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第ニ章
day.55
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あのハグからキスまでの全てが、挨拶だと告げられたが、些か信じられない。
だけど、冬悟のその表情は、嘘をついているようには見えない。
ちらっと陽介さんを見るも、彼もまた穏やかに微笑みながら、頷いただけだった。
「挨拶……。」
「…そうだ。コイツはイタリア人で、日本には出張で来ている。これは文化の違いだが、親しい人間とは、こんな風に挨拶を交わすことがある。」
「えっ!?陽介さんって、イタリア人なのか!?」
「うん、そうだよ。」
さらっと告げられた事実に、更に驚く。
つまり、映画とかで観る、あの挨拶ってことなのか!?
だが、仮にこれが事実だとしても、まだ懸念材料が残っている。
さっき陽介さんは、冬悟から俺と結婚したって聞いたと言っていたけど、口裏を合わせているだけかもしれない。
ただ、これを口に出すと、あの夜尾行していたことがバレてしまうが、我慢できなくて、やっぱり口にしてしまった。
「で、でもでも!冬悟は俺と結婚したことを隠して、陽介さんからの告白にOKして、2人でホテルに行ったんじゃねーのか!!」
「???」
「………………さてはお前、あの後俺達をつけてきたな?」
やっぱりバレた。
ぽかんと目を丸くしている陽介さんと、更に呆れた視線を向けてくる冬悟の雰囲気で、これも勘違いのような気がしてきたが、もうあとには引けない。
「そう……だけど。」
観念するように認めると、冬悟は、はぁっと溜息を吐き、陽介さんは、あはははっ!と楽しそうに笑い始めた。
「きっと断片的に会話を聴いてしまったんだね!」
「…どう聴こえたのかは知らんが、よくもそんな風に解釈できたものだ。ある意味、天才的な才能だな。」
呆れきっている冬悟には、完全に馬鹿にされている。
「おい!人のこと馬鹿にしてるけどなぁ!ちゃんと説明できんだろうな!?」
「できるよ~。さっきも言ったかもしれないけど、その日に、冬悟から結婚の報告を受けたんだ。相手は許嫁じゃなく、君とだってね。」
「じゃ、じゃあ、付き合ってっていうのは?」
「…それは、日本の居酒屋は堪能したから、次はラーメンが食べたい、付き合えと言われたことだろう。」
「は?ラーメン??………………じゃあ、ホテルは?」
「それは、今僕が泊まっているホテルで、今度パーティーが開かれるんだ。新しいビジネスパートナーを開拓するのにいいかなと思って、冬悟を誘ったんだ。その詳細を、これからホテルに戻って、連絡するよって言ったんだよ。」
……………またやっちまった!!
全部、俺の勘違いじゃん!!!
恥ずかし過ぎて、穴があったら入りたい気分だ。
だけど、それよりも、勘違いだったことにひどく安堵する。
ずっと、冬悟をとられたかもしれないという不安と恐怖に、怯えていた。
心の中で、重苦しく詰まっていたものが、漸く消えてなくなった。
「不倫じゃなかったんだ…。よかった……。」
心底ほっとするも、またしても勝手に暴走して、冬悟を疑って、傷付けてしまったことを、後悔する。
「冬悟、疑ってごめんっ……!!」
人前だということも忘れ、隣に座っている冬悟をギュッと抱き締める。
すると、軽くぽんぽんと背中を叩いてはくれたが、いつもみたいに抱き締めてはくれない。
やっぱり、許してくれない―?
