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14 過去①
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命を助けた少年――ルゥは、順調に回復していった。
最初は拾ってきたばかりの猫のように警戒心を剥き出しにした。
詳しい事情は分からなかったが、彼がひどい境遇にあったことは察せられたから、アリッサたちを警戒するのは無理からぬこと。
服を着替えさせようとした使用人たちに対しても暴れ回ったり、お風呂へ入れようとしても、ちょとした隙を突いて部屋を飛び出して、裸で廊下を走り回ったりと手を焼いた。
唯一、大人しかったのは食事時くらい。
だからお腹いっぱいにして眠っているところをお風呂に入れたり、服を着替えさせたりした。
一度眠るとなかなか起きないのが、ルゥの特徴だった。
でもそんな彼もアリッサやアリッサの両親、使用人たちが自分に敵意を持っていないことを少しずつだが理解しはじめてくれた。
屋敷に引き取って二ヶ月も経つと屋敷の生活にも馴染み、人から言われなくても自分の意思で服を着替えたり、風呂に入るようになった。
そう、そして彼がはじめてアレを見せてくれたのは、屋敷で過ごして半年ほど経った頃。
ある晴れ昼下がり、アリッサはルゥと一緒に散歩に出かけていた。
『なあ、アリッサ』
『アリッサお姉ちゃん、でしょ?』
『アリッサがお姉ちゃん!? ありえねー! アリッサは俺より、子どもっぽいだろ! お人形遊びとかしてるし!』
『! あ、あれは、大人でも集めてる人がいるくらいなんだから、子どもの遊びとは違うのよ。それに、子どもに子どもっぽいとか言われたくないんだけど。ルゥクンよりはぜんぜん大人なんだから』
『胸も小さいくせに』
『こら! そんなこと言ったらダメだって言ってるでしょ。どこでそんな言葉を覚えるんだか……』
笑いながらアリッサはルゥのほっぺたをぎゅうぎゅう引っ張った。
手を離すと、ルゥは赤くなった頬をさすった。
そんな風にじゃれあいつつ、道を進んでいくと、いつも渡っている橋がなくなっていた。
昨夜の大雨で流されてしまったのだろう。
『しょうがない。遠回りになるけど、あっちから回ろう』
『大丈夫、渡れる』
『危ないよ。水かさも増してるし、流れも早いでしょ。無理に渡ったら絶対に流されるから』
『大丈夫だって言ってるだろ』
『あのね、ルゥ君……』
『これから見せるのは誰にも言うなよ』
ルゥは両手を川へ向けると目を閉じると、その小さな体が青白い輝きに包まれた。
同時に川がみるみる凍り付きはじめた。
『う、嘘……これって……魔法?』
『母ちゃんはそう言ってた』
『じゃあ、ルゥ君が大怪我を負ったのは……』
『母ちゃんに人前で使ったらダメだって言われたんだけど、でも使っちゃったんだ。でも見せびらかすためじゃない。今日みたいに川が増水してて村のみんなが困ってたから。でも使ったら……俺は悪魔の子どもだって。母ちゃんが悪魔と契約して生まれたんだって。危うく殺されそうになったところを逃げ出して』
『それであんなひどい傷を』
『でもアリッサは、俺を助けてくれたから……だから、特別に見せたんだ』
ルゥは、アリッサの反応を怖々と窺う。
その目は不安に揺れていた。魔法を使ったら村の人間みたいに、アリッサが変わってしまうことを恐れているようだった。
アリッサは満面の笑みで、ルゥを抱きしめた。
『大丈夫だよ。私は魔法を使ってもルゥを嫌ったりしない。魔法ってとっても素敵だと思うよ』
ルゥの顔に笑顔が戻っていく。
『だろ! もっとすごいことだって……
『調子にのならないの』
『へへ! アリッサ! 早く行こうぜ!』
ルゥに手を引かれ、アリッサは笑いながら一緒に走った。
