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第二章 Lion Heart
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夢のような空中遊泳からゆっくりと地上に戻ってきた。時計を見るとタイムリミットだった。
修学旅行だというのをすっかり忘れてしまいそうだけど、個人行動がバレないうちに帰らなきゃ。
まるでシンデレラのようだ。
「そろそろ帰んなきゃな」
名残惜しいのはどちらも一緒で、来た時のようなテンションにはなれなかった。オープンカーの風を受けながら現実へと戻っていく。
「太一たちどこにいるって? 合流すればいいんだよな」
「はい。なんとかってパワースポットにいるって連絡が来ていましたけど」
「あいつらあれ以上パワーいるのかよ」
もう一度連絡をして現在地を教えてもらうとすぐ近くのようだった。あっという間にドライブも終わってしまう。
車から降りる前にそっと指だけ絡めあった。ささやかな接触もこれが最後。
一緒にいるところを誰かに見られたら困るから、人気のない離れた場所で降ろしてもらう。
「じゃあ。楽しんで来いよ」
「はい。今日はありがとうございました」
周防はレンタカーを返しに行って、それからホテルに戻るそうだ。先生こそバレたら大変なことになるから何事もなく終わってくれれば。
「おーい、蜜う」
待ち合わせの場所に先に到着していた太一が手を振っている。無事に合流できた。
誰にも不在は怪しまれなかったようだ。
「どうだった? 話せたか?」
心配そうな二人に頷くと、よかったなと肩を叩かれた。
「まあレオくんなら大丈夫だと思うけどさ。蜜、がんばったな!」
この二人がいてくれたから一歩踏み出せたのだ。いい友達に会えてよかった。自分は幸せ者だと心から思った。
「ありがとう。二人のおかげだ」
言うと照れ臭かったのか「やめろよ~」と途端にモジモジし始める。
「お礼はスイーツでいいからさ」
「ははっ、どこに行く?」
ガイドブックに載っていたオシャレなカフェに入ると好きなものを頼んでほしいとメニューを開いた。
地元では見ないようなカラフルなスイーツが多い。
太一はたくさんフルーツが乗っているパフェにして、裕二は虹色のかき氷を頼んだ。どちらもものすごいボリュームで、蜜は見ているだけで胸がいっぱいだ。
蜜はシンプルなアイスを頼んだ。
「どこ行ってきたん?」
「なんかアメリカンなところ。タコスが美味しかった。太一と裕二は?」
「おれたちはパワースポット巡り。蜜にもエネルギーのおすそわけしてやる」
そう言いながら手をこちらに向けて「パワ~」と唸っている。
でも蜜にとって一番のパワースポットは周防だからエネルギーは満タンだ。もしオーラが見えるならはちきれんばかりに輝いているはずだ。
モグモグと美味しく味わいながらお互いに話をすり合わせた。スイーツと一緒に写真におさまってアリバイ作りも完璧だ。
そこからいくつか寄り道をしてからホテルに戻った。
朝から出歩いていたから足がパンパンだ。
周防はとっくに帰っていて、入り口で帰宅者リストに〇をつけている。
「レオくんただいま~」
「おお。楽しんできたか。お帰り」
さっきまで蜜と一緒にいたことを感じさせない教師の顔に太一も裕二も茶化すことなく合わせている。
「めっちゃ楽しかった。な~蜜」
「はい、面白かったです」
他の生徒たちも廊下をうろついているから油断が出来ない。
まるで本当に3人で行動していたかのように話して、それを周防が受け止めている。
茶番もいいところだけどそういうことをしながらつきあいを続けてくのだ。
修学旅行もいよいよ最後。
明日には帰らなくてはいけない。
最後の夜はホテルの前の浜辺でみんなで手持ち花火をした。
波の音が気持ちよくて、夜空にはぽっかりと丸い月が浮かんでいる。素晴らしい夜だった。
「こういう時が告白タイムだよな~」という太一の予言は当たって、何度か蜜は呼びだされ、好きだと告げられた。
「ごめんなさい」と謝るとがっかりと背中を落として戻っていく。
中にはどうしたら好きになってもらえるのかと諦めない人もいて、それでもやっぱりごめんなさいしか言えなかった。
蜜にはもう決まった人がいる。
公に言えないけど、ずっと好きでいる。
今日さらに強く結ばれた恋人がなにより大切なのだ。
