クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美

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変化の代償

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「ねぇ、あれって転校生? 佐々木さんの彼氏かな?」

「超かっこいい人いるんだけど」

「てか、あれってどこのクラスの人?」

 ざわめく声が俺の耳に届く。
 登校途中の校門前、いつも通りの景色のはずなのに、今日はやけに視線を感じる。

 どうやら俺は、痩せたことで周りの注目を集めているらしい。

「裕貴くん、随分と人気者になったね」

 隣を歩く佐々木さんが、クスクスと笑いながら俺をからかうように見上げてくる。

「……あのなぁ」

「でも、男前になった気がするよ、裕貴くん」

「……あのなぁ……」

 どう返せばいいのか分からず、俺はぼそっと同じ言葉を繰り返すことしかできなかった。



 教室に入ると、さらなる視線が俺に突き刺さった。

「誰このイケメン?」

「うちのクラスにこんな人いたっけ?」

 あちこちでヒソヒソと囁く声が聞こえる。

 俺は視線に耐えながら席へ向かおうとしたが、すぐに遮られる。

「お、裕貴! お前すげぇよ!」

 快活な声が響き、俺の肩をバシッと叩いたのは春樹だった。

「やっぱり俺の見立て通りだったな! お前は鍛えるべきだなってな!」

 春樹の豪快な声がクラス中に響き渡り、俺の正体を知らなかったクラスメイトたちが驚愕する。

「え……まじで? あの裕貴?」

「嘘でしょ、別人じゃん……」

 驚きの声が次々と上がる中、神木さんも俺の姿をまじまじと見つめていた。

「悠里、これほんとに裕貴?」

「うん、そうだよ。私もまだ見慣れてないけど……でも、間違いなく裕貴くんだよ」

「すごいね、人って変わるもんなんだね……」

 神木さんは感心したように呟くと、そのまま俺の腕を指でツンツンと突いた。

「筋肉もしっかりついてるし、めちゃくちゃ鍛えたんだな」

 改めて注目されると、やっぱり少し恥ずかしい。
 俺はそそくさと自分の席に着いた。

 ──痩せてよかったァァ!
 まさか、体型が変わるだけでこんなにも評価が変わるとは……!

 俺が密かに感動していると、クラスメイトたちが次々と集まってきた。

「ゆ、裕貴くん! 連絡先交換しない?」

「オイ! 裕貴! 野球部入らねぇか?」

「裕貴! ちょっと俺たちと一緒にカラオケ行かね!?」

 一気に押し寄せる人の波に戸惑いながらも、ちらっと佐々木さんの方を見ると──

 ……なぜか、じっと俺を見ている。

「佐々木さん、どうしたの?」

「あ、い、いや! なんでもない!」

 彼女はオドオドとした様子で、視線を逸らす。

 ──何か引っかかるけど、まあいいか。

 その時、突然の一喝が響いた。

「おう、お前ら座れ! とっくにチャイム鳴ってるぞ!」

 沢田先生が教室に入ってきた。
 クラスメイトたちは散り散りに席へ戻る。

 ホッとしたのも束の間、先生と目が合った瞬間、眉をひそめられた。

「おい、そこの。ここは2年K組だぞ。クラスを間違えてるんじゃないか?」

「えっ?」

 先生の言葉にクラスメイトがクスクスと笑う。
 いやいや、間違えてないし。

「あ、いや! 俺です! 裕貴です!」

「……は?」

 先生は俺をマジマジと見つめる。

「お前、裕貴だと? あのなぁ、裕貴はもっとこう……ぽっちゃりしてて、可愛い感じだったろ?」

「か、可愛いって……。いや、本当に俺です! 信じてください!」

「……マジ?」

「マジです」

「えぇぇぇぇぇ!? お前、本当に裕貴なのか!? 一体何があった!? もしかしてストレスか!? ストレスでこうなったのか!?」

 先生は俺の肩をガシガシと揺さぶる。

「ち、違います! 鍛えたんですよ! ダイエットしたんです!」

「あ、なるほどな!」

 何か納得したらしく、先生は黒板に向かい、勢いよくチョークを走らせた。

 そこに書かれた文字──

「体育祭」

「もうすぐ体育祭がある! お前ら、体育祭楽しむぞ!」

 先生がノリノリで宣言するが、クラスの空気は一変。

 しん……

 誰も盛り上がらない。

 一方の俺は……

 絶望していた。

 た、体育祭!?
 やばい、嫌な思い出が蘇る!

 俺は体育祭が、
 ──大大大嫌いなのだ。
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