【完結】まずは結婚からで。〜出会って0日、夫夫はじめました〜

小門内田

文字の大きさ
59 / 72
第三章

day.58

しおりを挟む
仲直りしてからは、2人でずっと一緒に過ごした。
お盆休みは、俺が行きたいと言ったところにいっぱい連れて行ってもらえたし、何よりも、一日中ずっと冬悟と一緒にいれたことが嬉しくて、大大大満足だった。
こんな長期イベントが待ち構えていたことをすっかり忘れていたため、マジでこの前に仲直りできてよかったと思う。

だけど、楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので。
気が付けば、すぐに日常が始まっていった。

しかし、俺達の関係は、あの時から少しずつだけど、でも確実に、変わってきている―。




晩飯を食べ終えて、2人でまったりとソファで過ごしていた。
俺は冬悟に膝枕をしてもらいながら、スマホを弄り、冬悟は本を読みながら、俺の頭を、髪を梳くようにして撫でている。
気持ちよくなってきた俺は、スマホをソファに置き、その枕にすりすりと擦り寄りながら、うとうとと目を瞑りそうになる。

「…おい、寝るなら、さっさと風呂に入ってこい。」

頭上から声をかけられ、ん~と動くのを渋っていると、おい、ともう一度催促された。
漸くごろんと仰向けになって、冬悟に向かってスッと両腕を伸ばす。

「じゃあさ、一緒に入ろ?」

今までは、風呂に一緒に入るのは、恥ずかしかったから、時々程度だった。
しかし、仲直りしてからは、恥ずかしさよりも、少しでも一緒にいたい気持ちと2人でいる心地よさが勝り、毎日一緒に入っている。

「…仕方がない奴だな。ほら、行くぞ。」

「へへっ、やった!」

呆れたように言いながらも、本を横に置いた冬悟は、慣れた手付きでひょいと俺を抱き上げた。

冬悟も同じ気持ちだと嬉しいな。

そう思いながら、何だかんだで俺を甘やかしてくれる冬悟の首に、ぎゅっとしがみつくと、頬にキスが落ちてくる。
俺がえへへっと笑うと、冬悟も優しく笑ってくれる。

戯れ合いながら、風呂場に連れて行ってもらい、一緒に仲良く風呂に入った。

風呂から上がると、冬悟が俺の髪をドライヤーで乾かしてくれる。
その綺麗で長い指が、俺の髪を触れている感触が好きだ。
それに、自分でやるよりも丁寧にしてくれるため、冬悟にしてもらった方が、髪がサラサラのツヤツヤになっている気がする。

「…そういえば、お前のバイトの最終日はいつなんだ?」

「えっと、今週の金曜だけど、どうかしたか?」

気付けばもう、長かった夏休みも今週で終わってしまう。
本当に、あっという間だった。

バイトを始めた時は、俺の成長を見せつけて、冬悟に妻だと認めてもらうんだって意気込んでいたけど、もうその必要はない。
それに、たかが1ヶ月では、形になったにすぎなくて、まだまだミスすることもあるし、胸張って見せるレベルになんて、到底ならなかった。
そもそも、1番デカい失敗をした時を、既に見られてしまっている。

だから今は、冬悟に来てもらうつもりはない。

ただ、何か別に用事でもあるのだろうかと思い、冬悟の方に振り返る。

「…いや、何でもない。いいから、前を向け。」

「?はぁい。」

前に向き直ると、また冬悟の手が俺の髪を梳いていく。
ほんの少しした後、ドライヤーの音が鳴り止んだ。

「…もういいぞ。」

「ありがと。じゃあ、次は俺が冬悟の乾かしてやるよ!」

意気揚々と冬悟の手からドライヤーをもぎ取ろうとするが、ヒョイと躱される。

「…別に自分でやるから、いらん。」

「毎回断るけどさぁ、毎回結果は同じだからな?いい加減、諦めろって!」

えいっ!とその手からドライヤーを奪うと、冬悟は諦めて、俺がやりやすいように、ソファから降りて身を委ねてくれた。
俺は鼻唄を歌いながら、その俺よりもサラサラな黒い髪を乾かしていく。

こういう何気ない時間も、最近は楽しくて仕方がない。
前も楽しかったけど、最近はもっとお互いの距離が近くなった気がして、それが嬉しい。
それに。

「はい!終わりっ!」

ドライヤーを切った途端、突然腕をグイッと引き寄せられ、前のめりに体勢を崩した。

「うわっ!」

だけど、落ちることもなく、冬悟の腕に支えられていた俺は、まるでスローモーション映画のように、上を向いていた冬悟と、至近距離でその甘い瞳と目が合って、そのまま口付けを交わすこととなった。

「んっ……」

幸せな気持ちが、一瞬にして心を満たしていく。
少ししてから、ゆっくりと離れていくその端正な顔をじっと見つめると、冬悟はフッと笑った。

「…ありがとう。」

最近は、冬悟からも、前以上にキスやハグをしてくれるようになった。

そして何より、よく笑ってくれるようになった。

このことが、俺の心を1番満たしてくれている。

「どーいたしまして!」

ニッと笑い、ソファに座り直した冬悟の腕に、勢いよく飛び込んだ―。


この時は、冬悟が俺のバイト最終日を聞いてきた理由なんて、知る由もなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生しても推しが尊い!〜京橋くんとの学園ライフが尊死案件〜オタクでよかった、君に出会えたから

中岡 始
BL
前世の俺は、社畜オタクだった。 唯一の救いは、“黒星騎士団”という漫画のキャラ、レオ様を推すこと。 だがある日突然── 事故で命を落とした俺は、目覚めたら高校生になっていた。 しかも隣の席にいたのは、前世で推してたキャラの激似男子⁉ 「え、レオ様…!? いや、現実!? ちょ、待って尊死するんだけど!?」 これは、転生オタク男子が “リアル推し” と出会ってしまった尊さ特化の学園ラブコメ。 推しに手が届きそうで届かない、心拍数限界突破の日々。 創作と感情の狭間で、「推し」と「恋」の境界がじわじわ崩れていく── 「これはもう、ただの供給じゃない。 俺と“君”の物語として、生きてるんだ」 尊死系BL/オタクあるある満載/文化祭・学園SNS・保健室…青春全部乗せ! 笑って泣ける、“愛”と“推し活”の二重螺旋ラブストーリー、開幕!

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

突然現れたアイドルを家に匿うことになりました

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 「俺を匿ってくれ」と平凡な日向の前に突然現れた人気アイドル凪沢優貴。そこから凪沢と二人で日向のマンションに暮らすことになる。凪沢は日向に好意を抱いているようで——。 凪沢優貴(20)人気アイドル。 日向影虎(20)平凡。工場作業員。 高埜(21)日向の同僚。 久遠(22)凪沢主演の映画の共演者。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

処理中です...