蜜にできることは心からの「ごめんなさい」しかない。誰かを好きになる気持ちは尊くて大切にされるものだと知ったから、真剣に向き合う。
修学旅行だというのをすっかり忘れてしまいそうだけど、個人行動がバレないうちに帰らなきゃ。
まるでシンデレラのようだ。
「そろそろ帰んなきゃな」
名残惜しいのはどちらも一緒で、来た時のようなテンションにはなれなかった。オープンカーの風を受けながら現実へと戻っていく。
「太一たちどこにいるって? 合流すればいいんだよな」
「はい。なんとかってパワースポットにいるって連絡が来ていましたけど」
「あいつらあれ以上パワーいるのかよ」
もう一度連絡をして現在地を教えてもらうとすぐ近くのようだった。あっという間にドライブも終わってしまう。
車から降りる前にそっと指だけ絡めあった。ささやかな接触もこれが最後。
一緒にいるところを誰かに見られたら困るから、人気のない離れた場所で降ろしてもらう。
「じゃあ。楽しんで来いよ」
「はい。今日はありがとうございました」
周防はレンタカーを返しに行って、それからホテルに戻るそうだ。先生こそバレたら大変なことになるから何事もなく終わってくれれば。
「おーい、蜜う」
待ち合わせの場所に先に到着していた太一が手を振っている。無事に合流できた。
誰にも不在は怪しまれなかったようだ。
「どうだった? 話せたか?」
心配そうな二人に頷くと、よかったなと肩を叩かれた。
「まあレオくんなら大丈夫だと思うけどさ。蜜、がんばったな!」
この二人がいてくれたから一歩踏み出せたのだ。いい友達に会えてよかった。自分は幸せ者だと心から思った。
「ありがとう。二人のおかげだ」
言うと照れ臭かったのか「やめろよ~」と途端にモジモジし始める。
「お礼はスイーツでいいからさ」
「ははっ、どこに行く?」
ガイドブックに載っていたオシャレなカフェに入ると好きなものを頼んでほしいとメニューを開いた。
地元では見ないようなカラフルなスイーツが多い。
太一はたくさんフルーツが乗っているパフェにして、裕二は虹色のかき氷を頼んだ。どちらもものすごいボリュームで、蜜は見ているだけで胸がいっぱいだ。
蜜はシンプルなアイスを頼んだ。
「どこ行ってきたん?」
「なんかアメリカンなところ。タコスが美味しかった。太一と裕二は?」
「おれたちはパワースポット巡り。蜜にもエネルギーのおすそわけしてやる」
そう言いながら手をこちらに向けて「パワ~」と唸っている。
でも蜜にとって一番のパワースポットは周防だからエネルギーは満タンだ。もしオーラが見えるならはちきれんばかりに輝いているはずだ。
モグモグと美味しく味わいながらお互いに話をすり合わせた。スイーツと一緒に写真におさまってアリバイ作りも完璧だ。
そこからいくつか寄り道をしてからホテルに戻った。
朝から出歩いていたから足がパンパンだ。
周防はとっくに帰っていて、入り口で帰宅者リストに〇をつけている。
「レオくんただいま~」
「おお。楽しんできたか。お帰り」
さっきまで蜜と一緒にいたことを感じさせない教師の顔に太一も裕二も茶化すことなく合わせている。
「めっちゃ楽しかった。な~蜜」
「はい、面白かったです」
他の生徒たちも廊下をうろついているから油断が出来ない。
まるで本当に3人で行動していたかのように話して、それを周防が受け止めている。
茶番もいいところだけどそういうことをしながらつきあいを続けてくのだ。
修学旅行もいよいよ最後。
明日には帰らなくてはいけない。
最後の夜はホテルの前の浜辺でみんなで手持ち花火をした。
波の音が気持ちよくて、夜空にはぽっかりと丸い月が浮かんでいる。素晴らしい夜だった。
「こういう時が告白タイムだよな~」という太一の予言は当たって、何度か蜜は呼びだされ、好きだと告げられた。
「ごめんなさい」と謝るとがっかりと背中を落として戻っていく。
中にはどうしたら好きになってもらえるのかと諦めない人もいて、それでもやっぱりごめんなさいしか言えなかった。
蜜にはもう決まった人がいる。
公に言えないけど、ずっと好きでいる。
今日さらに強く結ばれた恋人がなにより大切なのだ。
蜜にできることは心からの「ごめんなさい」しかない。誰かを好きになる気持ちは尊くて大切にされるものだと知ったから、真剣に向き合う。
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