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第二章 Lion Heart
旅立ち
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午前中に沖縄を出発した周防たち一行は昼遅くには地元へと戻っていた。
空港へは家族のお迎えが来ていて、日焼けした子供たちから楽しそうに話を聞いている。
蜜はこの後の便だから、周防が総一郎さんたちに会うことはなかった。
ちょっとだけよかったと思ってしまう。
蜜への愛おしさは日に日に増して、自分でもコントロールするのが難しくなってきている。
観覧車でのキスもそうだ。
大人なキスはしないように気をつけていたのに、あんなに必死に周防を思ってくれる蜜を見ていたら止まらなくなってしまった。
怯えた舌が可愛かった。
まだ慣れなくて、何も知らない無垢を穢すことが怖いのに興奮する。
蜜をどうにかしてしまいそうで怖い。
親が迎えに来れない生徒をバスに乗せて学校まで戻ると早々に片づけておきたい事務仕事をし始める。夕方になって後発の先生たちが戻ってきて、その中に小石川の姿もあった。
「お疲れ」
「楽しかったな~沖縄」
まだ沖縄のテンションでご機嫌な小石川はこそっと周防に耳打ちをした。
「みっつのうち、お迎えに来てたわ」
「そうか、よかった」
仕事だから無理かもしれないと言っていたけど時間に都合をつけてくれたのだろう。
「みっつはお母さん似なんだな。めっちゃキレイでみんなザワザワしてた」
志穂さんと蜜は性別も年齢も違うのにすごく似ている。遺伝ってすごいと見るたび感心してしまう。
おっとりとしているくせに人の目を惹いてしまう二人が並んでいれば華やかで圧倒されるだろう。
「いや~通おうかな、ゆめのや」
「あの人は裏方だから出てこないよ。っていうか、お前も早く書類を片づけろよ」
いつまでもおしゃべりに花が咲く小石川をおいやって、早々に仕事を片づけた。
周防にはこれからもうひとつ大きな仕事があるのだ。
この場所を離れることを、母や姉たちに言わなければならない。
無責任だと罵られるだろうか。母を捨てるのかと怒られるかもしれない。だけどもう戻れない。
頼まれたお土産はちゃんと買ったし、さらに空港でも上乗せした。
物で釣るつもりじゃないけど、これで少しだけご機嫌取りをしながらうまくやりきろう。
自宅へ帰ると食事のいい匂いがしている。
帰宅に合わせて作ってくれているのかもしれない。おなかがグウっと音を立てた。
「お帰り」
玄関に出てきたのは姉で、愛衣は待ちきれずにはしゃいで眠ってしまったそうだ。どうりで静かだ。
「楽しかった?」
「ああ、沖縄いいよ。今度行ってきなよ」
リビングに行くと母がソファに腰かけていた。今日は体調もいいらしい。顔色がよくてほっとする。
「お帰り、獅子」
「ただいま」
せっかちすぎるとは思ったけれど時間が経てば言い出せなくなる。
周防は荷物を置くのも待たずにガバリと頭を下げた。
「お願いがあります!」
「やだ何事?!」
突然何事かと母も姉をびっくりしている。そりゃそうだ。修学旅行から帰宅早々の嘆願。でもこの勢いに乗って言ってしまいたい。
蜜が背中を押してくれている。
「母校からアメフトのコーチをやらないかって誘われています。どうか行かせてください」
「その前にお土産どこよ」
マイペースな姉がその勢いをサクっと殺しにかかる。
「……これ。頼まれてたのと美味しそうなのと」
「やった。ありがと!」
ガサガサと包みを開けながら何でもないように先を促す。
「それで?」
「あ、うん。距離があるから通うのは難しくて、向こうにアパートを借りて住むことになると思う。そしたら母さんを置いていかなきゃいけなくて……でも、もう一度アメフトに挑戦したい」
チラっと母を見ると、母も一緒になってお土産の包みを開けながら「いいんじゃないの」と言った。
「え?」
「行けばいいと思うよ。よかったじゃないの。声をかけてもらえるなんてすごいわ」
「でも、」
いいのか。
あんなに悩んだのにこんなにあっさり。
「怪我とかしないように気をつけて」
そう言うと母と姉は顔を見合わせると頷き合った。何か企んでいる顔つきだ。
