虹かけるメーシャ

大魔王たか〜し

文字の大きさ
26 / 69
異世界フィオール

26話 新たな仲間と新たな敵

しおりを挟む
 メーシャは覚悟を受け取り、灼熱さんを仲間へと勧誘したのだった。

「あーしはドラゴン=ラードロを倒して、邪神を倒して世界を救うけど……あんたはどうすんの?」

 メーシャは挑発的に笑う。

「あっしは……あっしは……」

 灼熱さんは迷いを持った目でメーシャとヒデヨシとバトルヌートリアとデスハリネズミ、そして己の手のひらを見回す。
 死地におもむくつもりであった。せめて世界に、ドラゴン=ラードロにゲッシの魂ありと見せつけられればそれで良かった。子分の無念だけでも晴らせれば良かった。それさえ叶えばもうどうなっても良かった。
 だが…………メーシャのひと言で灼熱さんに欲望が、期待が、想い描きたい明日が生まれてしまった。

「メーシャお嬢様って実戦で負けたことないんですよ。それに、もしまたラードロになったとしても、僕やお嬢様がいれば何度でも戦えます」

 ヒデヨシが力強く頷いて見せる。

「ワシは灼熱さんがこの勇者のお嬢ちゃんについていくなら応援させてもらうぜ。会ったばかりで滅多なことは言えないが、こんなどこの馬の骨とも分からねえゲッシなのに必死に住民になれるよう取り計らってくれたんだ」

「あたいは灼熱さんがゲッシの誇りをドラゴン=ラードロに見せつけてくれるのは嬉しい。でも、を語り継ぐより、伝説を残した英雄が凱旋した方がゲッシの誇りを守れると思うね。だから、少しでも助かる確率が上がるなら仲間ってのもいいんじゃないかい?」

 バトルヌートリアとデスハリネズミが後押しする。

「ふたりとも……。そうだな」

 灼熱さんの瞳に炎が宿る。

「……お嬢、ヒデヨシさん、訊いても良いかい?」

 灼熱さんがメーシャに向き直る。

「なあに?」

「アツくなりすぎると周りが見えねえようになる。それでも一緒にいてくれんのかい?」

「見えないなら僕が目になりましょうか? 僕も実は炎の扱いが上手いんです。灼熱さんのアツさの向きくらいなら調整しますよ。でも、その代わり……」

 灼熱=ラードロ戦で手に入れた能力のおかげで、格段に炎の扱いが上手くなったヒデヨシ。火力は負けるだろうが、細かい作業なら自信アリだ。

「火力なら誰にも負けねえぜぃ!!」

「じゃあなんも問題ないね。火力期待してるよ」

「…………あともうひとつ。メーシャのお嬢、あっしはあんたの傘下に加わるわけだ。だからお嬢、あんたがやべぇ時あっしは命を張らせてもらうつもりだ。その代わり、と言っちゃなんだが……あっしの英雄灼熱道、手伝ってくれい!!」

 ──バッ。

 灼熱さんは勢いよく頭を下げた。誠意を見せたのだ。

「……分かった」

 メーシャは短くそう答えた。余計な問答はもういらないと思ったからだ。

「ありがてぇ……!! では、このハムオブザスター灼熱を……あっ、よ~ろ~し~く~!!」

 灼熱さんが仲間に加わった。


 ●     ●     ●

 結局デスハリネズミとバトルヌートリアは泉の洞窟のこの拠点住所とし、農業をなりわいとしていくことになった。
 ある程度の経験はあるが、ハムオブザスターという種族の才能を考えれば足を引っ張ってしまうことがほぼ確実なので、そうなるくらいなら拠点後ろを気にせず思いっきり戦えるよう努めるとのことだ。
 灼熱さんはメーシャの仲間、つまり臨時騎士の預かりとして登録。対ドラゴン=ラードロ作戦後には功績しだいで正式な騎士になるか、一般市民となるか選択できる。これで晴れてアレッサンドリーテの住民となった。

