デイリーさんに叱られる〜転生先を奪われた悪役令息は、デイリーミッションで世界の秘密を知るようです〜

陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)

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第11話 本当の父親

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 持って読むのは重たすぎて不可能な為、ギィが空中で広げてくれ、両サイドを別の眷族が持ってくれ、更に別の眷族がページをめくってくれる。

 自分でやるには、まだこの体は使い勝手が悪かった。前回もギィが手伝ってくれたが、今回はたくさん眷族がいる為、前回よりもかなり楽だった。

 日記には、謎の魔族と出会って以降のことが書かれていた。

<XXXX年X月X日。
 彼?彼女?どちらなのかわからない。
 見た目で性別はわからなかった。
 声もどちらともとれる声だった。

 そいつは私に言った。
 国を自分の手に取り戻したくはないかと。
 悪魔は気まぐれに人間と取引をすることがあると言うが、魔族もそうなのだろうか。

 思わず無意識に手を取りはしたが、さすがにすぐに返事をすることは出来なかった。

 魔族は人間を脅かす敵であると聞かされて育ったのだ。そんな魔族が人間である私にいったい何を求めると言うのか。

 そいつはまた来ると笑って去って行った。妙に心が引っかかれた気がした。>

<XXXX年X月X日。
 連日私の前に顔を出しては、同じ誘惑をして去っていくそいつ。信用仕切ることが出来ず、私はなんとも答えられずにいる。

 だが、もし本当に、そいつが私を助けてくれるのだとしたら?
 ここから救い出してくれるのだとしたら?
 王太子を私にすることが出来るのなら?

 ⋯⋯そんなことが、一介の魔族に出来る筈もない。
 これは政治なのだ。王太子を認めさせる為には、大臣たちに認めさせなくてはならないのだ。

 まずそもそも父上が私を認めていない。
 それなのに王太子をすげ替えるなどと。
 以前は私を推す声もあったが、あれから何年も経つというのに、彼らの誰一人として私をここから救い出してくれる人間はいない。

 今の私に味方はいない。
 誰も私を王太子に選んではくれないだろう。
 それが現実なのだ。>

<XXXX年X月X日。
 あれからしばらく奴が姿を現さない。
 私が何の返事もしないことで諦めたのだろう。
 今思えば、この誰も訪ねて来ない塔への唯一の訪問者で、私の話し相手だった。

 だから寂しく感じるだけだ。それ以上でもそれ以下でもない。私はただ人恋しいのだ。
 あれが人であるかは別にして。

 また孤独な日々が始まった。私と話さないよう命令されているようで、見張りの兵士たちも、食事を運んでくる侍女たちも、私と一言も口をきこうとはしない。

 私はいつまでここに閉じ込められているのだろうか。対外的には私は病気になったと公表することにしたと父上に言われたから、そのまま病気で死んだことにすることだって、容易い話なのだ。>

<XXXX年X月X日。
 こんな高いところまで鳥が飛んでいるのが見える。その自由さが羨ましい。

 空気の入れ替えの為に窓は開けられるが、鉄格子がはまっていて、自ら死を選ぶことすら出来ない。

 食事に出た果物を窓辺に置いてみる。
 鳥が食べに来てくれないだろうか。
 せめて。>

<XXXX年X月X日。
 目が覚めると、窓辺に置いた果物を小鳥たちがつついていた。驚かさないようにそっと眺める。

 小鳥たちがさえずる鳴き声が、会話をしているようで羨ましい。>

<XXXX年X月X日。
 ここに餌があるとわかったのか、連日小鳥が来るようになった。最初は近付いたら逃げてしまったが、段々と距離を近付けていっても逃げないようになってきた。

 何もしないとわかってもらえたのだろう。
 鉄格子から手だけは出すことが出来る。
 手の上に小鳥を乗せることが出来たら、どれだけ慰められるだろうか。>

<XXXX年X月X日。
 ついに私が直接差し出した餌を小鳥がついばんだ。手に乗せられるまで後少しかも知れない。ああ、どうか、どうか。>

<XXXX年X月X日。
 奴が再び現れた。
 気持ちは変わったか?と笑っていた。
 そのせいで小鳥が現れなかった。
 奴が怖いのだろう。

 ここから出たいか?と。

 出してくれ!と、私は気付けば叫んでいた。奴は楽しそうに笑っていた。

 王になる覚悟はあるか?とも。

 何をすればいい?と私は尋ねた。
 お前の子どもを寄越せ、と奴は言った。
 私の将来生まれる2番目の子どもは、魔王の器にピッタリだと言った。

 将来、人間の世界を征服する為に、私の子どもの体が必要なのだと。
 器として育つまでの間は、お前の子どもとして育てればいい、と。

 私は動揺した。
 魔王の器の為に、奴らはなんとしても私を助けたいのだ。私に子どもが出来なくては困るから。

 だが、その場合、私の子どもは将来人類の敵となることが生まれる前から決まってしまう。我が国の国民たちは、私の子どもが魔王の器たりうる年齢になれば、死ぬのだ。

 これでは弟が王になるよりも酷いではないか。国民の為に王になりたい私が、自分自身の為に国民を犠牲にすることに他ならない。
 私はそいつを一蹴した。
 そいつは笑いながら去って行った。>

 この頃はまだ、自分の子どもを魔王の器にすることを拒否する、王としても正しい人間だったようだ。だが実際シルヴィオは魔王の器として生まれた。

 弟ではなく、兄がシルヴィオの父親だったのだ。
 その間に果たして何があったのだろうか。

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