養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
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第69話 仲が悪くなる2人③
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「──そういえば、聖女さまが現れたという噂は聞きましたか?」
「聖女さまですか?いいえ?」
聖女さまというのは、国が困窮した際に現れるとされる、人を癒やし、病気すらも治し、時に魔物を討伐する力を持つこともある人のことだ。
今の我が国は、聖女さまが必要とされるほど、魔物の被害がひどいわけでも、病気が蔓延しているわけでもないから、聖女さまが現れるのを待たれているわけではない。
それなのに聖女さまが現れたというの?そんなケースもあるのね。
「まだ人々の噂にのぼっている程度ですが、いずれ国も確認に動くのではないでしょうか。本当に聖女さまであれば、国の保護が必要になるでしょうからね。」
聖女さま……ねえ。確かにそんな方が現れたら、教会に囲い込まれる前に、国が保護したいと言い出すことだろう。
学生時代に教わった歴史によると、聖女さまが現れた国が聖女さまを保護しないと、教会に縛られて、自分たちの国に現れた聖女さまなのに、優先的に瘴気をはらってもらえなくなるらしい。
それくらい、聖女というものは貴重で、教会と国とで取り合いになる存在なのだ。
そんな聖女さまが我が国に現れたなんて、ひと目拝見したいものね。
そこへ、ドアがあいて1人の男性が店の中へと入って来て、ショーケースに並んだケーキを選び始めたのだけれど、私はその姿を見て思わず、あら、と声をもらした。
「フィリーネさま!こんなところでお会いするとは。偶然ですね。」
「ええ、本当に偶然ですね。ケーキを買いにいらしたんですか?シュテファンさま。」
私はショーケースの前のシュテファンさまに話しかけた。
「はい、祖母がここのケーキを好きでして、それで買いに。」
どうやら貴族もお忍びでケーキを買いに来るというのは本当のようだ。
「お久しぶりです、トラウトマンさまも。」
シュテファンさまはそう言って、ヴィリに微笑みかけた。
「バルテル侯爵夫人のお茶会以来ですね。お久しぶりです。」
ヴィリは立ち上がって礼を尽くした。
2人とも、バルテル侯爵夫人と親しくしている関係上、時折顔を合わせていた筈だけれど、そこまで親しくはないのね。どこか儀礼的だわ。シュテファンさまは、ヴィリと一緒にいる私のことが気になっているようで、先程からチラチラとこちらを見ている。
「お2人は、親しかったのですね。」
「バルテル侯爵夫人の写生大会以来の関係ですね。アデリナ嬢と3人でピクニックに行ったりと、親しくさせていただいております。」
そうヴィリが説明をすると、
「ピクニック……。そうですか……。」
と、何事かを考えるようにそう呟いた。
「そういえば、アデリナ嬢とも暫くお会い出来ていないわ。2人の家に、ペットの絵を描きに行かせていただいて以来ね。また3人で出かけたいわね、ヴィリ。」
「ええ、ぜひ。」
私がそう言うと、ヴィリがニコリと微笑んだ。そして、シュテファンさまが、
「フィリーネさま、彼のご自宅に……行かれたのですか?失礼ですがトラウトマンさまは、ご家族とお住いでいらっしゃいますか?」
「──いいえ?1人暮らしですが?」
なぜかヴィリの雰囲気が、スンッと感情を殺したような感じになる。
「そうですか……。ああ、フィリーネさま、祖母がまた家に遊びに来て欲しいとせがんでおりまして。ぜひまた祖母にも会いにいらしていただけませんでしょうか?」
「まあ、本当ですか?ええ、ぜひ。」
「──フィッツェンハーゲン卿は、ご家族に彼女を紹介されたのですか?」
なぜだか冷たい口調でそう言うヴィリ。
「ええ。祖母がたいそうフィリーネさまのことを気に入りまして。ぜひにと……。」
それに微笑みで返すシュテファンさま。
なぜかしら……。2人の間に不穏な緊張間が漂っているような気がするのは、私だけ?
