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第16話 VS番人の手下
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シルヴィオは身を固くして警戒した。シーラに抱かれているとはいえ、自分だけに魔法を当てることも可能かも知れないからだ。
「あいたっ!なにすんのよ!」
「魔王さまの器になにする気ぃなんだっつの。せっかくの器を殺す気かよぉ。」
そう言って、先程まで赤い絨毯の反対側に立っていた男──レルグが、シャイナの頭を思い切りひっぱたく。
その漫才のようなやり取りに、シルヴィオは思わず目を点にした。
「こんなに早くここまで到達すっとはな。年齢もそうだが時間も予想外だったぜ。」
「そうよぉ。どうやってこんな短時間でここに到達したの?」
シャイナがジロリとシルヴィオを睨む。
『え、えと⋯⋯。導きの羽を使っちゃったんだけど、ルール違反だったかな?』
それを聞いたレルグが目を丸くする。
「いーや?むしろ大歓迎だぜえ。魔王さまの固有スキル、導きの羽は、自分より弱い相手しか従えられない。⋯⋯つまりお前さんは今ここにいる魔物よりも強いってこった。」
『え?そ、そうなの?』
ならば入口近くにいたゴブリンですら、ギィたちに戦わせる必要はなかったということだ。
「この年齢でもう、“魔王の揺りかご”の魔物たちを従わせられるなら、大きくなった頃には勇者ですら従わせられる程に成長すっかも知れねえからな。」
それを聞いたシルヴィオはビクッとする。自分にスキルや経験値を与えたのは、創世神リヒャルトの娘、アダリーダのはからいによるものだが、シルヴィオを魔王の器にさせない為の手助けであった筈だ。
だがシルヴィオが強くなるということは、同時に魔王の器としても優秀になっていくということらしい。
「まあ、だったら入口のゴブリンも倒さないで欲しかったわよね。人間の体に経験値をえさせる為には仕方ないと思って配置したけど、準備するのも大変なんだから。」
とシャイナはため息をついた。
シルヴィオの成長はだいぶ予想外だったようだ。頑張って力をつけたことで、早めに体を奪われるという可能性をシルヴィオは考える。そうなればデイリーミッションをこなすのは悪手なのではないか──そう思った時だった。
【そんなことはありませんよ。魔王が器に入るには、ある程度の年齢が必要なんですから!強くなり過ぎたからと言って、早めに奪われるなんてことはありません。
そのくらいちゃんと計算して鍛えているんですよ!こちとら神なんですからね!】
と、デイリーさんの文句を言う声が聞こえてきた。シルヴィオは今の声が彼らに聞こえていないか思わず焦ったが、
【魔族と神は相反する存在です。あなたにだって、父さまが魂に直接祝福を授けていなければ、声は聞こえませんでしたよ。
人間でありながら、最も魔に近い、魔王の入り込みやすい体として生まれているんですから。
だいたい、そうでなければ、こんな魔族の巣窟で、あなたに話しかけるなんて不用心な真似をする筈がないでしょう?あなたを魔王にしないように頑張ってるんですからね。】
と叱られてしまった。心の中でごめんなさいと謝ると、
「謝らなくていいっつの。“魔王の揺りかご”は魔王さまの成長の為の場所だ。力を確かめるだけで済むなんて、もともと思ってなかったんだからな。」
とレルグがシルヴィオの心の声に反応する。念話で聞こえてしまうということは、いくらデイリーさんの声が彼らに聞こえないとはいえ、自分がそれに反応して会話するのはよくなさそうだと思った。
『あの⋯⋯、それで、お2人を従えないとクリアにならないんですよね?この後はどうしたらいいですか?』
「いや?ここまでの実力を見せられたんだ。オレっちは従うぜ?オレの名前はレルグってんだ。よろしくな。」
そう言って笑うレルグの顔には、妙に既視感を感じる。しばらく監察していると、視界のはしにうつるギィに気がついた。
レルグの顔は、イケメンの男性ではあるが、デフォルメしたらまるでギィのような顔だ。妙に親近感を感じるのはそういうわけか、と妙に納得したのだった。
「私はいやよぉ。こんな失礼な子に従いたくないわぁ。今はしょせんただの器だもの。魔王さまじゃないしぃ。」
「──あ?やろうってのか?シャイナ。」
レルグがシャイナを睨む。
「私は直接戦わないわぁ。この子がお相手してア・ゲ・ル。」
そう言って、腰掛けていた人間椅子から立ち上がると、人間椅子だった男性の頭を撫でながら、
「私のスキルは、固有スキル・奴隷契約書。ネクロマンサーのスキルの生き物版のようなものと言えばわかるかしらぁ?」
ニヤリと笑うシャイナ。
