25 / 33
第1章
亜人種
しおりを挟む
「とりあえず、有り合わせで何かを作れる程度は食材があって良かった……」
「リヒトさん、お野菜洗ったよ」
「ありがとう、シキ。葉物はこれくらい、根菜はそれより少し小さめに切ってみようか」
「うん、わかった!」
レイセル宅にて、主人不在のまま調理場を借りて少し早めの昼食の用意をしている。
当のレイセル本人はまだ眠り続けていた。鬼の居ぬ間に全て終わらせてしまおうと、リヒトはスープを作るために魔道コンロに火を付けた。
「干し肉が辛うじて残ってて良かった。スープがあれば大丈夫かな」
シキが切ってくれた野菜を鍋に入れ、汲んできた水を入れて煮込み始める。根菜類に火が通ってきたら葉物を入れる、ついでに干し肉も刻んで入れた。
スープの味を塩などで整えているときに、穀物の備蓄があることに気づいたリヒトはフライパンで手軽に作れるパンを作ることにした。
小麦粉に卵と砂糖と塩を入れて手早く混ぜると、少量ずつ水を加えていき、程よいやわらかさまで混ぜると、バターを溶かしたフライパンで小さく丸めたパン生地を焼き始める。
「パンってそういう風に作るんだ」
「これはだいぶ簡略化してるんだけどね。余裕があれば発酵して膨らませたり、オーブンで焼くよ」
バターの匂いが漂ったことで目が覚めたのか、作業部屋からレイセルが起きてきたようだった。
「……お前ら、何勝手に」
「はいはい、文句は食べてから聞くからね」
リヒトは隈の浮かぶ顔のレイセルをテーブルへと座らせ、ハーブティーを目の前に置いて飲むように伝えた。
「もう少しでパンが焼けるから、それでも飲んでいて」
「リヒトさん、なんか焦げ臭い……!?」
「わ、ひっくり返さなきゃ」
レイセルは差し出されたお茶を飲む。自分が淹れるときは感じない糖蜜の甘さを感じ、無意識にほぅ、と息をついてしまった。
「……で? 何の用で押し掛けて来たんだ。迷惑だからそれ食ったら早く帰れ」
「寝不足でほとんど行き倒れみたいになってた人が良く言うよ」
レイセルにとっては朝食、シキとリヒトにとっては昼食になるが、同席して相伴に預かることになった。
少し焦げかけたが、即席で作ったパンもバターの風味が食欲をそそる。スープも保冷庫で萎びかけていた野菜とは思えないほど、きちんとした料理になった。
レイセルは無言で食べ続けていることから、どうやら満足してくれたようだとリヒトは判断した。
「君の様子を伺いたかったんだよ、それにシキが君と話してみたいと言うから。あとついでに北の森で軟膏の材料を採取できれば、と」
レイセルはシキをじっと見据える。
びくり、とシキは居住まいを正した。
「何が聞きたい」
「レイセル、怖いからもう少し優しく聞いてあげて」
「ふん」
ムスッとした顔で、それでもパンを食べる手を止めないレイセルなので、機嫌は悪くは無いようだが、如何せん言動が端的すぎて威圧感を感じる。
「あの、レイセルさんは、魔道具師と聞きました。魔法が使えるってことは亜人種なのですか……?」
「そうだ。妖精族と人族の混血だ。他国ではエルフとも言われている。妖精人族だ」
「妖精……」
「魔法についてなら、俺のはあまり参考にならんぞ」
どうして?と言ったような顔をするシキにレイセルはため息混じりに話し始めた。
「俺は魔力量が少ないんだ。火の玉なんて出せないし、せいぜいろうそくの灯り程度の低級の光魔法くらいしか使えない。だがそれが魔道具師には向いていたからこの仕事をしている」
「魔力量が少ない方が向いている……?」
「魔道具は魔法陣を記して作るものだ。細かな魔法陣を組むのに膨大な魔力はむしろは不向きなんだよ」
わかったような、わかっていないような顔をしているシキに舌打ちしたレイセルは、どこから取り出してきたのか、カーニバルで見かけるような風船を二つほど取り出してきた。
何をするのか興味津々なシキにレイセルがそれぞれに口で空気を入れていく。一つは小さく。一つはぱんぱんになるほど大きく。大小二つの風船が膨らまされた。
「これにそれぞれ針を刺すとどうなる?」
「……割れちゃう?」
「見ていろ」
レイセルはまず、小さな風船に道具箱から取り出してきた針を刺した。身構えるシキを小さく笑いながら、ぷすりと刺す。
小さな風船はすー、と小さな空気の抜ける音をさせながら萎むだけだった。
「魔力量が少なければ、少しずつ放出することができる。 じゃあ大きな風船はどうだ?」
「今度こそ割れる!」
レイセルは容赦なく大きな風船に針を刺した。
バチン、と大きな破裂音がする。身構えていてもビクリと身をすくめてしまった。