互いにニコニコと微笑みあいながら、牽制し合っているようなそんな空気を、私はこの日確かに感じたのだった。
────────────────────
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「聖女さまですか?いいえ?」
聖女さまというのは、国が困窮した際に現れるとされる、人を癒やし、病気すらも治し、時に魔物を討伐する力を持つこともある人のことだ。
今の我が国は、聖女さまが必要とされるほど、魔物の被害がひどいわけでも、病気が蔓延しているわけでもないから、聖女さまが現れるのを待たれているわけではない。
それなのに聖女さまが現れたというの?そんなケースもあるのね。
「まだ人々の噂にのぼっている程度ですが、いずれ国も確認に動くのではないでしょうか。本当に聖女さまであれば、国の保護が必要になるでしょうからね。」
聖女さま……ねえ。確かにそんな方が現れたら、教会に囲い込まれる前に、国が保護したいと言い出すことだろう。
学生時代に教わった歴史によると、聖女さまが現れた国が聖女さまを保護しないと、教会に縛られて、自分たちの国に現れた聖女さまなのに、優先的に瘴気をはらってもらえなくなるらしい。
それくらい、聖女というものは貴重で、教会と国とで取り合いになる存在なのだ。
そんな聖女さまが我が国に現れたなんて、ひと目拝見したいものね。
そこへ、ドアがあいて1人の男性が店の中へと入って来て、ショーケースに並んだケーキを選び始めたのだけれど、私はその姿を見て思わず、あら、と声をもらした。
「フィリーネさま!こんなところでお会いするとは。偶然ですね。」
「ええ、本当に偶然ですね。ケーキを買いにいらしたんですか?シュテファンさま。」
私はショーケースの前のシュテファンさまに話しかけた。
「はい、祖母がここのケーキを好きでして、それで買いに。」
どうやら貴族もお忍びでケーキを買いに来るというのは本当のようだ。
「お久しぶりです、トラウトマンさまも。」
シュテファンさまはそう言って、ヴィリに微笑みかけた。
「バルテル侯爵夫人のお茶会以来ですね。お久しぶりです。」
ヴィリは立ち上がって礼を尽くした。
2人とも、バルテル侯爵夫人と親しくしている関係上、時折顔を合わせていた筈だけれど、そこまで親しくはないのね。どこか儀礼的だわ。シュテファンさまは、ヴィリと一緒にいる私のことが気になっているようで、先程からチラチラとこちらを見ている。
「お2人は、親しかったのですね。」
「バルテル侯爵夫人の写生大会以来の関係ですね。アデリナ嬢と3人でピクニックに行ったりと、親しくさせていただいております。」
そうヴィリが説明をすると、
「ピクニック……。そうですか……。」
と、何事かを考えるようにそう呟いた。
「そういえば、アデリナ嬢とも暫くお会い出来ていないわ。2人の家に、ペットの絵を描きに行かせていただいて以来ね。また3人で出かけたいわね、ヴィリ。」
「ええ、ぜひ。」
私がそう言うと、ヴィリがニコリと微笑んだ。そして、シュテファンさまが、
「フィリーネさま、彼のご自宅に……行かれたのですか?失礼ですがトラウトマンさまは、ご家族とお住いでいらっしゃいますか?」
「──いいえ?1人暮らしですが?」
なぜかヴィリの雰囲気が、スンッと感情を殺したような感じになる。
「そうですか……。ああ、フィリーネさま、祖母がまた家に遊びに来て欲しいとせがんでおりまして。ぜひまた祖母にも会いにいらしていただけませんでしょうか?」
「まあ、本当ですか?ええ、ぜひ。」
「──フィッツェンハーゲン卿は、ご家族に彼女を紹介されたのですか?」
なぜだか冷たい口調でそう言うヴィリ。
「ええ。祖母がたいそうフィリーネさまのことを気に入りまして。ぜひにと……。」
それに微笑みで返すシュテファンさま。
なぜかしら……。2人の間に不穏な緊張間が漂っているような気がするのは、私だけ?
互いにニコニコと微笑みあいながら、牽制し合っているようなそんな空気を、私はこの日確かに感じたのだった。
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