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第一章 First love
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「先生、ぼくね、先生を好きになって良かった」
強がりなんかじゃない。
本気でそう思った。心はすごく痛いけど。
「恋なんて知らなくて、なんでみんな誰かを好きになるんだろうってずっと不思議だったけど、よくわかった」
恋を知らなかった蜜は傲慢だった。
それに気づけただけでも良かった。
「だから、多分まだ好きでいるけどそれは許してね」
「……ああ」
周防はまた眩しそうに蜜を見つめ、コクリと頷いた。
「好きになってくれてありがとう」
「だからダメじゃん。フった相手に優しくしちゃ。未練だらけになるじゃない」
「そっか、だよな、ごめん」
「謝ってばかり」
泣きそうなのを誤魔化すように袖で顔をこすった。いつの間にか頬に砂がついていてジャリっと肌を傷つける。
蜜を好きだと勇気を出してくれた過去のみんなの気持ちが今ならわかる。
あふれてしまった気持ちを伝えたくて。
もしかしたら受け入れてもらえるかもと淡い期待を持って。
勇気を振り絞って伝えたら答えが欲しくて。
だけどやっぱり受け入れてもらえない気持ちはぽかんと宙に浮いたまま、どこにも行けないでいる。
痛む心はどうやって直せばいいんだろう。
無意識に心臓を押える。
海の上には大きな月が道を作るように長く伸びていた。
波が揺れるたび道も揺らめき形をいびつにする。
それを二人で眺めて、どちらかともなく花火を片づけて車に乗り込んだ。
帰りの車の中は静かな音楽が流れいていて、2人とも何を話していいのかわからず黙り込んだ。
もし告白をしなかったら今までのようにじゃれたり一緒に帰ったり、誤魔化しながら仲良くやれたのかもしれない。
でもそれは嘘だ。
好きを隠して周防の隣にいることは蜜にはできなかった。
自宅に到着すると周防は何かを言いかけてやめた。
「ありがとうございました。すごく楽しかった」
微笑む蜜に周防は頷き「おやすみ」とだけ答えた。
いつものようにクシャリと頭を撫でてくれない。感じる距離に今までのようにはつき合えないのかと哀しくなった。
「おやすみなさい」
車が遠くに消えていく。それが見えなくなるとどっと力が抜けた。ヘナヘナとベンチに座り込む。
つい数時間前はウキウキと周防を待っていた場所が今は違うところに見える。
「あー失恋しちゃった」
口にすると一気に現実味が帯びて、蜜は初めて泣いた。ほろほろと涙が零れ落ちて止まることを知らない。
周防が、好きで仕方がない。
こんな顔を誰にも見られたくなくて、蜜はこっそりと家に入ると自分の部屋へと潜り込んだ。
浴衣を脱ぎ捨てベッドに突っ伏すと声を消して泣き続けた。今が夏休みでよかった。泣きはらした顔で周防に会いたくはなかった。
泣いて疲れ果てて眠りにつく手前で周防の笑顔を思い出して、もう一度泣いた。
強がりなんかじゃない。
本気でそう思った。心はすごく痛いけど。
「恋なんて知らなくて、なんでみんな誰かを好きになるんだろうってずっと不思議だったけど、よくわかった」
恋を知らなかった蜜は傲慢だった。
それに気づけただけでも良かった。
「だから、多分まだ好きでいるけどそれは許してね」
「……ああ」
周防はまた眩しそうに蜜を見つめ、コクリと頷いた。
「好きになってくれてありがとう」
「だからダメじゃん。フった相手に優しくしちゃ。未練だらけになるじゃない」
「そっか、だよな、ごめん」
「謝ってばかり」
泣きそうなのを誤魔化すように袖で顔をこすった。いつの間にか頬に砂がついていてジャリっと肌を傷つける。
蜜を好きだと勇気を出してくれた過去のみんなの気持ちが今ならわかる。
あふれてしまった気持ちを伝えたくて。
もしかしたら受け入れてもらえるかもと淡い期待を持って。
勇気を振り絞って伝えたら答えが欲しくて。
だけどやっぱり受け入れてもらえない気持ちはぽかんと宙に浮いたまま、どこにも行けないでいる。
痛む心はどうやって直せばいいんだろう。
無意識に心臓を押える。
海の上には大きな月が道を作るように長く伸びていた。
波が揺れるたび道も揺らめき形をいびつにする。
それを二人で眺めて、どちらかともなく花火を片づけて車に乗り込んだ。
帰りの車の中は静かな音楽が流れいていて、2人とも何を話していいのかわからず黙り込んだ。
もし告白をしなかったら今までのようにじゃれたり一緒に帰ったり、誤魔化しながら仲良くやれたのかもしれない。
でもそれは嘘だ。
好きを隠して周防の隣にいることは蜜にはできなかった。
自宅に到着すると周防は何かを言いかけてやめた。
「ありがとうございました。すごく楽しかった」
微笑む蜜に周防は頷き「おやすみ」とだけ答えた。
いつものようにクシャリと頭を撫でてくれない。感じる距離に今までのようにはつき合えないのかと哀しくなった。
「おやすみなさい」
車が遠くに消えていく。それが見えなくなるとどっと力が抜けた。ヘナヘナとベンチに座り込む。
つい数時間前はウキウキと周防を待っていた場所が今は違うところに見える。
「あー失恋しちゃった」
口にすると一気に現実味が帯びて、蜜は初めて泣いた。ほろほろと涙が零れ落ちて止まることを知らない。
周防が、好きで仕方がない。
こんな顔を誰にも見られたくなくて、蜜はこっそりと家に入ると自分の部屋へと潜り込んだ。
浴衣を脱ぎ捨てベッドに突っ伏すと声を消して泣き続けた。今が夏休みでよかった。泣きはらした顔で周防に会いたくはなかった。
泣いて疲れ果てて眠りにつく手前で周防の笑顔を思い出して、もう一度泣いた。
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