sugar sugar honey! 甘くとろける恋をしよう

乃木のき

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第一章 First love

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「きゃ~素敵です! ソムリエですね」

 現れたのは同窓会以来の三田と関本、松川の三人だった。あの時に盛り上がって時々連絡を取るようになっていた。
 今日はわざわざ文化祭にも遊びに来てくれたのだ。

「来てくれたんだ」

 三人を迎え入れると周防はそっとその場を離れていった。
 背中を見送りながら、挨拶を交わす。

「めっちゃ似合ってる。いいな、かっこいい写真撮ろ」

「わ、わたしもあとで、ぜひっ」

 興奮する二人を後目に冷静な松川がコソリと耳打ちをする。

「もしかして今のあの方が……?」

 なんて洞察眼。今の一瞬で見抜いたのか。
 驚く蜜に松川は髪をかき上げ「やっぱり」と満足そうにうなずいている。

「そういう雰囲気がでてました」

「え、ほんと?!」

 バレバレなほど何かが出ているのかと慌てる蜜に松川は「落ち着いて」と声をかける。

「たぶんわたししか気がついていません。ほら」

 視線を投げると期待を裏切らない三田と関本はぽかんと二人をみた。

「あの方?」

 それから気づいたようにギュルンと首を回して周防のいなくなった方向を探るように見た。

「見逃した!!」

「蜜っちが悪いんですよっ。そんな愛らしい格好をして。これはいかんです」

 フガフガと鼻息を荒くする関本に苦く笑いながら「見逃して」と手を合わせた。
 
「秘密でよろしくね」

「わかってます。合点承知の助!」

 いや、いつの時代の人。

 図書室に入るとものめずらしそうに3人はキョロキョロとしていた。

「学校ってどこも同じようなものかと思っていましたけど、やっぱりちょっと違いますね」

「他の学校だなって感じがするよな」

「そう? 他の学校に行ったことがないからわかんないけど、そうかもね」

「頭のいい人たちの使う図書館って感じです」

 それってどういうものなんだろう。
 並ぶ本を見たけれどいまいちわからない。

「ぜひわたしたちの学校にも来てくださいね!」

 はしゃぐ女子たちにゴホンと咳払いがかかった。吉崎が不愉快そうな顔を隠さずに「失礼」と眼鏡をあげた。

「本を選びに来たのかな? それとも単なる冷やかし? 騒ぐなら外に出て欲しいのだけど」

「あ。ごめんなさい」

 3人はシュンとしながら大人しく席にすわった。
 今日は外部から人を読んでいるイベントなんだから賑やかなくらいがちょうどいいと思うけど。
 でもあたりにはまだ誰もいなかったので悪目立ちしたのかもしれない。吉崎に絡むとめんどくさいことになりそうだったから蜜はスルーするほうを選んだ。
 三人に向かって「ごめんね」と謝る。

「気分わるくしないでね」

「いえ、こちらこそ声を上げてしまって。邪魔をして申し訳ありません」

 うなだれる関本と松川は借りてきた猫のようにシュンとしている。

「つか、あの人この前の?」

 ヒソヒソと三田が小さく指をさした。コクリと頷く。

「めっちゃにらまれてるから何かなって思ったら。そっか、まだ誤解とけてないのか」

「うん……結構困ってる」

 わかりやすく関本と松川にも事の次第を話すと、再びメモを取り出し素早く何かをかきとめていた。
 この怪しい行動にもちょっと慣れてきたかもしれないと三田と顔を見合わせた。

 せっかく来てくれたから本をお勧めすると、3人は興味をもってくれたらしく帰りに本屋に寄ってみると言ってくれた。
 
 図書室はいつの間にか混み始め、蜜のテーブルの周りには何故か行列ができ始めていた。どうやら蜜のソムリエスタイルが拡散され、どうせなら彼にお勧めされたいと順番待ちができているようだった。

「さっすがおれの蜜」と余計な一言を置き土産に三田ご一行がいなくなると、そのセリフまで拡散され始めてさらに変な盛り上がりを見せた。

 そのすべてが吉崎の気分を悪くさせているなんて誰にも分らなかったし、彼の心のうちを知った人がいたならば慌てて忠告しに来ただろう。

 だけどそれは水面下で静かなる怒りとしてくすぶり続けていく。

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