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第30話 カロリーナを王子妃に迎えるには
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『なるほどね⋯⋯。』
確かに、いつ自分たちが同じ目に合わせられるかわからないと思っているのなら、保身の為の材料は必要だろうと思えた。
『あれ?ってことは、この国に王族の味方っていないんじゃないの?』
【一応王族派と呼ばれる貴族たちはいるようですが、常に顔色を伺っている状態ですね。心から従っている人間はいません。】
『そうなると、兄さまは腹心を手に入れるのも大変だろうなあ⋯⋯。』
【良心的な貴族も、王族に取り入ろうとしている貴族も、ラヴェール王子には期待しているようですよ。父親のような暴君にはならなさそうだと。】
『なら、その中から味方が作れそうだね!』
【どうでしょうね?ラヴェール王子は、カロリーナ・チェルレッティ公爵令嬢が好きなようですから。国王もそのつもりのようですが、チェルレッティ公爵のことを、未だに反逆者の血筋と疎んでいる貴族も多いです。
自分たちの娘を王妃にと考えている貴族が多い中で、彼女と結ばれることは敵を作ることに他ならないでしょう。そこをどうにかする方法を見つけない限り、味方を増やすのも難しいと言えるでしょうね。】
『難しいなあ⋯⋯。彼女が王妃に相応しいと思ってもらえるような、なんらかの功績があげられるといいんだけど。』
シルヴィオはうーん、とうなった。
『デイリーさん、何をすれば、彼女は王妃に相応しいと認めてもらえるかな?』
【ひとつは彼女が聖女になることでしょうね。聖女は平民であっても、王族と結婚させて他の国に行かせないようにした、という歴史が各国にありますから。】
『聖女になれるの!?』
【あくまでも例として、です。彼女には今のところ、聖女の素質はありません。】
『なんだ⋯⋯。』
【あとは、他国との取引において、この国に有利な関係性を引き出せるかでしょうね。外交手腕は王妃に求められることです。】
『公爵令嬢が外交の矢面に立つことがあるの?』
【王子妃または婚約者であれば、ある程度の年齢になれば、諸外国からの来賓に対してもてなす義務が発生しますね。】
『その婚約者になる為の方法が探したいのに、それじゃ本末転倒だよ。他にいい方法はないの?デイリーさんはなんでも知ってるでしょう?』
【なんでもは知りませんが、過去にあった例として、優秀な魔道具をいくつも開発した令嬢、新たに今までになかった薬をたくさん開発したケースなどに、諸外国に取られないように、王族と婚姻させた例がありますね。】
『そのどちらかなら、カロリーナ嬢に可能だったりする?』
【はい。彼女には優秀な魔道具を生み出せる加護がついていますね。もちろん生み出す力があっても、アイデアが伴わなければ難しいでしょうが。】
『本当!?なら、僕の前世の知識を活かして、彼女にアイデアを提供すれば、カロリーナ嬢の地位が盤石になる可能性があるってことだね!』
【そうなるかも知れませんね。この国の貴族が、それを有用であると尊べば、ですが。】
『少なくとも国王さまは、カロリーナ嬢を王妃に迎えたいと考えているんでしょう?だったら後押ししてくれると思うよ。』
【ですが鑑定の儀はまだまだ先ですよ。彼女が実力を発揮するのは、かなり先の話になるかと。】
『──鑑定の儀?』
初めて耳にする言葉に、シルヴィオは首をかしげる。
【教会でどんなスキルがギフトとして付与されているかを鑑定する決まりのことですね。そこで初めてそれぞれのスキルに合った仕事につく為の訓練を開始するのです。】
『鑑定の儀が終わるまで、スキルは発動しないものってことですか?』
【いいえ。あなたも既にスキルを使っているでしょう?鑑定の儀はあくまでも、神の祝福であるギフトの内容を確かめる為のものであって、そこでスキルを授かるわけではありません。生まれつき貰っているものですね。】
『じゃあ、カロリーナ嬢は、自分にそんな類稀な能力が与えられているってことを、知らずに過ごしているってことか⋯⋯。』
シルヴィオは心の中で呟くように言う。
【そうなりますね。】
『鑑定の儀を終える前に、スキルを使うのって、おかしいことですか?』
【いいえ。例えば狩人の子どもに弓使いなどのスキルが与えられていた場合、鑑定の儀でスキルが判明する前から、親は子どもに狩りの方法を教えますから、その時点でスキルを使うことになります。
騎士団に所属している兵士たちの子どもなども、スキルが判明する以前から剣を握らされます。判明する前からスキルを使用するケースは、決して珍しくはありません。】
『なら、カロリーナ嬢の身近に、彼女のスキルを活かせる仕事をしている人がいますか?その人について教われば⋯⋯。』
【母方の曽祖父に、錬金術師と道具職人のスキル持ちがいますね。本人は興味を持っているようですが、まだ幼い子どもなので、曽祖父は道具に触らせないようにしているようですが。】
『⋯⋯その人を王宮に招くことは可能でしょうか?』
【招くも何も、王宮にいますよ。カロリーナ嬢の曽祖父は、王宮直属の職員です。ラヴェール王子は魔道具や錬金術についての授業がありますが、そこでカロリーナ嬢の曽祖父が家庭教師になって教えているようですよ。】
────────────────────
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確かに、いつ自分たちが同じ目に合わせられるかわからないと思っているのなら、保身の為の材料は必要だろうと思えた。
『あれ?ってことは、この国に王族の味方っていないんじゃないの?』
【一応王族派と呼ばれる貴族たちはいるようですが、常に顔色を伺っている状態ですね。心から従っている人間はいません。】
『そうなると、兄さまは腹心を手に入れるのも大変だろうなあ⋯⋯。』
【良心的な貴族も、王族に取り入ろうとしている貴族も、ラヴェール王子には期待しているようですよ。父親のような暴君にはならなさそうだと。】
『なら、その中から味方が作れそうだね!』
【どうでしょうね?ラヴェール王子は、カロリーナ・チェルレッティ公爵令嬢が好きなようですから。国王もそのつもりのようですが、チェルレッティ公爵のことを、未だに反逆者の血筋と疎んでいる貴族も多いです。
自分たちの娘を王妃にと考えている貴族が多い中で、彼女と結ばれることは敵を作ることに他ならないでしょう。そこをどうにかする方法を見つけない限り、味方を増やすのも難しいと言えるでしょうね。】
『難しいなあ⋯⋯。彼女が王妃に相応しいと思ってもらえるような、なんらかの功績があげられるといいんだけど。』
シルヴィオはうーん、とうなった。
『デイリーさん、何をすれば、彼女は王妃に相応しいと認めてもらえるかな?』
【ひとつは彼女が聖女になることでしょうね。聖女は平民であっても、王族と結婚させて他の国に行かせないようにした、という歴史が各国にありますから。】
『聖女になれるの!?』
【あくまでも例として、です。彼女には今のところ、聖女の素質はありません。】
『なんだ⋯⋯。』
【あとは、他国との取引において、この国に有利な関係性を引き出せるかでしょうね。外交手腕は王妃に求められることです。】
『公爵令嬢が外交の矢面に立つことがあるの?』
【王子妃または婚約者であれば、ある程度の年齢になれば、諸外国からの来賓に対してもてなす義務が発生しますね。】
『その婚約者になる為の方法が探したいのに、それじゃ本末転倒だよ。他にいい方法はないの?デイリーさんはなんでも知ってるでしょう?』
【なんでもは知りませんが、過去にあった例として、優秀な魔道具をいくつも開発した令嬢、新たに今までになかった薬をたくさん開発したケースなどに、諸外国に取られないように、王族と婚姻させた例がありますね。】
『そのどちらかなら、カロリーナ嬢に可能だったりする?』
【はい。彼女には優秀な魔道具を生み出せる加護がついていますね。もちろん生み出す力があっても、アイデアが伴わなければ難しいでしょうが。】
『本当!?なら、僕の前世の知識を活かして、彼女にアイデアを提供すれば、カロリーナ嬢の地位が盤石になる可能性があるってことだね!』
【そうなるかも知れませんね。この国の貴族が、それを有用であると尊べば、ですが。】
『少なくとも国王さまは、カロリーナ嬢を王妃に迎えたいと考えているんでしょう?だったら後押ししてくれると思うよ。』
【ですが鑑定の儀はまだまだ先ですよ。彼女が実力を発揮するのは、かなり先の話になるかと。】
『──鑑定の儀?』
初めて耳にする言葉に、シルヴィオは首をかしげる。
【教会でどんなスキルがギフトとして付与されているかを鑑定する決まりのことですね。そこで初めてそれぞれのスキルに合った仕事につく為の訓練を開始するのです。】
『鑑定の儀が終わるまで、スキルは発動しないものってことですか?』
【いいえ。あなたも既にスキルを使っているでしょう?鑑定の儀はあくまでも、神の祝福であるギフトの内容を確かめる為のものであって、そこでスキルを授かるわけではありません。生まれつき貰っているものですね。】
『じゃあ、カロリーナ嬢は、自分にそんな類稀な能力が与えられているってことを、知らずに過ごしているってことか⋯⋯。』
シルヴィオは心の中で呟くように言う。
【そうなりますね。】
『鑑定の儀を終える前に、スキルを使うのって、おかしいことですか?』
【いいえ。例えば狩人の子どもに弓使いなどのスキルが与えられていた場合、鑑定の儀でスキルが判明する前から、親は子どもに狩りの方法を教えますから、その時点でスキルを使うことになります。
騎士団に所属している兵士たちの子どもなども、スキルが判明する以前から剣を握らされます。判明する前からスキルを使用するケースは、決して珍しくはありません。】
『なら、カロリーナ嬢の身近に、彼女のスキルを活かせる仕事をしている人がいますか?その人について教われば⋯⋯。』
【母方の曽祖父に、錬金術師と道具職人のスキル持ちがいますね。本人は興味を持っているようですが、まだ幼い子どもなので、曽祖父は道具に触らせないようにしているようですが。】
『⋯⋯その人を王宮に招くことは可能でしょうか?』
【招くも何も、王宮にいますよ。カロリーナ嬢の曽祖父は、王宮直属の職員です。ラヴェール王子は魔道具や錬金術についての授業がありますが、そこでカロリーナ嬢の曽祖父が家庭教師になって教えているようですよ。】
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