ボクは転生者!塩だけの世界で料理&領地開拓!

あんり

文字の大きさ
398 / 422
第2章 いよいよ開幕!――物語は“影”の深層へ!

390

しおりを挟む
 (ルークside)

王都からダウニー様とカイト坊ちゃんが陛下と共に、マーシュ領へ転移して1週間。

我々マーシュ領騎士団は、マーシュ領へ帰還すべく馬を走らせていた。

ダウニー様も、カイト坊ちゃんも、無事にマーシュ領に帰られて、今頃安心しながら家族で美味しいものでも食べているんだろうな。私も早く帰りたい。
帰ってあのとんでもなく美味しいトン汁が飲みたい。腹いっぱいガリガリクゥステーキも食べたい。

脳内の数々の料理たちが、あの料理の味を思い出させ、口の中の唾液を増やす。

思い描くだけじゃ、腹は満たされない。
実際食べた時のあの感動は素晴らしいものだ。思い出すのが辛いほど、早く食べたくて私たちは馬を走らせた。

寝る間を惜しんで、だっ!

今頃、マーシュ領では、何が振る舞われているのか?
デリベリのガリガリクゥ焼きか?
それともトン汁か?
イカルンミソ汁か?
いや、オジサンのミソ汁か?
フワフワの黄色い卵焼きか?
トマートゥとチキンのスープか?
まっ、まさか、私の大好物の“ガリガリクゥステーキ”なんじゃ―――くそぉっ!食べたい、無性に食べたいぞ!

あの我領の料理を食べたら、他の薄い塩味だけでは物足りなさすぎて辛い。

1週間前、陛下の転移魔法でダウニー様カイト坊ちゃんが帰る際、私に笑顔を向けて“ルークも一緒に帰ろう”って言ってくれた坊ちゃんの誘いを断ったのだ。
家族水入らずに私が混じるのはと遠慮したのだ。
それを今では後悔している。
あの時、笑顔からの誘いを断った自分を、今、私は殴ってしまいたい!

転移魔法は一瞬ではないか。
あっという間なら、気まずいことも無かったのだ。

あの時、断らなければ―――
私は、こんな風にお腹が空かなかった。
あの料理の味を恋しがることも、なかったのだ。

早く―――マーシュ領へ。
馬への合図が一段と上がる。
それに応えるように、軍馬たちは
ヒヒーーンと鳴き、足を運ぶ!
ドッドッドッ
お前たちも、改良された土に実るあのキャロットトトトが食べたいのだな。

ひと味も、ふた味も美味しくなったあの美味しさ。それが馬たちに通じたのか。


しばらく走らせたあと、遠くの行先の闇に有り得ない“揺らぎ”が生まれた。
騎士として長年培ってきた感覚が、瞬時に「異常」だと伝えた。
私は急いで馬を止めた。
今は夜だ。マーシュ領が見えるはずもない距離。何も無いはずのところに光が揺れた。

私たちは様子を伺う。
遠くでチラチラと幾つもの明かりか揺れているのだ。
夜中動物の目が光って見えることがある、しかし、それではない。
“揺れる”なんてことはない。
明らかに松明の明かり。
そこに無数の明かり。かなり多い。

一瞬、ここに向かってくるのか様子を見たがどうやら向こうに進んでるようだ。
向こう側―――マーシュ領へ。

なんだ?こいつら。
奇襲か?

敵なのか?

これは探らなければ。
あとお腹がこれ以上鳴けば、相手に気づかれてしまう。
それは、まずい。

私は腰に下げた水袋をひとつ飲み干した。
腹が鳴っては戦はできぬ。

私は1日でも早く、マーシュ領の美味い飯が食いたいんだ。その邪魔をするやつを許さない。
マーシュ領に害を加えるものを許さない。

邪魔をするやつらは誰だ。
私たちの行先を阻む者はどいつらだ。

私は部下に合図を送る。その合図は、
―――敵か判別せよ。
―――その敵がどこの誰か、探れ。

指示を受けた部下が静かに馬を走らせていく。そして馬を止め、そこからは自身で進むのだ。

シュンシュンシュン。風が抜ける。
足音すら殺し、風のように闇に消える。
部下たちは身軽に素早く木々をくぐり抜け敵に近づいていく。
私には、その姿がちゃんと、よく見える。
この俊敏さも、動体視力の良さも、全てカイト坊ちゃんが考案した訓練の賜物。

