ボクは転生者!塩だけの世界で料理&領地開拓!

あんり

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第1章 カイト、五歳までの軌跡

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ボクは、大人を支えられるほど強くない。

だから今、ハーレン団長は背中に矢を受けながらも、ボクを守るためだけに踏ん張り、ボクの盾になってくれてる。
その体が震えている。

早く、早く聖水を掛けなきゃ!じゃないと――ハーレン団長が死んじゃう。

どうする?
どうすればいいのっ?
考えろ、考えるんだカイト。

「カイト…様。私は……もう…ダメでしょう。ハァ……ハァ……いいですか……よく聞いて……」

「大丈夫、隙を見て、聖水をかけてあげる」

「いや…それは…貴重なもの…でしょう…?私なぞに、…使うわけ…ウグッ……」

苦しそう……。
痛いよね、ハーレン団長。

「大丈夫、ボクに考えがある」

ボクとハーレン団長がお互いの耳元で囁き合っている事は、あいつらにはバレていない。

「ハーレン団長、よく聞いて。今からボクは聖水をかけるために“あいつらを騙す”。聖水かけたら、……凄く痛くて、苦しんで、気絶しちゃうと思う。
気絶から目覚めたら、お願い。パパ達に助けを求めて。そしてボクを助けに来て!」

「ッ…い、けま……せん。そんな…危険な……こと…させられ……ませんっ…ハァハァ…ッッ」

「大丈夫、ボクには考えがある。だから、任せて。いいね。かなり痛いけど、頑張って」

「カイト……さま……」

ハーレン団長は、きっと死を覚悟している。
そして、どうにか、この小さなボクを守ろうとしている。

そこへ、あいつらの声が飛んだ。

「おい、そこの子ども。そいつに弓を当てるつもりだったが、お前にも当たらなかったか?大丈夫か?」

は?なんだ、このおっさん達。
ニヤニヤしてて気持ち悪い。
絶対にボクを心配なんてしてない。
けど、それを利用するんだ。

「大丈夫だよ、おじさん達。この悪い人からボクを助けてくれたの?」

「ああ、そうだ。大丈夫ならいい。さあ、親のところに連れて行ってやるぞ。俺たちはこう見えて親切なんだ」

嘘つきめっ!

「ありがとう。パパとママのところに連れて行ってくれるの?本当?」

ニャハハ、ちょろいガキだぜ。
「ああ、連れて行ってあげるから、こっちに来な」

あいつらの顔に油断って書いてる。

「ちょっと待って。ボク、このオジサンが大嫌いなんだ。このおじさんに……この塩水、かけてやりたい。 
そうしたら、もっと苦しいと思う。
ボクをいじめたんだ。
仕返ししてやりたい、いい?」

ハーレン団長と仲良さそうだったのに……とでも思ったのか、奴らは顔を見合わせている。

「おぅ?なんだ?仲良しじゃなかったのか?……まぁいい。たんまり苦しませろ」

完全に信じたみたい。
ふふ…………………よし!

「ハーレン団長、ごめんね」

しかし、なんだ、あの容器は?
なんで塩水なんてなんで持ってるんだ?
ガキの考えは分からん。しかし、痛みつけるのは、賛成だな。


ボクはそっとハーレン団長から離れた。
支えを失ったハーレン団長の体は、前のめりにドサッと倒れ、乾いた土埃が舞い上がる。

ボクは、叫ぶ。

「ボクを苦しめたお前………!」

「ゆる――さないっ!」

ボクはハーレン団長に突き刺さる矢を真っ直ぐに力いっぱい引き抜いた。

矢を引き抜かなきゃ、治せない。

「ウギャァアァァァァアアァアァァァアァ――!」

ハーレン団長の絶叫が、耳の奥に刺さる。森の中に木霊こだまする。
泣いちゃだめだ、泣くな、カイト。
やるんだ……ハーレン団長を助けるために。

次々に矢を引き抜く。
ハーレン団長の呻き声が唸る。
もうすぐだよ、もうすぐ終わるから、ハーレン団長、頑張って。

「…………ゴクッ」「えげつねぇな」

敵の声なんて聞こえない。

「トドメだっ!」

ペットボトルの聖水を、ハーレン団長にぶちまけた。

「悪いやつめ。苦しめ、苦しめ!」

絶対に助ける。
絶対死なせないからっ!
耐えて、ハーレン団長…………!

ボクは心の声とは真逆な言葉を口にする。

聖水が染み込んだ瞬間――
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙――!」

ビクビクとハーレン団長の体が跳ねる。

「さあ、苦しめ、もっと苦しめ!」

敵はゲラゲラ笑う。

「なんだ、このガキ?……なかなかな悪どいじゃないか」

ボクの本心なんて、あいつらに悟られてはいない。
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