悪役令嬢に転生!?わたくし取り急ぎ王太子殿下との婚約を阻止して、婚約者探しを始めますわ

春ことのは

文字の大きさ
26 / 34

番外編・悪役令嬢の日記(前)

しおりを挟む

あの騒動から半月。

まだ少し冷え込む昼下りに、わたくしは部屋のソファから暖炉の火を見つめていた。

「なんだか、全てがお母様のお告げで丸く収まってしまったわね…」

すっかりお告げを信じ込んで、毎日毎日お母様の肖像画の前で、お手紙を読み返しては涙を流してらっしゃるお父様。

わたくしから一方的に、その手を振り払ってしまった王太子殿下は…
エドからすれば、わたくしは薄情で酷い裏切りをした相手なのに、それでも身を案じて手紙を送ってくれている。

「ひどく胸が痛むけれど、やっぱりこれで良かったのよね?

わたくしも生き延びる事が出来たし、この聖セプタード王国もこれで安泰だもの……」

大きな溜息を吐いて、手元の日記に視線を移した。

わたくしが前世で大好きだったベストセラー小説「悠久の麗しき薔薇に捧ぐシリーズ」

シリーズは全五幕あり、一幕のヒロインは平民の少女エマが、万難を排して最後には愛する王太子エドワード殿下と結婚し、王妃になる事で終わる。

「……いえ、万難の一言で纏めて欲しくはないわね。そもそも、わたくし無実なのだし…」

物語の通りだったなら、わたくしは冤罪をかけられ、悪役令嬢として毒杯を賜っていたのだから……。

今更ながら震えてしまい、肩から羽織っていたショールを掻き合せた。

「…………二幕のヒロインは、実はお兄様の次女、つまりわたくしの姪なのよね…」

お兄様にもオリバー様にも、全てを明かしたのは第一幕の物語。

「……だって一幕の運命が変わってしまえば、二幕以降は無くなったのと同じ…ですもの」

何となく、一瞬「月明かりの君」と「宵闇の君」お二人の、圧の強い微笑みが浮かんだけれど……。

わたくしは手元の日記をパラパラめくる。

この日記が第二幕の「鍵」

「……日記は、毎年エドとお互いの誕生日に贈り合っていたのよね」

その日がどんな一日でも、眠る前にはお互いの顔を思い出して、書き記そうと……。

「この間まで、裏切り者のハニトラ殿下なんて呼んでいたのに、わたくしも現金ね」

ふふ、と懐かしさに笑みがこぼれた。

オリバー様への想いのように、恋では無かったけれど…

それでも、全てが終わってみると、やっぱり殿下と共にこの王国の未来を見つめ、必死に取り組んでいた日々は宝物のような思い出なのだと感じた。

「…………ごめんなさい、アメリア。
あなたの運命まで、変わってしまったわね……。
アメリアが生まれてきたら、わたくしとても大切にするわ、だからすべて燃やしてしまうのを許してね」

そう言って、ソファから立ち上がり、10歳から書き留めていた日記5冊を暖炉の前に運ぶと、心に少し寂しげな風が吹いた。

嬉しかった日も、悲しかった日も、王太子妃教育が辛かった日も……、わたくしの全てが書き綴ってある。

少しずつ破いて燃やそうと、ページを数枚を手に持った瞬間、ドアを叩く音が響いた。

「ひゃっ!」

「エリー?入るよ?」

わたくしの小さな叫び声が聞こえてしまったのか、お兄様が慌てて飛び込んでいらした。

「どうしたんだい?大丈夫?」

「え、ええ。考え事をしていたから、少しびっくりしてしまっただけなの、ごめんなさい」

大股で部屋を横切り、わたくしの側までいらしたお兄様は、当然手に持っていた日記に目を留めた……。

「「……………………」」

別に悪い事をしている訳では無いけれど、何故か悪戯が見つかった子供の様な気持ちになり、上擦った声が出てしまう。

「ち、違うんです!お兄様!」

「………何がだい?」

「………………(ゴクリ)」

自分が焦りで初期対応を誤った事に気付くも、今更「懐かしくて、読み返してましたの」なんて言ったところで、目の前のお兄様を誤魔化せる気がしなかった…。

(……それに、お兄様にはもう嘘は言わないって決めたんだものね……。

そう、そうだわ!隠し事なら問題ないわよね!)

