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騎馬戦
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笛の音がグラウンドに響いた瞬間、俺と神木さんは息を合わせて地面を力強く蹴った。
「いっち、にっ! いっち、にっ!」
神木さんの掛け声がリズムを刻む。彼女の声が耳に響き、それに合わせるように俺も足を動かした。今まで何度も練習を重ねた分、動きに迷いはない。ピッチを乱すことなく、俺たちは地面を蹴り続ける。
周りでは他のペアも必死に走っているが、俺たちの動きには一日の長がある。互いの呼吸も、足の動きも、まるでひとつの意志のように完璧にシンクロしていた。
このままいけば——!
前を走るペアとの差は、もうほとんどない。次のコーナーを曲がれば、トップに躍り出るチャンスがあるはずだ。
「神木さん、次のカーブで一気に抜くぞ!」
「おう、任せろ!」
俺たちはカーブに差し掛かるタイミングで、さらに足の動きを揃える。身体を内側に傾け、遠心力に逆らうように踏み込む。
その瞬間、風が頬を撫で、俺たちは見事に先頭に立った。
観客席から歓声が湧き上がる。誰かが俺たちの名前を呼んでいる気がする。
——!
チラリと視線を送ると、そこには佐々木さんの姿があった。
彼女は手を胸の前で組み、じっとこちらを見つめている。その顔には、喜びとも、切なさともつかない複雑な表情が浮かんでいた。
どうして、そんな顔を……?
疑問が脳裏をよぎるが、今はレースに集中しなければならない。
「裕貴、ラストスパート!」
「おう!」
俺たちはゴールラインに向かって、最後の力を振り絞る。そして——
——ゴールのテープが、俺たちの胸を切った。
「……やった!」
俺たちの勝利だった。
「裕貴! 優勝だ!」
神木さんが満面の笑みを浮かべ、俺の肩を叩く。
「うん……!」
まだ実感が湧かないまま、それでも嬉しさを噛み締めるように拳を握る。しかし、そんな俺たちの姿を遠くから見つめる佐々木さんの表情が、なぜか記憶に焼きついて離れなかった。
※
「お疲れ様! 裕貴くん!」
歓声が鳴り止む頃、俺の元へ軽やかに駆け寄ってきたのは佐々木さんだった。
「うん、ありがとう……佐々木さん、さっき、ベンチの方で俺と神木さんのことを見てたよね?」
「あ、う、うん。祈ってたんだ、裕貴くんたちが勝てるように」
佐々木さんは微笑む。まるで天使のような、その柔らかい笑顔に思わず息を呑んだ。
か、可愛いィィ……! なんなんだこの天使は!?
「あ、ありがとう! 佐々木さん!」
興奮した俺は、思わず佐々木さんの両手を握りしめていた。
「おい、そんなことしてないで、裕貴は次の種目があるだろ? さっさと行ったらどうだ?」
唐突に響く神木さんの声。少し拗ねたような響きを含んでいる気がする。
「あ、うん。ありがとう、神木さん!」
※
「裕貴~! こっちだこっち!」
次の種目に向かうために走っていると、入場門の近くで手を振っている人物がいた。
「体育祭は楽しんでいるか? 裕貴」
そこにいたのは、担任の沢田先生だった。
「はい!」
「楽しめてるなら先生も安心だ。ほら行ってこい! 仲間が待ってるぞ!」
先生は豪快に笑いながら、俺の背中をポンッと押した。
俺が向かう先に待っているのは、筋トレ仲間の春樹と、そして——。
※
体育祭・二週間前の出来事。
「わ、私もあなたの騎馬戦の仲間に入れてください!」
放課後の教室。俺の目の前で、深々と頭を下げる少女がいた。
以前、杉本にしつこく絡まれていた女の子——澤部美穂(さわべ みほ)。
「き、君は?」
「わ、私は澤部美穂と言います!」
彼女は緊張した面持ちで、しっかりと俺を見据えていた。
「でもどうして、俺たちが騎馬戦に出ることを知ってるの?」
「あ、あの……杉本先輩から助けてもらった時に、友達から色々と教えてもらったんです。騎馬戦に出ることも、その仲間が足りていないことも……」
どうやら彼女はすでに俺たちのことをリサーチ済みらしい。
騎馬戦は最低でも三人必要だ。俺と春樹だけでは人数が足りない。
「それに……私、内気で気弱な自分を変えたいんです!」
澤部さんの瞳が、真っ直ぐ俺を見つめる。
「あと、裕貴先輩にお礼もしたいんです!」
その決意に満ちた表情を見て、俺は一瞬驚く。
——だが、すぐに笑みが浮かんだ。
「分かった、美穂さん。俺たちと組んでくれないかな?」
「はい!」
美穂さんは、今までの緊張が嘘のように目を輝かせ、力強く頷いた。
「いっち、にっ! いっち、にっ!」
神木さんの掛け声がリズムを刻む。彼女の声が耳に響き、それに合わせるように俺も足を動かした。今まで何度も練習を重ねた分、動きに迷いはない。ピッチを乱すことなく、俺たちは地面を蹴り続ける。
周りでは他のペアも必死に走っているが、俺たちの動きには一日の長がある。互いの呼吸も、足の動きも、まるでひとつの意志のように完璧にシンクロしていた。
このままいけば——!
