虹かけるメーシャ

大魔王たか〜し

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職業 《 勇者 》

28話 冒険者ギルド

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 ここは冒険者ギルドシタデル、アレッサンドリーテ支部。シタデルってーのは数多のギルドが協力したり情報交換したり、有事の際はここを砦として戦ったりする拠点だ。そう言う理由だからか、街から少し出たところに建てられている。結界から出てるのは気に食わねーが、シタデルも高級結界を張ってるし軍の砦街から少し出てるらしーから許してやるか。ちなみにこのシタデルはアレッサンドリーテで2番目に大きい。

 そしてオレはベイブ。鍵開けシーフのベイブだ。このギルドのいわゆる門番、兼みてーなもんだ。親友のドリンクメイジのマークとオレは昔っからの仲で、地元の後輩から狂犬ブラザーなんて二つ名で呼ばれたりして恐れられてたぜ。

「──で、だ。聞いたかマーク」

 オレはここでハードボイルドにカップを傾ける。当然スコッチだ……と、言いたいところだが、オレはこう見えて下戸ゲコってやつでな。もっぱら麦茶だ。
 場所はいつもの奥から2番目のテーブル。ここは入口もクエスト受付も見えるサイコーの場所で、オレたちの特等席だ。まー、先客がいたらオレは優しいから譲ってやらなくもない。

「なにがだベイブ。オレは今ポンペインファイターのフロッグと切ってて忙しいんだ」

 マークはフロッグと毎日のように睨み合ってる。ライバルだ。

「今日、新人が入るらしーぜ。オレの情報網によると、ヤツは遠方からやってきた無知なクリーンハンド。つまり、所属ギルドも決まってないって噂だ」

 今日ハーレムギルドのワルターさんとギルドマスターが喋ってるのを聞いたぜ。
 ワルターさんは隣町のトゥルケーゼのシタデルを拠点にしてるが、アレッサンドリーテシタデルのギルドマスターと仲が良いらしい。なんでも、子どもの頃の恩人だとか。……これはギルドマスターとワルターさんが喋ってるのを聞いたヤツだぜ。

「なに?」

 フロッグとの勝負が終わったマークの眉間にシワがよった。
 ようやくオレの話を聞く気になったみたいだ。ったく、世話が焼けるヤツだぜ。

「だから、クリーンハンドの田舎モンが、今日ここで冒険者ギルド登録するって話だ。……で、所属ギルドが決まる前に適正審査と、新人研修があるだろ? だから……」

 新人研修は基本的に先輩冒険者が立候補してやることになってるんだ。理由はふたつ。ひとつめ、新人ニュービーにとっては現役の生の技術を学べる。ふたつめ、ギルドにとっては新人を勧誘しやすくなるってこった。
 実際、研修を請け負ったギルドに新人がそのまま入るってことは珍しくないからな。

 そしてオレたちは新人教育がだ~い好きなんだ。
 勧誘したいワケじゃない。なにも知らない新人ちゃんたちに、ってのを教える大事な仕事で、そういう慈善事業みたいな人の役にたつことが生きがいなんだよ。
 ちょ~っと厳しすぎて辞めちまうヤツもいるが、そういうヤツはオレたちがなにもしなくてもじきに辞めちまう。そうだろ?
 だから、時間を有効活用できるしwin-winってこったな!

「じゃあ、、してやらねえとな! ガハハッ」


 * * * * *

 
 メーシャは冒険者になるため、アレッサンドリーテにある冒険者ギルドのシタデルに来ていた。

「ほえ~ここが冒険者ギルドか。外観石造りの立派な砦ってカンジだったけど、中はゲームに出てくる酒場って雰囲気でイイね。なんか流れてる音楽もそれっぽいし」

 砦とはいっても、通常は依頼の受け付けをしたり食事をしたり、一部冒険者はここで寝泊まりしたりと、平常時にはには居住空間としての側面が強いのだ。

「ここはシタデルって建物で、冒険者ギルドの集会所みたいなところみたいですね。ギルドに入るって言っても、目的や方針によって色々なギルドがあって、その中から選択して入るか、もしくは実力や信用を上げて立ち上げるか、考える必要がありそうです」

 大豆ほどの大きさの端末を見ながらヒデヨシが言う。この端末はヒデヨシもこれから必要になるだろうからとカーミラが今朝くれたものだ。
 この世界のスマホのような機械は"パルトネル"と呼ばれ、電力の代わりに魔力でエネルギーを使って動くのだとか。

『無理にすぐ決めなくても、しばらくは無所属として活動して、昇級する時に改めて所属ギルドを決めてもいいぜ』

 冒険者にはランクがあって『星1』からスタートし、クエストをクリアしたりクエスト外でも実績を得たりすると昇級試験を受けられ、その試験に合格すると星の数が増えていく。
 星1は初級者で、いわゆるお試し期間。薬草採取やプルマル討伐、回復ポーションの配達などの簡単なクエストを受けることができ、所属ギルドを決めるのも星2になるまで保留にできる。
 星4までは登録シタデル内のみの試験で昇級できるが、それ以上星を増やしたい場合は本部に赴き専用の試験を受ける必要がある。

