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第ニ章
day.40
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あの豪華客船パーティーの日から数日後。
今、俺は大学の期末試験という大きな壁に直面していた。
試験というものをすっかり忘れてしまい、暫しの間マナー講座に明け暮れていたため、直前に猛勉強するハメになってしまった。
だが、冬悟とちゃんとした夫夫になってからは、割と規則正しい生活を送るようになり、授業中に寝ることがほとんどなくなったため、何とかギリギリいけたんじゃないか………と思いたい。
「やっと終わった~!」
試験終了のチャイムが鳴り響いたと同時に、教室内が解放感に満たされ、ざわざわし始める。
俺の試験はこれで終わった。
待ちに待った夏休みが、漸く始まる―。
「純也おつかれ~!これで終わり?」
同じ試験を受けていた浩二が、肩を軽くぽんっと叩いた。
「浩二!おつかれ~!俺はこれで終わり!浩二は?」
「俺も終わったわ~。帰ったら夏休みだな~!」
「それな!ようやくだぜ!」
わくわくしながら、さっさと帰ろうと鞄を持って、教室を出ていこうとした。
すると、クンッと軽く後ろから鞄を引き留められ、振り返る。
「純也、昼飯一緒に食って帰らねぇ?」
浩二のこの様子、俺に何か聞いて欲しいことがあるようだ。
なら、俺の答えはただ1つ。
「いいぜ。どこ行くよ?」
「久しぶりにあそこ行こうぜ!」
そして、当たり前のように向かった先は、安くて美味いサイ●リヤだった。
メニューを注文し、ドリンクバーでジュースを取ってから、向かいの席に座っている浩二に本題を聞き出す。
「んで?浩二どしたよ?」
そのジュースを飲みながら、ちらっと向かいを見ると、浩二は少し照れたようにして、ぽりぽりと頰を掻いた。
「実はさ…今度、小百合さんとデートすることになったんだよ!」
「マジで!?やったじゃん!おめでとう!!」
浩二達があれから進展していたことに驚きながらも、2人が上手くいっていて、俺も嬉しい。
「ありがとな。でなんだけど、肝心のデートプラン、何がいいと思うよ?」
浩二が珍しくそわそわしている。
ここは友人の恋路を全力で応援するために、真剣に考える。
「う~ん。初めてのデートだろ?なら、映画とか動物園、水族館とか?あっ!そういえば、確か、来週この辺の近くで花火大会あったよな?それに誘うのもいいんじゃね?」
「それいいかも!」
それから、俺達はあーでもないこーでもないと話しながら、数時間話し込んだ。
また連絡するな!と、浩二と別れた後、まっすぐ家に帰り、すぐにソファに飛び込んだ。
初めてバイトもしなくていい、何もしなくていい夏休みを迎えて、ワクワクと心を浮き足立たせながら、ゴロゴロする。
何しようかな。
そうだ、来週の花火大会、冬悟を誘ってみようかな。
それに、いろんなところに、冬悟と行きたいな。
頭の中で楽しいことをいろいろ想像しているうちに、段々と眠気に襲われ、気付けばそのまま寝落ちしてしまった―。
夕飯の支度に何とか間に合う時間に目が覚め、準備をしていると、カチャと玄関の扉が開いた音が聞こえてきた。
それに反応して、パタパタと出迎えに行く。
「冬悟、おかえり~!」
待ってましたとギュッと抱きつくと、そっとと抱き締めてくれる。
「…あぁ、ただいま。」
すりすりと擦り寄った後、ぱっと離れて、ニッと笑う。
「晩飯もうすぐできるから!」
「…あぁ。」
俺を見つめる優しい瞳に、もう一度笑いかけ、夕飯作りに戻った。
晩ご飯が完成し、一緒に食べ始める。
「なぁなぁ冬悟、来週の木曜に花火大会があるんだけどさ、一緒に行かねぇ?」
キラキラした瞳を向けると、申し訳なさそうに、その目がフッと伏せられた。
「…純也、すまない。その日は仕事が立て込んでいてな。帰るのも遅くなるだろうから、悪いが、行けん。」
「そっか……。仕事なら仕方ねぇよな。」
残念だけど、わがままは言えない。
………ちょっと待てよ。
この感じ、もしかして。
「なぁ、冬悟。もしかしてさ、冬悟って休みねぇの?」
「…そうか、お前は今日から夏休みだったな。残念だが、俺はお盆期間以外は通常通りだ。」
やっぱり!!
そういえば、社会人には夏休みがねぇの、すっかり忘れてた!
