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33 安らぎ
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アリッサはシュヴァルツの腕の中で甘えるように彼の胸板に身を寄せる。もう何度果てたか分からず、それでもシュヴァルツは許してはくれず、貪るように求めた。
彼の強い独占欲が嬉しかった。
「……ルゥ君」
「その名は捨てた。今はシュヴァルツだ」
シュヴァルツはむっとする。
「どうして? 可愛いのに」
「だからだ。可愛いなんて言われても嬉しくない」
「……たしかに今のシュヴァルツの姿には、ルウは可愛すぎるのかもね、ふふ……んん」
唇を塞がれる。まったりとした空気を共有するように、優しく唇を塞がれる。
「い、いきなり……」
「お前が可愛すぎるからだ」
「……女たらし」
「どうしてそうなるんだ」
「今まで硬派だったのに、可愛い、とかはっきり言って……まるでカーティス様みたい」
自分で言っておきながら頬が熱を帯びる。
「硬派? 俺が?」
「……自覚がなかったの?」
「別に硬派を気取ってた訳じゃない。ただ、お前がすぐそばにいると、自制心を発揮していないとおかしくなりそうだったからな。俺はお前のことを知っているのに、お前は俺を忘れていると思っていた。それがどれだけ狂おしかったか、お前に分かるか?」
「……ご、ごめん」
「いや、責めてるんじゃない。悪い。でもその狂おしさからようやく解放されたんだ。これからは、お前への想いを我慢しなくても良くなる」
穴が空くほどじっと見つめられると、アリッサは眼をそらしてしまう。
「言っておくが、俺はカーティスとは違うぞ。あいつみたいに誰彼構わず言ったりしない。お前だけだ。だって、俺にとってお前は特別なんだから。他の女には感じないものを、お前からは感じる。お前のことしか考えられなくなる。女だから好きなんじゃない。アリッサだから、好きなんだろうな。やはりお前は俺にとって特別だ」
特別という言葉に,鼓動が騒がしくなる。一生分の高鳴りをこの瞬間に経験しているような錯覚に陥る。
「私にとってもそう。あなたは特別よ。私のことを好きだって言ってくれて……命の恩人。でも……ふふ、ルゥ君ってずっと年下だと思ってたけど、まさか年上だったなんて」
「あの頃は身体も小さかったし、栄養もまともに取れていなかったから」
シュヴァルツの手が、頬や首筋、そして今も彼に密着させる胸に触れてきた。
「ん、くすぐったい。どうしたの?」
「抱いたことが夢じゃないってことを確かめてる」
「夢じゃない。これはちゃんと現実だよ。あなたは二度も私を救ってくれたこともね」
アリッサは愛おしさで胸がいっぱいになって、シュヴァルツを抱きしめる。
シュヴァルツが髪に顔を埋めてくる。
「本当は結婚式に乗り込んで、お前をさらおうと思って、王都に向かったんだ」
「……あの約束、忘れてた訳じゃなかったのね」
「忘れる理由がないだろう。そして今、お前は俺の想いを受け入れてくれた。これからはもう離さないからな」
「……私だって、あなたのことを離さない」
アリッサたちは手を繋ぎ合う。指を絡め合い、汗ばんだ肌を重ねる。
それだけのことがとても心地いい。
「魔塔には、行くなよ」
「……うん」
「お前はずっと俺のそばにいろ」
「うんっ」
シュヴァルツの強すぎる所有欲を嬉しく思いながら、アリッサは目を閉じた。
※
アリッサの声を聞いているだけで今にも心臓がおかしくなりそうなくらいバクバクと高鳴った。
こんな気持ちになれる人間は、アリッサだけだ。
「アリッサ。これからは恋人としてお前に寄り添いたい。お前が喜ぶ顔をみたい。だから何でも遠慮無く話して――」
シュヴァルツが見ると、アリッサは身体に密着したまま、すぅすぅと安らかな寝息を立てていた。
シュヴァルツは小さく舌打ちをする。
――くそ。やりすぎた……。
アリッサと想いが通じたことも手伝って、止められなかった。
本当はもっと、アリッサに気を使うべきだったのに。
「……お前が可愛すぎるから悪い」
シュヴァルツはそう、責任転嫁のようなことを口にする。
シュヴァルツは魔塔時代も、そして騎士団時代も常に冷静沈着で、周りに眼を配るだけの精神的余裕があると、共感や先輩騎士たちからも言われてきた。
それは半分あたりで半分外れだ。
冷静なのは、それだけ周りに関心がなかったからだ。
だから周囲の状況に流されることがなかった。
いつだってシュヴァルツの頭の中心にはアリッサがいた。逆に言うと、アリッサ以外はどうでもいいと思っていた。
無論、仲間が大切であるという気持ちに嘘偽りはない。
しかしアリッサへの想いとは比べられない。
本当はこのままアリッサと共に、行方をくらましたい。
自分たちのあらゆるしがらみを捨てて、自分たちの誰も知らない世界に、二人きりで旅立ちたい。
――さすがにそんなことをすれば、アリッサは怒るか。
「まあ、焦る必要はないよな。俺たちは恋人同士。二人だけでどこかへ行く機会なんていくらでもあるんだからな」
それからこれまで以上に、眼を光らせる必要があるだろう。
アリッサの無防備な寝顔を眺め、シュヴァルツは唇をそっと重ねた。
