎えに行くと伝えた筈だが?」

どうやら、コイツは俺がドン引きしていることに気付いていないようだ。
いや、それとも、わかっていて無視してんのか?

「いやいや、俺、アンタに住所伝えてなかったと思うんだけど。どうしてここがわかったんだよ?」

くだらない質問だと言わんばかりに、はあっと盛大に溜息を吐かれた。
そして、相変わらず感情の読めない目で、俺を見据える。

「お前、昨日ホテルの床に、財布を落としただろう。その時に中身を少し覗かせてもらった。無論、盗ってはいない。ちゃんと返してあっただろう?」

「………マジ?」

クソッ、一生の不覚!!

いつ落としたんだろうか。
………全く記憶にねぇ~!
まさかその一瞬だけで、ここに辿り着かれるなんて……!

ギリッと奥歯を噛み締めて、キッと目の前の男を睨みつける。

「ところで、用意はできているんだろうな?」

俺の睨みをスルーした諏訪が、そのまま部屋に入ってこようとするのを、バッと両手を広げ、それをブンブンと上下に振りまくりながら、必死で阻止する。

「うわぁー!今やってる!今やってるから!あと15分だけ時間をくれ!」

「遅い。10分だ。それなら、このまま外で待っていてやる。」

コイツ鬼か。

まさか来るとは思っていなかったから、実は何の準備もしていない。

だが、絶対に、入ってこられたくはない。

「わかったよ!そのかわり、絶対入ってくんなよな!」

そう捨て台詞を吐いて、俺はダッシュで用意するハメになってしまった―。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

突然現れたアイドルを家に匿うことになりました

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 「俺を匿ってくれ」と平凡な日向の前に突然現れた人気アイドル凪沢優貴。そこから凪沢と二人で日向のマンションに暮らすことになる。凪沢は日向に好意を抱いているようで——。 凪沢優貴(20)人気アイドル。 日向影虎(20)平凡。工場作業員。 高埜(21)日向の同僚。 久遠(22)凪沢主演の映画の共演者。

【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~

上杉
BL
ずっとお前のことが好きだったんだ。 ある日、突然告白された西脇新汰(にしわきあらた)は驚いた。何故ならその相手は幼馴染の清宮理久(きよみやりく)だったから。思わずパニックになり新汰が返答できずにいると、理久はこう続ける。 「驚いていると思う。だけど少しずつ意識してほしい」 そう言って普段から次々とアプローチを繰り返してくるようになったが、実は新汰の方が昔から理久のことが好きで、それは今も続いている初恋だった。 完全に返答のタイミングを失ってしまった新汰が、気持ちを伝え完全な両想いになる日はやって来るのか? 初めから好き同士の高校生が送る青春小説です!お楽しみ下さい。

転生しても推しが尊い!〜京橋くんとの学園ライフが尊死案件〜オタクでよかった、君に出会えたから

中岡 始
BL
前世の俺は、社畜オタクだった。 唯一の救いは、“黒星騎士団”という漫画のキャラ、レオ様を推すこと。 だがある日突然── 事故で命を落とした俺は、目覚めたら高校生になっていた。 しかも隣の席にいたのは、前世で推してたキャラの激似男子⁉ 「え、レオ様…!? いや、現実!? ちょ、待って尊死するんだけど!?」 これは、転生オタク男子が “リアル推し” と出会ってしまった尊さ特化の学園ラブコメ。 推しに手が届きそうで届かない、心拍数限界突破の日々。 創作と感情の狭間で、「推し」と「恋」の境界がじわじわ崩れていく── 「これはもう、ただの供給じゃない。 俺と“君”の物語として、生きてるんだ」 尊死系BL/オタクあるある満載/文化祭・学園SNS・保健室…青春全部乗せ! 笑って泣ける、“愛”と“推し活”の二重螺旋ラブストーリー、開幕!

俺の推し♂が路頭に迷っていたので

木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです) どこにでも居る冴えない男 左江内 巨輝(さえない おおき)は 地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。 しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった… 推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

処理中です...