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第三章
day.58
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仲直りしてからは、2人でずっと一緒に過ごした。
お盆休みは、俺が行きたいと言ったところにいっぱい連れて行ってもらえたし、何よりも、一日中ずっと冬悟と一緒にいれたことが嬉しくて、大大大満足だった。
こんな長期イベントが待ち構えていたことをすっかり忘れていたため、マジでこの前に仲直りできてよかったと思う。
だけど、楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので。
気が付けば、すぐに日常が始まっていった。
しかし、俺達の関係は、あの時から少しずつだけど、でも確実に、変わってきている―。
晩飯を食べ終えて、2人でまったりとソファで過ごしていた。
俺は冬悟に膝枕をしてもらいながら、スマホを弄り、冬悟は本を読みながら、俺の頭を、髪を梳くようにして撫でている。
気持ちよくなってきた俺は、スマホをソファに置き、その枕にすりすりと擦り寄りながら、うとうとと目を瞑りそうになる。
「…おい、寝るなら、さっさと風呂に入ってこい。」
頭上から声をかけられ、ん~と動くのを渋っていると、おい、ともう一度催促された。
漸くごろんと仰向けになって、冬悟に向かってスッと両腕を伸ばす。
「じゃあさ、一緒に入ろ?」
今までは、風呂に一緒に入るのは、恥ずかしかったから、時々程度だった。
しかし、仲直りしてからは、恥ずかしさよりも、少しでも一緒にいたい気持ちと2人でいる心地よさが勝り、毎日一緒に入っている。
「…仕方がない奴だな。ほら、行くぞ。」
「へへっ、やった!」
呆れたように言いながらも、本を横に置いた冬悟は、慣れた手付きでひょいと俺を抱き上げた。
冬悟も同じ気持ちだと嬉しいな。
そう思いながら、何だかんだで俺を甘やかしてくれる冬悟の首に、ぎゅっとしがみつくと、頬にキスが落ちてくる。
俺がえへへっと笑うと、冬悟も優しく笑ってくれる。
戯れ合いながら、風呂場に連れて行ってもらい、一緒に仲良く風呂に入った。
風呂から上がると、冬悟が俺の髪をドライヤーで乾かしてくれる。
その綺麗で長い指が、俺の髪を触れている感触が好きだ。
それに、自分でやるよりも丁寧にしてくれるため、冬悟にしてもらった方が、髪がサラサラのツヤツヤになっている気がする。
「…そういえば、お前のバイトの最終日はいつなんだ?」
「えっと、今週の金曜だけど、どうかしたか?」
気付けばもう、長かった夏休みも今週で終わってしまう。
本当に、あっという間だった。
バイトを始めた時は、俺の成長を見せつけて、冬悟に妻だと認めてもらうんだって意気込んでいたけど、もうその必要はない。
それに、たかが1ヶ月では、形になったにすぎなくて、まだまだミスすることもあるし、胸張って見せるレベルになんて、到底ならなかった。
そもそも、1番デカい失敗をした時を、既に見られてしまっている。
だから今は、冬悟に来てもらうつもりはない。
ただ、何か別に用事でもあるのだろうかと思い、冬悟の方に振り返る。
「…いや、何でもない。いいから、前を向け。」
「?はぁい。」
前に向き直ると、また冬悟の手が俺の髪を梳いていく。
ほんの少しした後、ドライヤーの音が鳴り止んだ。
「…もういいぞ。」
「ありがと。じゃあ、次は俺が冬悟の乾かしてやるよ!」
意気揚々と冬悟の手からドライヤーをもぎ取ろうとするが、ヒョイと躱される。
「…別に自分でやるから、いらん。」
「毎回断るけどさぁ、毎回結果は同じだからな?いい加減、諦めろって!」
えいっ!とその手からドライヤーを奪うと、冬悟は諦めて、俺がやりやすいように、ソファから降りて身を委ねてくれた。
俺は鼻唄を歌いながら、その俺よりもサラサラな黒い髪を乾かしていく。
こういう何気ない時間も、最近は楽しくて仕方がない。
前も楽しかったけど、最近はもっとお互いの距離が近くなった気がして、それが嬉しい。
それに。
「はい!終わりっ!」
ドライヤーを切った途端、突然腕をグイッと引き寄せられ、前のめりに体勢を崩した。
「うわっ!」
だけど、落ちることもなく、冬悟の腕に支えられていた俺は、まるでスローモーション映画のように、上を向いていた冬悟と、至近距離でその甘い瞳と目が合って、そのまま口付けを交わすこととなった。
「んっ……」
幸せな気持ちが、一瞬にして心を満たしていく。
少ししてから、ゆっくりと離れていくその端正な顔をじっと見つめると、冬悟はフッと笑った。
「…ありがとう。」
最近は、冬悟からも、前以上にキスやハグをしてくれるようになった。
そして何より、よく笑ってくれるようになった。
このことが、俺の心を1番満たしてくれている。
「どーいたしまして!」
ニッと笑い、ソファに座り直した冬悟の腕に、勢いよく飛び込んだ―。