アリッサは、ルゥが魔法を見せてくれたことよりも、魔法を見せるくらい自分のことを信頼しはじめてくれていることが嬉しかった。
最初は拾ってきたばかりの猫のように警戒心を剥き出しにした。
詳しい事情は分からなかったが、彼がひどい境遇にあったことは察せられたから、アリッサたちを警戒するのは無理からぬこと。
服を着替えさせようとした使用人たちに対しても暴れ回ったり、お風呂へ入れようとしても、ちょとした隙を突いて部屋を飛び出して、裸で廊下を走り回ったりと手を焼いた。
唯一、大人しかったのは食事時くらい。
だからお腹いっぱいにして眠っているところをお風呂に入れたり、服を着替えさせたりした。
一度眠るとなかなか起きないのが、ルゥの特徴だった。
でもそんな彼もアリッサやアリッサの両親、使用人たちが自分に敵意を持っていないことを少しずつだが理解しはじめてくれた。
屋敷に引き取って二ヶ月も経つと屋敷の生活にも馴染み、人から言われなくても自分の意思で服を着替えたり、風呂に入るようになった。
そう、そして彼がはじめてアレを見せてくれたのは、屋敷で過ごして半年ほど経った頃。
ある晴れ昼下がり、アリッサはルゥと一緒に散歩に出かけていた。
『なあ、アリッサ』
『アリッサお姉ちゃん、でしょ?』
『アリッサがお姉ちゃん!? ありえねー! アリッサは俺より、子どもっぽいだろ! お人形遊びとかしてるし!』
『! あ、あれは、大人でも集めてる人がいるくらいなんだから、子どもの遊びとは違うのよ。それに、子どもに子どもっぽいとか言われたくないんだけど。ルゥクンよりはぜんぜん大人なんだから』
『胸も小さいくせに』
『こら! そんなこと言ったらダメだって言ってるでしょ。どこでそんな言葉を覚えるんだか……』
笑いながらアリッサはルゥのほっぺたをぎゅうぎゅう引っ張った。
手を離すと、ルゥは赤くなった頬をさすった。
そんな風にじゃれあいつつ、道を進んでいくと、いつも渡っている橋がなくなっていた。
昨夜の大雨で流されてしまったのだろう。
『しょうがない。遠回りになるけど、あっちから回ろう』
『大丈夫、渡れる』
『危ないよ。水かさも増してるし、流れも早いでしょ。無理に渡ったら絶対に流されるから』
『大丈夫だって言ってるだろ』
『あのね、ルゥ君……』
『これから見せるのは誰にも言うなよ』
ルゥは両手を川へ向けると目を閉じると、その小さな体が青白い輝きに包まれた。
同時に川がみるみる凍り付きはじめた。
『う、嘘……これって……魔法?』
『母ちゃんはそう言ってた』
『じゃあ、ルゥ君が大怪我を負ったのは……』
『母ちゃんに人前で使ったらダメだって言われたんだけど、でも使っちゃったんだ。でも見せびらかすためじゃない。今日みたいに川が増水してて村のみんなが困ってたから。でも使ったら……俺は悪魔の子どもだって。母ちゃんが悪魔と契約して生まれたんだって。危うく殺されそうになったところを逃げ出して』
『それであんなひどい傷を』
『でもアリッサは、俺を助けてくれたから……だから、特別に見せたんだ』
ルゥは、アリッサの反応を怖々と窺う。
その目は不安に揺れていた。魔法を使ったら村の人間みたいに、アリッサが変わってしまうことを恐れているようだった。
アリッサは満面の笑みで、ルゥを抱きしめた。
『大丈夫だよ。私は魔法を使ってもルゥを嫌ったりしない。魔法ってとっても素敵だと思うよ』
ルゥの顔に笑顔が戻っていく。
『だろ! もっとすごいことだって……
『調子にのならないの』
『へへ! アリッサ! 早く行こうぜ!』
ルゥに手を引かれ、アリッサは笑いながら一緒に走った。
アリッサは、ルゥが魔法を見せてくれたことよりも、魔法を見せるくらい自分のことを信頼しはじめてくれていることが嬉しかった。
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