前を走るペアとの差は、もうほとんどない。次のコーナーを曲がれば、トップに躍り出るチャンスがあるはずだ。
「神木さん、次のカーブで一気に抜くぞ!」
「おう、任せろ!」
俺たちはカーブに差し掛かるタイミングで、さらに足の動きを揃える。身体を内側に傾け、遠心力に逆らうように踏み込む。
その瞬間、風が頬を撫で、俺たちは見事に先頭に立った。
観客席から歓声が湧き上がる。誰かが俺たちの名前を呼んでいる気がする。
——!
チラリと視線を送ると、そこには佐々木さんの姿があった。
彼女は手を胸の前で組み、じっとこちらを見つめている。その顔には、喜びとも、切なさともつかない複雑な表情が浮かんでいた。
どうして、そんな顔を……?
疑問が脳裏をよぎるが、今はレースに集中しなければならない。
「裕貴、ラストスパート!」
「おう!」
俺たちはゴールラインに向かって、最後の力を振り絞る。そして——
——ゴールのテープが、俺たちの胸を切った。
「……やった!」
俺たちの勝利だった。
「裕貴! 優勝だ!」
神木さんが満面の笑みを浮かべ、俺の肩を叩く。
「うん……!」
まだ実感が湧かないまま、それでも嬉しさを噛み締めるように拳を握る。しかし、そんな俺たちの姿を遠くから見つめる佐々木さんの表情が、なぜか記憶に焼きついて離れなかった。
※
「お疲れ様! 裕貴くん!」
歓声が鳴り止む頃、俺の元へ軽やかに駆け寄ってきたのは佐々木さんだった。
「うん、ありがとう……佐々木さん、さっき、ベンチの方で俺と神木さんのことを見てたよね?」
「あ、う、うん。祈ってたんだ、裕貴くんたちが勝てるように」
佐々木さんは微笑む。まるで天使のような、その柔らかい笑顔に思わず息を呑んだ。
か、可愛いィィ……! なんなんだこの天使は!?
「あ、ありがとう! 佐々木さん!」
興奮した俺は、思わず佐々木さんの両手を握りしめていた。
「おい、そんなことしてないで、裕貴は次の種目があるだろ? さっさと行ったらどうだ?」
唐突に響く神木さんの声。少し拗ねたような響きを含んでいる気がする。
「あ、うん。ありがとう、神木さん!」
※
「裕貴~! こっちだこっち!」
次の種目に向かうために走っていると、入場門の近くで手を振っている人物がいた。
「体育祭は楽しんでいるか? 裕貴」
そこにいたのは、担任の沢田先生だった。
「はい!」
「楽しめてるなら先生も安心だ。ほら行ってこい! 仲間が待ってるぞ!」
先生は豪快に笑いながら、俺の背中をポンッと押した。
俺が向かう先に待っているのは、筋トレ仲間の春樹と、そして——。
※
体育祭・二週間前の出来事。
「わ、私もあなたの騎馬戦の仲間に入れてください!」
放課後の教室。俺の目の前で、深々と頭を下げる少女がいた。
以前、杉本にしつこく絡まれていた女の子——澤部美穂(さわべ みほ)。
「き、君は?」
「わ、私は澤部美穂と言います!」
彼女は緊張した面持ちで、しっかりと俺を見据えていた。
「でもどうして、俺たちが騎馬戦に出ることを知ってるの?」
「あ、あの……杉本先輩から助けてもらった時に、友達から色々と教えてもらったんです。騎馬戦に出ることも、その仲間が足りていないことも……」
どうやら彼女はすでに俺たちのことをリサーチ済みらしい。
騎馬戦は最低でも三人必要だ。俺と春樹だけでは人数が足りない。
「それに……私、内気で気弱な自分を変えたいんです!」
澤部さんの瞳が、真っ直ぐ俺を見つめる。
「あと、裕貴先輩にお礼もしたいんです!」
その決意に満ちた表情を見て、俺は一瞬驚く。
——だが、すぐに笑みが浮かんだ。
「分かった、美穂さん。俺たちと組んでくれないかな?」
「はい!」
美穂さんは、今までの緊張が嘘のように目を輝かせ、力強く頷いた。
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