33 / 119
第一章 First love
テスト週間
しおりを挟む
一学期最後の試練がやってくる。
テスト範囲が提示されると教室は阿鼻叫喚の地獄絵図になった。
もちろん勉強が本職なんだけど他に楽しいことがいっぱいありすぎて、テストの事なんて全く頭になかったひとたちが教室で頭を抱えている。
蜜もその中の一人だ。
先日発覚した初恋に心がとらわれすぎていた。
一週間前からは職員室への立ち寄りも用事のない教師への接触も一切が禁止になった。
もちろんわからないことを聞きに行くのはいいけれど、お互いの潔白のために個人的に接することはよしとされていない。
周防はなるべく教室にいて生徒たちの質問に答えらえるようにしていたけれど、蜜にとってはさらに距離が開いた気がしてしまった。
今までだって特別なわけじゃない。
勝手に嫉妬して落ち込んでいる事に気がつくはずもない。
送ってもらったくせに態度が悪かったのはこっちだし、先に出会っていたのは両親の方なんだから蜜がとやかく言うことではないのだ。
わかっているのに気持ちがついていかない。
ギクシャクとしているのは蜜ばかりで周防には何の変化もないのもさらに腹立たしかった。
自分ばかりが翻弄されている。
「どした、蜜なんか元気なくない?」
「勉強のし過ぎか?」
太一も裕二もささやかな変化に気がついて心配そうに声をかけてくれた。
そんなに顔に出ていたのかと焦りながらわざとらしいくらい元気な声を出した。
「えーそう? やっぱテスト前だからかな」
「わかる。範囲やばいもん。焦るよな」
「赤点だけは避けたい」
そこそこの進学校だから赤点は結構厳しい扱いを受ける。
楽しい夏休みの前にここが頑張りどころだということは承知している。勉強に打ち込もうとするのにすぐに頭の中は周防でいっぱいになり、はかどらないことに蜜はイラついてもいた。
自分の心なのにうまくコントロールができない。自由にならない。
別に先生なんか好きじゃない、と呪文のように唱えたけれどさらに意識することになってその作戦は失敗に終わった。
家に帰って部屋に閉じこもっていても、駐車場で車が動く音がしたら周防かもしれないとのぞきにいってしまう。
違うとわかって舌打ちをした。
どうせ店にいる周防を見たって心がざわつくのだ。
見ないに越したことはないのに、会いたいと思う矛盾。
蜜に好きだと告白してくれた子たちはみんなこんなわけのわからないものに翻弄されていたんだろうか。だったら申し訳なかった。もっと親身に答えるべきだった。
そもそも蜜なんかに苦しむ必要はなかったのに。
こんなにちっぽけで子供じみた奴なんて、好きになってもらえる資格がない。そばにいたらきっと呆れるだろう。
机に突っ伏していたらスマホが音を立ててメッセージの着信を教えた。
周防からだった。急いで開く。
『一応だけどテスト期間だから店にもいかないことにする。送ってもやれないけどテストがんばれよ』
たったそれだけの文面を何度も読み返した。
わざわざ言われなくてもわかってますよ、と声に出す。どっちみちいつも一緒に帰っているわけじゃないし。次の約束をしているわけじゃないし。
気にかけてくれたメッセージが嬉しいのに、感じる距離感がさみしい。
テスト範囲が提示されると教室は阿鼻叫喚の地獄絵図になった。
もちろん勉強が本職なんだけど他に楽しいことがいっぱいありすぎて、テストの事なんて全く頭になかったひとたちが教室で頭を抱えている。
蜜もその中の一人だ。
先日発覚した初恋に心がとらわれすぎていた。
一週間前からは職員室への立ち寄りも用事のない教師への接触も一切が禁止になった。
もちろんわからないことを聞きに行くのはいいけれど、お互いの潔白のために個人的に接することはよしとされていない。
周防はなるべく教室にいて生徒たちの質問に答えらえるようにしていたけれど、蜜にとってはさらに距離が開いた気がしてしまった。
今までだって特別なわけじゃない。
勝手に嫉妬して落ち込んでいる事に気がつくはずもない。
送ってもらったくせに態度が悪かったのはこっちだし、先に出会っていたのは両親の方なんだから蜜がとやかく言うことではないのだ。
わかっているのに気持ちがついていかない。
ギクシャクとしているのは蜜ばかりで周防には何の変化もないのもさらに腹立たしかった。
自分ばかりが翻弄されている。
「どした、蜜なんか元気なくない?」
「勉強のし過ぎか?」
太一も裕二もささやかな変化に気がついて心配そうに声をかけてくれた。
そんなに顔に出ていたのかと焦りながらわざとらしいくらい元気な声を出した。
「えーそう? やっぱテスト前だからかな」
「わかる。範囲やばいもん。焦るよな」
「赤点だけは避けたい」
そこそこの進学校だから赤点は結構厳しい扱いを受ける。
楽しい夏休みの前にここが頑張りどころだということは承知している。勉強に打ち込もうとするのにすぐに頭の中は周防でいっぱいになり、はかどらないことに蜜はイラついてもいた。
自分の心なのにうまくコントロールができない。自由にならない。