「わぁお!2人は本当にラブラブなんだね!羨ましいよ!!」
その言葉で、第三者がいたことをハッと思い出した。
顔が熱くなっていき、バッと離れ、ちゃんと座る。
「陽介さんも、疑ってごめんなさい……。」
そして、恥ずかしくなりながらも、陽介さんに頭を下げた。
「全然大丈夫さ!誤解が解けてよかったよ!だけど、君は本当に、冬悟のことが好きなんだね。だから、安心したよ。」
陽介さんは優しく目を細め、俺を見た後に、冬悟に向けて微笑んだ。
「いい人と結婚できて、よかったね、冬悟。」
2人の間には、俺には入り込めない空気が流れていた。
だけど、その空気は温かく、とても優しくて、全然嫌じゃない。
冬悟は、少しの間、何も反応を示さなかったが、やがて、ゆっくりと頷いた。
「…あぁ。」
「それにしても、冬悟と不倫なんて、僕はごめんだなぁ。君との恋愛は淡白そうで嫌だね。」
「…俺からも、丁重にお断りさせてもらおう。お前みたいにやかましいのは、こっちから願い下げだ。」
「あははははっ!ま、そういうことだよ、純也さん!僕と冬悟の不倫なんて、ありえないのさ!」
この2人は、本当に友人なんだ。
だけどあの時、俺を抱き締めてくれなかった理由は、きっと―。
あの後、陽介さんは俺を残して先に帰り、冬悟も俺を連れ帰るために、今日の仕事を切り上げて、そのまま一緒に帰ることになった。
俺の誤解は解けたものの、よく考えたら、冬悟の勘違いは、まだ解けていないんだ。
でも、どうやったら、俺の心は冬悟にあるって信じてもらえるんだろう?
ぐるぐると思考を巡らしても、俺の足りない頭では、何も思い浮かばない。
どうしていいか、わからない。
だけど俺は、冬悟を失いたくない―。
家に着くなり、冬悟の背中を見た途端、ふと、ここから去ってしまいそうな気がした。
不安になり、ぱっと手を伸ばして、靴も脱がずに、ぎゅうっとその背中に抱きつく。
「…純也?」
「不倫したって疑って、冬悟を信じなくてごめんっ!俺、馬鹿だから、1人で暴走して、止まれなくて、いつも冬悟を傷付けちゃう……!ホントにごめんなさい……!!」
背中越しに、必死に言葉をかけようとするも、冬悟の手が、剥がすように、俺の手を掴んだ。
「…もういい。だから、離せ。」
「嫌だ!離したら、また冬悟は俺のところからいなくなるんだろ!?そんなの、嫌だ!!」
逃さないように、更にぎゅううっと強く抱き締める。
「純也…。」
「嫌だ嫌だ嫌だ!!俺は冬悟が好きっ……!ちゃんと好きだからっ……!!この好きの気持ちは、冬悟にだけっ……冬悟にだけなんだ!!」
滲む視界を隠すように、背中に顔を埋める。
「お願い………どこにも行かないで……。」
必死に懇願するも、冬悟からの反応はない。
そのことが、更に俺を不安の渦に陥れる。
もしかして、もう既に、嫌われてしまっていた………?
「…………もう手遅れなのか?もう俺のこと嫌い?冬悟の気持ちを教えてくれよ!お願いだからぁ…!」
グスッグスッと鼻をすすり、縋り付く俺の頭上から、はぁっと溜息が聞こえてきた。
「…純也、俺はどこにも行かん。だから、とりあえず中に入らせてくれ。」
手を離すと、ここからいなくなりそうで怖い。
部屋の中じゃなくて、俺を振り切って出ていくんじゃないだろうか。
どうしても、思考が悪い方へ悪い方へといってしまう。
だけど、どこにも行かないって言った冬悟を信じて、震えながらも、ゆっくりと手を離した。
すると本当に、靴を脱いで中に入った冬悟はこちらに振り返り、俺を待つようにして、立ち止まった。
「…お前は入ってこないのか、純也?」
その瞬間、靴を脱ぎ散らかし、ダッと走って、今度は真正面からもう一度冬悟に抱きついた。
すると、戸惑いながらも、ちゃんと俺を受け止めてくれ、その瞬間、更に涙が溢れてきた。
「俺っ…俺、ちゃんと妻になれるように、努力するから!これからはちゃんと、冬悟に迷惑かけないように、甘えないようにするからっ!!だからお願い……側にいて…!」
「…お前のその努力しようとする気持ちを、否定するつもりはない。だが、その方向で努力するつもりなら、悪いが、俺はもうお前とは一緒にいられない。」
俺とは、もう一緒にいられない―?