「生きている者を奴隷化し、代わりに相手の能力を高める能力よ。せめてこの子を倒すくらいじゃないとねえ?さあ、おいきなさい、私の可愛い奴隷ちゃん。あの子を懲らしめたら、たっぷりご褒美をあげるわぁ。」
それを聞いた人間椅子が、ラバーマスク越しでも興奮したのがわかる勢いで、妙にくねくねと悶えだした。
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「あいたっ!なにすんのよ!」
「魔王さまの器になにする気ぃなんだっつの。せっかくの器を殺す気かよぉ。」
そう言って、先程まで赤い絨毯の反対側に立っていた男──レルグが、シャイナの頭を思い切りひっぱたく。
その漫才のようなやり取りに、シルヴィオは思わず目を点にした。
「こんなに早くここまで到達すっとはな。年齢もそうだが時間も予想外だったぜ。」
「そうよぉ。どうやってこんな短時間でここに到達したの?」
シャイナがジロリとシルヴィオを睨む。
『え、えと⋯⋯。導きの羽を使っちゃったんだけど、ルール違反だったかな?』
それを聞いたレルグが目を丸くする。
「いーや?むしろ大歓迎だぜえ。魔王さまの固有スキル、導きの羽は、自分より弱い相手しか従えられない。⋯⋯つまりお前さんは今ここにいる魔物よりも強いってこった。」
『え?そ、そうなの?』
ならば入口近くにいたゴブリンですら、ギィたちに戦わせる必要はなかったということだ。
「この年齢でもう、“魔王の揺りかご”の魔物たちを従わせられるなら、大きくなった頃には勇者ですら従わせられる程に成長すっかも知れねえからな。」
それを聞いたシルヴィオはビクッとする。自分にスキルや経験値を与えたのは、創世神リヒャルトの娘、アダリーダのはからいによるものだが、シルヴィオを魔王の器にさせない為の手助けであった筈だ。
だがシルヴィオが強くなるということは、同時に魔王の器としても優秀になっていくということらしい。
「まあ、だったら入口のゴブリンも倒さないで欲しかったわよね。人間の体に経験値をえさせる為には仕方ないと思って配置したけど、準備するのも大変なんだから。」
とシャイナはため息をついた。
シルヴィオの成長はだいぶ予想外だったようだ。頑張って力をつけたことで、早めに体を奪われるという可能性をシルヴィオは考える。そうなればデイリーミッションをこなすのは悪手なのではないか──そう思った時だった。
【そんなことはありませんよ。魔王が器に入るには、ある程度の年齢が必要なんですから!強くなり過ぎたからと言って、早めに奪われるなんてことはありません。
そのくらいちゃんと計算して鍛えているんですよ!こちとら神なんですからね!】
と、デイリーさんの文句を言う声が聞こえてきた。シルヴィオは今の声が彼らに聞こえていないか思わず焦ったが、
【魔族と神は相反する存在です。あなたにだって、父さまが魂に直接祝福を授けていなければ、声は聞こえませんでしたよ。
人間でありながら、最も魔に近い、魔王の入り込みやすい体として生まれているんですから。
だいたい、そうでなければ、こんな魔族の巣窟で、あなたに話しかけるなんて不用心な真似をする筈がないでしょう?あなたを魔王にしないように頑張ってるんですからね。】
と叱られてしまった。心の中でごめんなさいと謝ると、
「謝らなくていいっつの。“魔王の揺りかご”は魔王さまの成長の為の場所だ。力を確かめるだけで済むなんて、もともと思ってなかったんだからな。」
とレルグがシルヴィオの心の声に反応する。念話で聞こえてしまうということは、いくらデイリーさんの声が彼らに聞こえないとはいえ、自分がそれに反応して会話するのはよくなさそうだと思った。
『あの⋯⋯、それで、お2人を従えないとクリアにならないんですよね?この後はどうしたらいいですか?』
「いや?ここまでの実力を見せられたんだ。オレっちは従うぜ?オレの名前はレルグってんだ。よろしくな。」
そう言って笑うレルグの顔には、妙に既視感を感じる。しばらく監察していると、視界のはしにうつるギィに気がついた。
レルグの顔は、イケメンの男性ではあるが、デフォルメしたらまるでギィのような顔だ。妙に親近感を感じるのはそういうわけか、と妙に納得したのだった。
「私はいやよぉ。こんな失礼な子に従いたくないわぁ。今はしょせんただの器だもの。魔王さまじゃないしぃ。」
「──あ?やろうってのか?シャイナ。」
レルグがシャイナを睨む。
「私は直接戦わないわぁ。この子がお相手してア・ゲ・ル。」
そう言って、腰掛けていた人間椅子から立ち上がると、人間椅子だった男性の頭を撫でながら、
「私のスキルは、固有スキル・奴隷契約書。ネクロマンサーのスキルの生き物版のようなものと言えばわかるかしらぁ?」
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