嘘つくつもりはなかったんです!お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。

季邑 えり

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第二章

2-3

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「あ、兄上。こ、これは、その。あっ、ようこそ、僕のアトリエへ」

 ユウ君はそれでも気を取り直して、ウィルストン殿下をもてなすように中に招き入れた。ウィルストン殿下の後ろには、いつものようにチャーリー様も控えている。

「で、殿下、ご、ごきげんよう」

 私もしまらない恰好だけど、失礼のないようにたち上がり、お辞儀をして挨拶をした。

「ごふっ」

 え? 誰かがむせたような声が聞こえる。キョロキョロと辺りを見渡すと、殿下の側近のチャーリー様が顔に手を当てている。よく見ると顔が赤い。

「リア、服を着ろ。足を見せるな」

 あっ、と思い自分の足をみる。確かに、この世界では淑女はホットパンツなど着ない。ユウ君はともかく、見慣れていないチャーリー様にとっては目の毒だろう。

「ごっ、ごめんなさい、えっと、スカート」

「はい、これ」

 用意のいいユウ君が、巻きスカートを手渡してくれた。巻き巻きすると、ちょうどいい感じになる。

「これでいい? 殿下」

 伺うように彼を見上げると、目元を赤くしながらも「それでいい」と言うように頷いてくれた。

「リア、身体の調子はどうだ? 臥せっていたと聞いたが、無理をさせたか? ん? 初めてだったから、2回に抑えておいたが、それでも、大変だったよな」

 つかつかと私のところに近寄ったウィルストン殿下が、私の髪を梳きながら甘く囁くように気遣ってくれた。

 でも頼むから、ここでその話は恥ずかしい。今いる場所はユウ君のアトリエなのだ。傍にはチャーリー様もいる。

「だが、私の招待では来なかったのに、ユゥベールの誘いであれば、こうして来るのか? ん?」

 あ、ダメ。また黒っぽくなり始めている。

 はっとしてユウ君を見ると、なんと私と殿下が二人でいるところをガン見している。

「ユ、ユウ君?」

「リア、またユゥベールのことをユゥクンだなどと、お仕置きされたいのか?」

「ひえっ、で、殿下! す、すみませんっ、そのっ」

 言い訳も何もでてこない。ワタワタしていると、そんな私を見たユウ君が叫んだ。

「兄上っ、リアっ、しばらくっ、しばらくそのまま!」

 いきなりスケッチブックを取り出して、私たちを怒涛の勢いでスケッチし始めた。「すげぇ、イイ、推しカプやべぇ」と、何か不穏なことを言いながらも一心不乱に絵を描いている。

 そんなユウ君の姿を見たウィルストン殿下は、彼に伝えるように話す。

「ユゥベール、お前、本当に、何の下心もないのだな。リアリムに触れた場合、その手に絵筆を持てなくなると思えよ」

 さすがにその言葉にはぴくっと反応して、「はいっ、決して、決して触りませんっ! だから、描かせてください」と懇願している。

「仕方ない、リア、立っているのは大丈夫か? 腰を悪くしているのではないか?」

「ウィルストン殿下、ええと、は、はい。ちょっと、まだ万全ではないのですが」

 正直に答えると、殿下ははぁ、と息を吐いていきなり私を横抱きにした。

 突然抱えあげられて、彼の吐息がかかる距離に顔が近づいた。首筋を見ると、あの夜の光景をパッと思い出してしまう。時折聞いた彼の苦し気な吐息と喘ぎ声。あの声が、この喉から出たのかと思うと、思わず顔が赤くなるのがわかる。

 そんな私の顔を見て、ウィルストン殿下はふっと顔を綻ばせた。

「ユゥベール、リアは体調不良だ。今日はここまでだ、いいな」

 そう言って出ようとすると、ユウ君が「でたっ、激ヤバスチール!」といってまた叫んでいた。が、その言葉は無視するように、殿下は私を抱えたままアトリエを出て、すたすたと歩いていく。

「殿下、殿下っ、私っ、歩けますっ」

 王宮の廊下を横抱きにされて移動するなど、誰かに見られたりしたら! と思うが、もう婚約者一歩手前なのだから、と再び現実を思い出す。誰に見られても、誤解されてもいいのだ。王子様は痛くも痒くもない。

「また殿下だなどと、他人行儀な。ウィルと呼べ、と言っただろう」

 どうやら向かっている先は、あの夜を過ごしたウィルストン殿下の私室のようだ。

「殿下っ、ダメっ! あのお部屋は、イヤ、イヤなのっ!」

「リア、そんなに嫌がるのか、仕方ない」

 殿下は行先を変えて、園庭にあるガゼボに向かう。燦燦と輝く太陽に照らされた庭園は、気持ちの良い風が吹いていた。

「はぁっ、あ、ありがとうございます」

 ここなら、周囲の目もあるだろう。また流されて不埒な真似をされるのも嫌だった。

 ホッとしたのもつかの間、ウィルストン殿下は私の隣に座り、私の手を握り締めた。


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