目の前は真っ暗になり、心は奈落の底に突き落とされた。
だけど、冬悟のその表情は、嘘をついているようには見えない。
ちらっと陽介さんを見るも、彼もまた穏やかに微笑みながら、頷いただけだった。
「挨拶……。」
「…そうだ。コイツはイタリア人で、日本には出張で来ている。これは文化の違いだが、親しい人間とは、こんな風に挨拶を交わすことがある。」
「えっ!?陽介さんって、イタリア人なのか!?」
「うん、そうだよ。」
さらっと告げられた事実に、更に驚く。
つまり、映画とかで観る、あの挨拶ってことなのか!?
だが、仮にこれが事実だとしても、まだ懸念材料が残っている。
さっき陽介さんは、冬悟から俺と結婚したって聞いたと言っていたけど、口裏を合わせているだけかもしれない。
ただ、これを口に出すと、あの夜尾行していたことがバレてしまうが、我慢できなくて、やっぱり口にしてしまった。
「で、でもでも!冬悟は俺と結婚したことを隠して、陽介さんからの告白にOKして、2人でホテルに行ったんじゃねーのか!!」
「???」
「………………さてはお前、あの後俺達をつけてきたな?」
やっぱりバレた。
ぽかんと目を丸くしている陽介さんと、更に呆れた視線を向けてくる冬悟の雰囲気で、これも勘違いのような気がしてきたが、もうあとには引けない。
「そう……だけど。」
観念するように認めると、冬悟は、はぁっと溜息を吐き、陽介さんは、あはははっ!と楽しそうに笑い始めた。
「きっと断片的に会話を聴いてしまったんだね!」
「…どう聴こえたのかは知らんが、よくもそんな風に解釈できたものだ。ある意味、天才的な才能だな。」
呆れきっている冬悟には、完全に馬鹿にされている。
「おい!人のこと馬鹿にしてるけどなぁ!ちゃんと説明できんだろうな!?」
「できるよ~。さっきも言ったかもしれないけど、その日に、冬悟から結婚の報告を受けたんだ。相手は許嫁じゃなく、君とだってね。」
「じゃ、じゃあ、付き合ってっていうのは?」
「…それは、日本の居酒屋は堪能したから、次はラーメンが食べたい、付き合えと言われたことだろう。」
「は?ラーメン??………………じゃあ、ホテルは?」
「それは、今僕が泊まっているホテルで、今度パーティーが開かれるんだ。新しいビジネスパートナーを開拓するのにいいかなと思って、冬悟を誘ったんだ。その詳細を、これからホテルに戻って、連絡するよって言ったんだよ。」
……………またやっちまった!!
全部、俺の勘違いじゃん!!!
恥ずかし過ぎて、穴があったら入りたい気分だ。
だけど、それよりも、勘違いだったことにひどく安堵する。
ずっと、冬悟をとられたかもしれないという不安と恐怖に、怯えていた。
心の中で、重苦しく詰まっていたものが、漸く消えてなくなった。
「不倫じゃなかったんだ…。よかった……。」
心底ほっとするも、またしても勝手に暴走して、冬悟を疑って、傷付けてしまったことを、後悔する。
「冬悟、疑ってごめんっ……!!」
人前だということも忘れ、隣に座っている冬悟をギュッと抱き締める。
すると、軽くぽんぽんと背中を叩いてはくれたが、いつもみたいに抱き締めてはくれない。
やっぱり、許してくれない―?
