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8.私への求婚がありました
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風が少し冷たく感じました。
見てはいけないものを見てしまった時の、あの嫌な胸のざわつき、………それは今私が感じているものです。
見つめ合うふたり。
そういえば、婚約破棄の理由を聞いていなかったわね。
今のあの二人が、………私への答えなのかしら?
婚約破棄の理由を聞かなくても、あの距離の近さが答えだった。
――そう、そういうことでしたの?
なら、はっきり言えばいいのに。
……随分と、分かりやすい“答え”ですこと。
気分が悪いし、機嫌も悪いわ。
でも、お友達に悪いから、笑顔を作らなきゃ。
貴族女性としての礼儀ですもの。
何があっても感情を顔に出してはいけません。
私のお友達も、少ししてあの二人に気づいたようです。
「なんてこと」……私も同感だわ。
「そういうこと?」……私も同感だわ。
「ありえないわ」――そうかしら?
その後は、貴族女性らしく微笑んで普通に過ごしましたわ。
けど、帰りの馬車は相変わらず無言。
それはそれで良かったのかもしれません。
今は、誰とも話したくないもの。
今は、誰にも話を触れてほしくないもの。
不思議よね?
「エリッサ、ボクはエリッサだけだよ」
――そうなんですね
「ボクの可愛いエリッサ、好きだよ」
――まだあなたのものではありません。
「エリッサ、ただ名前を呼んだだけ」
――意味がわかりません。
「エリッサ、ボクが卒業したらすぐにでも結婚しようね」
――すぐに別れましたけども。
どこに浮気をする隙間があったのかしら?
謎なのよね。
考えるのはよしましょう。疲れますわ。
もう、過去のことなのだから。
今、私はお父様とお母様に呼ばれて、3人でお茶を飲みながら一息ついたところ。
「あのね、エリッサちゃんにお話があってここに呼んだのよ」
ええ、存じてます。
「エリッサ、実はな、お前に縁談が来ているんだ」
え?私、つい先日婚約破棄をされた傷物令嬢ですよ、どこの物好きが私に求婚するというのでしょう。
「わたくしに、縁談······ですか」
「ああ、しかも99通も」
あら、あと1通で100通ですのに。
キリが良ければなんて言ってられませんわね。
「そうでしたの」
「ただな、我が家は侯爵だ。だから申し訳ないが子爵以下はお断りさせてもらった。理由は分かるな」
そもそも子爵以下と、伯爵以上は貴族教育から内容が違いますわ。
それに、うちは婿養子を取らなければ行けません。
だから、私の夫となる方は伯爵位以上でなくては。
「ええ、理解しています」
「うむ。そこでだ。あと、後妻にと求められたり、変な噂のやつを除けば、今、残っているのが二人だ」
まあ、お二人も。
名前も知らないお二人……よろしいのでしょうか?
「二人もですか?それはどなたか伺っても?」
「ああ、それがな……」
そこまで言いかけて、勿体ぶるなんてお父様……焦らし作戦ですの?
「クランク侯爵次男、ロバート様だ」
は?三男に婚約破棄されましたのに、次男が婚約者になるって――まさか!
「有り得ませんことよ。」
「私もそう思う。何を考えているんだと腹が立ってな……」
目線の先には、リンゴがいくつも潰され、山になってしました。
――あれは、リンゴジュースでしょうか?
後で飲みましょう。
お父様は、我が家の特産物のリンゴをたまにこうしてジュースにしてくださるのです。
懐かしいわ……。もう時期は終わってますから、次の秋が楽しみです。
「去年採れて冷暗所に保存しておいた最後のリンゴを丸潰しですよ」
お母様もリンゴジュース好きでしたよね。
あとでご一緒に飲みましょう。
「私は侯爵だ。公爵には逆らえない。だから、断るには最後の一人とお前が婚約して貰えたらと思う」
あ、今はお父様と話の途中でしたわ。
クランク侯爵次男、ロバート様との婚約回避に使われる最後の1人……。
そして、公爵より上……まさか……
「まさかの、アダム第二王子からの求婚だ」
「どうしてですか?アダム様には婚約者がいましたよね?」
「ああ、居たな」
居たな?……って過去形。··········なぜ?
そもそも、私たちはいとこ同士ですのに………それをなぜ私?
「詳しくは本人に聞くんだな」
カチャ!
不意に空いたドアには、私のいとこで、この国の第二王子でクラスメイトの――
「第二王子殿下」
思わず、つぶやいてしまいました。
「エリッサ、ちゃんと名前で呼んでくれないか?」
「アダム様」
呼び直すと、どうしたのかしら?