「正解だ。魔力量が多ければそれだけ威力は上がるが、小さく放出するのは苦手なんだよ。魔道具師は魔力量が少ない種族でも仕事ができるし、むしろ適性がある」
「亜人種の方たちって、みんな魔力量がすくないものなの?」
「お前は亜人種にあまり会ったことが無いからわからないだろうが、亜人種の魔力は純血種の足元にも及ばない。人族からすると魔力の有る無しは天と地の差だが、魔力持ちの世界からすると純血種と亜人種にも天と地の差がある。お前が少し規格外なんだ」
レイセルの目にはシキの中に飽和しかけている魔力が見えるようだった。口の中のパンをお茶で流し込み、レイセルは青い目でシキをじっと見つめる。
「ヒューマのジジイも言ってたかもしれないが、稀に純血種をも上回る魔力持ちが亜人種に生まれることがある。お前のような能力者を、権力者は喉から手が出るほど欲しがるもんだ。
とりあえずの脅威は去ったかもしれんが、まだああいう奴隷商のような裏稼業の奴らは掃いて捨てるほど居る。魔法を使えるように訓練するのはもちろんだが、身を守る術も身につけた方がいいだろうな」
そう言い放ったあと、レイセルはリヒトをちらりと一瞥して、
「この腑抜けは格闘技は以ての外だ。むしろ邪魔にしかならん、自分の身は自分で守れるようになれよ」
「いきなり悪口を目の前で言わないでよ……」
飛び火がやってくるとは思わなかったリヒトは、否定しようにも事実でしかないその言葉に苦笑することしかできなかった。
「リヒトさんとレイセルさんは仲が良いんだね。なんだかレイセルさんと居るとリヒトさんが幼く見えるよ」
「……えっ」
「会ったばかりの時は、なんでも出来るお兄さんみたいだったけど、マギユラさんに叱られてるし。レイセルさんにも同じように怒られてるし」
くすくす笑うシキに、リヒトは悲しいやら恥ずかしいやらで少し頬を赤面させた。
「シキの前では立派な大人になろうと思ったんだけどな……。そうだね、私には出来ないことがたくさんあるよ」
「出来ないことしか無いだろうが」
「料理と調剤は人並みにできるよ!」
シキはリヒトとレイセルの双方を観ながら、はっとしたようで、今度は首を傾げていた。百面相をしている様子に気づき、リヒトは訊ねる。
「シキ?」
「あの、リヒトさんとレイセルさんって、兄弟なのかな、って。なんだか雰囲気?が似てて……」
「こんなのと血縁なんてやめてくれ……」
項垂れるレイセルにリヒトはテーブルの反対側からレイセルの肩をつつきながら、酷くないかい?といじけている。
リヒトはやれやれと肩を竦め、シキの目を見て告げた。
「シキ、言ってなかったけど、レイセルと私は同胞だよ。私にも実は妖精族の血が半分入っている。……魔力は引き継がなかったけどね」
「リヒトさんも亜人種だったの!? 魔力の無い亜人っているんだね、知らなかった」
リヒトがくしゃり、と笑みを浮かべるとレイセルはシキに「お前、」と声を掛ける。
「訓練に使えそうな魔道具がある。見ていくか? リヒトもほら、マカの実か? こっちでこいつ預かってるからさっさと採取してこい」
「う、うん……、ありがとうレイセル」
丁度食べ終えたタイミングだったので、簡単に食器を片付け、レイセルはシキを伴いまた再び作業部屋へと向かって行った。シキは魔道具を見るのがたのしみなようで、どんなのなの?とレイセルに訊ねながら部屋へと消えていった。
「ありがとう、レイセル」
一人残されたリヒトは部屋の先を見つめ、鞄を持って玄関から出て行った。
「……ねえ、レイセルさん。リヒトさん、悲しそうだった。何か僕、ひどいこと言っちゃった?」
「いや、お前は何も悪くない。あいつが考えすぎなだけなんだ……」
作業部屋に入るなり、シキはレイセルに訊ねる。翳った顔をしたシキに安心しろ、というように頭をぽんと撫でた。
リヒトは亜人種だ。魔力持ちの妖精族の血を半分受け継いだにも関わらず、リヒトの魔力は皆無であった。
「レイセルさんもリヒトさんと同じ撫で方してくれるね」
ひひっと、嬉しそうに無邪気にはにかむ子どもが少しだけ憎らしくてほっぺをむにりと軽くつねってやった。えー!という非難の声を無視して、目的の魔道具を乱雑な部屋の棚の中から探すのだった。
「リヒトさん、お野菜洗ったよ」
「ありがとう、シキ。葉物はこれくらい、根菜はそれより少し小さめに切ってみようか」
「うん、わかった!」
レイセル宅にて、主人不在のまま調理場を借りて少し早めの昼食の用意をしている。
当のレイセル本人はまだ眠り続けていた。鬼の居ぬ間に全て終わらせてしまおうと、リヒトはスープを作るために魔道コンロに火を付けた。
「干し肉が辛うじて残ってて良かった。スープがあれば大丈夫かな」