この時は、冬悟が俺のバイト最終日を聞いてきた理由なんて、知る由もなかった。
お盆休みは、俺が行きたいと言ったところにいっぱい連れて行ってもらえたし、何よりも、一日中ずっと冬悟と一緒にいれたことが嬉しくて、大大大満足だった。
こんな長期イベントが待ち構えていたことをすっかり忘れていたため、マジでこの前に仲直りできてよかったと思う。
だけど、楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので。
気が付けば、すぐに日常が始まっていった。
しかし、俺達の関係は、あの時から少しずつだけど、でも確実に、変わってきている―。
晩飯を食べ終えて、2人でまったりとソファで過ごしていた。
俺は冬悟に膝枕をしてもらいながら、スマホを弄り、冬悟は本を読みながら、俺の頭を、髪を梳くようにして撫でている。
気持ちよくなってきた俺は、スマホをソファに置き、その枕にすりすりと擦り寄りながら、うとうとと目を瞑りそうになる。
「…おい、寝るなら、さっさと風呂に入ってこい。」
頭上から声をかけられ、ん~と動くのを渋っていると、おい、ともう一度催促された。
漸くごろんと仰向けになって、冬悟に向かってスッと両腕を伸ばす。
「じゃあさ、一緒に入ろ?」
今までは、風呂に一緒に入るのは、恥ずかしかったから、時々程度だった。
しかし、仲直りしてからは、恥ずかしさよりも、少しでも一緒にいたい気持ちと2人でいる心地よさが勝り、毎日一緒に入っている。
「…仕方がない奴だな。ほら、行くぞ。」
「へへっ、やった!」
呆れたように言いながらも、本を横に置いた冬悟は、慣れた手付きでひょいと俺を抱き上げた。
冬悟も同じ気持ちだと嬉しいな。
そう思いながら、何だかんだで俺を甘やかしてくれる冬悟の首に、ぎゅっとしがみつくと、頬にキスが落ちてくる。
俺がえへへっと笑うと、冬悟も優しく笑ってくれる。
戯れ合いながら、風呂場に連れて行ってもらい、一緒に仲良く風呂に入った。
風呂から上がると、冬悟が俺の髪をドライヤーで乾かしてくれる。
その綺麗で長い指が、俺の髪を触れている感触が好きだ。
それに、自分でやるよりも丁寧にしてくれるため、冬悟にしてもらった方が、髪がサラサラのツヤツヤになっている気がする。
「…そういえば、お前のバイトの最終日はいつなんだ?」
「えっと、今週の金曜だけど、どうかしたか?」
気付けばもう、長かった夏休みも今週で終わってしまう。
本当に、あっという間だった。
バイトを始めた時は、俺の成長を見せつけて、冬悟に妻だと認めてもらうんだって意気込んでいたけど、もうその必要はない。
それに、たかが1ヶ月では、形になったにすぎなくて、まだまだミスすることもあるし、胸張って見せるレベルになんて、到底ならなかった。
そもそも、1番デカい失敗をした時を、既に見られてしまっている。
だから今は、冬悟に来てもらうつもりはない。
ただ、何か別に用事でもあるのだろうかと思い、冬悟の方に振り返る。
「…いや、何でもない。いいから、前を向け。」
「?はぁい。」
前に向き直ると、また冬悟の手が俺の髪を梳いていく。
ほんの少しした後、ドライヤーの音が鳴り止んだ。
「…もういいぞ。」
「ありがと。じゃあ、次は俺が冬悟の乾かしてやるよ!」
意気揚々と冬悟の手からドライヤーをもぎ取ろうとするが、ヒョイと躱される。
「…別に自分でやるから、いらん。」
「毎回断るけどさぁ、毎回結果は同じだからな?いい加減、諦めろって!」
えいっ!とその手からドライヤーを奪うと、冬悟は諦めて、俺がやりやすいように、ソファから降りて身を委ねてくれた。
俺は鼻唄を歌いながら、その俺よりもサラサラな黒い髪を乾かしていく。
こういう何気ない時間も、最近は楽しくて仕方がない。
前も楽しかったけど、最近はもっとお互いの距離が近くなった気がして、それが嬉しい。
それに。
「はい!終わりっ!」
ドライヤーを切った途端、突然腕をグイッと引き寄せられ、前のめりに体勢を崩した。
「うわっ!」
だけど、落ちることもなく、冬悟の腕に支えられていた俺は、まるでスローモーション映画のように、上を向いていた冬悟と、至近距離でその甘い瞳と目が合って、そのまま口付けを交わすこととなった。
「んっ……」
幸せな気持ちが、一瞬にして心を満たしていく。
少ししてから、ゆっくりと離れていくその端正な顔をじっと見つめると、冬悟はフッと笑った。
「…ありがとう。」
最近は、冬悟からも、前以上にキスやハグをしてくれるようになった。
そして何より、よく笑ってくれるようになった。
このことが、俺の心を1番満たしてくれている。
「どーいたしまして!」
ニッと笑い、ソファに座り直した冬悟の腕に、勢いよく飛び込んだ―。
この時は、冬悟が俺のバイト最終日を聞いてきた理由なんて、知る由もなかった。
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