「今はなにも分かんないし、所属は後でいっか。そんじゃ受け付け行こっか」


 ●     ●     ●


「ようこそ、冒険者ギルドのアレッサンドリーテシタデルへ。本日はどのようなご利用でしょうか? クエストのご依頼でしょうか、クエストの受注でしょうか」

 メーシャたちが来たのに気が付くと、受け付けのお姉さんが笑顔で応対を始めた。

「えと、冒険者に登録? したいんだけど、今って大丈夫かな」

「冒険者登録ですね、大丈夫ですよー。おひとりですか?」

「僕もです」

 メーシャの肩の上でヒデヨシが手を挙げた。

「おふたりですね。……ではお名前と、希望動機、あと入りたいギルドの希望があればお願いします」

 お姉さんはパソコンをテキパキと操作しながらメーシャとヒデヨシに質問する。

「名前は"いろはメーシャ"。希望動機は、強いモンスターに果敢に挑む冒険者ってカッコいいな~って小さい頃から憧れてて、それで今は他のことしてるんだけど、ちょっと時間があったからいい機会だしやろうかなって。今いるところからの許可はあります。入りたいギルドは特になし……かな」

「名前は"いろはヒデヨシ"。メーシャお嬢様がギルドにはいるなら、僕は背中を守りたいなって思いました。入りたいギルドはお嬢様と一緒で特にないですけど、強いて言うなら本業の都合上ずっとクエストを受け続けることは難しいので、ある程度融通がきくところか、自分たちで設立できればなと思います」

「…………はい。ありがとうございます。では、こちらの契約書を確認の上、よろしければ手のひらをかざして頂けますか?」

 お姉さんはパソコンに指をかざしてホログラムの契約書をふたつ空中に出現させ、メーシャとヒデヨシの前にそれぞれ移動させる。

「おぉ~、ハイテクだ…………あ、読まないと」

 メーシャは魔法技術に感動したが、すぐに気を取り直して契約書に目を通していった。

 内容としては、冒険者どうしで不用意に争わないこと、シタデルの警告が出された場合それに従うこと、クエスト内で手に入れたものは基本的にシタデルに報告すること、トラブル発生時はすみやかにシタデルに連絡の上指示に従って対処、もしくは退避すること、基本的に現在いる国の法に則った行動をすること。

 規約をを破った場合、冒険者から追放、法を犯した場合国と連携し逮捕の上相応の罰を。

 損害を出した場合、基本的には3分の1冒険者負担。残りをシタデルが払う。ただし、悪質な場合は全額負担。やむを得ない場合の損害はシタデルが全額負担する場合もある。

 クエスト中怪我をして動けなくなった場合、シタデルが救助隊を派遣して治療を行う。上記の治療、およびシタデル建物内の回復装置使用は無料。

 死亡した場合、基本的に希望の墓地に埋葬するが、希望がない場合は登録したシタデルの地域の墓地に埋葬する。ただし、死亡したと断定された場合のみ遺体回収班を派遣する。
 財産は家族やギルドメンバーに分配、もしくは冒険者の希望にそって使用する。~などなど、他にも色々書かれていた。

「──おけ」

「僕も読み終わりました」

 契約書に目を通したふたりはホログラムの契約書に手をかざす。すると、契約書から光が出て手のひらをスキャン。を登録された。
 魔力紋というのは魔力の波長のことで個々で少しずつ違い、指紋よりも偽物を作りにくいのだとか。

「はい、承りました。では、最後に適正審査がありますので別室へお願いします」

 そう言ってお姉さんは立ち上がり、メーシャたちを隣の部屋に案内する。

「はーい。…………ん? 審査ってここでするんですか?」

 案内された部屋にはいくつかの座り心地の良さそうな椅子以外なにもなかった。

「はい、そうですよー。……ではお好きな椅子におかけください。審査をするための魔法機械マキナはこちらです」

 お姉さんは持ってきていたバイザーのようなものをメーシャとヒデヨシに渡す。これを使って審査するのだろう。
 ちなみに、マキナとは魔法で動く機械のことだ。

「ども、ありがとうございます」

「僕のサイズのバイザーもあるんですね」

「そうですね。小さな支部だと置いていない事もあるんですが、冒険者もニンゲンばかりじゃないので色々なサイズを置いているんですよ」

「そうなんですね!」

 ドワーフはニンゲン種より少し頭が大きいし、ホビットは小さめ。それに、住民として認められたモンスターも冒険者になることができるので、色々な大きさが必要なのだ。
 魔法でサイズ変更できないのは、このバイザー自体が高度な術式を組み込んだ魔法機械マキナなので、下手に上から魔法をかけてしまうと不具合の原因になってしまうからだ。

「……装着完了だし~!」

「あ、ピッタリですね」

 メーシャとヒデヨシはそれぞれイイ感じの椅子に座り、バイザーもつけて準備万端だ。

「──では、審査開始です……!」

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