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後編
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制度を定めるきっかけとなった時代。
当時の王は、アンドレアスに匹敵するほど、仕事をしなかった。
そのため当時の王妃の負担は凄まじいものだった。
当時は議会も設立初期で、王妃も話し合いに参加する必要があり、それ以外にも王都周辺や辺境からの嘆願への対処。
歴史上最高クラスの豪雨による水害や作物の被害への救援対策等に大忙しだった。
それに加えて夜は王の相手をしなければならず、王妃は倒れる寸前となった。
そんな王妃を助けるための制度が『側妃制度』だった。
「今の行為も側妃の重要な役目ですわ」
「重要な役目、だと……ただ暴力を働いただけではないか!」
「違います。王妃のストレス発散のための相談相手。です」
とエリザベスはいつになく清々しい表情で言い切った。
その表情に恐怖を覚えるアンドレアス。
エリザベスは、そんなアンドレアスには目もくれずに、リリアナに向けて歩を進めていく。
リリアナは顔面が陥没して、見るも無残な姿になっている。
「ヒール」
回復魔法をリリアナにかけると、さっきまでの姿が嘘のように一瞬で元通りに治った。
「……ひぃっ!?」
「ごめんなさいね。ちょっと手加減できなくて。久しぶりでちょっと加減できなくて。でも安心して」
その言葉を聞いて一瞬安心したリリアナ。
「――次はもっと優しくしてあげるから」
と耳元で囁かれ、恐怖で失神した。
エリザベスはそんなリリアナの様子などお構いなく、彼女の腕を取る。
「……あっ。魔法省に行って復元魔法お願いしてもらってもいい? 壁直すの」
「は、はい……っ!」
と何食わぬ顔で部屋にいた職員に話しかける。
職員は、慌ててその場を後にした。
「さてと……少し休憩にしようかしら。リリアナさんにももっと相談に乗ってもらわないと♪」
とリリアナを引き摺りながら鼻歌交じりにその場を後にするエリザベス。
その日から王宮で女の嬌声が聞こえてきた。
――途中からその声がイヤラシイものに変わっていたが。
とある日の王宮の執務室。
「お姉様~。頼まれた分の書類作業終わりました~」
「あら。思ったより早く終わったわね」
そこには、執務を行っているエリザベスとリリアナの姿が。
「えへへ~。だって早く終わったらお姉様褒めてくれるから」
「早くできても、間違いだらけじゃ褒めないからね?」
と言いつつリリアナの作業した書類を確認しているエリザベスだが、特に書類に修正する箇所は見当たらなかった。
「そういえば今日は、陛下と夜を共にする予定だったかしら。あなた」
「そうだけどー。あの人、射れたら即出るし、一回やったら三日は起たないし」
「……まぁ、そうね」
実はアンドレアスは薬に頼らないと毎日夜の生活を行うのが厳しいのだった。
「お姉様……あの人との、終わってからになるけど、今夜……その……」
「……しょうがないわね」
「やったぁ! お姉様大好き!」
「その代わり……今夜は寝かさないわよ」
「……はい♪」
すっかりエリザベスに教育されたリリアナ。
「……あと何人か側妃ほしいわね」
「えー。私はいやだなー」
「……こっちにあるのが、未処理の書類よ」
とエリザベスが指さした先にあるのは、執務室に新たに設置された机の上に載っている書類の山。
見て見ぬふりをしていた書類は、軽く胸の高さまで積みあがっていそう。
「……そうですね。いないとですね」
「……日に日に増えてくわね」
あまりの書類の多さに無意識にため息が漏れてくる。
「王妃と側妃がいるのはここですわねー!!!!」
という声とともにバタンとドアを開けて入ってきたのは、綺麗な金髪ドリルヘアーをした釣り目の女性。
「私が、新しく陛下の側妃になりました。ベアトリーチェ・モランシーですわ!!!」
「「……」」
「陛下の愛は全てわたくしのものですわー!!! オーホッホッホ!!!」
執務室に入ってきたベアトリーチェという、どうやら新しい側妃らしい女性を見たエリザベスとリリアナは、黙って頷くとすっと立ち上がった。
「私、教育されるのもいいんですけど、教育するのも興味あるんですよね……」
「それじゃあ、一緒にやってみる♪」
「はいっ♪」
「オーホッホッホ!!……あ、あの……二人してどうしたんですの」
「別に……何も」
「ええ……何も」
「え、ちょっ、ま……」
二人はベアトリーチェの肩をガシッと掴むととてもいい笑顔となり。
「それじゃあ私たちの……」
「「相談相手になってもらおうかな?」
「い、イヤァーーーーーーー!!!!!」
その日から王宮には別の嬌声が聞こえてくるようになった。
エリザベスが王妃を務める間の側妃の数は、王国の歴史上最多であったと後の歴史書には記されていた。
エリザベスや側妃たちは、それぞれ子宝に恵まれ、王宮では子供たちの遊ぶ声も聞こえてくるようになったとか。
ただ子供たちは皆、エリザベスや側妃の誰かと似ていることはあっても、不思議と国王と似ている子供はいなかった。
余談だが、時を同じくして東の帝国では、同性同士で子供ができるようになる魔法が開発されたそうな…………
ちなみにアンドレアス国王はというと……
