sugar sugar honey! 甘くとろける恋をしよう

乃木のき

文字の大きさ
11 / 119
第一章 First love

3

しおりを挟む
「先生って、こういうの慣れていそう」
 口を突いて出た言葉に周防は「ん?」と首を傾げる。
「こういうのって?」
「ドアを開けるのとか、シートベルトをつけるのとか、なんか女の子が喜びそうだし」

 言いながら自分で自分をぶっ叩きたくなった。
 変なことを口にしている自覚がある。まるでヤキモチを焼いているみたいだ。そんなつもりはないのに。

 周防は、ははっと笑うと車を動かし始めた。
 静かにバックしていくタイヤの下の砂利が鳴る。

「そんなことないけどなあ。あ、でもサークルとかで出かけることが多かったから身についたのかも」
「サークル?」
「そう。大学に行くとそういうのがあるわけよ」

 周防は蜜が何も言わなくても自宅方向へと車を向けた。
「住所を言わなくてわかるんですか?」
「んーまぁ、こっちであってるだろ?」
 周防はハンドルを握りながらチラリと蜜を見た。

「生徒の住んでる場所は最初にチェックしてるからさ。でも細かい場所まではわかんないから、近くなったら教えて」
「そんなことまでするんですか?」
 順調に流れに乗った車はスムーズに走行している。いつもはバスでゆっくり走る景色がいつもより早いスピードで流れていった。

「まあ、町名くらいはね。ものすごく遠い奴は難しいけどな。だいたいの生徒のは把握してるつもり」

 運転に集中しているからか、周防の答えは途切れ途切れで、だからこそ蜜も落ち着いて質問することが出来た。

 レオくんと親しく呼ぶこともできないし、ほかのクラスメイトのように仲良くすることもできない。
 でもこの空間だけは蜜と周防の二人きりだ。
 周防は急かしたり話しかけたりせず、密のペースを尊重しているようだった。

 ラジオがゆるりとした洋楽を流している。
 夕暮れの空と相まって、なんだか贅沢で居心地がいい。

「先生ってみんなに名前で呼ばれてて嫌じゃないんですか?」
 思いつくままに聞いてみると、周防は迷惑がるでもなくひとつづつ答えてくれる。

「別に嫌ってことはないかな。それで舐められたら困るし注意するけど。最近の子ってその辺の線引きがうまいよな」
「最近の子って。先生とそんなに変わらないでしょ?」
「全然違うよ。おれたちとは人種が違うってかんじするもん」

 周防は何かを考えるように言葉を切って「蜜も」と続けた。
「何を考えているのかよくわかんないって思うし」
「ぼくがですか?」
 驚いて瞬きを繰り返すと周防は「そう」と視線を投げてよこした。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

リスタート 〜嫌いな隣人に構われています〜

黒崎サトウ
BL
男子大学生の高梨千秋が引っ越したアパートの隣人は、生涯許さないと決めた男であり、中学の頃少しだけ付き合っていた先輩、柳瀬英司だった。 だが、一度鉢合わせても英司は千秋と気づかない。それを千秋は少し複雑にも思ったが、これ好都合と英司から離れるため引越しを決意する。 しかしそんな時、急に英司が家に訪問してきて──? 年上執着×年下強気  二人の因縁の恋が、再始動する。 *アルファポリス初投稿ですが、よろしくお願いします。

初恋ミントラヴァーズ

卯藤ローレン
BL
私立の中高一貫校に通う八坂シオンは、乗り物酔いの激しい体質だ。 飛行機もバスも船も人力車もダメ、時々通学で使う電車でも酔う。 ある朝、学校の最寄り駅でしゃがみこんでいた彼は金髪の男子生徒に助けられる。 眼鏡をぶん投げていたため気がつかなかったし何なら存在自体も知らなかったのだが、それは学校一モテる男子、上森藍央だった(らしい)。 知り合いになれば不思議なもので、それまで面識がなかったことが嘘のように急速に距離を縮めるふたり。 藍央の優しいところに惹かれるシオンだけれど、優しいからこそその本心が掴みきれなくて。 でも想いは勝手に加速して……。 彩り豊かな学校生活と夏休みのイベントを通して、恋心は芽生え、弾んで、時にじれる。 果たしてふたりは、恋人になれるのか――? /金髪顔整い×黒髪元気時々病弱/ じれたり悩んだりもするけれど、王道満載のウキウキハッピハッピハッピーBLです。 集まると『動物園』と称されるハイテンションな友人たちも登場して、基本騒がしい。 ◆毎日2回更新。11時と20時◆

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。

山法師
BL
 南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。  彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。  そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。 「そーちゃん、キスさせて」  その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。

僕を守るのは、イケメン先輩!?

BL
 僕は、なぜか男からモテる。僕は嫌なのに、しつこい男たちから、守ってくれるのは一つ上の先輩。最初怖いと思っていたが、守られているうち先輩に、惹かれていってしまう。僕は、いったいどうしちゃったんだろう?

BL小説家ですが、ライバル視している私小説家に迫られています

二三@悪役神官発売中
BL
BL小説家である私は、小説の稼ぎだけでは食っていけないために、パン屋でバイトをしている。そのバイト先に、ライバル視している私小説家、穂積が新人バイトとしてやってきた。本当は私小説家志望である私は、BL小説家であることを隠し、嫉妬を覚えながら穂積と一緒に働く。そんな私の心中も知らず、穂積は私に好きだのタイプだのと、積極的にアプローチしてくる。ある日、私がBL小説家であることが穂積にばれてしまい…? ※タイトルを変更しました。(旧題 BL小説家と私小説家がパン屋でバイトしたらこうなった)2025.5.21

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

熱しやすく冷めやすく、軽くて重い夫婦です。

七賀ごふん
BL
【何度失っても、日常は彼と創り出せる。】 ────────── 身の回りのものの温度をめちゃくちゃにしてしまう力を持って生まれた白希は、集落の屋敷に閉じ込められて育った。二十歳の誕生日に火事で家を失うが、彼の未来の夫を名乗る美青年、宗一が現れる。 力のコントロールを身につけながら、愛が重い宗一による花嫁修業が始まって……。 溺愛御曹司×世間知らず。現代ファンタジー。 表紙:七賀ごふん

処理中です...