別に先生なんか好きじゃない、と呪文のように唱えたけれどさらに意識することになってその作戦は失敗に終わった。
家に帰って部屋に閉じこもっていても、駐車場で車が動く音がしたら周防かもしれないとのぞきにいってしまう。
違うとわかって舌打ちをした。
どうせ店にいる周防を見たって心がざわつくのだ。
見ないに越したことはないのに、会いたいと思う矛盾。
蜜に好きだと告白してくれた子たちはみんなこんなわけのわからないものに翻弄されていたんだろうか。だったら申し訳なかった。もっと親身に答えるべきだった。
そもそも蜜なんかに苦しむ必要はなかったのに。
こんなにちっぽけで子供じみた奴なんて、好きになってもらえる資格がない。そばにいたらきっと呆れるだろう。
机に突っ伏していたらスマホが音を立ててメッセージの着信を教えた。
周防からだった。急いで開く。
『一応だけどテスト期間だから店にもいかないことにする。送ってもやれないけどテストがんばれよ』
たったそれだけの文面を何度も読み返した。
わざわざ言われなくてもわかってますよ、と声に出す。どっちみちいつも一緒に帰っているわけじゃないし。次の約束をしているわけじゃないし。
気にかけてくれたメッセージが嬉しいのに、感じる距離感がさみしい。
7
あなたにおすすめの小説
初恋ミントラヴァーズ
卯藤ローレン
BL
私立の中高一貫校に通う八坂シオンは、乗り物酔いの激しい体質だ。
飛行機もバスも船も人力車もダメ、時々通学で使う電車でも酔う。
ある朝、学校の最寄り駅でしゃがみこんでいた彼は金髪の男子生徒に助けられる。
眼鏡をぶん投げていたため気がつかなかったし何なら存在自体も知らなかったのだが、それは学校一モテる男子、上森藍央だった(らしい)。
知り合いになれば不思議なもので、それまで面識がなかったことが嘘のように急速に距離を縮めるふたり。
藍央の優しいところに惹かれるシオンだけれど、優しいからこそその本心が掴みきれなくて。
でも想いは勝手に加速して……。
彩り豊かな学校生活と夏休みのイベントを通して、恋心は芽生え、弾んで、時にじれる。
果たしてふたりは、恋人になれるのか――?
/金髪顔整い×黒髪元気時々病弱/
じれたり悩んだりもするけれど、王道満載のウキウキハッピハッピハッピーBLです。
集まると『動物園』と称されるハイテンションな友人たちも登場して、基本騒がしい。
◆毎日2回更新。11時と20時◆
リスタート 〜嫌いな隣人に構われています〜
黒崎サトウ
BL
男子大学生の高梨千秋が引っ越したアパートの隣人は、生涯許さないと決めた男であり、中学の頃少しだけ付き合っていた先輩、柳瀬英司だった。
だが、一度鉢合わせても英司は千秋と気づかない。それを千秋は少し複雑にも思ったが、これ好都合と英司から離れるため引越しを決意する。
しかしそんな時、急に英司が家に訪問してきて──?
年上執着×年下強気
二人の因縁の恋が、再始動する。
*アルファポリス初投稿ですが、よろしくお願いします。
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。
山法師
BL
南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。
彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。
そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。
「そーちゃん、キスさせて」
その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。
僕を守るのは、イケメン先輩!?
刃
BL
僕は、なぜか男からモテる。僕は嫌なのに、しつこい男たちから、守ってくれるのは一つ上の先輩。最初怖いと思っていたが、守られているうち先輩に、惹かれていってしまう。僕は、いったいどうしちゃったんだろう?
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
僕の部下がかわいくて仕方ない
まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?
BL小説家ですが、ライバル視している私小説家に迫られています
二三@悪役神官発売中
BL
BL小説家である私は、小説の稼ぎだけでは食っていけないために、パン屋でバイトをしている。そのバイト先に、ライバル視している私小説家、穂積が新人バイトとしてやってきた。本当は私小説家志望である私は、BL小説家であることを隠し、嫉妬を覚えながら穂積と一緒に働く。そんな私の心中も知らず、穂積は私に好きだのタイプだのと、積極的にアプローチしてくる。ある日、私がBL小説家であることが穂積にばれてしまい…?
※タイトルを変更しました。(旧題 BL小説家と私小説家がパン屋でバイトしたらこうなった)2025.5.21
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる