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第28話 規格外の父親
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「うむむ⋯⋯。」
どうあっても、仕入元を内緒にして、ラヴェール王子の懸念を払拭することは難しいようだと思った。
シルヴィオはゴクリとツバを飲み込んだ。ここはラヴェール王子に正直に話してみたほうがいいかも知れない、と考えた。
「兄さま⋯⋯。内緒にしていたのですが、実は練度の高い魔力を込めた魔石の仕入れ元は、僕なのです。」
「──え?」
「ですから、僕が仕入元なのです。侍女のシーラを通じて売って貰っていました。練習をかねてせっかく作ったので、使わないのも勿体ないなと思って、有効活用して貰おうという短絡的な発想からだったのですが、まさかこんな大事になるとは思わなくて⋯⋯。」
シルヴィオは恥ずかしそうにそう告げた。
「え、えええ~!?」
ラヴェール王子は思わず大声を上げた。
「ま、毎日30個だよ!?そんな毎日練度の高い魔力を込められるほど、シルヴィオには魔力があるってことなの!?それに魔力の練度を高める方法は、この間教わったばかりだよね?それなのに、もうそんなことが出来るようになったって言うの!?」
「はい、練習でやっていたら、大量に出来てしまって⋯⋯。そもそも、魔力を吸う石では、僕の魔力が吸いきれなくて、毎回爆発してしまうのです。」
ポカンと大きな口を開け、目を丸くして、ラヴェール王子がシルヴィオを見ている。
「新しくいただいた石でも無理だったので、それならば魔力の切れた魔石に魔力を込めてみてはどうですか?と侍従に提案して貰って⋯⋯。魔石なら、満タンになればそれ以上魔力が入らないから、と。」
「確かに、魔石に魔力を込められるようになれば、そのやり方でもいいと聞いたけど、僕はまだ魔石に魔力すら込められないんだよ?なのにシルヴィオはもう出来るなんて⋯⋯。」
うまい誤魔化し方が思いつかなかったので、調べられて発覚するよりはと、話してみたが、やはり自分はかなり異質な存在なのだと、知られないほうが良かったかな、とシルヴィオは今更ながらに後悔した。
「やっぱりシルヴィオは、父さまの血を強く引いているんだね。父さまも小さい頃から、魔石に魔力を込められた神童だと、教えてもらったことがあるよ。」
だが、予想外にも、それを聞いたラヴェール王子は、父親を引き合いにだしてウンウンと納得したように頷いていた。
「そんなに凄かったのですか?父さまは。」
「シルヴィオはまだ知らないだろうけど、元々この国は、父さまの弟が国を継いでいたんだよ。それを奪う際に募った兵士に与えた魔石は、父さまが魔力を込めたものだったと聞いているよ。だからシルヴィオが出来ても、あんまり不思議ではないかな。」
『この国の国王様って、そんなに凄い人だったの!?』
滅多に顔を合わせない為、実の父だとは未だに思えないシルヴィオは、思わず心の中で他人のようにそう呼びながら叫んだ。
【元々素地はあったようですが、魔族に力を借りて、爆発的に魔力を高めたようです。子どもの頃からある程度頭角を現してはいましたが、王位簒奪の際のイメージから、尾ひれがついて、子どもの頃から規格外だったという話が定着したようですね。】
とデイリーさんが教えてくれる。
なるほど、とシルヴィオは思った。父親がそういうイメージを持たれているのであれば、自分がそれに近いことをしたとしても、単にステータスが遺伝しただけだと思われるということだ。シルヴィオにとっては悪いエピソードではなかった。
「たぶん⋯⋯。そういうことなんだと思います。」
「凄いね、シルヴィオは。僕よりシルヴィオのほうが、王太子に向いているんじゃないかな?」
「とんでもない!僕なんてそんな器じゃないですよ!どれだけ力があったって、国をおさめるとなると、それ以外の力が必要だと思います。貴族や他国とうまいこと渡り合ったりだとか。僕にはそういうのは向いていないと思います。」
シルヴィオは正直にそう言った。王位を簒奪するのであれば、単純に力があればいいかも知れないが、その後に国を治めるとなると、国王一強の国というのは、国王を狙えば自分が王位を奪えると思わせるということだ。
たくさん味方を作って、自分の代わりに動いてくれる人間が必要だが、体を狙われているシルヴィオには、そんなことに気を回す余裕はとてもないと言えた。
「そうかな⋯⋯?」
納得いかなそうに首をひねるラヴェール王子だったが、既に貴族の子どもたちとの交流の中で、頭角を現しているというのは、従者たちの噂話からも漏れ聞いている。
次の国王に相応しいのは間違いなくラヴェール王子だろうと従者たちは考えているようだ。王太子選定こそまだだが、いずれ確実にそうなるだろうなとシルヴィオは思った。
「兄さま⋯⋯。僕が仕入れ元だということは内緒にしていただけませんか?」
「え?どうして?みんなシルヴィオを評価してくれるよ?」
「それが駄目なのです。兄さまよりも僕のほうが有用だとなったら、兄さま派と僕派で貴族が割れる可能性があります。それこそ内戦になる懸念があるでしょう。僕は国の為にも、力を隠しておいたほうがよいと思うのです。」
────────────────────
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どうあっても、仕入元を内緒にして、ラヴェール王子の懸念を払拭することは難しいようだと思った。
シルヴィオはゴクリとツバを飲み込んだ。ここはラヴェール王子に正直に話してみたほうがいいかも知れない、と考えた。
「兄さま⋯⋯。内緒にしていたのですが、実は練度の高い魔力を込めた魔石の仕入れ元は、僕なのです。」
「──え?」
「ですから、僕が仕入元なのです。侍女のシーラを通じて売って貰っていました。練習をかねてせっかく作ったので、使わないのも勿体ないなと思って、有効活用して貰おうという短絡的な発想からだったのですが、まさかこんな大事になるとは思わなくて⋯⋯。」
シルヴィオは恥ずかしそうにそう告げた。
「え、えええ~!?」
ラヴェール王子は思わず大声を上げた。
「ま、毎日30個だよ!?そんな毎日練度の高い魔力を込められるほど、シルヴィオには魔力があるってことなの!?それに魔力の練度を高める方法は、この間教わったばかりだよね?それなのに、もうそんなことが出来るようになったって言うの!?」
「はい、練習でやっていたら、大量に出来てしまって⋯⋯。そもそも、魔力を吸う石では、僕の魔力が吸いきれなくて、毎回爆発してしまうのです。」
ポカンと大きな口を開け、目を丸くして、ラヴェール王子がシルヴィオを見ている。
「新しくいただいた石でも無理だったので、それならば魔力の切れた魔石に魔力を込めてみてはどうですか?と侍従に提案して貰って⋯⋯。魔石なら、満タンになればそれ以上魔力が入らないから、と。」
「確かに、魔石に魔力を込められるようになれば、そのやり方でもいいと聞いたけど、僕はまだ魔石に魔力すら込められないんだよ?なのにシルヴィオはもう出来るなんて⋯⋯。」
うまい誤魔化し方が思いつかなかったので、調べられて発覚するよりはと、話してみたが、やはり自分はかなり異質な存在なのだと、知られないほうが良かったかな、とシルヴィオは今更ながらに後悔した。
「やっぱりシルヴィオは、父さまの血を強く引いているんだね。父さまも小さい頃から、魔石に魔力を込められた神童だと、教えてもらったことがあるよ。」
だが、予想外にも、それを聞いたラヴェール王子は、父親を引き合いにだしてウンウンと納得したように頷いていた。
「そんなに凄かったのですか?父さまは。」
「シルヴィオはまだ知らないだろうけど、元々この国は、父さまの弟が国を継いでいたんだよ。それを奪う際に募った兵士に与えた魔石は、父さまが魔力を込めたものだったと聞いているよ。だからシルヴィオが出来ても、あんまり不思議ではないかな。」
『この国の国王様って、そんなに凄い人だったの!?』
滅多に顔を合わせない為、実の父だとは未だに思えないシルヴィオは、思わず心の中で他人のようにそう呼びながら叫んだ。
【元々素地はあったようですが、魔族に力を借りて、爆発的に魔力を高めたようです。子どもの頃からある程度頭角を現してはいましたが、王位簒奪の際のイメージから、尾ひれがついて、子どもの頃から規格外だったという話が定着したようですね。】
とデイリーさんが教えてくれる。
なるほど、とシルヴィオは思った。父親がそういうイメージを持たれているのであれば、自分がそれに近いことをしたとしても、単にステータスが遺伝しただけだと思われるということだ。シルヴィオにとっては悪いエピソードではなかった。
「たぶん⋯⋯。そういうことなんだと思います。」
「凄いね、シルヴィオは。僕よりシルヴィオのほうが、王太子に向いているんじゃないかな?」
「とんでもない!僕なんてそんな器じゃないですよ!どれだけ力があったって、国をおさめるとなると、それ以外の力が必要だと思います。貴族や他国とうまいこと渡り合ったりだとか。僕にはそういうのは向いていないと思います。」
シルヴィオは正直にそう言った。王位を簒奪するのであれば、単純に力があればいいかも知れないが、その後に国を治めるとなると、国王一強の国というのは、国王を狙えば自分が王位を奪えると思わせるということだ。
たくさん味方を作って、自分の代わりに動いてくれる人間が必要だが、体を狙われているシルヴィオには、そんなことに気を回す余裕はとてもないと言えた。
「そうかな⋯⋯?」
納得いかなそうに首をひねるラヴェール王子だったが、既に貴族の子どもたちとの交流の中で、頭角を現しているというのは、従者たちの噂話からも漏れ聞いている。
次の国王に相応しいのは間違いなくラヴェール王子だろうと従者たちは考えているようだ。王太子選定こそまだだが、いずれ確実にそうなるだろうなとシルヴィオは思った。
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