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第三部 魔法使い、双子の悪魔の変化
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「──それはつまり出ていけって事か?」
聞いた事がないくらい低い声で返すセル。
彼の鋭い視線に背筋がゾクッと凍るのを覚える。セルにこんな目を向けられたのは初めて会った時以来だ。普段は温厚な彼の見慣れていない表情に顔が強張りそうになるが堪える。
「.....元々君達から提案された話だよ。出て行けって言っている訳じゃない。ただ、僕の事は気にしなくていい。此処に帰ってくる必要もない。君達の世界は此処だけじゃないんだから」
二人の居場所は此処だけじゃない。
セルとヨルが此処に留まる理由が無くなった今、彼等を止める権利は僕にはもうない。すっかり表情が抜け落ちた様子のセルは静かに「.....そうか」と告げてフォークを皿の上に置いた。
「リュシーがそう言うのなら、俺達も好きにするから」
「──」
カチャカチャと音を立てながら静かに再び食事にありつける二人。僕もそれ以上は何も発する事なく食事を進める。
先に食べ終わってしまった彼等は、いつもならどんな事があっても誰かが食べ終わるのを待つのにも関わらず、今日は先に手を合わせて立ち上がってしまう。流し場に皿を置いて後片付けを終えたセルがさっさと階段を上がり自分の部屋へ篭ってしまう。パタンッと勢いよく扉が閉まる音が上から聞こえてきた。ヨルは一言も口を開かなかった。
「.....あれ」
誰もいなくなった空間で一人呟く。
頬に何かが伝っていくのを感じて掌で触れると涙だった。気が付いたら僕は泣いていた。二人に向けられた冷たい視線を思い出した途端、僕は嗚咽と共に静かに泣き始める。
どうしてあんな言い方しか出来なかったんだろう。素直に行かないでって言ってしまえばどんなに楽だったか。本当は心の奥底で素直に言ってしまいたいという気持ちがあったのに。もし、これからもずっと側にいて欲しいという僕の気持ちを拒まれたら上手く笑える自信がない。そのくらい、僕はすっかり臆病になっていた。
彼等にどうして欲しかったのか。
そんなの、とっくの前から答えは明確だったのに。
「セル.....ヨル.....」
一人には慣れていた筈なのに。
彼等の側があまりにも心地良くて一人でいる時間を忘れていた。セルとヨルとずっと一緒にいたい。たとえかぞくごっことしてでも、一緒にいられるなら何でも良かった。でももう遅い。僕の気持ちと伝えた言葉がぐちゃぐちゃで、もうどうにも出来なかった。
今日は綺麗な満月らしい。
部屋の大きな窓から見える月を眺めてカーテンを閉じる。いつもは月の光を浴びて寝る幸せなひとときも今はいらない。何だか暗い所に閉じ籠っていたい気分だ。
ボフンとベッドの上に倒れ込む様にして突っ伏し溜息を吐く。あんな突き放すみたいな言い方になってしまった以上、もう今迄みたいな時間は過ごせないのかな。
(寂しいな.....)
現実から目を背ける様にゆっくりと重たい瞼を閉じていく。泣き腫らしたせいで目が痛くてもう開けられない。
もう全部無かった事にしたい。こんな気持ちになるくらいなら最初から出会わない方が良かったのかも。そんな事を思って少しずつ意識が遠のいていった僕はゆっくりと夢の世界へ堕ちていった。
ピチャッと小さな水音が遠くから聞こえてくる。何だろう、一階の水を出しっぱなしにしてしまったのだろうか。何だか頭の中にやけに響く音だ。それに.....少し肌寒い。服が捲られている様な──服?
「あ、起きたか」
聞いた事がないくらい低い声で返すセル。
彼の鋭い視線に背筋がゾクッと凍るのを覚える。セルにこんな目を向けられたのは初めて会った時以来だ。普段は温厚な彼の見慣れていない表情に顔が強張りそうになるが堪える。
「.....元々君達から提案された話だよ。出て行けって言っている訳じゃない。ただ、僕の事は気にしなくていい。此処に帰ってくる必要もない。君達の世界は此処だけじゃないんだから」
二人の居場所は此処だけじゃない。
セルとヨルが此処に留まる理由が無くなった今、彼等を止める権利は僕にはもうない。すっかり表情が抜け落ちた様子のセルは静かに「.....そうか」と告げてフォークを皿の上に置いた。
「リュシーがそう言うのなら、俺達も好きにするから」
「──」
カチャカチャと音を立てながら静かに再び食事にありつける二人。僕もそれ以上は何も発する事なく食事を進める。
先に食べ終わってしまった彼等は、いつもならどんな事があっても誰かが食べ終わるのを待つのにも関わらず、今日は先に手を合わせて立ち上がってしまう。流し場に皿を置いて後片付けを終えたセルがさっさと階段を上がり自分の部屋へ篭ってしまう。パタンッと勢いよく扉が閉まる音が上から聞こえてきた。ヨルは一言も口を開かなかった。
「.....あれ」
誰もいなくなった空間で一人呟く。
頬に何かが伝っていくのを感じて掌で触れると涙だった。気が付いたら僕は泣いていた。二人に向けられた冷たい視線を思い出した途端、僕は嗚咽と共に静かに泣き始める。
どうしてあんな言い方しか出来なかったんだろう。素直に行かないでって言ってしまえばどんなに楽だったか。本当は心の奥底で素直に言ってしまいたいという気持ちがあったのに。もし、これからもずっと側にいて欲しいという僕の気持ちを拒まれたら上手く笑える自信がない。そのくらい、僕はすっかり臆病になっていた。
彼等にどうして欲しかったのか。
そんなの、とっくの前から答えは明確だったのに。
「セル.....ヨル.....」
一人には慣れていた筈なのに。
彼等の側があまりにも心地良くて一人でいる時間を忘れていた。セルとヨルとずっと一緒にいたい。たとえかぞくごっことしてでも、一緒にいられるなら何でも良かった。でももう遅い。僕の気持ちと伝えた言葉がぐちゃぐちゃで、もうどうにも出来なかった。
今日は綺麗な満月らしい。
部屋の大きな窓から見える月を眺めてカーテンを閉じる。いつもは月の光を浴びて寝る幸せなひとときも今はいらない。何だか暗い所に閉じ籠っていたい気分だ。
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ピチャッと小さな水音が遠くから聞こえてくる。何だろう、一階の水を出しっぱなしにしてしまったのだろうか。何だか頭の中にやけに響く音だ。それに.....少し肌寒い。服が捲られている様な──服?
「あ、起きたか」
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