クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美

文字の大きさ
15 / 87

距離感

しおりを挟む
「それじゃ、ここに書き出した種目に参加したいやつは、自分で名前を書きに来い」

 沢田先生はそう言いながら、黒板にチョークを置いた。

 黒板にはいくつかの種目が列挙されている。

1. 二人三脚

2. 借り物競争

3. リレー

4. 騎馬戦

「この4つのうち、1人2つは必ず出ること。決まらなかった場合、先生が適当に振り分けるからな」

 そう言い残し、沢田先生は今日の日程を軽く説明した後、ホームルームを締めくくった。

 黒板を見つめていると、隣から声がかかる。

「裕貴、私と二人三脚に出ない?」

 神木蘭――短く整えられた青みがかった髪がさらりと揺れる。彼女は自信に満ちた表情で俺を見つめていた。

「いいよ。俺でよければ」

「ありがと。じゃあ、しっかり特訓しなきゃね!」



 昼休み。いつものように佐々木さんが作ってくれた弁当を食べた後、俺は神木さんと二人三脚の練習をすることになった。

「じゃ、これ使うね」

 神木さんが持ってきた赤い紐を俺と彼女の足首に巻きつけ、しっかりと結ぶ。

「よし、完璧! 息を合わせていくよ、裕貴!」

 意気込む彼女の声に気圧されつつ、俺も気を引き締める。

「せーの、左!」

「よし、次は右!」

 しかし、最初のうちは足がもつれて、何度も転びそうになった。

「もっとリズムを意識して! 裕貴、遅れないで!」

 運動神経抜群の神木さんにとって、俺の動きはもどかしく感じるのか、少し苛立った様子だ。

「ご、ごめん!」

「もう一回! 今度はリズムに意識を向けて!」

 何度も息を合わせて練習を重ねるうちに、ようやく少しずつ形になってきた。

「いい感じ! これなら本番もいけるかも!」

「俺、ついていけてる?」

「まぁ、そこそこね!」

 神木さんは満足げに笑い、俺の背中を軽く叩いた。

「絶対勝つよ、裕貴!」

「ああ、頑張る!」

 彼女の自信満々な表情を見て、俺も自然と気合が入った。



「裕貴くん、一緒に帰ろ?」

 授業が終わり、下校しようとしたところで、佐々木さんが声をかけてきた。

「うん、一緒に帰ろう」

 俺と佐々木さんは並んで校門を出る。潮風が吹き抜け、俺たちの頬を優しく撫でていった。

 ふと、彼女は海の方へ目を向ける。

「裕貴くん、ちょっと寄り道しない?」

 そう言って、彼女は夕日に染まる海を指さした。



 俺たちは砂浜に降り立つと、佐々木さんは躊躇なく靴を脱ぎ、裸足のまま波打ち際へと駆け出していった。

「冷たくて気持ちいい! 裕貴くんも来なよ!」

 彼女が振り返り、無邪気な笑顔を見せる。オレンジ色に染まる海と風に揺れる髪、その姿はまるで絵画のように美しかった。

「……ああ」

 俺も靴と靴下を脱ぎ、波に足をつける。冷たい水がじわりと肌に馴染む感覚が心地よい。

「私たち、今一番青春してるね!」

 彼女の言葉に、俺は笑いながら頷いた。

「……そうだね」

 夕日が海に沈んでいくのを眺めながら、俺たちはしばらく無言で波の音に耳を傾けた。



 翌日、俺たちのクラスは調べ学習のため、図書室に移動していた。

「裕貴、ここ、私の隣に座りなよ」

 図書室に入るなり、神木さんが俺のために席を確保してくれていた。

「あ、ありがとう! じゃああとで座らせてもらうね」

 それだけ伝え、本を探しに向かう。



「これかな? いや、違うな……」

「これじゃない?」

 俺が迷っていると、神木さんがすっと本を差し出した。

「ありがとう! 助かったよ!」

「……うん」

 彼女の表情が、なんとなくいつもと違う気がする。

 そして、調べ物を進めている間も、彼女は俺の手元を覗き込みながら的確な指示をくれる。

「ここはこの言葉でまとめたほうがいいよ」

「なるほど……!」

 彼女のサポートのおかげで、俺の作業は驚くほどスムーズに進んだ。

「ありがとう、神木さん。本当に助かった!」

「別に、私も興味あったから。お礼なんていらないよ」

「だったら、お礼に俺も手伝うよ!」

「ホント?! じゃあ、お願いしようかな!」

 神木さんは嬉しそうに微笑んだ。



 本を探していると、背中にツンとした軽い衝撃があった。

「……?」

 振り返ると、そこには佐々木さんが立っていた。

「何してるの?」

「ああ、神木さんに手伝ってもらったから、お礼に彼女の調べ物を手伝おうかなって」

 俺がそう説明すると、佐々木さんは一瞬、何か考えるような表情をした。

「……そう」

 小さく頷いたあと、彼女は少し笑って言った。

「じゃあ、私も手伝っていいかな? 神木ちゃんとは友達だし!」

「助かる!」

 俺たちは三人で協力しながら調べ学習を進めることにした。



「ねぇ、裕貴」

 俺と佐々木さんが本を探していると、神木さんが後ろから声をかけてきた。

「ん? どうした?」

 彼女はじっと俺たちを見つめた後、少し意味深な笑みを浮かべる。

「……なんでもない。悠里も裕貴も、早く戻ってきてね」

 そう言い残し、彼女は席へと戻っていった。

 その後ろ姿を見送りながら、俺はなんとなく胸の奥がざわつくのを感じた――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

処理中です...