養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
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第21話 意外な人からの助け②
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男性はベンチから立ち上がると、慌てて王立図書館内に消えて行き、すぐに司書とは別の職員が、警備兵3名を伴って戻って来て、赤髪の冒険者を後ろ手に拘束して去って行った。赤髪の冒険者は最後までわめいていた。
「大きな声を出しているところを見られてしまうだなんて……。お恥ずかしいですわ。
でも、ありがとうございました。」
「いえいえ、あなたの窮地を救える立場になれて良かったですよ。これは神が与え給うた最大級の幸運に相違ありません。」
そう言ってフィッツェンハーゲン侯爵令息が柔らかく微笑む。
「今日はこちらに、絵を描きに?」
フィッツェンハーゲン侯爵が、赤髪の冒険者から奪い返してくれた本を、私に手渡しながら聞いてくる。
「はい。それと、家具を見に……。」
「家具を、ですか?」
「はい、素敵なものがないかと思って。」
「おひとりで、ですか?」
護衛もメイドもいない私の姿にそう言ってくる。普通は誰かしら必ずいるものね。そう思うのが普通だ。
「ええ。1人です。」
「それは僥倖。でしたらぜひ、私の知っている家具屋を案内させてはいただけませんか?
とても魅力的なものばかりを取り揃えているお店です。きっと気にいると思いますよ。」
王宮に出入りをするほどの化粧師である、フィッツェンハーゲン侯爵令息の紹介だ、きっと特別なところをご存知なのだわ。
私に買える値段かは分からないけれど、一度見てみたいと思えた。どんな内装の部屋にするか、イメージも膨らみそうね。
「本当ですか?ご迷惑でなければ……。
ただ、描きかけのこの絵を描きあげてしまいたいので、それまでお待たせすることになってしまうのですが……。」
「もちろん構いませんよ。その代わり、あなたが絵を描き終えるまでの間、──あなたを近くで見つめる許可をいただいても?」
「ええっ!?」
フィッツェンハーゲン侯爵令息が、甘い目線で私の目の奥を覗き込んでくる。メイクを施していただいた時ほどではないにしても、この方の距離のとり方は、少し近すぎるのではないかしら?嫌ではないけれど……。
私はなんと答えたらよいか分からずにドギマギしてしまった。フィッツェンハーゲン侯爵令息は、フフッと微笑むと、冗談です、カフェでお待ちしていますよ、と言ってカフェに戻って行き、テーブルの上で閉じてあった本を開いて、読みふけりながらお茶を飲み始めた。ずいぶんと大胆な冗談をおっしゃられる方ね……。こういうところが、きっと宮廷の女性たちに人気なのね。
ときおり本から顔を上げて、じっとこちらを見つめてくるのが、キャンバス越しに見える。私はフィッツェンハーゲン侯爵令息に見られていることが落ち着かなくて、キャンバスに顔を隠すようにしながら、フィッツェンハーゲン侯爵令息と目線を合わせないように意識して、なんとか絵を仕上げたのだった。
「あの……、終わりましたけれど……。」
私が声をかけると、本に目線を落としていたフィッツェンハーゲン侯爵令息が顔を上げて、私を甘く見つめて微笑んでくる。
いちいちドキリとするような仕草をなさる方ね。こういうところに、みんな勘違いをして、夢中になってしまうのだわ。
フィッツェンハーゲン侯爵令息は、あの日なぜか私をメイクを施す相手に選んでくださったけれど、お茶会の態度を見る限りでは、アデリナ嬢の言うとおり、この方はとにかく女性を美しくするのが趣味みたいな方で、とにかく女性が大好きで、年齢問わず紳士で誠実な振る舞いをされる方のようだった。
そういう男性が、自分だけに特別な態度をとったりした日には、凄く……意識してしまうことになりそうだけれど、きっと、1人ずつに対して、何か特別なことを作って下さるのね。私には、それがメイクだったというだけのことよ。それにしても、着飾った令嬢や婦人たちに囲まれていた時よりも、更に目立つわね、こういう場所にいらっしゃると。
周囲の女性たちも、チラチラとフィッツェンハーゲン侯爵令息を見つめては、何か話したり微笑みあったりしていたのだけれど、私が彼と話しだした途端、キッ!と鋭い目線が飛んでくる。お茶会の時はそんなこともなかったのだけれど、あの時は全員と平等にお話されていたものね。けれど、今は私だけ。
だから女性たちの嫉妬も仕方のないことだとは思うけれど、少しだけ視線が怖いわ。
「では、参りましょうか。」
フィッツェンハーゲン侯爵令息は、パタリと分厚いカバーの本を閉じると、立ち上がってそう言った。
「会計を済ませて参りますので、少々お待ちいただけますか?」
「あ、はい。」
フィッツェンハーゲン侯爵令息は、そう言って伝票を手に持つと、首から下げていた家紋の紋章入りのペンダントを取り出し、カフェの従業員が差し出した小箱を手に取って、そこにペンダントトップをかざすと、そのままお金を払わずに立ち去ろうとする。
カフェの従業員も何事もなかったかのように、ありがとうございましたとお辞儀をしているのだ。──???