彼の強い独占欲が嬉しかった。
「……ルゥ君」
「その名は捨てた。今はシュヴァルツだ」
シュヴァルツはむっとする。
「どうして? 可愛いのに」
「だからだ。可愛いなんて言われても嬉しくない」
「……たしかに今のシュヴァルツの姿には、ルウは可愛すぎるのかもね、ふふ……んん」
唇を塞がれる。まったりとした空気を共有するように、優しく唇を塞がれる。
「い、いきなり……」
「お前が可愛すぎるからだ」
「……女たらし」
「どうしてそうなるんだ」
「今まで硬派だったのに、可愛い、とかはっきり言って……まるでカーティス様みたい」
自分で言っておきながら頬が熱を帯びる。
「硬派? 俺が?」
「……自覚がなかったの?」
「別に硬派を気取ってた訳じゃない。ただ、お前がすぐそばにいると、自制心を発揮していないとおかしくなりそうだったからな。俺はお前のことを知っているのに、お前は俺を忘れていると思っていた。それがどれだけ狂おしかったか、お前に分かるか?」
「……ご、ごめん」
「いや、責めてるんじゃない。悪い。でもその狂おしさからようやく解放されたんだ。これからは、お前への想いを我慢しなくても良くなる」
穴が空くほどじっと見つめられると、アリッサは眼をそらしてしまう。
「言っておくが、俺はカーティスとは違うぞ。あいつみたいに誰彼構わず言ったりしない。お前だけだ。だって、俺にとってお前は特別なんだから。他の女には感じないものを、お前からは感じる。お前のことしか考えられなくなる。女だから好きなんじゃない。アリッサだから、好きなんだろうな。やはりお前は俺にとって特別だ」
特別という言葉に,鼓動が騒がしくなる。一生分の高鳴りをこの瞬間に経験しているような錯覚に陥る。
「私にとってもそう。あなたは特別よ。私のことを好きだって言ってくれて……命の恩人。でも……ふふ、ルゥ君ってずっと年下だと思ってたけど、まさか年上だったなんて」
「あの頃は身体も小さかったし、栄養もまともに取れていなかったから」
シュヴァルツの手が、頬や首筋、そして今も彼に密着させる胸に触れてきた。
「ん、くすぐったい。どうしたの?」
「抱いたことが夢じゃないってことを確かめてる」
「夢じゃない。これはちゃんと現実だよ。あなたは二度も私を救ってくれたこともね」
アリッサは愛おしさで胸がいっぱいになって、シュヴァルツを抱きしめる。
シュヴァルツが髪に顔を埋めてくる。
「本当は結婚式に乗り込んで、お前をさらおうと思って、王都に向かったんだ」
「……あの約束、忘れてた訳じゃなかったのね」
「忘れる理由がないだろう。そして今、お前は俺の想いを受け入れてくれた。これからはもう離さないからな」
「……私だって、あなたのことを離さない」
アリッサたちは手を繋ぎ合う。指を絡め合い、汗ばんだ肌を重ねる。
それだけのことがとても心地いい。
「魔塔には、行くなよ」
「……うん」
「お前はずっと俺のそばにいろ」
「うんっ」
シュヴァルツの強すぎる所有欲を嬉しく思いながら、アリッサは目を閉じた。
※
アリッサの声を聞いているだけで今にも心臓がおかしくなりそうなくらいバクバクと高鳴った。
こんな気持ちになれる人間は、アリッサだけだ。
「アリッサ。これからは恋人としてお前に寄り添いたい。お前が喜ぶ顔をみたい。だから何でも遠慮無く話して――」
シュヴァルツが見ると、アリッサは身体に密着したまま、すぅすぅと安らかな寝息を立てていた。
シュヴァルツは小さく舌打ちをする。
――くそ。やりすぎた……。
アリッサと想いが通じたことも手伝って、止められなかった。
本当はもっと、アリッサに気を使うべきだったのに。
「……お前が可愛すぎるから悪い」
シュヴァルツはそう、責任転嫁のようなことを口にする。
シュヴァルツは魔塔時代も、そして騎士団時代も常に冷静沈着で、周りに眼を配るだけの精神的余裕があると、共感や先輩騎士たちからも言われてきた。
それは半分あたりで半分外れだ。
冷静なのは、それだけ周りに関心がなかったからだ。
だから周囲の状況に流されることがなかった。
いつだってシュヴァルツの頭の中心にはアリッサがいた。逆に言うと、アリッサ以外はどうでもいいと思っていた。
無論、仲間が大切であるという気持ちに嘘偽りはない。
しかしアリッサへの想いとは比べられない。
本当はこのままアリッサと共に、行方をくらましたい。
自分たちのあらゆるしがらみを捨てて、自分たちの誰も知らない世界に、二人きりで旅立ちたい。
――さすがにそんなことをすれば、アリッサは怒るか。
「まあ、焦る必要はないよな。俺たちは恋人同士。二人だけでどこかへ行く機会なんていくらでもあるんだからな」
それからこれまで以上に、眼を光らせる必要があるだろう。
アリッサの無防備な寝顔を眺め、シュヴァルツは唇をそっと重ねた。
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※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。
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