「たしかまた近いうちに、ラードロに奪われた砦を抑えるんだったっけ?」

 今日はカーミラ宅で今後の予定を立てるのも踏まえて、メーシャとカーミラとヒデヨシでアフタヌーンティーを楽しんでいた。灼熱さんとデウスはゲッシのみんなで農場の方だ。

 お家の壁は薄い水色で二階建て、庭もウッドデッキやある程度の家庭菜園ができる程度と外観は派手ではないものの、中に入ればシンプルながらも上質な家具家電が取り揃えられていて、しかも執事のおじいちゃんのお出迎え付き。さすが近衛騎士団長だ。

「そうね。元々廃れた廃墟のような砦をオークが占領してたんだけど、そこに目を付けたラードロ軍がオークたちを手下にして砦を補強、近隣の町やアレッサンドリーテ軍を襲ってるとか。そこは行軍するには無視できない位置にあるから、準備ができ次第砦を取り返そうと決まってね」

 やわらかな花の香りがする紅茶をひとくち。
 カーミラは今日一応オフなので、珍しくいつものブルーミスリルメイルを着ていない。
 淡い緑の絹のワンピースに濃い緑のカーディガンだ。

「それってあーしも参加すんの? ドラゴン=ラードロ前にできるだけ戦闘経験を積んどきたいんだけど」

 メーシャはカーミラ特製の苦いお茶だ。気に入ったらしい。
 ちなみにメーシャも今日は制服や体操服ではなく、ノースリーブのトップスにショートパンツとカジュアルスタイルだ。

「そうですね、お嬢様が今戦えているのは灼熱さん以降トレントくらい。プルマルも逃げちゃいますし、街の周辺は平和そのもの。このまま決戦というには不安が残りますね」

 ヒデヨシが両手で紅茶のカップを傾ける。

「う~ん…………今からだと遊撃隊ということになるけど、参加する? 役割はジョセフィーヌ殿下の安否がわかる情報を探すことだから、戦闘できるかは分からないけど」

 カーミラはまいにちのようにメーシャとお話をしているので、今ではなんとか敬語を使わなくても緊張しないようになった。

「うん、やるやる! 機密情報とか集まってるとこなんて幹部とか居そうだし、むしろあんがとね!」

「あ、でもそれまで少し時間があるし、先に別件でモンスター討伐の依頼が来てるからメーシャちゃんに回そうか。それと、最近はメーシャちゃんが頑張ってくれたおかげで街の中も静かになってきたから、良い機会だし冒険者ギルドに行ってみるのも良いかも」

 カーミラがスマホのようなタブレットをスワイプし、データが色々描かれたホログラムを空中に出現させる。

「ギルド! いいかも! ゲームとかアニメ好きなら一度は憧れるロマンの塊! 職業診断というか、適正みたいなの測ってもらえるのかな?」

 メーシャはワクワクで胸いっぱいだ。

「志望者の冒険者適正だとか、職業適正、クエストの得手不得手を診断する魔法機械がギルドにはあるらしいよ。詳しくは知らないけど、診断が正確だからクエストの無理な受注が減って、その機械導入してから亡くなった方が10分の1以下に減ったとか」

「おお、すご! これは絶対やってみないとだね。……そんで、モンスター討伐ってのは?」

「これは比較的緊急の依頼で近隣住民は既に避難済みなんだけど、なかなか厄介なモンスターでね。……数百年前当時のアレッサンドリーテ王と賢者数十人、数百人の兵士の命と引き換えに封印した、獅子の頭と蛇の尻尾を持つ山羊のモンスターだとか。その封印がつい最近何者かによって解かれた。
 能力についての記述はないけど、強力な上に縄張り意識が強いからヒトも他のモンスターも数多くが犠牲になったみたい。
 当時の兵の練度や魔法技術は今ほどでは無いにしても、この量の被害が出ているのは異常ね。今の騎士が戦ってもタダじゃ済まないかも。それで名前は、えっと…………」

 カーミラがホログラムを操作して名前の欄を探すが、メーシャはその特徴に聞き覚えがあった。もし勘違いでなければ、そのモンスターの名前は……。

「──だね」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

処理中です...