キョトンとしている私に、
「口座決済は初めてご覧になりますか?」
と言った。
「はい……。」
口座決済とは、何かしら?
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
しばらくフィッツェンハーゲン侯爵令息のターン。
「大きな声を出しているところを見られてしまうだなんて……。お恥ずかしいですわ。
でも、ありがとうございました。」
「いえいえ、あなたの窮地を救える立場になれて良かったですよ。これは神が与え給うた最大級の幸運に相違ありません。」
そう言ってフィッツェンハーゲン侯爵令息が柔らかく微笑む。
「今日はこちらに、絵を描きに?」
フィッツェンハーゲン侯爵が、赤髪の冒険者から奪い返してくれた本を、私に手渡しながら聞いてくる。
「はい。それと、家具を見に……。」
「家具を、ですか?」
「はい、素敵なものがないかと思って。」
「おひとりで、ですか?」
護衛もメイドもいない私の姿にそう言ってくる。普通は誰かしら必ずいるものね。そう思うのが普通だ。
「ええ。1人です。」
「それは僥倖。でしたらぜひ、私の知っている家具屋を案内させてはいただけませんか?
とても魅力的なものばかりを取り揃えているお店です。きっと気にいると思いますよ。」
王宮に出入りをするほどの化粧師である、フィッツェンハーゲン侯爵令息の紹介だ、きっと特別なところをご存知なのだわ。
私に買える値段かは分からないけれど、一度見てみたいと思えた。どんな内装の部屋にするか、イメージも膨らみそうね。
「本当ですか?ご迷惑でなければ……。
ただ、描きかけのこの絵を描きあげてしまいたいので、それまでお待たせすることになってしまうのですが……。」
「もちろん構いませんよ。その代わり、あなたが絵を描き終えるまでの間、──あなたを近くで見つめる許可をいただいても?」
「ええっ!?」
フィッツェンハーゲン侯爵令息が、甘い目線で私の目の奥を覗き込んでくる。メイクを施していただいた時ほどではないにしても、この方の距離のとり方は、少し近すぎるのではないかしら?嫌ではないけれど……。
私はなんと答えたらよいか分からずにドギマギしてしまった。フィッツェンハーゲン侯爵令息は、フフッと微笑むと、冗談です、カフェでお待ちしていますよ、と言ってカフェに戻って行き、テーブルの上で閉じてあった本を開いて、読みふけりながらお茶を飲み始めた。ずいぶんと大胆な冗談をおっしゃられる方ね……。こういうところが、きっと宮廷の女性たちに人気なのね。
ときおり本から顔を上げて、じっとこちらを見つめてくるのが、キャンバス越しに見える。私はフィッツェンハーゲン侯爵令息に見られていることが落ち着かなくて、キャンバスに顔を隠すようにしながら、フィッツェンハーゲン侯爵令息と目線を合わせないように意識して、なんとか絵を仕上げたのだった。
「あの……、終わりましたけれど……。」
私が声をかけると、本に目線を落としていたフィッツェンハーゲン侯爵令息が顔を上げて、私を甘く見つめて微笑んでくる。
いちいちドキリとするような仕草をなさる方ね。こういうところに、みんな勘違いをして、夢中になってしまうのだわ。
フィッツェンハーゲン侯爵令息は、あの日なぜか私をメイクを施す相手に選んでくださったけれど、お茶会の態度を見る限りでは、アデリナ嬢の言うとおり、この方はとにかく女性を美しくするのが趣味みたいな方で、とにかく女性が大好きで、年齢問わず紳士で誠実な振る舞いをされる方のようだった。
そういう男性が、自分だけに特別な態度をとったりした日には、凄く……意識してしまうことになりそうだけれど、きっと、1人ずつに対して、何か特別なことを作って下さるのね。私には、それがメイクだったというだけのことよ。それにしても、着飾った令嬢や婦人たちに囲まれていた時よりも、更に目立つわね、こういう場所にいらっしゃると。
周囲の女性たちも、チラチラとフィッツェンハーゲン侯爵令息を見つめては、何か話したり微笑みあったりしていたのだけれど、私が彼と話しだした途端、キッ!と鋭い目線が飛んでくる。お茶会の時はそんなこともなかったのだけれど、あの時は全員と平等にお話されていたものね。けれど、今は私だけ。
だから女性たちの嫉妬も仕方のないことだとは思うけれど、少しだけ視線が怖いわ。
「では、参りましょうか。」
フィッツェンハーゲン侯爵令息は、パタリと分厚いカバーの本を閉じると、立ち上がってそう言った。
「会計を済ませて参りますので、少々お待ちいただけますか?」
「あ、はい。」
フィッツェンハーゲン侯爵令息は、そう言って伝票を手に持つと、首から下げていた家紋の紋章入りのペンダントを取り出し、カフェの従業員が差し出した小箱を手に取って、そこにペンダントトップをかざすと、そのままお金を払わずに立ち去ろうとする。
カフェの従業員も何事もなかったかのように、ありがとうございましたとお辞儀をしているのだ。──???
キョトンとしている私に、
「口座決済は初めてご覧になりますか?」
と言った。
「はい……。」
口座決済とは、何かしら?
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しばらくフィッツェンハーゲン侯爵令息のターン。
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