『歴史上一番仕事をしなかった国王』
その一文だけが歴史書には記されていた。
当時の王は、アンドレアスに匹敵するほど、仕事をしなかった。
そのため当時の王妃の負担は凄まじいものだった。
当時は議会も設立初期で、王妃も話し合いに参加する必要があり、それ以外にも王都周辺や辺境からの嘆願への対処。
歴史上最高クラスの豪雨による水害や作物の被害への救援対策等に大忙しだった。
それに加えて夜は王の相手をしなければならず、王妃は倒れる寸前となった。
そんな王妃を助けるための制度が『側妃制度』だった。
「今の行為も側妃の重要な役目ですわ」
「重要な役目、だと……ただ暴力を働いただけではないか!」
「違います。王妃のストレス発散のための相談相手。です」
とエリザベスはいつになく清々しい表情で言い切った。
その表情に恐怖を覚えるアンドレアス。
エリザベスは、そんなアンドレアスには目もくれずに、リリアナに向けて歩を進めていく。
リリアナは顔面が陥没して、見るも無残な姿になっている。
「ヒール」
回復魔法をリリアナにかけると、さっきまでの姿が嘘のように一瞬で元通りに治った。
「……ひぃっ!?」
「ごめんなさいね。ちょっと手加減できなくて。久しぶりでちょっと加減できなくて。でも安心して」
その言葉を聞いて一瞬安心したリリアナ。
「――次はもっと優しくしてあげるから」
と耳元で囁かれ、恐怖で失神した。
エリザベスはそんなリリアナの様子などお構いなく、彼女の腕を取る。
「……あっ。魔法省に行って復元魔法お願いしてもらってもいい? 壁直すの」
「は、はい……っ!」
と何食わぬ顔で部屋にいた職員に話しかける。
職員は、慌ててその場を後にした。
「さてと……少し休憩にしようかしら。リリアナさんにももっと相談に乗ってもらわないと♪」
とリリアナを引き摺りながら鼻歌交じりにその場を後にするエリザベス。
その日から王宮で女の嬌声が聞こえてきた。
――途中からその声がイヤラシイものに変わっていたが。
とある日の王宮の執務室。
「お姉様~。頼まれた分の書類作業終わりました~」
「あら。思ったより早く終わったわね」
そこには、執務を行っているエリザベスとリリアナの姿が。
「えへへ~。だって早く終わったらお姉様褒めてくれるから」
「早くできても、間違いだらけじゃ褒めないからね?」
と言いつつリリアナの作業した書類を確認しているエリザベスだが、特に書類に修正する箇所は見当たらなかった。
「そういえば今日は、陛下と夜を共にする予定だったかしら。あなた」
「そうだけどー。あの人、射れたら即出るし、一回やったら三日は起たないし」
「……まぁ、そうね」
実はアンドレアスは薬に頼らないと毎日夜の生活を行うのが厳しいのだった。
「お姉様……あの人との、終わってからになるけど、今夜……その……」
「……しょうがないわね」
「やったぁ! お姉様大好き!」
「その代わり……今夜は寝かさないわよ」
「……はい♪」
すっかりエリザベスに教育されたリリアナ。
「……あと何人か側妃ほしいわね」
「えー。私はいやだなー」
「……こっちにあるのが、未処理の書類よ」
とエリザベスが指さした先にあるのは、執務室に新たに設置された机の上に載っている書類の山。
見て見ぬふりをしていた書類は、軽く胸の高さまで積みあがっていそう。
「……そうですね。いないとですね」
「……日に日に増えてくわね」
あまりの書類の多さに無意識にため息が漏れてくる。
「王妃と側妃がいるのはここですわねー!!!!」
という声とともにバタンとドアを開けて入ってきたのは、綺麗な金髪ドリルヘアーをした釣り目の女性。
「私が、新しく陛下の側妃になりました。ベアトリーチェ・モランシーですわ!!!」
「「……」」
「陛下の愛は全てわたくしのものですわー!!! オーホッホッホ!!!」
執務室に入ってきたベアトリーチェという、どうやら新しい側妃らしい女性を見たエリザベスとリリアナは、黙って頷くとすっと立ち上がった。
「私、教育されるのもいいんですけど、教育するのも興味あるんですよね……」
「それじゃあ、一緒にやってみる♪」
「はいっ♪」
「オーホッホッホ!!……あ、あの……二人してどうしたんですの」
「別に……何も」
「ええ……何も」
「え、ちょっ、ま……」
二人はベアトリーチェの肩をガシッと掴むととてもいい笑顔となり。
「それじゃあ私たちの……」
「「相談相手になってもらおうかな?」
「い、イヤァーーーーーーー!!!!!」
その日から王宮には別の嬌声が聞こえてくるようになった。
エリザベスが王妃を務める間の側妃の数は、王国の歴史上最多であったと後の歴史書には記されていた。
エリザベスや側妃たちは、それぞれ子宝に恵まれ、王宮では子供たちの遊ぶ声も聞こえてくるようになったとか。
ただ子供たちは皆、エリザベスや側妃の誰かと似ていることはあっても、不思議と国王と似ている子供はいなかった。
余談だが、時を同じくして東の帝国では、同性同士で子供ができるようになる魔法が開発されたそうな…………
ちなみにアンドレアス国王はというと……
『歴史上一番仕事をしなかった国王』
その一文だけが歴史書には記されていた。
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