「わぁお!2人は本当にラブラブなんだね!羨ましいよ!!」
その言葉で、第三者がいたことをハッと思い出した。
顔が熱くなっていき、バッと離れ、ちゃんと座る。
「陽介さんも、疑ってごめんなさい……。」
そして、恥ずかしくなりながらも、陽介さんに頭を下げた。
「全然大丈夫さ!誤解が解けてよかったよ!だけど、君は本当に、冬悟のことが好きなんだね。だから、安心したよ。」
陽介さんは優しく目を細め、俺を見た後に、冬悟に向けて微笑んだ。
「いい人と結婚できて、よかったね、冬悟。」
2人の間には、俺には入り込めない空気が流れていた。
だけど、その空気は温かく、とても優しくて、全然嫌じゃない。
冬悟は、少しの間、何も反応を示さなかったが、やがて、ゆっくりと頷いた。
「…あぁ。」
「それにしても、冬悟と不倫なんて、僕はごめんだなぁ。君との恋愛は淡白そうで嫌だね。」
「…俺からも、丁重にお断りさせてもらおう。お前みたいにやかましいのは、こっちから願い下げだ。」
「あははははっ!ま、そういうことだよ、純也さん!僕と冬悟の不倫なんて、ありえないのさ!」
この2人は、本当に友人なんだ。
だけどあの時、俺を抱き締めてくれなかった理由は、きっと―。
あの後、陽介さんは俺を残して先に帰り、冬悟も俺を連れ帰るために、今日の仕事を切り上げて、そのまま一緒に帰ることになった。
俺の誤解は解けたものの、よく考えたら、冬悟の勘違いは、まだ解けていないんだ。
でも、どうやったら、俺の心は冬悟にあるって信じてもらえるんだろう?
ぐるぐると思考を巡らしても、俺の足りない頭では、何も思い浮かばない。
どうしていいか、わからない。
だけど俺は、冬悟を失いたくない―。
家に着くなり、冬悟の背中を見た途端、ふと、ここから去ってしまいそうな気がした。
不安になり、ぱっと手を伸ばして、靴も脱がずに、ぎゅうっとその背中に抱きつく。
「…純也?」
「不倫したって疑って、冬悟を信じなくてごめんっ!俺、馬鹿だから、1人で暴走して、止まれなくて、いつも冬悟を傷付けちゃう……!ホントにごめんなさい……!!」
背中越しに、必死に言葉をかけようとするも、冬悟の手が、剥がすように、俺の手を掴んだ。
「…もういい。だから、離せ。」
「嫌だ!離したら、また冬悟は俺のところからいなくなるんだろ!?そんなの、嫌だ!!」
逃さないように、更にぎゅううっと強く抱き締める。
「純也…。」
「嫌だ嫌だ嫌だ!!俺は冬悟が好きっ……!ちゃんと好きだからっ……!!この好きの気持ちは、冬悟にだけっ……冬悟にだけなんだ!!」
滲む視界を隠すように、背中に顔を埋める。
「お願い………どこにも行かないで……。」
必死に懇願するも、冬悟からの反応はない。
そのことが、更に俺を不安の渦に陥れる。
もしかして、もう既に、嫌われてしまっていた………?
「…………もう手遅れなのか?もう俺のこと嫌い?冬悟の気持ちを教えてくれよ!お願いだからぁ…!」
グスッグスッと鼻をすすり、縋り付く俺の頭上から、はぁっと溜息が聞こえてきた。
「…純也、俺はどこにも行かん。だから、とりあえず中に入らせてくれ。」
手を離すと、ここからいなくなりそうで怖い。
部屋の中じゃなくて、俺を振り切って出ていくんじゃないだろうか。
どうしても、思考が悪い方へ悪い方へといってしまう。
だけど、どこにも行かないって言った冬悟を信じて、震えながらも、ゆっくりと手を離した。
すると本当に、靴を脱いで中に入った冬悟はこちらに振り返り、俺を待つようにして、立ち止まった。
「…お前は入ってこないのか、純也?」
その瞬間、靴を脱ぎ散らかし、ダッと走って、今度は真正面からもう一度冬悟に抱きついた。
すると、戸惑いながらも、ちゃんと俺を受け止めてくれ、その瞬間、更に涙が溢れてきた。
「俺っ…俺、ちゃんと妻になれるように、努力するから!これからはちゃんと、冬悟に迷惑かけないように、甘えないようにするからっ!!だからお願い……側にいて…!」
「…お前のその努力しようとする気持ちを、否定するつもりはない。だが、その方向で努力するつもりなら、悪いが、俺はもうお前とは一緒にいられない。」
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