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第一章 First love
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「先生って、こういうの慣れていそう」
口を突いて出た言葉に周防は「ん?」と首を傾げる。
「こういうのって?」
「ドアを開けるのとか、シートベルトをつけるのとか、なんか女の子が喜びそうだし」
言いながら自分で自分をぶっ叩きたくなった。
変なことを口にしている自覚がある。まるでヤキモチを焼いているみたいだ。そんなつもりはないのに。
周防は、ははっと笑うと車を動かし始めた。
静かにバックしていくタイヤの下の砂利が鳴る。
「そんなことないけどなあ。あ、でもサークルとかで出かけることが多かったから身についたのかも」
「サークル?」
「そう。大学に行くとそういうのがあるわけよ」
周防は蜜が何も言わなくても自宅方向へと車を向けた。
「住所を言わなくてわかるんですか?」
「んーまぁ、こっちであってるだろ?」
周防はハンドルを握りながらチラリと蜜を見た。
「生徒の住んでる場所は最初にチェックしてるからさ。でも細かい場所まではわかんないから、近くなったら教えて」
「そんなことまでするんですか?」
順調に流れに乗った車はスムーズに走行している。いつもはバスでゆっくり走る景色がいつもより早いスピードで流れていった。
「まあ、町名くらいはね。ものすごく遠い奴は難しいけどな。だいたいの生徒のは把握してるつもり」
運転に集中しているからか、周防の答えは途切れ途切れで、だからこそ蜜も落ち着いて質問することが出来た。
レオくんと親しく呼ぶこともできないし、ほかのクラスメイトのように仲良くすることもできない。
でもこの空間だけは蜜と周防の二人きりだ。
周防は急かしたり話しかけたりせず、密のペースを尊重しているようだった。
ラジオがゆるりとした洋楽を流している。
夕暮れの空と相まって、なんだか贅沢で居心地がいい。
「先生ってみんなに名前で呼ばれてて嫌じゃないんですか?」
思いつくままに聞いてみると、周防は迷惑がるでもなくひとつづつ答えてくれる。
「別に嫌ってことはないかな。それで舐められたら困るし注意するけど。最近の子ってその辺の線引きがうまいよな」
「最近の子って。先生とそんなに変わらないでしょ?」
「全然違うよ。おれたちとは人種が違うってかんじするもん」
周防は何かを考えるように言葉を切って「蜜も」と続けた。
「何を考えているのかよくわかんないって思うし」
「ぼくがですか?」
驚いて瞬きを繰り返すと周防は「そう」と視線を投げてよこした。
口を突いて出た言葉に周防は「ん?」と首を傾げる。
「こういうのって?」
「ドアを開けるのとか、シートベルトをつけるのとか、なんか女の子が喜びそうだし」
言いながら自分で自分をぶっ叩きたくなった。
変なことを口にしている自覚がある。まるでヤキモチを焼いているみたいだ。そんなつもりはないのに。
周防は、ははっと笑うと車を動かし始めた。
静かにバックしていくタイヤの下の砂利が鳴る。
「そんなことないけどなあ。あ、でもサークルとかで出かけることが多かったから身についたのかも」
「サークル?」
「そう。大学に行くとそういうのがあるわけよ」
周防は蜜が何も言わなくても自宅方向へと車を向けた。
「住所を言わなくてわかるんですか?」
「んーまぁ、こっちであってるだろ?」
周防はハンドルを握りながらチラリと蜜を見た。
「生徒の住んでる場所は最初にチェックしてるからさ。でも細かい場所まではわかんないから、近くなったら教えて」
「そんなことまでするんですか?」
順調に流れに乗った車はスムーズに走行している。いつもはバスでゆっくり走る景色がいつもより早いスピードで流れていった。
「まあ、町名くらいはね。ものすごく遠い奴は難しいけどな。だいたいの生徒のは把握してるつもり」
運転に集中しているからか、周防の答えは途切れ途切れで、だからこそ蜜も落ち着いて質問することが出来た。
レオくんと親しく呼ぶこともできないし、ほかのクラスメイトのように仲良くすることもできない。
でもこの空間だけは蜜と周防の二人きりだ。
周防は急かしたり話しかけたりせず、密のペースを尊重しているようだった。
ラジオがゆるりとした洋楽を流している。
夕暮れの空と相まって、なんだか贅沢で居心地がいい。
「先生ってみんなに名前で呼ばれてて嫌じゃないんですか?」
思いつくままに聞いてみると、周防は迷惑がるでもなくひとつづつ答えてくれる。
「別に嫌ってことはないかな。それで舐められたら困るし注意するけど。最近の子ってその辺の線引きがうまいよな」
「最近の子って。先生とそんなに変わらないでしょ?」
「全然違うよ。おれたちとは人種が違うってかんじするもん」
周防は何かを考えるように言葉を切って「蜜も」と続けた。
「何を考えているのかよくわかんないって思うし」
「ぼくがですか?」
驚いて瞬きを繰り返すと周防は「そう」と視線を投げてよこした。
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