デイリーさんに叱られる〜転生先を奪われた悪役令息は、デイリーミッションで世界の秘密を知るようです〜

第６話 吸血鬼シーラ

『僕をどうするつもりなの？』
「どうもしないわ。私はあなたを守りに来たのだから。いずれ魔王さまが復活され、その体を受け継ぐまで、ふさわしいように鍛えて死なないようにする必要があるのよ。」

　魔王が復活し体を受け継ぐ。つまりこの体はそれまでの期限付きであるということだ。
　だから困難のある体なのか、とシルヴィオは思った。

　それがいつなのかはわからないが、いずれは奪われる体なのだから。
　つまり神はそれをどうにかして、魔王の復活を阻止させたいのだろう。

『ハードルが高すぎるよ！』
　とシルヴィオは思った。本来の体であれば、この体を死なせれば、魔王の復活は阻止出来たのだろう。

　だが、今やシルヴィオがその器だ。どうすれば魔王の復活を阻止できるのかすらもわからない。──その方法をデイリーミッションが教えてくれるということだろうか？

　デイリーミッションは１日ひとつしか受けられないが、鍛える必要があるということは、それまでは猶予があるということだ。

　それまでにデイリーミッションをクリアして、なんとか魔王復活を阻止する方法を探らなくちゃな、と思った。だがその日は思っているよりも早くくるかも知れなかった。

「まずは半年後ね。“魔王の揺りかご”に私と一緒に行ってもらうわ。」
『“魔王の揺りかご”？なんですか？それ。』

「魔王の器を育てる為のダンジョンよ。」
『ダンジョン！？半年後って、僕はまだ赤ん坊ですよ！？』

「魔王さまの器なのよ？それくらいクリア出来る筈よ。それに私もついているのだから。そこで番人と戦って、番人を従えてもらう必要があるわ。」

『どう考えても無理ですよ！？』
「可能よ、それだけの力を持って生まれている筈だもの。それにその為に、記憶持ちの魂を入れてあるんだからね。」

　つまり、魔王の器として育てる為に、自分が神の使徒として転生するタイミングで、八阪が呼ばれていたということか、と思う。

　本当にまっさらの赤ん坊であれば、ダンジョンのクリアどころか、何も教えることは出来ないだろうから。

「それまであなたの近くで守るわ。ヒトの姿に化けてね。」
　そう言うと美少女は、制服姿の人間の姿に変身した。牙も見えてないので、一見すると美しい人間の少女にしか見えない。

　美少女は人差し指を立てて回転させると、パチっと指を鳴らした。何か空気が変わったようにシルヴィオは感じた。

　そこへ、シルヴィオの様子を見に、乳母が扉を開けてやって来て美少女を見た。
「あら、シーラ、シルヴィオさまの様子はどうかしら？」

　まるで旧知の間柄かのように、笑顔で美少女に話しかける。
「先程まで眠っていらしたのですが、今は起きていらっしゃいますわ。」

「そう、お乳をあげるから、あなたは少し時間を潰してきてちょうだい。」
「かしこまりました。」

　シルヴィオがポカンとする中、美少女は部屋の外に出て行った。お乳を飲まされゲップをさせられて、乳母が部屋から出て行くと、入れ替わりに美少女が戻って来た。

『どういうこと？』
「私を従者だと認識させる魔法を使ったのよ。この城全体にね。これくらい造作もないわ。私はシーラ。これからよろしくね。」

　そう言ってシーラは嫣然と微笑んだ。
　シーラの言う通り、シーラはすっかり城の従者たちや王妃にまで受け入れられていた。

　この人始祖の血を引く吸血鬼ですよ！とシルヴィオは内心叫んだが、その声は誰に届くということもなかった。

　魔王の器である自分が生み出した眷属であるのだから、本来仲間である筈のギィは、警戒したように、シーラから隠れるように、カーテンの後ろから顔をのぞかせていた。

　力の強さが違うから怖いのかな？とシルヴィオは思った。そこへ、

【デイリーミッション
　這いずるところを母親に見せろ。
　報酬：スキル・魔導銃】

　とデイリーミッションの声と文字が出る。
　這いずるところを見せろ、ということは、この体はもうハイハイは出来るということだ。

　試しに寝返りをうってみると、動くことが出来た。今何ヶ月なのかわからないが、魔王の器だから成長が早いのかも知れない。

　ベッドの上でハイハイをしてみると、いけそうだった。乳母が来たタイミングでそれを見せる。すると慌てたように部屋を出て行き、王妃を伴って戻って来た。

「ああ愛しい子。お母さまの前でもう一度動いてみてちょうだい？」
　王妃さまが満面の笑みで話しかける。

　ドヤ顔でハイハイをして見せると、王妃さまは大喜びでシルヴィオを抱き上げた。この分なら立てる日も近いかも知れなかった。

【デイリーミッションクリア
　報酬：スキル・魔導銃】

　と声とともに文字が現れた。魔導銃は、ステータス画面に触れると、固有スキル、導きの羽を弾に出来ると書いてあった。続けて、

【というか、魔王の仲間と親しくしてるってどういうことですか？神の使徒の認識あるんですか？私怒ってますよ！】

　と、砕けた口調でいきなり、シーラがそばにいることを非難されたのだった。
『これただのお知らせじゃなかったの！？』　
　シルヴィオは突然の出来事に、思わず混乱したのだった。

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