クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美

文字の大きさ
12 / 87

鍛える!!

しおりを挟む
「今日はグループ学習だ。みんなグループを作れ」

 体育教師の声が響く。

 俺はこれまで体育の授業は仮病を使って見学していた。だが、今日は違う。高校生活で初めて、俺は体育の授業に参加していた。

「裕貴、こっちだ」

 俺の手をぐいっと引いたのは神木蘭だった。

「裕貴くん、頑張ろう!」

 佐々木さんも、いつもの明るい笑顔を向けてくる。

 そんな中、俺たちがグループを組もうとしていた時――

「俺も入っていいかな」

 低く、軽やかな声がした。

 振り返ると、春樹が立っていた。

「春樹か、私は別にいいけど、二人はどうする?」

「うん、私もいいよ! 人は多いほうが楽しいし!」

「う、うん」

 こうして俺たちは四人グループとなった。チーム分けは自然とこうなった。

春樹&佐々木さんペア
俺&神木さんペア

 ――見事に佐々木さんと分かれてしまった。

「これからグループ内でバドミントンの試合をしてもらう。みんな、水分補給と休憩だけはしっかり行うように」

 教師の言葉が響く。

 うぅ、なんかお腹痛くなってきた……。

 これまで逃げ続けていた体育の授業に、突然飛び込むことになった俺は、極度の緊張に襲われていた。

「裕貴、頼りにしてる」

 神木さんが俺の肩をぽんと叩く。

 その表情には自信が満ちていた。

「う、うん!」

 こんな俺を頼りにするなんて――。少しでも応えなきゃ。

「よし! 行くよ、神木ちゃん!」

「来い!」

 佐々木さんがシャトルを勢いよく打つ。

 高速で飛んでくるシャトルに向かい、神木さんは素早く反応し、強烈なスマッシュを返した。

 バシッ――!

「す、すごい……!」

「まぁこう見えて私、運動系は全部得意だから!」

 そう言ってこちらを振り向いた神木さんの横顔は、まるで戦士のようにカッコよかった。

「カッコイイ……」

 思わず口に出してしまった。

「えっ……!?!?」

 俺の言葉を聞いた神木さんが、一瞬動きを止めた。

 ポトッ――

「あっ――」

「はい! 1点入ったー!」

 俺たちのコートに、佐々木さんが打ったシャトルが落ちる。

「ちょっと! 裕貴! 今はそういうこと言ってる場合じゃない!」

 神木さんは怒るような顔をしたが、頬がほんのり赤く染まっていた。

 その後――

 俺たちの試合は、ほぼ神木さんの独壇場だった。

 バドミントン経験ゼロの俺に対し、神木さんは恐ろしいほどの運動神経を発揮し、相手コートを翻弄する。

「いやー、凄いね神木さん」

 汗を拭いながら春樹が言った。

 一方の俺は、コートの中央で息も絶え絶えになり、今にも倒れそうだった。

 ――やっぱり俺はまだまだだな。

 それでも、以前の自分とは違う。



  その日の授業が終わった後、俺はいつも通りジムへ向かおうとしていた。

「おい、裕貴!」

 後ろから、春樹の声がした。

 最近、俺は春樹と一緒に帰ることが増えていた。

 ――いや、"帰る" というより "鍛える" か。

「今日も鍛えるんだろ? 行こうぜ、相棒!」

「お、おう!」

 俺と春樹はジムへ向かい、その日もトレーニングに励んだ。

 そこからの二ヶ月間――。

 俺は毎日春樹と共に筋トレを続けた。

 最初は苦しくて仕方なかった。

 だけど、少しずつ筋肉がつき、身体が軽くなっていくのを感じるようになった。

 気がつけば、体型も以前とは大きく変わっていた。



 その日もトレーニングを終え、汗だくのまま帰宅した。

「ただいまー」

 玄関の扉をそっと開け、できるだけ目立たないように自分の部屋へ向かう。

 ――よし、今日はバレずに帰れる!

 そう思い、部屋のドアを開けた瞬間――

「あら、今日も遅かったのですね。お坊ちゃん」

「さ、佐々木さん!?」

 そこには、腕を組んで俺を見下ろす佐々木さんの姿があった。

「最初は19時に帰ってきてたのに、今日は21時ですか」

「い、いやー、それが筋トレに夢中になって……」

「そうですかそうですか。それで? 言い訳は終わりですか? お坊ちゃん?」

「ヒィィィィ! ごめんなさい!」

 俺は思わず、土下座した。

 こ、怖すぎる! メイドなのに!?

 しかし――

「はぁ、それにしても……痩せましたね」

 佐々木さんは、不満そうにため息をついた。

「う、うん! 大体79kgから58kgまで落とせたよ!」

 ――昔は服が入らなくて困っていたのに、今はどんな服でも着られる。

 鏡を見るたびに驚く。

「これが……痩せるってことか!」

「まぁ、私は昔の裕貴くんを見慣れてるから、違和感がすごいんですけど」

「そ、そうですよね……」

「まぁ、今の裕貴くんはカッコイイからいっか」

「え……?」

「……な、なんでもない!」

 そう言い残し、彼女はそっぽを向いて部屋を出ていった。

 俺は呆然としながら、自分の手を見つめる。

 ――見事に、新学期開始から二ヶ月でダイエットに成功した。

 "俺は変わった。"

 そう、心の中で確信した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

処理中です...