「お兄様、わたくし…」

「エリー、春からの王立魔法学院への入学について、少し話したかったんだけれど、時間はあるかい?」

お兄様に、嘘ではないが尤もらしい言い訳をしようと言葉を発した途端、出鼻を挫かれてしまう。

「え?ええ」

「じゃあサロンで一緒にお茶にしよう」

そう言って、目の前で爽やかな微笑みを浮かべ手を差し伸べるお兄様の、淡い金色の瞳が強い光を宿したのに気付き、わたくしは自分の近い未来を悟った。

(ひっっっ!わたくし、また今日も温い紅茶を何杯も頂く事になるの……!?)

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

もう何も奪わせない。私が悪役令嬢になったとしても。

パリパリかぷちーの
恋愛
侯爵令嬢エレノアは、長年の婚約者であった第一王子エドワードから、公衆の面前で突然婚約破棄を言い渡される。エドワードが選んだのは、エレノアが妹のように可愛がっていた隣国の王女リリアンだった。 全てを失い絶望したエレノアは、この婚約破棄によって実家であるヴァルガス侯爵家までもが王家から冷遇され、窮地に立たされたことを知る。

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。 でも、ヒロイン(転生者)がひどい!   彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉ シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり! 私は私の望むままに生きます!! 本編+番外編3作で、40000文字くらいです。 ⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

ループした悪役令嬢は王子からの溺愛に気付かない

咲桜りおな
恋愛
 愛する夫(王太子)から愛される事もなく結婚間もなく悲運の死を迎える元公爵令嬢のモデリーン。 自分が何度も同じ人生をやり直している事に気付くも、やり直す度に上手くいかない人生にうんざりしてしまう。 どうせなら王太子と出会わない人生を送りたい……そう願って眠りに就くと、王太子との婚約前に時は巻き戻った。 それと同時にこの世界が乙女ゲームの中で、自分が悪役令嬢へ転生していた事も知る。 嫌われる運命なら王太子と婚約せず、ヒロインである自分の妹が結婚して幸せになればいい。 悪役令嬢として生きるなんてまっぴら。自分は自分の道を行く!  そう決めて五度目の人生をやり直し始めるモデリーンの物語。

婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。

久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」  煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。  その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。  だったら良いでしょう。  私が綺麗に断罪して魅せますわ!  令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?

最低の屑になる予定だったけど隣国王子と好き放題するわ

福留しゅん
恋愛
傲慢で横暴で尊大な絶世の美女だった公爵令嬢ギゼラは聖女に婚約者の皇太子を奪われて嫉妬に駆られ、悪意の罰として火刑という最後を遂げましたとさ、ざまぁ! めでたしめでたし。 ……なんて地獄の未来から舞い戻ったギゼラことあたしは、隣国に逃げることにした。役目とか知るかバーカ。好き放題させてもらうわ。なんなら意気投合した隣国王子と一緒にな! ※小説家になろう様にも投稿してます。

魔法学園の悪役令嬢、破局の未来を知って推し変したら捨てた王子が溺愛に目覚めたようで!?

朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
『完璧な王太子』アトレインの婚約者パメラは、自分が小説の悪役令嬢に転生していると気づく。 このままでは破滅まっしぐら。アトレインとは破局する。でも最推しは別にいる! それは、悪役教授ネクロセフ。 顔が良くて、知性紳士で、献身的で愛情深い人物だ。 「アトレイン殿下とは円満に別れて、推し活して幸せになります!」 ……のはずが。 「夢小説とは何だ?」 「殿下、私の夢小説を読まないでください!」 完璧を演じ続けてきた王太子×悪役を押し付けられた推し活令嬢。 破滅回避から始まる、魔法学園・溺愛・逆転ラブコメディ! 小説家になろうでも同時更新しています(https://ncode.syosetu.com/n5963lh/)。

処理中です...