「こっちも言おうかと思っていたんだけどね。この家リフォームして同居しようかと思っているの」
空港へは家族のお迎えが来ていて、日焼けした子供たちから楽しそうに話を聞いている。
蜜はこの後の便だから、周防が総一郎さんたちに会うことはなかった。
ちょっとだけよかったと思ってしまう。
蜜への愛おしさは日に日に増して、自分でもコントロールするのが難しくなってきている。
観覧車でのキスもそうだ。
大人なキスはしないように気をつけていたのに、あんなに必死に周防を思ってくれる蜜を見ていたら止まらなくなってしまった。
怯えた舌が可愛かった。
まだ慣れなくて、何も知らない無垢を穢すことが怖いのに興奮する。
蜜をどうにかしてしまいそうで怖い。
親が迎えに来れない生徒をバスに乗せて学校まで戻ると早々に片づけておきたい事務仕事をし始める。夕方になって後発の先生たちが戻ってきて、その中に小石川の姿もあった。
「お疲れ」
「楽しかったな~沖縄」
まだ沖縄のテンションでご機嫌な小石川はこそっと周防に耳打ちをした。
「みっつのうち、お迎えに来てたわ」
「そうか、よかった」
仕事だから無理かもしれないと言っていたけど時間に都合をつけてくれたのだろう。
「みっつはお母さん似なんだな。めっちゃキレイでみんなザワザワしてた」
志穂さんと蜜は性別も年齢も違うのにすごく似ている。遺伝ってすごいと見るたび感心してしまう。
おっとりとしているくせに人の目を惹いてしまう二人が並んでいれば華やかで圧倒されるだろう。
「いや~通おうかな、ゆめのや」
「あの人は裏方だから出てこないよ。っていうか、お前も早く書類を片づけろよ」
いつまでもおしゃべりに花が咲く小石川をおいやって、早々に仕事を片づけた。
周防にはこれからもうひとつ大きな仕事があるのだ。
この場所を離れることを、母や姉たちに言わなければならない。
無責任だと罵られるだろうか。母を捨てるのかと怒られるかもしれない。だけどもう戻れない。
頼まれたお土産はちゃんと買ったし、さらに空港でも上乗せした。
物で釣るつもりじゃないけど、これで少しだけご機嫌取りをしながらうまくやりきろう。
自宅へ帰ると食事のいい匂いがしている。
帰宅に合わせて作ってくれているのかもしれない。おなかがグウっと音を立てた。
「お帰り」
玄関に出てきたのは姉で、愛衣は待ちきれずにはしゃいで眠ってしまったそうだ。どうりで静かだ。
「楽しかった?」
「ああ、沖縄いいよ。今度行ってきなよ」
リビングに行くと母がソファに腰かけていた。今日は体調もいいらしい。顔色がよくてほっとする。
「お帰り、獅子」
「ただいま」
せっかちすぎるとは思ったけれど時間が経てば言い出せなくなる。
周防は荷物を置くのも待たずにガバリと頭を下げた。
「お願いがあります!」
「やだ何事?!」
突然何事かと母も姉をびっくりしている。そりゃそうだ。修学旅行から帰宅早々の嘆願。でもこの勢いに乗って言ってしまいたい。
蜜が背中を押してくれている。
「母校からアメフトのコーチをやらないかって誘われています。どうか行かせてください」
「その前にお土産どこよ」
マイペースな姉がその勢いをサクっと殺しにかかる。
「……これ。頼まれてたのと美味しそうなのと」
「やった。ありがと!」
ガサガサと包みを開けながら何でもないように先を促す。
「それで?」
「あ、うん。距離があるから通うのは難しくて、向こうにアパートを借りて住むことになると思う。そしたら母さんを置いていかなきゃいけなくて……でも、もう一度アメフトに挑戦したい」
チラっと母を見ると、母も一緒になってお土産の包みを開けながら「いいんじゃないの」と言った。
「え?」
「行けばいいと思うよ。よかったじゃないの。声をかけてもらえるなんてすごいわ」
「でも、」
いいのか。
あんなに悩んだのにこんなにあっさり。
「怪我とかしないように気をつけて」
そう言うと母と姉は顔を見合わせると頷き合った。何か企んでいる顔つきだ。
「こっちも言おうかと思っていたんだけどね。この家リフォームして同居しようかと思っているの」
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