シキが切ってくれた野菜を鍋に入れ、汲んできた水を入れて煮込み始める。根菜類に火が通ってきたら葉物を入れる、ついでに干し肉も刻んで入れた。
スープの味を塩などで整えているときに、穀物の備蓄があることに気づいたリヒトはフライパンで手軽に作れるパンを作ることにした。
小麦粉に卵と砂糖と塩を入れて手早く混ぜると、少量ずつ水を加えていき、程よいやわらかさまで混ぜると、バターを溶かしたフライパンで小さく丸めたパン生地を焼き始める。
「パンってそういう風に作るんだ」
「これはだいぶ簡略化してるんだけどね。余裕があれば発酵して膨らませたり、オーブンで焼くよ」
バターの匂いが漂ったことで目が覚めたのか、作業部屋からレイセルが起きてきたようだった。
「……お前ら、何勝手に」
「はいはい、文句は食べてから聞くからね」
リヒトは隈の浮かぶ顔のレイセルをテーブルへと座らせ、ハーブティーを目の前に置いて飲むように伝えた。
「もう少しでパンが焼けるから、それでも飲んでいて」
「リヒトさん、なんか焦げ臭い……!?」
「わ、ひっくり返さなきゃ」
レイセルは差し出されたお茶を飲む。自分が淹れるときは感じない糖蜜の甘さを感じ、無意識にほぅ、と息をついてしまった。
「……で? 何の用で押し掛けて来たんだ。迷惑だからそれ食ったら早く帰れ」
「寝不足でほとんど行き倒れみたいになってた人が良く言うよ」
レイセルにとっては朝食、シキとリヒトにとっては昼食になるが、同席して相伴に預かることになった。
少し焦げかけたが、即席で作ったパンもバターの風味が食欲をそそる。スープも保冷庫で萎びかけていた野菜とは思えないほど、きちんとした料理になった。
レイセルは無言で食べ続けていることから、どうやら満足してくれたようだとリヒトは判断した。
「君の様子を伺いたかったんだよ、それにシキが君と話してみたいと言うから。あとついでに北の森で軟膏の材料を採取できれば、と」
レイセルはシキをじっと見据える。
びくり、とシキは居住まいを正した。
「何が聞きたい」
「レイセル、怖いからもう少し優しく聞いてあげて」
「ふん」
ムスッとした顔で、それでもパンを食べる手を止めないレイセルなので、機嫌は悪くは無いようだが、如何せん言動が端的すぎて威圧感を感じる。
「あの、レイセルさんは、魔道具師と聞きました。魔法が使えるってことは亜人種なのですか……?」
「そうだ。妖精族と人族の混血だ。他国ではエルフとも言われている。妖精人族だ」
「妖精……」
「魔法についてなら、俺のはあまり参考にならんぞ」
どうして?と言ったような顔をするシキにレイセルはため息混じりに話し始めた。
「俺は魔力量が少ないんだ。火の玉なんて出せないし、せいぜいろうそくの灯り程度の低級の光魔法くらいしか使えない。だがそれが魔道具師には向いていたからこの仕事をしている」
「魔力量が少ない方が向いている……?」
「魔道具は魔法陣を記して作るものだ。細かな魔法陣を組むのに膨大な魔力はむしろは不向きなんだよ」
わかったような、わかっていないような顔をしているシキに舌打ちしたレイセルは、どこから取り出してきたのか、カーニバルで見かけるような風船を二つほど取り出してきた。
何をするのか興味津々なシキにレイセルがそれぞれに口で空気を入れていく。一つは小さく。一つはぱんぱんになるほど大きく。大小二つの風船が膨らまされた。
「これにそれぞれ針を刺すとどうなる?」
「……割れちゃう?」
「見ていろ」
レイセルはまず、小さな風船に道具箱から取り出してきた針を刺した。身構えるシキを小さく笑いながら、ぷすりと刺す。
小さな風船はすー、と小さな空気の抜ける音をさせながら萎むだけだった。
「魔力量が少なければ、少しずつ放出することができる。 じゃあ大きな風船はどうだ?」
「今度こそ割れる!」
レイセルは容赦なく大きな風船に針を刺した。
バチン、と大きな破裂音がする。身構えていてもビクリと身をすくめてしまった。
「正解だ。魔力量が多ければそれだけ威力は上がるが、小さく放出するのは苦手なんだよ。魔道具師は魔力量が少ない種族でも仕事ができるし、むしろ適性がある」
「亜人種の方たちって、みんな魔力量がすくないものなの?」
「お前は亜人種にあまり会ったことが無いからわからないだろうが、亜人種の魔力は純血種の足元にも及ばない。人族からすると魔力の有る無しは天と地の差だが、魔力持ちの世界からすると純血種と亜人種にも天と地の差がある。お前が少し規格外なんだ」
レイセルの目にはシキの中に飽和しかけている魔力が見えるようだった。口の中のパンをお茶で流し込み、レイセルは青い目でシキをじっと見つめる。
