クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美

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決着

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「おう! 来たな、裕貴!」

「裕貴先輩!」

 春樹と澤部さんが、俺に向かって大きく手を振る。二人とも戦闘態勢は万全のようだ。

「ごめん、二人とも! 待たせた!」

「大丈夫だぜ、時間ちょうどだ」

「私もついさっき来たところなので、大丈夫です!」

 その瞬間、グラウンドに響くアナウンス。

《これより、騎馬戦を開始します! 選手は持ち場につき、準備を整えてください!》

 俺たちは一斉に騎馬戦の準備に入った。

 春樹と澤部さんが俺をしっかりと持ち上げる。俺が騎馬の上に乗ると、すぐに周りも戦闘準備を完了させていた。あたりには闘志と緊張感が混ざり合った空気が漂っている。

「絶対に勝つぞ、裕貴! 俺たちのチームワークを見せつけてやろうぜ!」

「おう、やってやろう!」

 その言葉を合図に、笛の音が高らかに鳴り響いた。

 試合が開始されると、最初は各騎馬が慎重に距離を取り合う。まるで獲物を狙う猛獣のように、じりじりと間合いを詰めていく。

「来るぞ!」

 春樹の鋭い声が下から飛ぶ。俺が視線を向けた直後、相手の騎馬が勢いよく突っ込んできた。

「ッ!」

 反射的に身体を捻り、相手の手が届く寸前でかわす。そして、その勢いを利用し、逆に相手のハチマキを狙って手を伸ばした。

「取った!」

 俺の指先がハチマキを掴んだ瞬間、歓声が沸き上がる。

「ナイス、裕貴!」

 春樹が俺をしっかり支えながら、ガッツポーズをする。

 その後も、俺たちは連携を駆使し、次々と敵の騎馬を撃破していった。

 そして——。

「意外なやつが残ってるじゃねぇか! なぁ、裕貴!」

 最後に立ちはだかるのは、杉本の騎馬だった。

 俺たちの騎馬と杉本の騎馬が、グラウンドの中心で向かい合う。

 観客席からは「いけー!」という声が飛び交い、クラスメイトたちは息を呑んでこの一騎討ちを見守っていた。

「へへ……裕貴、お前がこんなところまで上がってくるとはな。それにそこの女も一緒とはな!」

 杉本はニヤリと笑い、頭上のハチマキを軽く引っ張る。

「お前に負けるつもりはない」

「はっ、いいねぇ……なら、遠慮なく潰してやるよ!」

 杉本の騎馬が、一気に加速して突っ込んでくる。

「春樹! 澤部さん!」

「任せろ!」

「はい!」

 二人が絶妙なタイミングで騎馬を横にスライドさせ、杉本の突進をギリギリでかわした。

「チッ……!」

 すぐに杉本の騎馬も方向転換し、再び俺たちに迫る。

「2人とも、次はこっちからいくぞ!」

「おう!」

「分かりました!」

 俺たちは間合いを詰め、一気に杉本の懐へ飛び込む。

「遅ぇよ!」

 杉本がこちらに手を伸ばす。  その瞬間、俺は体を低くかがめた。

「甘い!」

 杉本の手が空を切る。

「今だ、裕貴!」

「おう!」

 俺は杉本のハチマキを狙って手を伸ばす。しかし——

「なめんなよ!」

 杉本の下の騎馬が、急激に横へスライド。 それと同時に杉本の体がブレることなく、俺の攻撃をかわしていく。

 なんだこいつら……!
 意外と息が合ってやがる!

 杉本の騎馬は、単なる力押しじゃない。下のメンバーも鍛えられていて、素早い動きができる。

「終わりだ!」

 杉本の腕が再び振り下ろされる。俺のハチマキまであと数センチ——。

「させるか!」

 俺は瞬時に体を後ろへ反らせた。

 杉本の手が俺のハチマキをかすめる。

「クソッ、あとちょっとだったのによ!」

 しかし、その一瞬がチャンスだった。

「春樹、持ち上げろ!」

「おうよ!」

 春樹が俺を支える力を強め、一気に騎馬の上に押し上げる。

 俺の視界が一気に開ける——そして、杉本の頭が、目の前にある。

 今しかない……!

 俺は手を伸ばした。

「——取った!!」

 俺の指先が杉本のハチマキを掴み取る。

「はっ……!?」

 杉本の表情が一瞬、驚愕に染まる。

 次の瞬間、グラウンドに笛の音が響き渡った。

「勝負あり!」

 俺たちの勝利だった。

「凄いです! 先輩!」

「おおおおっしゃあああああああ!!」

 春樹が俺の足を支えながら、拳を突き上げる。

「……ふぅ」

 汗を拭いながら、俺は杉本の方を見た。

「……チッ、負けたかよ」

 杉本は悔しそうに地面を蹴る。

 俺はゆっくりと彼に近づいた。

「杉本くん。俺は変わった。お前にされたことは許せないけど……それでも、変わるきっかけをくれたことには感謝してる」

「チッ、調子に乗りやがって」

 杉本は不貞腐れたように言い残し、背を向ける。

 しかし、その足取りはどこか、以前よりも軽く見えた——。
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