まさか、こんなところでも、冬悟との壁を感じることになるなんて。
楽しい想像が、一気にパリンと砕け散る。
どうしよう。
俺、バイト以外したことねぇから、1人で何をしたらいいのか、わからない。
楽しみだった筈の夏休みが、一気に不安に変わっていく。
「…純也?」
無言で俯いてしまった俺の耳に、冬悟の心配そうな声色が響いてきた。
その声に反応するように、パッと顔を上げて、まっすぐに冬悟を見つめる。
「冬悟、やっぱり俺、バイトしてもいい?」
今、俺は大学の期末試験という大きな壁に直面していた。
試験というものをすっかり忘れてしまい、暫しの間マナー講座に明け暮れていたため、直前に猛勉強するハメになってしまった。
だが、冬悟とちゃんとした夫夫になってからは、割と規則正しい生活を送るようになり、授業中に寝ることがほとんどなくなったため、何とかギリギリいけたんじゃないか………と思いたい。
「やっと終わった~!」
試験終了のチャイムが鳴り響いたと同時に、教室内が解放感に満たされ、ざわざわし始める。
俺の試験はこれで終わった。
待ちに待った夏休みが、漸く始まる―。
「純也おつかれ~!これで終わり?」
同じ試験を受けていた浩二が、肩を軽くぽんっと叩いた。
「浩二!おつかれ~!俺はこれで終わり!浩二は?」
「俺も終わったわ~。帰ったら夏休みだな~!」
「それな!ようやくだぜ!」
わくわくしながら、さっさと帰ろうと鞄を持って、教室を出ていこうとした。
すると、クンッと軽く後ろから鞄を引き留められ、振り返る。
「純也、昼飯一緒に食って帰らねぇ?」
浩二のこの様子、俺に何か聞いて欲しいことがあるようだ。
なら、俺の答えはただ1つ。
「いいぜ。どこ行くよ?」
「久しぶりにあそこ行こうぜ!」
そして、当たり前のように向かった先は、安くて美味いサイ●リヤだった。
メニューを注文し、ドリンクバーでジュースを取ってから、向かいの席に座っている浩二に本題を聞き出す。
「んで?浩二どしたよ?」
そのジュースを飲みながら、ちらっと向かいを見ると、浩二は少し照れたようにして、ぽりぽりと頰を掻いた。
「実はさ…今度、小百合さんとデートすることになったんだよ!」
「マジで!?やったじゃん!おめでとう!!」
浩二達があれから進展していたことに驚きながらも、2人が上手くいっていて、俺も嬉しい。
「ありがとな。でなんだけど、肝心のデートプラン、何がいいと思うよ?」
浩二が珍しくそわそわしている。
ここは友人の恋路を全力で応援するために、真剣に考える。
「う~ん。初めてのデートだろ?なら、映画とか動物園、水族館とか?あっ!そういえば、確か、来週この辺の近くで花火大会あったよな?それに誘うのもいいんじゃね?」
「それいいかも!」
それから、俺達はあーでもないこーでもないと話しながら、数時間話し込んだ。
また連絡するな!と、浩二と別れた後、まっすぐ家に帰り、すぐにソファに飛び込んだ。
初めてバイトもしなくていい、何もしなくていい夏休みを迎えて、ワクワクと心を浮き足立たせながら、ゴロゴロする。
何しようかな。
そうだ、来週の花火大会、冬悟を誘ってみようかな。
それに、いろんなところに、冬悟と行きたいな。
頭の中で楽しいことをいろいろ想像しているうちに、段々と眠気に襲われ、気付けばそのまま寝落ちしてしまった―。
夕飯の支度に何とか間に合う時間に目が覚め、準備をしていると、カチャと玄関の扉が開いた音が聞こえてきた。
それに反応して、パタパタと出迎えに行く。
「冬悟、おかえり~!」
待ってましたとギュッと抱きつくと、そっとと抱き締めてくれる。
「…あぁ、ただいま。」
すりすりと擦り寄った後、ぱっと離れて、ニッと笑う。
「晩飯もうすぐできるから!」
「…あぁ。」
俺を見つめる優しい瞳に、もう一度笑いかけ、夕飯作りに戻った。
晩ご飯が完成し、一緒に食べ始める。
「なぁなぁ冬悟、来週の木曜に花火大会があるんだけどさ、一緒に行かねぇ?」
キラキラした瞳を向けると、申し訳なさそうに、その目がフッと伏せられた。
「…純也、すまない。その日は仕事が立て込んでいてな。帰るのも遅くなるだろうから、悪いが、行けん。」
「そっか……。仕事なら仕方ねぇよな。」
残念だけど、わがままは言えない。
………ちょっと待てよ。
この感じ、もしかして。
「なぁ、冬悟。もしかしてさ、冬悟って休みねぇの?」
「…そうか、お前は今日から夏休みだったな。残念だが、俺はお盆期間以外は通常通りだ。」
やっぱり!!
そういえば、社会人には夏休みがねぇの、すっかり忘れてた!
まさか、こんなところでも、冬悟との壁を感じることになるなんて。
楽しい想像が、一気にパリンと砕け散る。
どうしよう。
俺、バイト以外したことねぇから、1人で何をしたらいいのか、わからない。
楽しみだった筈の夏休みが、一気に不安に変わっていく。
「…純也?」
無言で俯いてしまった俺の耳に、冬悟の心配そうな声色が響いてきた。
その声に反応するように、パッと顔を上げて、まっすぐに冬悟を見つめる。
「冬悟、やっぱり俺、バイトしてもいい?」
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