しばらく奴らの動きと様子を見てきた部下が戻ってきた。

「ルーク団長、やつら、ケンブルクの兵士達のようです。どうやらマーシュ領に向かってます。今奴らは休憩をしているようで、明後日にはマーシュ領近くにたどり着き、……三日後マーシュ領を襲撃する模様。」

「なんだと!!!」

その話を聞いた私は咥えていた干し肉を引きちぎった。

あいつら、なんの目的だ?
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

【完結】令嬢憧れの騎士様に結婚を申し込まれました。でも利害一致の契約です。

稲垣桜
恋愛
「君と取引がしたい」 兄の上司である公爵家の嫡男が、私の前に座って開口一番そう告げた。 「取引……ですか?」 「ああ、私と結婚してほしい」 私の耳がおかしくなったのか、それとも幻聴だろうか…… ああ、そうだ。揶揄われているんだ。きっとそうだわ。  * * * * * * * * * * * *  青薔薇の騎士として有名なマクシミリアンから契約結婚を申し込まれた伯爵家令嬢のリディア。 最低限の役目をこなすことで自由な時間を得たリディアは、契約通り自由な生活を謳歌する。 リディアはマクシミリアンが契約結婚を申し出た理由を知っても気にしないと言い、逆にそれがマクシミリアンにとって棘のように胸に刺さり続け、ある夜会に参加してから二人の関係は変わっていく。 ※ゆる〜い設定です。 ※完結保証。 ※エブリスタでは現代テーマの作品を公開してます。興味がある方は覗いてみてください。

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?

水神飛鳥の異世界茶会記 ~戦闘力ゼロの茶道家が、神業の【陶芸】と至高の【和菓子】で、野蛮な異世界を「癒やし」で侵略するようです~

月神世一
ファンタジー
「剣を下ろし、靴を脱いでください。……茶が入りましたよ」 ​ 猫を助けて死んだ茶道家・水神飛鳥(23歳)。 彼が転生したのは、魔法と闘気が支配する弱肉強食のファンタジー世界だった。 ​チート能力? 攻撃魔法? いいえ、彼が手にしたのは「茶道具一式」と「陶芸セット」が出せるスキルだけ。 ​「私がすべき事は、戦うことではありません。一服の茶を出し、心を整えることです」 ​ゴブリン相手に正座で茶を勧め、 戦場のど真ん中に「結界(茶室)」を展開して空気を変え、 牢屋にぶち込まれれば、そこを「隠れ家カフェ」にリフォームして看守を餌付けする。 ​そんな彼の振る舞う、異世界には存在しない「極上の甘味(カステラ・羊羹)」と、魔法よりも美しい「茶器」に、武闘派の獣人女王も、強欲な大商人も、次第に心を(胃袋を)掴まれていき……? ​「野暮な振る舞いは許しません」 ​これは、ブレない茶道家が、殺伐とした異世界を「おもてなし」で平和に変えていく、一期一会の物語。

『まて』をやめました【完結】

かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。 朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。 時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの? 超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌! 恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。 貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。 だから、もう縋って来ないでね。 本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます ※小説になろうさんにも、別名で載せています

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

• 『社交界の華は、影に咲く毒。〜私を捨てた世界、すべてお返しいたします〜』

ヨォコ
ファンタジー
「その黄金の瞳……なんて気持ち悪いの。我が家に化け物は必要ないわ」 名門伯爵家の娘として生まれたエレーナ。しかし、彼女に宿った未知の能力を恐れた継母イザベラは、実父の留守中を狙い、幼い彼女を雪の降る町に捨て去った。 死を覚悟した彼女を拾ったのは、帝国の裏社会を支配する「皇帝の弟」ヴィンセント公爵。 彼はエレーナの力を「至宝」と呼び、彼女を公爵家の実の娘として迎え入れた。 それから数年。 エレーナは、二人の過保護な兄と、五人の精鋭部下に囲まれ、美しくも最強の工作員へと成長していた。 すべてを暴く『黄金の瞳』、すべてを操る『魅了』、そして伝説の師匠たちから授かった至高の淑女教育を武器に。 一方、継母イザベラは父を捨て、さらなる権力を手に入れるため、悪名高い侯爵の妻として社交界の頂点に君臨していた。 「お久しぶりです、お母様。……化け物と呼ばれた私からの、お返しを受け取ってくださいね」 捨てられた少女による、優雅で残酷な復讐劇。 今、その幕が上がる。

虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~

八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。 しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。 それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。 幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。 それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。 そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。 婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。 彼女の計画、それは自らが代理母となること。 だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。 こうして始まったフローラの代理母としての生活。 しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。 さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。 ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。 ※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります ※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)

処理中です...