今まで見たことのない甘い微笑み。
薄茶色の柔らかい髪を今日は下ろしてるのね、そんなふうに思わないと、アダム様の視線に耐えられないわ。
「どうして?」
――甘い、甘い、視線がくすぐったいわ。
見てはいけないものを見てしまった時の、あの嫌な胸のざわつき、………それは今私が感じているものです。
見つめ合うふたり。
そういえば、婚約破棄の理由を聞いていなかったわね。
今のあの二人が、………私への答えなのかしら?
婚約破棄の理由を聞かなくても、あの距離の近さが答えだった。
――そう、そういうことでしたの?
なら、はっきり言えばいいのに。
……随分と、分かりやすい“答え”ですこと。
気分が悪いし、機嫌も悪いわ。
でも、お友達に悪いから、笑顔を作らなきゃ。
貴族女性としての礼儀ですもの。
何があっても感情を顔に出してはいけません。
私のお友達も、少ししてあの二人に気づいたようです。
「なんてこと」……私も同感だわ。
「そういうこと?」……私も同感だわ。
「ありえないわ」――そうかしら?
その後は、貴族女性らしく微笑んで普通に過ごしましたわ。
けど、帰りの馬車は相変わらず無言。
それはそれで良かったのかもしれません。
今は、誰とも話したくないもの。
今は、誰にも話を触れてほしくないもの。
不思議よね?
「エリッサ、ボクはエリッサだけだよ」
――そうなんですね
「ボクの可愛いエリッサ、好きだよ」
――まだあなたのものではありません。
「エリッサ、ただ名前を呼んだだけ」
――意味がわかりません。
「エリッサ、ボクが卒業したらすぐにでも結婚しようね」
――すぐに別れましたけども。
どこに浮気をする隙間があったのかしら?
謎なのよね。
考えるのはよしましょう。疲れますわ。
もう、過去のことなのだから。
今、私はお父様とお母様に呼ばれて、3人でお茶を飲みながら一息ついたところ。
「あのね、エリッサちゃんにお話があってここに呼んだのよ」
ええ、存じてます。
「エリッサ、実はな、お前に縁談が来ているんだ」
え?私、つい先日婚約破棄をされた傷物令嬢ですよ、どこの物好きが私に求婚するというのでしょう。
「わたくしに、縁談······ですか」
「ああ、しかも99通も」
あら、あと1通で100通ですのに。
キリが良ければなんて言ってられませんわね。
「そうでしたの」
「ただな、我が家は侯爵だ。だから申し訳ないが子爵以下はお断りさせてもらった。理由は分かるな」
そもそも子爵以下と、伯爵以上は貴族教育から内容が違いますわ。
それに、うちは婿養子を取らなければ行けません。
だから、私の夫となる方は伯爵位以上でなくては。
「ええ、理解しています」
「うむ。そこでだ。あと、後妻にと求められたり、変な噂のやつを除けば、今、残っているのが二人だ」
まあ、お二人も。
名前も知らないお二人……よろしいのでしょうか?
「二人もですか?それはどなたか伺っても?」
「ああ、それがな……」
そこまで言いかけて、勿体ぶるなんてお父様……焦らし作戦ですの?
「クランク侯爵次男、ロバート様だ」
は?三男に婚約破棄されましたのに、次男が婚約者になるって――まさか!
「有り得ませんことよ。」
「私もそう思う。何を考えているんだと腹が立ってな……」
目線の先には、リンゴがいくつも潰され、山になってしました。
――あれは、リンゴジュースでしょうか?
後で飲みましょう。
お父様は、我が家の特産物のリンゴをたまにこうしてジュースにしてくださるのです。
懐かしいわ……。もう時期は終わってますから、次の秋が楽しみです。
「去年採れて冷暗所に保存しておいた最後のリンゴを丸潰しですよ」
お母様もリンゴジュース好きでしたよね。
あとでご一緒に飲みましょう。
「私は侯爵だ。公爵には逆らえない。だから、断るには最後の一人とお前が婚約して貰えたらと思う」
あ、今はお父様と話の途中でしたわ。
クランク侯爵次男、ロバート様との婚約回避に使われる最後の1人……。
そして、公爵より上……まさか……
「まさかの、アダム第二王子からの求婚だ」
「どうしてですか?アダム様には婚約者がいましたよね?」
「ああ、居たな」
居たな?……って過去形。··········なぜ?
そもそも、私たちはいとこ同士ですのに………それをなぜ私?
「詳しくは本人に聞くんだな」
カチャ!
不意に空いたドアには、私のいとこで、この国の第二王子でクラスメイトの――
「第二王子殿下」
思わず、つぶやいてしまいました。
「エリッサ、ちゃんと名前で呼んでくれないか?」
「アダム様」
呼び直すと、どうしたのかしら?
今まで見たことのない甘い微笑み。
薄茶色の柔らかい髪を今日は下ろしてるのね、そんなふうに思わないと、アダム様の視線に耐えられないわ。
「どうして?」
――甘い、甘い、視線がくすぐったいわ。
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