悪役令嬢に転生!?わたくし取り急ぎ王太子殿下との婚約を阻止して、婚約者探しを始めますわ

春ことのは

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「…オリバー様?」 

「エリザベス嬢、だからいくらそんな顔を見せても…」

(まるで以前の貴公子然としたオリバー様に戻られてしまったみたい…)

目の前のオリバー様に、少し物寂しさを感じたものの、自分の行いについてまず謝らなくてはと考えた。

(…こんな危険な目に合わせてしまったのだから、お怒りも当然よね。きっと、もう親しげにお話しされることは無いのだわ…。)

自分の軽率な行動で起きたことに、胸がツキンと痛み、深く頭を垂れた。

「あの、今回の件はわたくしの失態です。
愚かな行動で、オリバー様を巻き込む形になってしまい、本当に申し訳ありません」

「……エリザベス嬢?」

「…………おそらく彼らは王家転覆を狙っている一味かと思われます。パン屋の厨房にいくつも荷が積んであったので、ちょうど隠れ家を引き払うところだったのかと。

今は2台の荷馬車で南西方面に進んでいるようです。

先頭の馬車には、三人組の男達と赤髪の娘が乗り込んでいます。それぞれに御者が二人おりました。速度は早いままですし、目的地まではまだ距離がありそうですわ」

とにかく、オリバー様が気を失っていた間の情報を伝えた。

わたくし達を荷台に押し込む時、確かにエマが「コクトーのおじさん」と呼んでいたから、革命組織のリーダーである、コクトー男爵で間違い無いのだろう。

(なぜかは分からないけれど、きっとコクトー男爵は、すでにエマと接触をしていたのだわ。
でも、エマに革命の計画を話して、仲間に引き込もうとするのはもっと先のはずなのに、どうして…)

「…………」

「彼らの目的地に着きましたら、わたくしが彼らに身分を明かして人質になります。必ずや機会を作りますので、その隙にオリバー様は逃げ…」

「何を言っている」

話の途中で強く遮られ、ビクッと体を揺らしてしまった。

「どうぞ御身大切になさって下さいませ。その後のことは、おそらく騎士から連絡が行っている父と兄に、グリサリオにお任せ頂ければと…」

(またお父様達にはご迷惑をお掛けしてしまうけれど…)

「……それで?僕だけ逃して、君だけ残ってどうするのかな?君のような女性が無事で済むと?」

「身から出た錆ですわ。わたくしの事はお気になさらないでくださいませ。本当に、今回はお詫びのしようも…」

もう一度頭を下げようとした時、冷ややかな声が響いた。


「それが君の受けた王太子妃教育か、嘆かわしい」

「……!」


オリバー様がまるで吐き捨てるように言い放った言葉に、血の気が引いた。

(本当に、本当にその通りだわ…。こんな身勝手な行動をして、周囲に迷惑をかけて…婚約破棄もそう、全部わたくしが前世を思い出したせいで…!)

目尻に涙が滲むのをじっとこらえた。

「……おっしゃる通りです、ご迷惑をお掛けしてしまいました。きっと、将来の王太子妃と持ち上げられて、自分の力を過信していたのです。

本当に、今までのわたくしの努力なんて、誰の役にも立たない…何の価値もなかったのです。
だから、オリバー様は気にせずお逃げ下さい」

(ここは絶対に泣いちゃ駄目だわ!オリバー様にわたくしを置いていく負い目を感じさせてしまうもの…!とにかく早く冷静に対応策を練らないと…)

「……そういった事ではない!」

「も、申し訳ありま…」

「だからそうではない!なぜ自分の身を犠牲に、なんて発想になるんだ。君は王家に大切に囲われていたのでは無かったのか?クソ王太子めが!!」

「……なんて?」

五大公爵家アプロウズの嫡男の口から出たとは思えない言葉に耳を疑った。

(な、なに?聞き間違い?クソ…?ウソ…??)

「ここは不必要な謝罪を繰り返したり、状況の分析をしたり、ましてや自分を犠牲になんて言うべきところでは無いだろう!」

「で、でも、それでは、どうすれば…」

「普通に考えて、オーリごめんなさい怖かった!と僕に抱きついて慰められるところだろう!」

「はっ…?」

そう声にならない返事をした途端、オリバー様の腕の中にいた。
いつの間にか、体を縛っていた縄は解かれていたようだった。

(えっ、なんの話をしているの!?妄想!?えっ、縄は?)

信じられない思いでわたくしを抱きしめるオリバー様を見上げると、憮然とした表情で見据えられた。

「そ、その、どのような時も泣いて動揺したりせず、冷静に対処せよと教えを…」

「その王宮の担当教師は誰なんだ!厳罰に処さねば」

「げ、厳罰?」

「大体、どうして急に余所余所しく…」

「ええと、先ほどから以前のように、わたくしをエリザベス嬢と…。だから、てっきり、軽率な行動に幻滅されて、距離を置かれてしまったのだと…?」

「え……? あっ!」

大きく目を開いたオリバー様は、その次の瞬間、まるで悪戯が見つかった少年のように顔を真っ赤に染めた。
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