「ヒューマのジジイも言ってたかもしれないが、稀に純血種をも上回る魔力持ちが亜人種に生まれることがある。お前のような能力者を、権力者は喉から手が出るほど欲しがるもんだ。
とりあえずの脅威は去ったかもしれんが、まだああいう奴隷商のような裏稼業の奴らは掃いて捨てるほど居る。魔法を使えるように訓練するのはもちろんだが、身を守る術も身につけた方がいいだろうな」
そう言い放ったあと、レイセルはリヒトをちらりと一瞥して、
「この腑抜けは格闘技は以ての外だ。むしろ邪魔にしかならん、自分の身は自分で守れるようになれよ」
「いきなり悪口を目の前で言わないでよ……」
飛び火がやってくるとは思わなかったリヒトは、否定しようにも事実でしかないその言葉に苦笑することしかできなかった。
「リヒトさんとレイセルさんは仲が良いんだね。なんだかレイセルさんと居るとリヒトさんが幼く見えるよ」
「……えっ」
「会ったばかりの時は、なんでも出来るお兄さんみたいだったけど、マギユラさんに叱られてるし。レイセルさんにも同じように怒られてるし」
くすくす笑うシキに、リヒトは悲しいやら恥ずかしいやらで少し頬を赤面させた。
「シキの前では立派な大人になろうと思ったんだけどな……。そうだね、私には出来ないことがたくさんあるよ」
「出来ないことしか無いだろうが」
「料理と調剤は人並みにできるよ!」
シキはリヒトとレイセルの双方を観ながら、はっとしたようで、今度は首を傾げていた。百面相をしている様子に気づき、リヒトは訊ねる。
「シキ?」
「あの、リヒトさんとレイセルさんって、兄弟なのかな、って。なんだか雰囲気?が似てて……」
「こんなのと血縁なんてやめてくれ……」
項垂れるレイセルにリヒトはテーブルの反対側からレイセルの肩をつつきながら、酷くないかい?といじけている。
リヒトはやれやれと肩を竦め、シキの目を見て告げた。
「シキ、言ってなかったけど、レイセルと私は同胞だよ。私にも実は妖精族の血が半分入っている。……魔力は引き継がなかったけどね」
「リヒトさんも亜人種だったの!? 魔力の無い亜人っているんだね、知らなかった」
リヒトがくしゃり、と笑みを浮かべるとレイセルはシキに「お前、」と声を掛ける。
「訓練に使えそうな魔道具がある。見ていくか? リヒトもほら、マカの実か? こっちでこいつ預かってるからさっさと採取してこい」
「う、うん……、ありがとうレイセル」
丁度食べ終えたタイミングだったので、簡単に食器を片付け、レイセルはシキを伴いまた再び作業部屋へと向かって行った。シキは魔道具を見るのがたのしみなようで、どんなのなの?とレイセルに訊ねながら部屋へと消えていった。
「ありがとう、レイセル」
一人残されたリヒトは部屋の先を見つめ、鞄を持って玄関から出て行った。
「……ねえ、レイセルさん。リヒトさん、悲しそうだった。何か僕、ひどいこと言っちゃった?」
「いや、お前は何も悪くない。あいつが考えすぎなだけなんだ……」
作業部屋に入るなり、シキはレイセルに訊ねる。翳った顔をしたシキに安心しろ、というように頭をぽんと撫でた。
リヒトは亜人種だ。魔力持ちの妖精族の血を半分受け継いだにも関わらず、リヒトの魔力は皆無であった。
「レイセルさんもリヒトさんと同じ撫で方してくれるね」
ひひっと、嬉しそうに無邪気にはにかむ子どもが少しだけ憎らしくてほっぺをむにりと軽くつねってやった。えー!という非難の声を無視して、目的の魔道具を乱雑な部屋の棚の中から探すのだった。
0
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。
再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。
妻を一途に想い続ける夫と、
その想いを一ミリも知らない妻。
――攻防戦の幕が、いま上がる。
王宮メイドは今日も夫を「観察」する
kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」
王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。
ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。
だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……?
※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。
愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる